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[24294] たまにはこんな転生者(設定ほぼ全改訂版) IS×オーガン
Name: 柿の種◆eec182ce ID:5a731e18
Date: 2011/04/02 18:43
注記:この作品はISとオーガンのクロスですが捏造設定やオリジナル設定がかなり入っています。注意してください。


 俺には前世の記憶がある。
 前世での名は“オーガン”。侵略を繰り返す種族、イバリューダの中で勇者と呼ばれる存在だった。だが俺はある時、彼等を裏切った。遺伝子の奥底に眠る俺の記憶が覚えていたのだ。地球の、遠い俺達の故郷のことを、そして人の心が持つ光、その温かさを。その記憶が侵略を繰り返す自分達の行為を間違っていると教えてくれた。
 地球に帰るために一人逃走をはかった俺だったが、追っ手を刺し向けられ、逃げ切れないことを悟った俺は、地球の技術と照らし合わせ、自分の体を再構築するためのデータを地球へと送った。そして、それによって得た新しい体でもう一人の俺、『真道トモル』と合身し、地球を守るため、イバリューダと戦った。
そして地球人達の協力もあり、その戦いで勝利したものの体が崩壊し、二度目の死を迎えた俺は今、3度目の生を得ていた。

「オーガン、ここいいかしら?」

 会社の食堂で、一人の女性が俺に声をかけて来る。彼女の呼んだオーガンと言う名前は当然のことながら今の俺の本名ではない。今の俺の正式名称は相羽トモヤ。二度目の死を迎えた俺は相羽タカヤと相羽アキの夫妻の子供として、人間として転生したのである。そして今は地球のアメリカに住む一市民。
 そんな俺を何故、女性はオーガンと呼ぶのか。それは、彼女は俺がオーガンだったころからの知り合いであるからだ。

「ああ、勿論だよ、リーブ」

 声をかけてきた赤髪の女性に答え、隣の席をすすめる。俺が呼んだ“リーブ”という名はオーガンが今の俺の本名でないのと同じで、今の彼女の本名でない名前だ。彼女の本名はジェシカ・アイゼンハワー、俺と同様に生まれ変わった人間、そして俺と同じく前世はイバリューダであった女性である。前世において、種族を裏切った俺と敵対しながらも、俺の心に理解を示してくれた相手である。死んだ筈の彼女は俺と同じように転生し、大学時代に再開、そして恋人同士になっていた。前世においてそうであったように。

「ところで今日、夜は時間取れるかしら? いいレストランをみつけたんだけど」

「悪い。今日は少し無理だ。研究が忙しくってな」

 恋人のデートの誘いを少し心苦しい気持ちで断る。今、俺は、レスキューや危険域での作業用のパワードスーツの開発を行っていた。自分達自身で改造した体をもつイバリューダは戦士であり、科学者な種族だ。それ故に、前世で自分自身の体を地球の技術で再現するための設計図をつくることができた。しかも地球の技術力調査のために得た地球の技術の記憶も俺にはある。それを生かし、高性能なパワードスーツ、『セーフティアーマー』の開発を行っていた。

「またなの?」

「ISとか言うのがでてきたおかげで旗向きが悪くってな。このままだと研究事態が打ち切られかねないんだよ」

 不満気な顔をする恋人に謝罪する。しかし、今は研究に専念しなければならない理由が存在した。
 IS、正式名称インフィニット・ストラトスと呼ばれるそれは2年前にある信じられない事態を引き起こしたパワードスーツのことだ。何者かのハッキングにより操作され日本に発射された2000発のミサイル、ISはそれをたった一機で食い止め、更に捕獲のために動いた軍隊を撃退してみせたのである。通称『白騎士事件』、その事件により従来の兵器がISの前には無力であることを世界は知った。そしてその技術が開発者より公開されたことによって、各国は競いあってその研究・開発に力を入れ、その煽りを受け他分野の研究が縮小される傾向にあるのが昨今の風潮となっている。中でも同じパワードスーツということもあって、セーフティアーマーの開発は特に風当たり強いものになっていた。一刻も早く成果を出さなければ予算削減どころか、研究自体が打ち切られる可能性が高いのである。

