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[26835] 【酷いネタ】燃えてますよ、ゼットンさん【やりたい放題】(禁書二次)
Name: オヤジ3◆aaab139d ID:a3d7bf23
Date: 2011/03/31 20:17
注意:過労とストレスと睡眠不足で、作者が壊れているよ。
   必然的に、キャラも話も壊れているよ。
   例によって例の如く、オリキャラものだよ。いいかげんやめればいいのにね
   そして短いよ。死ねばいいのに。まあネタだからね、生温かい目で見てやってくれ。
   こんなもん書いてる暇があったら、とっとと本業を仕上げないとね。でも、だからこそこんなものを書いてしまうんだよ。
   ていうかこれ、禁書ってか超電磁砲二次だよね。ちなみに漫画版準拠だよ。

   それでは……おk?



















 学園都市。

 内部事情説明は全略。

 ようするに、かっちょいい近未来都市だ。

 そんなかっちょい(以下略)に住む学生の一人、横井正一には、海より深く山より高い悩みがあった。
 それは。



「よう、ゼットン! 小腹空いたし、飯食いにいかねぇ!?」

「ピポポポポポポ……って、やらせんなやボケがぁ!」



 ──あだ名が、「ゼットン」であることだ。



 夕刻。夏も近づいてきており、まだ日は高く登っているものの、少し涼しくなってきた時間帯。
 日本と祖国では名前の違うマスコットがいるファーストフード店で小腹を満たした正一とその友人は、ぶらぶらと第七学区の繁華街を歩いていた。

「ふいー食った食った。なあゼットン、次ゲーセン行こうぜゲーセン。俺、今ならワンコインクリア出来そうな気がするんだ……ダブルドラゴン」

「だからゼットン言うなし。それと、それなんだよ。知らねえよそんな古いゲーム、っていうか生き残ってんのかそれ、むしろやったことのあるおまえ凄いわ」

「ふっ……ただのゆとりではないのだよ、ただのゆとりではなあ!」

 ちなみに作者は、ミスフルでネタとして見たことしかない。アーケード版稼働1987年とか、まだ生まれとらんわ! こちとら平成ベビーゆとり教育直撃世代じゃい!
 ていうか、そんなネタ使うなとゆーツッコミはNGでお願いします。

「てーか、どっちにしろダメだ。とっとと家に帰って寝たい」

「うぇー、なんでだよ付き合い悪ぃーなぁゼットン。おまえそんないい子ちゃんだったか?」

「無気力症候群が美徳かどうかは置いといて、だ。……最近、うるさいからな。面倒に巻き込まれたくないんだよ」

「あー……うん、なるへそ。“アレ”、ね」

 まったくおまえも大変だよなぁ、と、友人一号(本名。ちなみに読みは“トモビト アタマ”)は頷きながら、ボリボリと頭を掻く。
 一号は、正一に同情の視線を向けた。

「“連続発火強盗”、だっけ? まだ捕まってないのアレ?」

「まーだまだ。風紀委員と警備員が駆けずりまわってんだけどねぇ、どーも最近暑くて頭が湧いちゃったおバカさんが多いみたいで、手数が足りてないめたいだよ? おかげでこっちにまで疑惑の視線が向いて来てさ、メンドっちくてやになるよホント」

「うっへ、俺レベル1で良かったぁ。妙な事件が起こってもさ、どーせスキルアウトかレベル2、3あたりの仕業だろってんで、こっちにゃ矛先向かねえからねぇ。……てか、おまえにつっかかってきてるのって例の“アレ”だろ?」

「そ、“アレ”。──ったく、めんどくさいったらありゃしな──」

「あああああああああああああああああああああああっ!」

「──い……」

 正一の言葉を遮るかのように、つんざくような女性の声が響き渡る。
 その声を聞いた正一と一号は互いに顔を見合わせると、形容しようのない、とりあえずいやそうであることは分かる表情をした。

 具体的に言うと、半開きにした口をスタンダードポジションから気持ち右下方向へと引っ張り、左目をちょっと開く。目は地面に向けてこの世の全てを呪うかのような視線を向け、左眉をちょっと上げる。そのまま首を右に30度ほど傾ければ、とっても気持ちの悪い顔の完成だ。百年の恋も醒める。

