高速無料化実験:財政難で新設は6区間 政権公約ほど遠く

2011年2月9日 20時58分 更新:2月10日 0時0分

高速道路の無料化社会実験が始まり、通行料0円で料金所を通過する車もあった=京都府福知山市の舞鶴若狭道福知山ICで2010年6月28日、宮間俊樹撮影
高速道路の無料化社会実験が始まり、通行料0円で料金所を通過する車もあった=京都府福知山市の舞鶴若狭道福知山ICで2010年6月28日、宮間俊樹撮影

 国土交通省は9日、民主党の国土交通部門会議で、11年度の高速無料化社会実験の計画案を提示し、了承された。全車種で終日実施する無料化は、現行の全国50区間(約1650キロ)に加え、6月から新たに6区間約330キロを追加。また深夜・早朝のトラック(中型車以上)も5区間約1500キロで、6~12月の間新たに無料化する。財政難から全車種対象の追加は総延長の約4%どまりと、民主党がマニフェストでかかげる「原則無料化」にはほど遠い内容で、公約見直しは避けられない状況だ。【寺田剛、高橋昌紀】

 民主は当初、完全実施に必要な財源を1兆3000億円と見積もり、10年度は1000億円(6月以降の10カ月分)を計上し、13年まで段階的に予算額を増やす計画だった。

 だが、10年度の対象区間が総延長の約20%どまりと一般ドライバーのメリットが限定的だったこともあり、世論の支持は得られず政府が昨年11月実施した政策コンテストのパブリックコメントでは「必要な事業と思わない」との回答が8割超。11年度の予算額は1200億円にとどまった。

 一方で与党議員からは今春の統一地方選を前に対象区間拡大を求める声が根強く、国交省は実施区間の再考を迫られた。終日無料化の追加区間はいずれも実験中の路線と接しており、自動料金収受システム(ETC)搭載の有無は問わない。

 トラックの深夜・早朝無料化も、物流業界への配慮を求める与党の要望を受けて実施が決まった。実施は午後10時から翌朝午前6時までで、ETC搭載車限定。財源不足で期間は12月までだが、全日本トラック協会は「高速道の利用が進めば交通事故削減、ドライバーの労働環境改善につながる」と歓迎する。

 国交省が発表した昨年12月までの社会実験の検証結果によると、対象区間の交通量は実施前に比べ平日、休日計で1・96倍に増えた一方、並行する一般道の交通量は平均で18%減少した。だが、他の公共交通機関への悪影響が出た路線も多い。その上で新たなトラック優遇策が導入されることについては、日本長距離フェリー協会は「コスト削減努力を続けてきたが、税金でさらに顧客を奪われてはかなわない」と不満の声も上がっている。

 残る約8割の有料区間について国交省は4月から、普通車で現行の休日1000円に加え、平日上限2000円とするなど、割引を大幅拡大する新料金制度の導入を目指している。旧自民党政権が18年度までの10年分として確保した約2・5兆円の割引財源を、今後2~3年で使い切る計算で、その後の料金制度は示されていない。

 高速道路問題に詳しいPHP総研の松野由希特任研究員は、「無料化実験で渋滞緩和を検証しつつ、上限制の新料金制度で渋滞を引き起こしかねず、政策に一貫性がない」と批判する。

 池口修次副国交相は9日の部門会議終了後の会見で「来年以降も財源を確保し対象区間の恒久無料化を目指す」と述べたが、財政難から与党内にも見直し論が出ており、継続実施は困難な情勢。公約の完全実施などとてもおぼつかない状態だ。

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