2011年2月13日 9時10分
政府・民主党は、年金制度を職業に関係なく一元化することを柱とした民主党の改革案に関し、会社員の厚生年金と公務員らの共済年金の統合を先行させる方向で検討を始めた。自営業者らの国民年金も含めたすべての制度の一元化には自営業者の所得把握などの課題があり、自民、公明両党が反対している。政府・民主党には完全一元化を将来課題として棚上げすることで、自民、公明両党を税と社会保障の一体改革の与野党協議に引き込む狙いがある。民主党は09年衆院選マニフェスト(政権公約)で三つの制度を一元化する「所得比例年金」の創設を盛り込んだ。
厚生、共済年金は所得に応じた保険料を支払うことや事業主と加入者本人が保険料を半分ずつ負担するなど仕組みが似ている。一方、国民年金の保険料は自営業者の所得把握が難しいため定額制で、全額自己負担。全制度の一元化は、自営業者の所得把握や事業主負担がない自営業者の保険料をどう扱うかという課題を抱えている。
このため、政府は社会保障改革案をまとめる際、当面の改革案として厚生、共済年金の先行一元化案の提示を検討。菅直人首相は8日の衆院予算委員会で「厚生、共済年金には官民格差が指摘されている」と述べ、給付水準の高い共済年金と厚生年金の統合で公平性を確保する必要性があるとの認識を示した。
民主党案のもう一つの柱である「全額税による最低保障年金創設」も、低年金・無年金者対策として明確にする。併せてパート労働者らの厚生年金加入拡大も打ち出す方針。これらは自民、公明両党の主張に沿っている。
ただ、厚生、共済年金の一元化やパート加入拡大は自公政権が07年に法案を提出したものの、民主党が「完全一元化以外は認めない」と突っぱね、09年に廃案になった経緯があり、野党の強い反発が予想される。また、2段階での一元化などは事実上の公約修正とも受け取れる。年金問題は政権交代の原動力となった看板政策だけに、党内外から批判が出る可能性がある。【山田夢留】