「まあ性能に自信はあるし、完成まで後、僅かだ。そしたら、思いっきりデートでもしよう。それまでは許してくれよ」

「そうね。期待してるわ」

 もう一度謝り、許しを得ることができ、ほっとする。
その後しばらく話し、そろそろ仕事に戻らなくてはいけないとお互い席を立ち別れる。そして研究室に戻る道中、俺の姿を見つけ、声をかけてくる男が居た。その男はセーフティアーマーの研究チームのリーダーで、個人的な友人でもある男マイケル・シューマッハだった。

「オーガン、ちょっといいか?」
 
 マイケルを始めとして親しい相手は俺をオーガンと呼ぶ。リーブの奴が俺をオーガンと呼ぶことをまさか前世のことを語る訳にもいかず、由来をぼかして周りにはニックネームだと説明していたら、何時の間にか定着し、そう呼ばれることが多くなっていた。

「ああ。けど、あまりいい話じゃなさそうだな?」

 マイケルの表情には明らかに不快な感情が浮かんでいた。それを見るだけで話しの予想は何となくついた。そして、その悪い予想は見事に当たってしまうことになる。

「ああ、上からのお達しで3ヶ月以内に成果を見せろとさ。でなければ、研究は中止だそうだ」

 セーフティアーマーの研究は技術面では俺がリーダーだが、マイケルの方が交渉能力に優れているため、肩書上はマイケルがリーダーで俺が副リーダーになっている。そして、今日、マイケルは上役に呼び出され、研究報告を命令されていた。それて昨今の情勢を考えれば、話しの内容は予想の範疇の話しである。

「3ヶ月か。開発自体は多分間に合うだろうが、問題はそれで納得させられるかどうかだな」

 期限を設けられたことに俺は顔をしかめる。既に試作品は大凡完成し、性能テストも半分位は終了している。その結果は目標値を達成し、通常であれば間違いなく、賞賛を帯びるものだ。しかし、問題はISという比較対象があるということである。

「ああ。現状では、セーフティアーマーはどうあがいてもISには敵わないからな。まあ、兵器であるあっちとは予算も用途も違うんだから仕方ないが」

「一応オリジナルのISは宇宙開発用に作られたものなんだろう?」

「それは建前だろ? ISの開発者が身内以外には全く興味を持たない社会不適合者だってのははちょっと耳が効く奴なら誰でも知ってる話しだ。そんな奴が宇宙開発に興味を持つとは思えんよ。まあ、一人であんなもんを作ったってのが本当なら正に天才ってのは認めざるを得ないけどな」

 セーフティアーマーはEDFのエクテクトアーマーをベースにこの世界の技術レベルで再現困難なところはレベルを落とし、逆に一部にイバリューダ-の技術を加えた代物だ。オ―バリウム製の装甲も反物質溶鉱炉も持たないため、ISのように従来の兵器と隔絶したと言える程の性能は持たない。それでも使われている技術自体は従来の兵器の水準を大きく上回るし、オリジナルのエクテクトアーマーと同様に装備を換装することで、さまざま状況に対応できるという特性も引き継いでいる。仮に戦闘用として設計し直したのなら、少なくともISと従来兵器の中間程度の性能を得られる程度のポテンシャルはあるだろう。またISのように女性にしか扱えないという欠点も無く、コストも抑えられている。無論、本来の運用目的である、レスキューや宇宙開発用としての機能や操縦者を保護する安全性は万全だ。胸を張って見せられる出来栄えなのだが、問題は見せる相手がそれを理解してくれるとは限らないということである。

「『白騎士事件』のインパクトはでかかったからな。俺達も何か派手なデモンストレーションでもしないと、ISの紛い物や劣化品だとか思われちまう。そうなったら、どんなに構成品でも商品価値は得られないからな」

「ああ、どうしたものかな」

 一応考えるが、全くと言っていい程いい考えが思い浮かばない。そこで、俺は一度マイケルの方に話しを振ってみることにした。

「マイケル、お前は何かいいアイディアはあるのか?」

「そうだな。まっ、これを見てくれよ」

 俺の問いかけに答え、マイケルが俺に向かって何か紙の束のようなものを放り投げてくる。右手で受け取り、広げてみるとそれは新聞だった。そして良く見るとその記事の中に赤い丸が付けられた箇所があることに気付く。3面記事の片隅に乗せられたその内容はNASAのスペースシャトルの打ち上げ実験を行うというものだった。

