毎日新聞は2、3両日、統一地方選前半戦のうち、民主、自民両党の対決型となった3知事選と2政令市長選について、電話による調査を実施し、取材を加味して各選挙の中盤情勢を分析した。首都・東京都では4選を目指す現職の石原慎太郎氏(78)が安定した戦いを展開。民主、社民、国民新各党の推薦する現職が優位な札幌市などを除き、自民党系候補が先行している。ただ、投票先を「まだ決めていない」人が36~59%に上り、10日の投票日までに情勢が流動する可能性もある。
今回の統一選では東日本大震災に伴い選挙運動の自粛ムードが広がり、知名度のある現職が優位な戦いを進める。東京都、北海道、札幌市の3首長選で、現職が幅広い支持を獲得。新人同士の争いとなった三重県知事選は自民、みんなの党推薦の候補が優勢。広島市長選は自民、公明両党推薦候補と民主党系候補が競り合う展開だ。
東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発の事故を受け、原発の是非が各地で争点に浮上している。中部電力の原発候補地として挙がっている三重県では、6割が「反対」と回答。原発を抱える北海道では、原発利用について「現状維持」(46%)と「脱原発」(40%)が拮抗(きっこう)し、「増設」は7%にとどまった。
統一選前半戦は、12都道県知事選、4政令市長選、41道府県議選、15政令市議選が10日に投開票される。【笈田直樹】
◆東京
東京都知事選は、「3期で引退」を翻し3月11日に出馬表明した石原慎太郎氏(78)がリード。東日本大震災の発生を受け、公務を優先し、街頭演説などの選挙運動をほとんど行っていないが、知事与党の自民支持層の7割弱、公明支持層の半数を固めた。民主支持層の3割近く、無党派層からも3割を上回る支持を集めている。
出馬表明が告示2日前となった前宮崎県知事の東国原英夫氏(53)は、20~30代の支持を多く集めているが、戦略の柱に据える無党派層の支持が2割弱と伸び悩む。若さと行動力をアピールした運動で、追い上げを図る。
ワタミ創業者の渡辺美樹氏(51)は、都議会民主の支援を受けているが、会派の方針決定が告示前日と遅かったことも響き民主支持層の3割弱しか固めていない。無党派層の支持も1割強にとどまる。
小池晃氏(50)は推薦を受けた共産支持層の6割弱、社民支持層の7割弱を固めたが、無党派層の支持が広がっていない。【石川隆宣】
◆三重
鈴木英敬氏(36)=自民、みんな推薦=がやや先行し、松田直久氏(56)=民主推薦=が追い上げている。鈴木氏は自民支持層の6割強、みんな支持層の7割強を固めた。松田氏は民主支持層の6割強を固めた。岡野恵美氏(58)=共産推薦=は無党派層への広がりを欠く。【田中功一】
◆北海道
3選を狙う現職の高橋はるみ氏(57)=自民推薦=は自民、公明支持層の8割を固めた。無党派層の過半数からも支持を得て大きく先行。元農林水産省職員の木村俊昭氏(50)=民主、社民、国民新推薦=は民主支持層の5割弱しか固めていない。前道議会副議長の鰹谷忠氏(60)は地域政党・新党大地から一定の支持。共産党道常任委員の宮内聡氏(48)=共産推薦=は共産の6割を固めた。【岸川弘明】
◆札幌市
3選を目指す上田文雄氏(62)=民主、社民、国民新推薦=が民主支持層の8割を固めたほか、無党派層の半数に浸透するなど優位な戦い。元総務省自治大学校研究部長の本間奈々氏(41)=自民推薦=は、自民支持層の5割弱しか固め切れていない。【鈴木勝一】
◆広島市
松井一実氏(58)=自民、公明推薦=と民主、社民両党県連の支援を受ける豊田麻子氏(45)が競り合い、大原邦夫氏(61)が追う。松井氏は自民支持層の4割強をまとめ、豊田氏も民主、社民両支持層の3割前後を固めた。桑田恭子氏(49)は無党派層へ浸透を図り、大西理氏(45)は共産支持層の7割強をまとめた。前島修氏(37)も支持を訴える。【寺岡俊】
統一地方選で与野党対決型となった首長選の中盤情勢は、東日本大震災を受け民主、自民両党で再燃した「大連立」の行方にも影響を与えそうだ。選挙戦に手ごたえを強める自民党では「菅直人首相の退陣が大連立の条件」という強硬論が勢いを増している。一方、民主党は「支持率が低迷した大震災前と、状況が変わっていない」(選対幹部)とショックを隠せない。
