被災者の生活保護に難色 避難先のさいたま市東日本大震災と福島第1原発事故に見舞われた福島県の被災者が避難先のさいたま市で生活保護を申請した際、「避難所で食事や住居が足りている」「生命保険に加入している」などの理由で支給に難色を示されるケースが相次いでいることが3日、分かった。 厚生労働省は震災後、生活に困っている被災者には迅速に支給決定するよう通知したが、県境を越える被災者が相次ぎ、避難先が全国に広がる中「通知が現場に周知徹底されず、必要な人に支給されない恐れがある」との声が上がっている。 生活保護の申請時には原則として、車や生命保険などの資産は処分するよう自治体が指導する。厚労省は今回、被害の甚大さや原発事故で多くの人が自宅に帰れない事態を受け、3月17日と29日に通知を出し、被災地に残してきた資産は「処分できない資産」と扱って配慮するよう指導。避難所の人も保護対象とし、資産を処分できない人には将来処分してもらう可能性を説明して速やかに支給するよう求めた。 だが埼玉弁護士会の今村貞志弁護士によると、3月28日、福島県いわき市から避難した30代の男性の申請で、さいたま市の福祉事務所を訪ねると、担当者は「避難所では食事も出る。最低限の食住は足りていて、保護費が算定できない可能性がある」と話した。 さらに「生活保護を受けると(災害救助法などに基づく)他の支援策を受けられないかもしれない」とも言われた。 男性は自宅が半壊し、職場も被災して仕事復帰のめどは立たない。幼い娘のため、まずは家を見つけたかったが「デメリットが多そう」と感じて申請を見送った。 今村弁護士は「国の通知が徹底されず、現場が混乱している」と指摘。埼玉県社会福祉課は「現場がそのような対応をしているとは把握していない。今後、速やかな支給を促す」としている。 1995年の阪神大震災では、避難所で暮らす人の生活保護申請が「災害救助法で食事と避難場所が無償提供されている」などの理由で門前払いされるケースが相次いだ。このため、厚労省は2004年の新潟県中越地震以降、避難所の人も対象とするよう自治体を指導。今回、あらためて通知で周知した。 【共同通信】
|