「宇宙開発の方もISのおかげで、予算も注目度も下がり、そんな扱いになっている。多分、この打ち上げが終わったら、さらに縮小されることになるだろう。このまま注目せず、ただの打ち上げ実験で終わったらな」

「もしかして、この件に何か絡もうとしているのか?……まさか!?」

 セーフティアーマーとスペースシャトルの打ち上げ、その関連性を考え、俺はある可能性に辿りつき、思わず叫んでしまう。
 それを見てマイケルは真剣な表情で頷いた。

「ああ、その通り、乗せるのさ。こいつに俺達のセーフティアーマーを。セーフティアーマーはあらゆる環境での活動を想定してる。当然、絶対零度に近く、放射能に満ちた宇宙空間だって装備を変えりゃあ活動できる。でっ、宇宙開発を名目に掲げながら実際は兵器に治まっちまってるISよりも先に宇宙へ行っちまおうって訳だ」

 目の前の男が簡単に言ってのけた言葉を信じられず、俺は思わず尋ねた。すなわちそんなことができるのか、っと。

「NASAにはちょっとコネがある。それにさっきも言ったように向こうも結構追い詰められている状況だからな。話題性は是非とも欲しい筈だ。会社の方も俺がなんとかしてやる。3ヶ月の猶予だって上が1ヶ月って言ったのをそこまで引き延ばしてやったんだぜ」

 マイケルの言葉は自信に充ち溢れていた。そして、この男がそう言うのならば俺の答えは決まっている。

「わかった。宇宙用の調整、任せておけ」

「おう、頼むぜ」

 友の信頼に答えること、それが俺の答えだ。俺の答えを聞いてマイケルは無言で拳を前に突き出してきた。その意味を察し、俺はそれに合わせる。お互いのやるべきことをやる、そういう信頼の決意の表明だった。だが、その決意と信頼を示しても俺にはまだ少し心配なことがあった。

「けど、仮に上手くいったとして、これで本当に注目を集められるのか? いや、注目自体はどうにかなるかもしれないが、宇宙空間での活動なんて、従来の宇宙服でもできることだ。セーフティアーマーの性能を示すには少し足りない気がするんだが」

「ああ、そうだ。言い忘れてたな。お前には単に宇宙空間で活動できるだけじゃなく、別のことができるようにして欲しい。つまりな……単独で大気圏を突入できるように作ってくれ」


(後書き)
旧版の設定をほぼ全とっかえしました。
ネタとしては外した感がありましたし、やっぱ神様チートはあんまりよくないかなと思いなおしまして。
主人公の相羽トモヤはオーガンの転生体設定ですが、肉体を得た影響か性格的にはトモルに近くなっています。ちなみに主人公の両親が相羽夫妻なのは、スパロボWでイバリューダの始祖がタカヤの父親だったことからのネタです。この世界はラダムに侵略を受けていないので、タカヤは普通の人間でテッカマンブレードにはなれません。
とりあえず、後編に続きます。その後は評判とネタが思い浮かぶかどうか次第で。


下記に没にした旧版を載せます。

(没バージョン)
 19歳のある日、よくあるテンプレ小説のように子供を庇って車にひかれ死亡したら、神様に出会って、チート能力付きで異世界で転生できることになった。
 選べるということで貰った能力はデトネイタ―オーガンにでてきた、オーガンタイプのソリッドアーマーを召喚して、リスク無しで装着できる能力といくつかの漫画やアニメにできたロボットの構造に関する知識とそれを理解することができるようにIQ200位の頭脳、Fate風に言うと黄金律B位の幸運をもらった。
 そして生まれ変わることになった世界は、ISの世界、ISという女性にしか動かせない新兵器によって旧来の兵器が無力化し、女尊男卑の風潮が産まれた世界である。





 転生した俺は、産まれて直ぐに産みの親に捨てられた。いきなりの出来事に目の前が真っ暗になるが、その後直ぐに優しいおじいさんに拾われることになる。しかもそのおじいさんてか今の俺の親父は大会社の会長で、親父には実の子供が3人、俺から見れば兄二人と姉一人が居るから会社の後継者とかにはまずなれないけれど、その分気楽な御曹司という恵まれた立場を手に入れたのである。そしてこの世界で転生し、早12年。ある程度、自由に動ける年齢になった俺は遂に野望を開始することにした。今の俺にはチートな能力と御曹司の立場がある。これだけのものが女尊男卑の風潮なんて屁でも無い。俺はこの世界で………………











レスキュー用のパワードスーツをつくる!!!!!









