エジプト:デモが激化 スエズ運河の通行にも影響か

2011年2月10日 21時26分 更新:2月10日 23時34分

 【カイロ和田浩明】大規模な反ムバラク政権デモが続くエジプト各地で、労働者の抗議活動も激化し始めた。スエズ運河の関係企業の従業員も参加しており深刻化すれば世界経済に影響が生じる可能性もある。政権側はデモ参加者に中止を強硬に求めるが、ムバラク大統領即時退陣をあくまで求めるデモ隊側は、11日を「対決の日」と名付けて大規模動員する構えだ。デモはさらなる拡大・長期化が避けられなくなった。

 運河を管理する運河庁の労働組合関係者によると、北部スエズで同庁関連の小型船舶修理業務を行う企業の労働者約1000人が8日から同社で座り込みを始め10日も継続している。同庁によると船舶運航には支障は出ていないが、全世界の原油生産量の約4%が同運河と並走するパイプラインを通過しており、影響が懸念される。

 地元メディアによると労働者デモは8~10日にかけ国営の電話会社、鉄鋼会社、繊維会社、鉄道会社や民間企業の従業員らが実施。AFP通信によると、10日にはアレクサンドリアなど北部地中海沿岸と東部紅海沿岸の複数の都市で、計数千人の公務員がストライキを起こした。また、ナイル川デルタ地帯で2万4000人が勤務するエジプト最大の繊維工場で従業員が工場に鍵をかけてストに入り、反大統領派デモ隊に連帯の意思を示した。AP通信によるとカイロでも同日、バスの運転手や白衣姿の医師、法衣姿の弁護士ら数千人がデモに加わった。

 北部ポートサイドの地元記者によると、住宅供給を求める住民約3000人が9日、県庁などに放火した。南西部ハルガでは8日、住民と衝突した警官が発砲。先週以来、5人が死亡した。

 デモやストが激化する背景には、ムバラク政権や既成勢力への不信感が根強く、与野党の政権移行への話し合いが進展しないことへのいら立ちがある。

 政権側は危機感を強め、アブルゲイト外相は9日放映のインタビューで混乱が悪化すれば「軍介入の可能性がある」とけん制した。

 野党の左派・国民進歩統一党は10日、憲法改正などに向けた政府との対話から離脱すると発表した。政府との対話から離脱した野党勢力は初めて。

 デモの中心となっているカイロのタハリール広場では10日、数万人が集結した。

 ◇いら立つ政権「軍介入」威嚇

 デモやスト続発に政権側はいら立つ。アブルゲイト外相は9日放映のインタビューで混乱が悪化すれば「国軍介入の可能性がある」と述べけん制した。

 反政府デモの中心であるカイロのタハリール広場には10日も数万人が集まる。デモ組織団体の一つ「4月6日運動」は「強制排除情報がある」と警戒中だ。

 1月25日からの反政府デモでの死者数は、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると300人に達したが、当局側は「不正確」としている。

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