「ほーほっほ、ここで会ったが百年目! 大人しくお縄に……」

「おい、出たよ」

「出たなあ。ところで一号、折り言って相談があるんだが」

「……え、あ、ちょ、その……」

「なに?」

「レベル4のテレポーターから逃げる方法について、なんかいい案あるか?」

「ちょ、ちょっと……」

「ない」

「ですよねー」

「ちょっと、無視しないでくださる!? そこの末期ピーターパン症候群患者! 社会生活不適応者! ニート! ゼットン!」

「ちょっと待てやっぱゼットンは蔑称かあああああああああああああああっ!?」

 わりと遠くからずかずかと歩いてきたツインテールの少女の暴言は、正一の心を深く傷つけた。ガラスのハートを粉々にされた彼は、地面に座りこんでめそめそ泣きながらのの字を書く。
 なにが悲しいって、女の子にそんなこと言われたのが悲しいのだ。それも、わりと美少女に。

「あいかわらずの心の弱さですわアナタ……ホントに殿方ですの? その根性の無さ、レベル5級ですわよ……?」

「う、ぐすっ……うるさいやいうるさいやい、おまえみたいな性悪女に思春期男子の繊細な心は分からねえよ……。ぐすっ、ことあるごとに、人のことゼットンゼットンって……そんなに俺はゼットンかよ!?」

「そうだそうだ! こいつ、これでも結構気にするタイプなんだぞ! 外出する時に家のコンロの火消したかどうか気になって、もう鍵かけたのにわざわざ戻って確認を三回以上繰り返しちまうくらい繊細なんだ! そんなこいつゼットン呼ばわりするなんて……なんて非道!」

「や、お前にそれを言う資格はない」

「はあ……どうしましょう。声をかけたことをものの数秒で後悔してしまうウザさですわね……」

「黒子ー? どうしたの?」

「白井さん、誰かいらっしゃたんですか……って、ゼットンさんと一号さんですか。お久しぶりです」

 順調にカオスってるところに、新たに二人の女子生徒がやってきた。ツインテールの少女、っていうかもう名前出てるのにめんどいな要するに黒子だよ、と同じ制服を着た茶色い短髪の(でも俺、あれは短髪じゃなくてセミロングだと思うんだ。まあここは公式標記準拠ってことで)少女と、別の制服を着た、頭に花飾りを乗せた少女。
 その二人を見た男連中は、よ、と軽く右手を上げつつ、挨拶をする。

「お、飾利ちゃん、と……誰? あ、でも、どっかで見たこと有るような……とりあえず始めまして」

「……や、あれだろ。“超電磁砲”だろうよ、どっからどう見ても。うわぁい、なんだかやな予感がびんびんしてきたなー……あとゼットン言うなや初春」

「……とりあえず、あんたがものっ凄い失礼な奴だってことは分かったわ……」

 バチ、という音と共に、茶髪の少女の体から火花が散る。どうやらかなりご立腹のご様子である。
 その様子を見た黒子は、慌てて彼女にストップをかけた。

「ちょ、ダメですのよお姉さま! こんな往来で、レベル5同士がぶつかればどうなるか……!」

「……ふぇ? 黒子、今──」



 ──ドガァァン!!



「ヨッシャ!! 引き上げるぞ急げ!」

「ウス!」

 近くにあった銀行のシャッターが突然爆発し、中から数人の男たちが姿を表した。男たちは全員覆面をしており、またその手には銀行から奪ったとおぼしき札束が満載の紙袋を持っている。平たく言えば、銀行強盗だ。
 彼らの姿を見た黒子と飾利は、それまでの少々抜けた顔をガラリと変えた。学園都市の治安維持の一端を担う風紀委員(ジャッジメント)、その一員である彼女らは、自分たちの仕事を果たすべく迅速に行動を開始する。

 黒子は風紀委員の腕章を握りしめ、男たちへと駆け出しつつ、他の皆へと指示を飛ばした。

「初春は怪我人の有無を確認」

「は、はい!」

「お姉さまと他二名は、そこにいてください」

「えー」

「言われなくてもそうするって、ね」

「てーか俺たち他二名かよ……」

「よし──“風紀委員”ですの! 器物破損および強盗の現行犯で──」

「……ねぇ」

「ん?」

 黒子と飾利が走っていくのを正一がぼうっと見ていると、茶髪の少女が話しかけてきた。

「なんだ? 超電磁砲」

「ちょっと、気になったんだけど……っていうか、私には御坂御琴って名前があんのよ。能力名で呼ぶとか、ちょっと失礼だと思わない?」

「あー……悪い、なんだ御坂」

 しまった、と罰の悪そうな顔で、正一は御琴に返事をする。正確に言えば、彼は超電磁砲の本名を知らなかった。一人歩きしていた能力名と容姿のみ知っていたので、つい自然と能力名で呼んでしまっていたのだ。
 そんな彼の事情を知ってか知らずか、それ以上その件を追求することもせず、御琴は正一に問いかける。