 えっ? ハーレム? 俺TUEEE? やりませんよ、そんなこと。
そりゃ俺も男だから少し位は興味はあるよ。でもさ、ハーレムとか無理だって。そんな魅力ある奴なら、普通に前世でももてまくりだよ。彼女さえいなかった俺には到底縁の無い話し。まあ、神様チートでニコポとか貰えばできるかもしれないけど、それって洗脳と同じじゃん? 罪悪感強すぎて出来ないわ。
 俺TUEEEEもさ、ゲームとかでチートとか使うと最初は爽快でも直ぐに飽きるんだよね。ドラゴンボールのセルの台詞にもあるけど、やっぱり勝負事ってある程度力量の近い相手が居ないと面白くないと思う訳よ。
 そんな訳で、これらの願望を却下した俺だけど、折角チート能力貰えるって言うんだから普通じゃできないことがしてみたいじゃん? それで思いついたのが、人型機動兵器に乗ってみたい、作ってみたいって願い。これって男の子なら誰でも一度は抱く夢だよね?けどさあ、フィクションなら確かにロマンでだけど、現実にあるとなると、戦争とか殺し合いとかノーサンキュー。んで、考えたっていうか、前世で生きてた頃から考えていたことなんだけど、現実で人型機動兵器、いや人型巨大ロボットとか人型パワードスーツが役立つ状況ってどんなのかって想定して思いついたのがレスキューだったんだよ。
 例えば洪水の川の真ん中に取り残された人をヘリコプターが助けようとするんだけど、ヘリコプターは制止できないからロープを投げても上手く届かないし、高度を下げ過ぎて川に触れれば流されちゃうから迂闊に近寄ることもできなくて中々助けられないって状況。例えば高層ビルの火災に取り残された人を助けようとはしご車がはしごを伸ばすんだけれど、高過ぎて届かないって状況。例えば雪崩生き埋めになってしまった人を掘り起こそうとするんだけど、重機じゃ入れなかったり、二次災害を引き起こすかもしれなかったり、生き埋めになった人を巻き込んでしまったりと言う恐れがあるから慎重に手で掘り起こすしかないなんて状況。
そう言うのをTVで見てさ、ふと思った訳だよ。「こう言う時アニメとかにでてくる人型パワードスーツがあればなあ」って。
 アニメとかにでてくるパワードスーツってさ、重機以上のパワーと人間の手の精密さ、繊細さをあわせもち、単独で空を飛べて、しかもヘリコプター以上の細かな旋回性能があって、空中で制止することもできる。人間のからだを一回り二周回り大きくした程度だから屋内でも活動できるし、宇宙とかで活動できるタイプな機密性とかもばっちり。火災現場の火も煙も怖くない、有毒ガスだって全然兵器。考えてみるとおよそレスキューで必要な能力を併せ持ってるって思うんだよね。だからもし将来、現実に作られるんなら、やっぱり兵器とかじゃなくて、そういう使われ方をして欲しい。そんなことを考えてた訳さ。「人類の産み出したらものなら人類を救ってみせろ!!」ってね。
 とはいえ、前世では所詮他愛も無い妄想に過ぎなかった訳だけど、神様チートのおかげでそれは俺にとって可能なことになった。その瞬間、俺の中で“妄想”は“夢”に変わったってんだよ。んで、サンプルとしてオーガンをもらって、複製するために、知識と頭脳をもらって、ISとかつくる技術があるから量産とかいけそうなこの世界を選んだって訳。そして、転生してから今までに工学系の知識も身につけてある。チートな頭脳と知識を貰っても基礎的な部分とかは結構足りなかったりしたんだよね。

「ぐふふ、やるぞ、やってやるぞ」

 自分でも怪しいと思う笑みを浮かべてしまう。10年以上溜めこんだもんで、夢は野望は再現なく膨らんでいる。ああ、どういうものをつくろうか。あたまの中で妄想、いや、夢が広がる。思わず笑いたくなってしまう。

「わははははは!!!!」

 野望を開始したその日、俺は心配した家族に黄色い救急車に乗せられそうになるのだった。



[24294] [習作・若干ネタっぽい超短編]マブラヴAL×ゼオライマー
Name: 柿の種◆eec182ce ID:5a731e18
Date: 2010/11/14 01:24
注意書き:いきなりクライマックス近くからスタートします。基本シリアスですが、若干ネタが混じってます。後、独自解釈が混じっています。



