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【経済】

復興へ「禁じ手」浮上 閣僚ら火消し躍起

2011年4月2日 朝刊

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 東日本大震災の復興財源を確保するため、与党内で日銀が国債を直接引き受ける案が浮上している。だが、国債の日銀引き受けが戦前に行われた際には、通貨の増発により急激なインフレを招いた経緯がある。そのため、閣僚らは一日、この「禁じ手」の火消しに躍起となった。 (桐山純平)

 「政府が検討している事実はない」。野田佳彦財務相は会見で、国債の日銀引き受けをきっぱりと否定した。前日の国債市場では、この与党案が伝わると、財政規律の崩壊懸念で国債価格が急落。野田財務相は「市場がどう見ているかは一目瞭然だ」と語気を強めた。与謝野馨経済財政担当相も嫌悪感を示し、「政府と日銀は信認を失う」と持論を述べた。

 国債の日銀引き受けが与党内で台頭する背景には、三月末の国債残高が六百四十二兆円に達した厳しい財政事情がある。そのため、日銀が政府の言いなりに国債を直接買って紙幣を刷れば、復興財源を簡単に賄えるという算段だ。

 ただ、国債の直接引き受けで日銀が安易に通貨を増発すると、世の中でのお金の流通量も増え、インフレなど多くの弊害を生む恐れがある。

 実際、昭和恐慌の一九三〇年代に、高橋是清蔵相の元で、日銀引き受けが実施されたところ、国債増発と軍事費の膨張で財政規律が緩む契機となり、終戦後には急激に物価が上昇するハイパーインフレに陥っている。

 通貨としての円の信認低下や、金利の上昇(国債価格の下落)も招きかねない。財務省幹部は「日銀引き受けをやれば、逆に市場で国債が売れないと思われる」と懸念する。

 日銀は今でも金融市場から国債を購入しているが、金融機関への資金供給が目的で、政府にお金は流れない。一方、国債を直接引き受けるようになると、日銀は政府の“財布”となってしまう。

 日銀が政府の財源になることについては、金融市場でも急速に懸念が広がっている。BNPパリバの河野龍太郎氏は「異例な対応が、いつの間にか恒常的な政策となるのが歴史の常。財政危機を自ら招く」と警告する。

 

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