「さっき黒子、『こんな往来で、レベル5同士がぶつかれば──』って言ってたわよね。あれ、どういうこと?」

「ああ、あれか。まあそりゃ、どういうこともなにも……」

 正一の視界の中で、強盗犯の一人が、右手から炎を出した。超能力の一種、バイロキネシスだ。ポピュラーな能力の一種で、多数の能力者がいるが、彼の炎はその中でもかなりの火力を誇るだろう。
 だが、温い。横井正一は、そう判断する。あの程度の炎では、白井黒子は破れない。傷一つ、付けられない。

 そのことを理解して、しかし。
 彼は、一歩前に踏み出した。



「そういう、ことだろ」



 轟、という風と共に、正一の体から炎が伸びる。
 炎は発火能力者へと一直線に進み、“彼の周囲の酸素を燃やしつくした”。

 ほんの数瞬のこととは言え、突然酸素の無い状態に追い込まれた発火能力者は、完全に意識を刈り取られる。
 ばたり、と、彼はその場に崩れ落ちた。その様子を横目で確認しつつ、黒子は正一へと胡散臭い目を向ける。

「まったく……なんのつもりですの? この程度なら、無傷でいける相手ですわよ?」

「あー分かってる分かってる……んまあ、私怨5割好奇心5割、ってところかね。レベル3の強能力者って言うから少しは期待したんだが……残念、修行が足りなかったか。せめて、15秒は持って欲しかったな」

「この世の誰もが、あなたのような低燃費人間じゃありませんの……」

 はぁ、と疲れた表情を見せる黒子に苦笑いしてから、正一は御琴へと振りかえった。
 目を丸くして自分を見つめる彼女に、若干芝居がかった口調で正一は告げる。

「よう、御同輩。そういえば、自己紹介がまだだったな。俺の名前は、横井正一……能力は“最大火力(プラズマシューター)”。学園都市第八位の、超能力者だ」



 横井正一……学園都市に数多存在する発火能力者の頂点にして、レベル5。最大火力は1兆度。

 そう、それゆえに……彼のあだ名は、「ゼットン」。
























   なんだこれ。
   続きは未定。



[26835] 作者は上琴病。でもインデックスには上条さんの傍にいて欲しい。
Name: オヤジ3◆aaab139d ID:a3d7bf23
Date: 2011/04/02 03:25
≪当初の予定(ウソ)≫

「エロイムエッサイム、なんちゃらかんちゃら、ふふふーんふっふふー、ふふふー、ふふふーふふっふ、ふもっふもっふる、マーべラスエン・た・テイメンツ、なんっちゃ~ら的ななにか、及び不思議の輪、うんちゃら~んむぅ」

\ゼット~ン/

「呼んだ?」

「うん。ちょっとムカツクから、学園都市統括理事長消しちゃって」

「了解した。で、生贄は?」

「ホレ、魔法陣の上」

「ちょ、おま、またザクの足かよ!」





 ど う し て こ う な っ た し 。





◆(本編、は~じま~るよ~ cv.ソフトーク女性音声1)

 横井正一は、レベル5の超能力者だ。能力は「最大火力(プラズマシューター)」。一兆度までの炎を生みだす、学園都市最強の発火能力者である。
 本来ならば第一位をも余裕で凌ぐ攻撃力と破壊力を誇り、また発火能力という利便性の高い能力から、学園都市の中で8人しかいないはずのレベル5の中でもかなり高位についていると想像される彼だが、意外や意外、その順位は第八位。しかも通っている学校は、長点上機学園など高位能力者が在籍するような学校では無く、ごく普通の、それこそレベル1やレベル2の生徒がごろごろいるような高校だ。その上学園都市から出ている補助金はレベル5の中でも群を抜いて安く、レベル4能力者の平均程度しか出ていない(それでも、学園都市平均から見ればかなり沢山もらっているのだが)。