 無限に限りなく近い数存在する平行世界。その中の一つの世界で“冥王”を名乗った少年が居た。彼はクローンとして生まれ、そのオリジナルである存在の記憶を植えつけられた少年であった。植えつけられた記憶に少年の人格は浸食され、体を奪われた彼は自らを“冥王”を名乗ったのである。



 だがそれは錯覚に過ぎなかった。記憶とは所詮どこまで言っても記憶でしかなかったのだ。人格に影響を与えることはあっても、記憶自体が人格となることなど所詮はありえなかったのである。植えつけられた記憶の持ち主の名を名乗った彼は決して肉体を奪われた訳ではなく、そう思いこんでしまった少年の意思でしかなかったのだ。



 それに気付いた時、少年は自らの死を選んだ。事実に気付いた所で、それはオリジナルの記憶を切り離せると言うことでは無かったからだ。寧ろ、オリジナルの記憶によって生まれた人格と自分自身が15年という人生で形成した人格、この二つが完全に別人格であった方がまだその可能性は高かったかもしれない。しかし二つの人格は決して切り離せぬカードの表裏でしか無かった。それを理解することは彼に希望を失わせ、己の運命に抗い続ける気力を失わせてしまったのである。



 そして少年は彼のオリジナルであった存在が産みだしたもの自分自身全てを消し去ることを選んだ。そう自分自身や彼のパートナーであった少女を含めた全てを。






 だが、彼は死ななかった。






 死んだ筈の少年が次に目を覚ましたのは、異星からの存在に侵略される彼が生まれたのは別の平行世界、別の地球だった。そこで彼は一人の少年と出会った。少年の名は“白銀武”。少年と彼の境遇には似通った部分があった。二人は共にある日唐突に“平穏な日常”から引き離され、“過酷な日常”に放りこまれた同士、元居た世界は同一ではないが、共に異世界で産まれた異端な存在同士だったのである。今ではそこにもう一つ大きな共通点が加わっている。







 そして彼、“秋津マサト”は今、白銀武と共に人類の敵、異星からの侵略者BETAと戦うために戦場に立っていた。







「ここまで来たんだな」

「うん」

 マサトと武、二人は共に巨人の中に搭乗しながら会話する。
 武の乗る機体はXG-70d 凄乃皇・四型、全長180メートルを超え、ML型機関を搭載し、ラザフォード力場や荷電粒子砲と言った強力な兵器を装備したこの世界最強の機体。
 一方マサトが乗る機体、そのサイズは全長50メートルと2体の周りに並び立つ戦術機に比べれば3倍近いが、スサノオと比べれば3分の1以下でしかない。しかしその機体に秘められたポテンシャルで言えばスサノオを遥かに上回る真の最強の機体である。
 2機の圧倒的な性能は劣勢であった戦況を覆し、人類は今、地球におけるBETAの本拠地であり、絶望の象徴であったオリジナルハイブを攻め落とそうとするところまで辿りついていた。

「マサト、もう一回礼を言わせてくれ。純夏を救ってくれてありがとな。それに一度は逃げ出した俺が今日まで戦って来られたのはお前のおかげだ。ほんと、感謝してる」

 本来であれば、00ユニットとなった純夏は活動停止を免れない筈だった。しかしマサトの努力によってその未来は既に無い。他世界の純夏の因果を寄せ集めることによって、彼女は人間としての機能を補い、00ユニットの能力を残したまま、人間と00ユニットの中間的な存在という反則的な存在へと昇華し、迫った死を免れることに成功したのだ。
 次元連結システムのちょっとした応用である。

「僕だって武がいなかったらきっと今頃生きていなかった。僕のほうこそ礼を言うよ、ありがとう」

 武の感謝の言葉に対し、マサトが礼を返す。境遇の近い者同士の連帯感からマサトと武はお互いを支え合ってきた。彼が彼のオリジナル“木原マサキ”の呪縛から真の意味で逃れられたのもその支えがあったからというのが大きい。勿論、それは武も同じだ。最初は傷のなめ合いに近かった友情、しかし数多くの絶望を共に乗り越えることで二人は真の友情で結びつき、戦友にして一番の親友へと変わって行ったのだ。