自民党の石破茂政調会長は3日、中盤情勢について「自民党への期待は着実に高まっている」と評価した。自民優位の選挙情勢を見る限り、震災後も民主党の党勢は十分回復しておらず、閣僚経験者は「菅首相との大連立にブレーキがかかる」との見方を示した。
民主党の安住淳国対委員長は1日、11年度第1次補正予算案編成を巡り、自民党の逢沢一郎国対委員長に「自民、公明両党も一緒にやってほしい」と呼びかけた。補正編成段階から野党を巻き込み、将来の大連立につなげる狙いがあった。
しかし、自民党には大連立への積極、慎重両論が混在し、与野党が対決する24日の統一選第2ラウンド終了までは表立った動きがとりにくい。選挙の結果次第では大連立慎重派が勢いづき、「谷垣禎一総裁を首相にしない限り、乗れない」(幹部)とハードルを上げる可能性もある。
一方、民主党は「岡田克也幹事長の地元の三重県知事選で負けるようなら政権への影響は大きい」(幹部)と危機感を強める。岡田氏は3日、福島市内で記者団に「こういう状況で首相を代えることはあり得ない」と退陣論をけん制したが、小沢一郎元代表のグループからは統一選後をにらみ、首相責任論が強まっている。【野口武則、野原大輔】
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◆知事選立候補者(届け出順)
鰹谷忠 (かつや・ただし) 60 [元]道副議長 無新
宮内聡 (みやうち・さとし)48 共産党道委員 無新=[共]
高橋はるみ(たかはし・はるみ)57 [元]道経産局長(2)無現=[自]
木村俊昭 (きむら・としあき)50 [元]農水省職員 無新=[民][社][国]
谷山雄二朗 (たにやま・ゆうじろう) 38 映画監督 無新
古川圭吾 (ふるかわ・けいご) 41 会社役員 無新
渡辺美樹 (わたなべ・みき) 51 飲食店創業者 無新
石原慎太郎 (いしはら・しんたろう) 78 作家 (3)無現
ドクター・中松(どくたー・なかまつ) 82 国際創造学者 無新
マック赤坂 (まっく・あかさか) 62 政治団体代表 諸新
東国原英夫 (ひがしこくばる・ひでお)53 [元]宮崎県知事 無新
小池晃 (こいけ・あきら) 50 [元]参院議員 無新=[共]姫治けんじ (ひめじ・けんじ) 59 政治団体代表 諸新
雄上統 (おがみ・おさむ) 69 政治団体代表 諸新
杉田健 (すぎた・たけし) 43 政治団体代表 諸新
松田直久(まつだ・なおひさ)56 [元]津市長 無新=[民]
岡野恵美(おかの・えみ) 58 共産党県委員 無新=[共]
鈴木英敬(すずき・えいけい)36 [元]経産省職員 無新=[自][み]
◆政令市長選立候補者(届け出順)
上田文雄(うえだ・ふみお)62 弁護士 (2)無現=[民][社][国]
本間奈々(ほんま・なな) 41 [元]総務省職員 無新=[自]
大原邦夫(おおはら・くにお)61 [元]市議 無新
大西理 (おおにし・おさむ)45 党県役員 共新
豊田麻子(とよだ・あさこ) 45 [元]副市長 無新
桑田恭子(くわた・きょうこ)49 [元]市議 無新
松井一実(まつい・かずみ) 58 [元]中労委局長 無新=[自][公]
前島修 (まえしま・おさむ)37 会社員 無新
<立候補者一覧の見方>
左から▽氏名▽年齢(投票日の10日現在)▽職業・肩書([元]は前職を含む)▽当選回数(()数字)▽政党▽現元新の別。=以下の[]文字は推薦・支持政党。民[民]=民主▽自[自]=自民▽公[公]=公明▽共[共]=共産▽社[社]=社民▽み[み]=みんな▽国[国]=国民▽諸=諸派▽無=無所属
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3知事選・2政令市長選の世論調査は2、3日の2日間、コンピューターで無作為に選んだ電話番号にかける方法で実施。それぞれ次の人数の回答を得た。カッコ内は調査対象とした有権者のいる世帯数。北海道1023人(1537世帯)▽東京1061人(1501世帯)▽三重984人(1524世帯)▽札幌538人(737世帯)▽広島555人(822世帯)。
毎日新聞 2011年4月4日 東京朝刊