 なぜか。

≪記録 耐熱板20枚全溶解 所要時間0秒 温度測定不能 熱量測定不能 総合評価:5≫

≪避難勧告 本区域における気温急激に上昇 危険度レベルA 関係者は即時退避を≫

「こらぁああああああああああ横井ぃいいいいいいいいいいいいいいいッ、セェエエエエエエエエエエエエエエエエエエブしろと言っただろうがぁあああああああああ!」

「これでもかなりセーブしたんすよ、いやマジで!」

 それは、研究対象として見た際、彼の能力には価値がほとんど無いからだ。
 学園都市における能力の階級分けは、「その能力がいかに有用なものであるか」を表すものだ。たとえば学園都市第三位の超電磁砲と第四位の原子崩しは、その破壊力や戦闘能力においては基本的に第四位が圧倒するものの、能力自体の応用力の高さや現実世界における有用性故に、このような序列となっている。
 では、彼、横井正一の場合はどうか。彼の能力は単純な発火能力、その出力がべらぼうに高いことを除けば、実にシンプルで面白味の無い能力である。なんせできることと言えば、「直線的な炎の放出」のみ。火力自体は弱火から太陽系滅亡まで各種取り揃えているが、ぐにゃぐにゃと曲げてみたり、なんか形を作ってみたり、半自動で動かしてみたりすることは不可能だ。
 “これくらいのこと”は……正直、レベル2の発火能力者なら誰でもできる。“本来なら”、発火能力者の序列とは、如何に火力があるかではなく(もちろん、それも一つの判断基準にはなるのだが)、如何に“上手く”炎を扱えるかだ。その点で言えば、正一の制御能力はレベル2の優等生程度、といったところである。
 だがしかし、彼の火力は全てを覆した。一兆度の炎を操る、と先に言ったが、これは正確には間違っている。より正確に言うならば、“本人にすらその最大火力が分からない”のだ。例えば今、学園都市の最先端技術の結晶である耐熱板、材料工学の進歩がもたらした、こと熱に対しては最強とすら言えるシロモノだが、それが合計20枚、計測機械ですら測れないほど一瞬で消滅している。これは、この世に正一の炎を防ぐことができる物質が事実上存在しない、ということを意味している。そしてその火力であってすら、正一の全力には程遠い。

 ゆえに、一兆度。本人すら全力が分からない、文字通りの「最大火力」。
 一兆度とは、宇宙創成期の温度。全てを破壊し尽くし、全ての起源となる、そのくらいの温度だ。
 その名前に負けないチカラを、正一は持っている。だからこそのレベル5認定。「およそ人には扱えない」炎。だからこその、第八位。端的に言えば、モノを燃やすことしかできない、究極の単純バカ。
 それが、横井正一……「最大火力」だ。

 そのあおりを一番喰らっているのは、他でもない正一である。

「……ゼェ、この、時期は、ハァッ、毎年、鬱、なんだよ、なあ、ハァッ。そもそ、も、毎年毎年、ゼェ、測定不能なん、だからさあ、ハァッ、馬鹿正直に予算を、浪費しないで、も、いいじゃんか、よ!」

「ブワッカモォオオオオオオオオオオオオオオンッッッ! この根性無しがぁああああああああああああああ、なぁああああああああああああああああああああにを言っとるかぁあああああああああああああッ!」

「せ、先生、とりあえず、落ち着こう、ぜ?」

 正一の能力によってペンペン草一本生えない焦土と化した施設から命からがら逃げ出した正一とその担任教師円谷護持良は、駐車場のアスファルトの上に寝っ転がると、大きく肩で息をし、命のある喜びを噛みしめた。
 振り返ってみれば、先ほどまで能力測定をしていた施設が見える。隣接(もっとも、両者の間には一定の距離があるのだが)している一般的な学び舎とは明らかに不釣り合いな建造物。が、あった場所。今は正一の能力の影響で猛烈な火の手が上がっており、既に原型が分からないレベルで焼け崩れてしまっている。
 なんとか回収に成功した正一の能力データを懐にしまいつつ、護持良が吠える。

「ノォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ力測定の為に頂いている予算をォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、ベェエエエエエエエエエエエエエエエエツの用途に使用するなどトォオオオオオオオオオオオオオ、そぉおおおおおおおおおおおおおおおおおのようなルゥル違反がぁあああああああああああああ、出来るかぁああああああああああああああああああああああああっ!」

