エジプト:ムバラク大統領、首都脱出 国内保養地に

2011年2月11日 23時25分 更新:2月12日 1時40分

 【カイロ伊藤智永】エジプトのムバラク大統領(82)は11日、家族とともに首都カイロの大統領宮殿を離れ、同国東部の保養地シャルムエルシェイクに到着した。AFP通信など複数のメディアが伝えた。ムバラク氏はこれに先立ち10日深夜(日本時間11日早朝)に国営テレビで演説、即時辞任を拒否し、9月の次期大統領選まで大統領職にとどまると明言。憲法に基づきスレイマン副大統領に大統領権限を移譲する考えも表明した。首都を離れて国政の第一線から退く意向とみられるが、反政府勢力はあくまで即時辞任を求めており、各地の大規模デモが収束する可能性は低い。

 ◇即時退陣を拒否

 ムバラク氏は10日夜の演説で、政権内にも広がっていた即時退陣論を拒否し、9月の次期大統領選で平和的な権力移行を実現するまで大統領職にとどまると表明。次期大統領選への不出馬を確認した上で、「外国の圧力には屈しない」と即時退陣論を退け、憲法改正や情勢安定後の非常事態宣言解除など権力移行のための民主化に向けた努力を強調した。

 ムバラク氏は「市民の要求は正当だ」とも語り、デモでの犠牲者と遺族に哀悼の意を表明した。また「私はこの国で生まれ、この国で死ぬ」と国外脱出の可能性を否定した。

 直後にスレイマン副大統領も演説。「変革は始まった」として権力移行を主導すると表明。「対話の扉は開かれている」と野党勢力との協議継続を約束し、デモの参加者に「帰宅して職場に復帰しよう」と呼び掛けた。

 10日夜にムバラク氏の緊急演説が予告されると、カイロのタハリール広場には、深夜にもかかわらず家族連れや女性だけのグループなどこれまでより幅広い層の市民が集結。退陣表明を期待して広場に集まった過去最多とみられる数十万人の市民は、ムバラク氏の演説が終わると「辞めろ、辞めろ」などと怒りの声を上げた。

 11日に再開された金曜礼拝後のデモでは即時退陣要求が一層激しさを増し、AFP通信によると全土で100万人以上が参加。即時退陣を求めるカイロでのデモはタハリール広場のみならず大統領宮殿周辺にまで広がった。

 ムバラク氏の演説を受け、動向が注目されていた軍は11日午前、最高評議会を開催。終了後に声明を発表し、副大統領への権限移譲や憲法改正といったムバラク氏の取り組みを支持する方針を明らかにした。「現在の状態が終わること」を条件に、30年前に発令されたままの非常事態宣言の解除も約束した。

 【ことば】シャルムエルシェイク

 シナイ半島の南部にあるエジプト国内有数の保養地。紅海でのスキューバダイビングなどを楽しむ欧米や日本の観光客らに人気がある。半島の先端にあり治安管理が容易なことから、ムバラク大統領もたびたび保養に訪れている。一方、中東和平を巡る首脳会議などさまざまな国際会議の開催地としても有名。また、05年7月には80人以上が犠牲となる爆破テロが発生した。

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