こんにちは。
ご無沙汰していました。
引っ越しやらバタバタして、更新が滞っておりました。
(メインブログのほうもやっと更新しましたので是非)
4月1日から新社会人になりましたが、頻度は下がっても、きちんと更新を続けていきたいと思います。
今日は、第二回「韻とダジャレの違い」を書くという約束でした。
さて、韻とダジャレで異なる点がもうひとつあるとすれば、それは、
「韻は、音に乗せることによって、長音・促音・撥音をごまかすことができる」
という点です。
こういうと難しく聞こえてしまうかもしれませんが、要するに、「ー」「っ」「ん」に関しては、都合で、カウントしてもしなくてもよいですよ、という話です。
考えてみれば当たり前で、「ー」「っ」「ん」は母音ではありません。
日本語の「ひらがな」で、母音を持たないものなんて、この3つぐらいしかないわけです。
ラップはアメリカから輸入された音楽です。
(英語における韻についてはまた後日解説します)
英語では母音の存在するところにしかアクセントは来得ないし、音楽でも、母音の存在しないところで音を取ることはありませんよね。
「ー」「っ」「ん」は、英語なら「r」とか、「tt」とか、「n」とか表わされるべき部分です。
全部、母音ではありません。
脱線しますが、KREVAという今日本で一番売れているラッパーがいますが、「ク」にアクセントを置いてク(↑)レ(↓)バと発音するのが一般的になっていますよね。
僕はあれは違和感があるんです。
KとRとの間に母音は存在していません。
ここにアクセントは来得ないでしょう。
(塾講師のバイトで英語の先生をしていたときに、fluentという単語をフ(↑)ル(↓)エントと発音する生徒に、「 f と l の間に母音はないから!そこに絶対アクセントは来ないから!」と教えていたことを思い出します)
KREVAという名前は英単語cleverが語源ですし、本人も、カンケリの最後の部分(この曲の4:20あたり)ではク(↓)レ(↑)バと発音していますし、そう呼ばれたいはずなのです。
まぁ、話が逸れたので戻しますね。
要するに、「ー」「っ」「ん」はカウントしてもしなくてもいい、つまり、「ツイッター」は、「ついた」とみなしても良いということです。
つまり母音は「ういあ」である、と。
以前解説した(こちら)、「一兎追うものはいいと思う」の僕のヴァースでもう一度解説すると、
「あいえあいえ」
アシメなヒゲ 「あいえあいえ」
まじめな意見 「あいえあいえん」(←「ん」を無視)
勝ち目ないって 「あいえあいっえ」(←「っ」を無視)
味気ないぜ 「あいえあいえ」
はじめは危険 「あいえあいえん」(←「ん」を無視)
「あんいあんい」
ばんじーじゃんぴん 「あんいーあんいん」(←「ー」と、2つめの「ん」を無視)
半信半疑 「あんいんあんい」(←「ん」を無視)
短期間に 「あんいあんい」
アンチ暗記 「あんいあんい」
後半の「あんいあんい」は、都合で、「ん」を韻にカウントしたりしてなかったりしていますよね。
このように、カウントしたいときは別に、してもいい。融通が利くわけです。
ちょうど先ほどKREVAの話をしたので、KREVAのリリック(歌詞)からも引用しましょうか。
KICK THE CAN CREW 時代の、「スーパーオリジナル」という曲です。
出口がどこか分かんねえのに
カテゴリーにはまる奴 断然多い
自分じゃない他のみんな 反面教師にして
目指せ本物の one and only
いつもの母音分析表は以下の通りです。
【あ】 | 【え】 | 【お】 | 【い】 |
かん | ねえ | の | に |
カ | テ | ゴ | リー |
断(だん) | 然(ぜん) | 多(おー) | い |
半(はん) | 面(めん) | 教(きょー) | 師(し) |
one(わん) | and(えん) | on(おん) | ly(りー) |
一番売れてるラッパーのリリックを分析するなんて恐れ多いですが、あくまでも、普通の人よりは韻を理解している立場から説明しますね。
前に分析した、
でいうところの、「⑤韻を構成する品詞や言語が多様である」が、とにかくすごいです、このリリックは。
「分かんねえのに」 → 動詞(分かる)+文末に助詞など
「カテゴリー」 → そもそも外来語
「断然多い」 → 副詞(断然)+形容詞(多い)
「反面教師」 → 名詞(反面教師)
「one and only」 → そもそも英語
※ここで「外来語」と「英語」で呼び方を区別したのは、「外来語でカタカナ日本語」と「英語表記」は、発音の仕方が異なるためです。上の例で言うと、英語表記の「and」の「d」は母音としてカウントする必要はありません。でも日本語にして「アンド」とか「エンド」とかしてしまうと、「ド」をひとつの母音としてカウントしなければならず、そこでひとつ音を取る必要があります。
※そうそう、この話で思い出すのが、例えば、木村カエラの「Magic Music」という曲では、曲全体を通じて英語が多く出てくるのですが、「高く高くJUMPして」の「JUMP」だけ、すべて大文字表記になっています。これは、ここだけ母音の存在し得ない「プ」の音で明確にひとつ音を取っているからだと思います。(ただそうすると、今度は冒頭の「Perfectな」の「t」が気になってきてしまうのですが・・・まぁそんな細かいことはいいですか)
はい、また話がめちゃくちゃ反れましたが、このリリックにおいては、品詞・言語の多様性がこの上なく達成されています。
そして、何よりも、歌詞の意味が「スーパーオリジナル」という曲のコンセプト(「世界でひとつだけの花」的な感じ)に合致し過ぎていることが素晴らしいと思います。メッセージ性抜群です。
なかなか、韻とメッセージ性を両立させるのは難しいんですよね。
さて、この流れで、上の例の「あえおい」に、続けて韻を踏むとしたら、意味を無視していいなら以下のような言葉たちが候補に挙がりますね。
【当然ですが、そのまま母音が「あえおい」になっている例】
掛け持ち (あえおい)
晴れ時 (あえおい)
などに加えて、
【「っ」「ん」「ー」を無視できる例】
影法師 (あえおーい)
買ってこい (あっえおい)
ハンデ持ち (あんえおい)
完全放置 (あんえんおーい)
3年浪人 (あんえんおーいん)
カレーの日 (あえーおい)
完成後に (あんえーおい)
安全装置 (あんえんおーい)
合点承知 (あっえんおーい)
Monday morning (あんえーおーいん)
などなど、挙げ始めたらキリがないですが、すべて上の( )内から「っ」「ん」「ー」を取り除けば「あえおい」になることがわかるかと思います。
(実際にリズムに合わせてみるとしっくりくるかと思います)
こういうのも候補として挙がってくるわけです。
※ちなみに、KREVAのリリックの最初にあった「分かんねえのに」のように、文節の途中から踏み始める(つまり「わ」は関係なくその後の母音だけが意味を持つ)という例も往々にしてあります。
これを許容して例を挙げるならば、
流れ星 (<あ>あえおい)
鞄へポイ (<あ>あんえおい)
選んでもいい? (<え>あんえおいー)
納め時 (<お>あえおい)
というように、< >内の母音以降すべて「あえおい」で踏む、ということもでき、こうすればさらに選択肢は広がりますね。
スマートフォンの普及に伴い、今後は、韻を勝手に踏んでくれるアプリなど、どんどん出てくるのかなーと思います。
それが喜ばしいことかどうかは別にして、どうせ作るなら、こういうことも考慮したアルゴリズムにしてもらわないと困ります、という話でした。