「先生、先生、分かった。分かったから声量落とそうぜ、近所迷惑だから。あと、話してる内容分かりづらいから」

「これは仕様じゃぁああああああああああああああああああああああああっ!」

 ピガー、と炎でも吐きだしそうな表情で、怒鳴る護持良。もっとも、彼の場合は怒っていなくともこの喋り方なのであり、これで国語教師なのだから世も末だと正一は思う。大体、ジャージ着てものごっつい国語教師なんて見たことな……ああ、そういえば西日本出身の人魚の親父がそうだった。
 それでもとりあえず、今日の予定である能力測定は終了した。これ以上の面倒が起こる前に、と、正一は立ち上がり、教室へと小走りで駆けていく。

「むぅううううううううううううう、待てぇえええええええええええええええい横井ぃいいいいいいいいいいいいいい、話はまだ終わっとらんぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 その背中に護持良の怒声が浴びせられたが、正一は無視した。



「……ったく、あの怪獣王、うるさくてかなわねえよ。大体なんだ、あの個性……明らかに設定ミスじゃねえのか」

「まあ、仕方ねぇだろあれは。ウチの学校の名物教師、「超超音波(ハイパーボイス)」円谷護持良……火を吐かないだけ、まだましだと思わねぇ?」

「思わねぇよ、これっぽっちも。ありゃ会話じゃなくて耳レイプだ、心臓が弱い人間とか一発でダウトだろ」

 正一達の高校に限って言えば、能力測定の日は、基本的に半ドンである。もちろんもっと生徒数の多い学校や、レベルの高い(つまり、能力測定に時間や手間のかかる)生徒が多数在籍している学校なら全日でやるのだが、正一以外特にそういうことはないので、半日あれば全てカタがついてしまうのだ。
 弁当とかを作るほどマメではない男二人組は、HR終了後、学食へと移動した。授業は午前までとは言え、学食は平常通りの営業だ。各々適当なものを注文し、空いている席に滑り込む。
 一号のトレーには、カレーライス。正一のトレーには、豆板醤で真っ赤に染まったどんぶりご飯と生卵が。

「……相変わらず、辛いモノが好きだなゼットンは。見てるだけで胃が荒れそうなんだけど」

「んー? いやまあ、わりと美味いぞこれ? 一回食べてみ? あとゼットン言うな」

「全力で遠慮する」

 生卵を割りながらの正一の提案は、当然のごとく一号から却下された。チェー、と言いつつ、卵をかきまぜ、それと醤油をどんぶりにぶっかける。
 目に良くなさそうな色へと変色したどんぶりを、正一は一気にかっこむ。

「……うん、美味い」

「おぇ……」



「……で、お前の能力測定はどうだったん?」

 食事も終わり、特に予定も無かった二人は学校を出て、ぶらぶらと歩いていた。

「んー? 相も変わらずレベル1の「空間移動」だよ。手に触れている消しゴムサイズのものを一個だけ、半径5メートル以内に飛ばすのが精いっぱいさねぇ」

「ふーん……でも、「空間移動」って、夢があるよなあ」

「はぁ? なんだそりゃ、大体レベルで言ったらゼットンのほうが圧倒的に上じゃねえか」

「いやだってさ、なんだかんだ言って俺にできるのは燃やすことだけなんだからよ。なんつーか、火力しか取り柄が無いってか、実際問題そうなんだけど、どうもしょぼい能力のような気がしてさぁ。こう、ロマンが足りないってか。ただの超☆高火力全方位型ガスバーナーだし。あとゼットン言うな」

「……気まぐれに世界滅ぼせる人間が言うセリフかよ、ソレ」

 なんてことを話しながらぶらぶらしていた二人の目の前の空間が、不意に歪む。学園都市に住む者なら誰もが知っている、テレポートの前兆だ。
 おっと、と立ち止まった二人の前に、見慣れた少女の二人組が現れた。

「──っと、あら、横井さんに友人さん。ごきげんよう」

「あ、どうもですゼットンさんに友人さん」

「……………………」

「や、昨日ぶり―……って、どうしたゼットン。いきなりなんか押し黙って」

 黒子と飾利の挨拶に対して友人はにこやかにこたえたが、正一はなぜか黙りこくってしまう。若干顔も下向きになったのでその両目も完全に前髪に隠れてしまい、表情を読むこともできない。
 レスポンスの無い正一に対して、はてなの首を傾げた黒子は、近寄って来てその顔を見上げた。

