2011年4月4日9時43分
福島第一原発の事故の影響で避難を余儀なくされている福島県の自治体で、住民の「情報格差」が目立ち始めている。住民と集団移転して情報を共有していこうとする自治体がある一方で、「生活情報が届かない」と住民から不満を持たれる自治体もある。
福島県会津若松市の東山温泉。3日夕、第一原発1〜4号機がある大熊町の町民1千人近くが、バスと自家用車で次々と到着した。町は5日に役場機能を同市に移す予定。県によると、県内の自治体で、役場が住民とともに移る「集団移転」は、埼玉県に移転した双葉町に次いで2例目だ。
役場機能は市の分庁舎に置かれる。町民は、仮設住宅ができるまでの約4カ月間、市内と周辺にある旅館などの宿泊施設約80カ所に入居する。
「町の広報だけが頼り。独り暮らしなので、職員が近くにいることが何より心強い」。佐藤守亮(もりあき)さん(58)は、この日に移転した一人。20年以上原発の作業員をしてきたが、昨年6月に狭心症を患い、今は無職だ。同じ薬が手に入るか心配だったが、町の職員が市内の宿泊施設近くの薬局を調べてくれたと感謝する。
渡辺利綱町長は、約100キロ離れた会津若松市を移転先に選んだことについて「町立小中学校3校の子どもが通える空き校舎や病院があり、日用品も手に入りやすい」と説明。「復興に向けた情報を提供するには、町民と近い場所にいるのが最善」と集団移転の理由を語る。町は、生活情報を発信するブログも立ち上げた。「仕事などで会津若松に来ることができない町民にも情報を提供する」としている。
大熊町の北にあり、原発から役場まで約10キロの浪江町。町は、隣接する二本松市東和支所に役場機能を移した。だが、人口は大熊町の倍近く。町民の多くが身を寄せる避難所も福島市、郡山市など広範囲に散らばっていることから、情報伝達に苦労している。