「どうしたんですの? どこかお体の具合でも──って、きゃぁああああああああああああああああッ!?」

「白井ぃいいいいいいいいいいいいいいいっ! 俺は、俺は今、猛烈に感動しているぞぉおおおおおおおおおおおおおお!」

 突如、正一が黒子に抱きついて、おんおんと泣き始める。黒子はと言えば、突然のことに思考が停止してしまって悲鳴をあげることしかできない。
 そんな彼女を抱きしめつつ、正一は滝の涙を流す。

「きゃっ……って、な、なにをしてくれてますの横井さん!? 突然女性の体に抱きつくなんて、殿方の風上にも置けない愚劣かつ愚鈍かつ愚昧なる行為──」

「俺の……、俺の名前を呼んでくれて、本当にありがとう!」

「──は?」

 がくん、という間抜けな音共に、黒子の肩が下に落ちた。

「いやさ、俺さ、いつもいつもゼットンゼットン言われてさ! いやだってのに、俺の話なんて誰も聞いてくれなくて! 正直、もう諦めの境地に達してたんだが……ありがとう白井、好きです付き合って下さい!」

「最後のは無視することにしまして、先生方は普通に名前で呼んでくださるのでは……?」

「そうそう、ウチの怪獣王も、ゼットンのこと横井って呼ぶじゃねえか」

 二人の指摘に対して、黒子からぱっと離れた正一はだー違う違う、と、大きく首を横に振った

「こういうのは、近い歳の人間に言われるから意味があんだよ! 教師共に呼ばれたところで一文の得にもなりゃしねえ……特にあのバカ声は持っての他だ! ってかそれくらい分かれよ普通!」

「……へー、そうですの」

「なんつーか、理解はできるんだけど、そこまで言うことなのかねぇ?」

「どうでもいいですけど、私空気ですよねー」

「なにその消極的反応!? 特に男一名! どっちかっつとお前らのせいだからね!?」

 うががががー、と叫びつつ路上で転げ回る正一を、他三人は醒めた眼差しで見つめていた。ちなみにここは天下の往来、わりと人の数も多い大通りである。当然、この騒ぎに目を留める通行人も数多い。
 三人は自然な動きで後退し、正一から距離を取った。

「……そういえば、どうしてゼットンさんはゼットンってあだ名で呼ばれてるんですか? 私は、一号さんがそう呼んでいたので、なんですが」

「ああそりゃ、初代ゼットンの最大火力が一兆度だからだよ。詳しくは怪獣図鑑でも見てくれ」

 ふとつぶやかれた初春の疑問に、正一ではなく一号が答えた。その返答に対し、白井と初春は胡散臭そうな顔をする。

「一兆度、って……どうやって計測しましたのよ、ソレ。もし本当だったとして、地球上でそんなものぶっぱなした日にゃえらいことになりますわよ?」

「んー、まあゼットンの自己申告だしなあ。一部を開放しただけで現状の測定器具では測定できない、っていうかそもそも測定用施設が耐えられないから、もしかしたら本当に一兆度なのかもしれないし、もっと凄いのかもしれないんだが。そこは分からん」

「え……じゃ、じゃあなんで一兆度なんて具体的な数字が……」

「……飾利ちゃん、来年になったらきっと分かるよ。そのカルマの深さが」

「って人が黙ってるのいいことに好き勝手喋るのやめていただけませんかね!? あと勝手に人の黒歴史ばらすんじゃねぇよ一号! そしてゼットン言うな!」

 三人の会話に耐えきれなくなった正一は、慌てて飛び起きて抗議する。だがしかし、彼に向けられる視線は既に“痛々しい少年を見るモノ”となっており、女性陣に至ってはどこか可哀想なモノを見る視線までプラスされていた。
 そんな視線に晒されることに耐えきれなくなった学園都市第八位は、わたわたと話題の転換を図る。

「そ、そんなことより、おまえたちはどうしたんだよ! なんか事件でもあったのか!?」

「……ふぅ」

「あからさまに視線そらされたあげく、溜息までつかれた!? 3歳も年下相手に!?」

「まあ、いいですの。さすがにちょっと可哀想ですから、乗ってあげることとしますわ……ええ、ちょっと遺失物の捜索を。風紀委員に、届け出がありましたので」

「今は、本部の方へ落とし主を迎えに行くところなんですよー。そういえばお二人とも、子供用の肩掛けバッグで花の刺繍が付いたものなんですが、どこかで見ていませんか?」

「……いや、見てないな。ゼットン、おまえは?」

「俺も見てない。あとゼットン言うな」

 なんにせよ、黒子と飾利は仕事中である。そのことに気が付いた二人は、これ以上引き留めるのも悪いと思ってバイバイと手を振った。

「悪い、邪魔したな。じゃ、また」

「いえいえ、こちらこそ、ですの」

「またなー、白井と飾利ちゃん」

「はい、それでは」

 ヒュン、という音を残して、黒子と飾利の姿は消えた。後に残った男二人は、また時間つぶしの散策を再開する。

「んじゃーあれだ、ゲーセンでも行きますかね。今日こそランキング表を独占して見せる……!」

「……ほどほどにしとけよ、一号」

 学園都市は、今日も平和だった。



 学園都市内部某所。俗には「窓の無いビル」と呼ばれる場所の一室に、二人の人間がいた。
 一人は金髪にサングラス、極彩色のアロハシャツというテンプレートまっさかりな不良風ファッションの男だ。もっとも巷に溢れるチンピラ達とは違い、そのサングラスの奥には鋭い眼光が灯されている。体もまんべんなく鍛えられている風で、その物腰には隙がまったく見受けられない。
 その射殺すような視線の先に、もう一人の人間がいた。怪しげな培養液のようなものに満たされた水槽の中で上下逆さに浮かんでいる、「ニンゲン」としか形容しようの無い人間。見る人間によって如何様にも印象を変え、その本質さえも変えてしまうような存在。学園都市統括理事長、アレイスター・クロウリーというのが、その名だった。

「──そういえば、「最大火力」はお前的にどういう位置付けにあるんだ? ああもっとも、答えが返って来るとは思わないが……」

「……ふむ。いや、別にいい。アレは、そもそもいてもいなくても変わらないレベルの存在だからな」

 右手に抱えた報告書を読みあげている途中、ふと気になったことを尋ねたサングラスは、アレイスターの言葉にいぶかしげに眉をひそめた。確かに言っていることは分からなくもない、しかし、仮にもレベル5の能力者を“いてもいなくてもかまわない”とは……。

「奴は……そうだな、最後の“保険”と言ったところか。まずあり得ないことではあるが、全てのプランが崩壊した際の切り札、とも言えるかもな」

「……? なら、どうして“いてもいなくてもかまわない”んだ? そこまで重要な切り札なら、そんな評価は下さないはずだが」

「……土御門元春。おまえは、死にかけたことがあるか?」

 質問には直接答えず、アレイスターは別の質問を返してきた。黙ってうなずく元春に、彼は尚も言葉を紡ぐ。

「私にもある。死、とは……孤独なモノだ。人間は誰しも、死ぬ直前は一人になる。完全に死を迎えた後、どうなるかは私は分からないが……死の直前の孤独とは、なかなかどうして耐えがたきもの。少なくとも、私ですら、その恐怖に抗うことはできなかった」

「学園都市統括理事長が、弱気なものだな」

「そう言うな、おまえにも分かるはずだ。徐々に体が冷たくなっていく中で、自分の世界が“閉じていく”恐怖……だからこそ、人は死の直前に他人を求めるものなのではないか。
 私が現在実行しているプランは、疑いようの余地もなく順調に進行している。しかし、もし万が一、億が一、このプランが失敗すれば……私は、死ぬだろう。それも、たった一人で、誰に看取られることもなく。誰に惜しまれることもなく、孤独の内に私は死ぬ。この世界から、消滅する。……不可解なことに、私はその恐怖に耐えることができなかった」

 ここまでアレイスターの話を聞いて、ようやっと元春には彼の真意を理解できた。
 学園都市第八位、「最大火力」。彼の存在意義は、他のレベル5のような、少なくとも“進歩”のための材料ではない。

 彼に求められる役割、それは──

「おまえ、まさか……」



「……「最大火力」の存在意義。それは、全てのプランが喪われた時の為の……「自爆装置」だ」



 ──壮大なスケールの空間を巻き添えにした、自殺の道具だった。


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