「まっ、お互いきっちり生き残ろうぜ。んで、この戦いが終わったらダブルデートとかどうだ?」

 マサトの言葉にあるいは自分自身が言った言葉に少し照れたのか冗談めかした口調話を変える。
 その言葉こそ二人に加わった最後の共通点が含まれていた。二人はお互い人の心はあれど人間の体を持たない者を愛する者同士なのだ。そして二人は決意している、愛する者と一緒に戦い、そして生き抜いて見せることを。

「うん、いいかも」

『ええ、楽しそうね』

「ほんと!! 武ちゃん、ちゃんと約束守ってよ」

 頷くマサトにそれまで空気を読んで男同士の会話を邪魔しないでいた美久と純夏が歓声をあげる。ただし、マサトの恋人である美久は彼の乗る機体の主要パーツである次元連結ユニットの一部であるため、複座型のコックピットに乗る純夏と違い、機体と一体化しているためその姿は見えない。

「分かってるって。純夏、ちゃんと約束守るから楽しみにしてろよ。さてと、私語はここまでにしとくか。流石にこれ以上は伊隅少佐に怒られそうだしな」

 作戦開始時刻まで後、少しと迫っていた。ここまでは目こぼしが許されたが、流石にこの先はそうはいかない。
 彼等は会話を切り、真剣な表情になって始まりの時をじっと待つ。
 そう始まりの時だ。この戦いが終わりでは無い。本来なら純夏が死んだ時点で武は因果導体から解放され、強制的に元の世界に引き戻される筈だったが、既に彼女は死を逃れているし、仮に彼女が別の要因で死亡したとしてもループすることも元の世界に引き戻されることも無い。彼の存在は既に完全にこの世界に定着させられていた。
 これも次元連結システムのちょっとした応用である。
 そして作戦開始の時刻が訪れた時、その開始を告げたのはハイブに向かって放たれたのは凄乃皇・四型の荷電粒子砲であった。

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」」

 その一撃で吹き飛ぶ数千のBETAとハイブの地上構造物、その光景にその場に居た兵士達全員が雄叫びをあげる。しかし、彼等はまだ動かない。何故ならば、まだ、この後に本命の一撃が残されているのだから。
 
 凄乃皇・四型の横に並んでいた巨人の姿が消える。そして次の瞬間、半壊した地上構造物の真上に出現した。テレポート、マサトの乗る巨人。最強の機体“ゼオライマー”の持つ機能の一つ。
 そして移動した宙に浮かぶゼオライマーの足元にハイブ地下から這い出してきた大量のBETAが現れる。そしてその中に混じる光線級、重光線級が一斉にゼオライマーに向かってレーザーを放射した。

「そんなものゼオライマーには効かない!!」

 だがそれらは全てマサトの言葉が示す通りにゼオライマーが張った障壁によって完全に阻まれ、その機体にまで届かない。そしてゼオライマーはその機械の腕を両手に作った拳をくっつけるかのような動きでゆっくりと近づけて行く。それは、G弾すらも凌駕する威力を持ち、これまでに3つのハイブを文字通り跡形も無く消滅させたゼオライマーの最強兵器、メイオウ攻撃。

―――天―――

 そしてゼオライマーの胸から放たれた金色の閃光が全てを飲み込むのであった。




(後書き)
マブラヴ世界に入れて一番違和感の無いスーパーロボットって何だろうとふと考えて、ゼオライマーが思い浮かびました。(主人公周りの)世界観的なハードな所とロボットのデザインと次元連結システムの設定が割としっくりくると思うんですよね。
そう思いついたらつい書きたくなり、我慢できずに書いてしまいました。目茶苦茶短い上に色々とご都合盛りだくさんですが。
誰かちゃんとしたのを書いてくれないかなとちょっと期待してたりします。


PS.書いた動機の8割は<次元連結システムのちょっとした応用である>を言いたかっただけだったり。



[24294] スーパーチートロボット大戦(小ネタ集)
Name: 柿の種◆eec182ce ID:5a731e18
Date: 2010/11/16 21:55
注意書き:
ネタです。人によっては不快に感じるところがあるかもしれません。後、前作との関わりはありません。新しくスレ立てする程のものではないので再利用させていだきました。



【エピソード1:「勝ったな」「ああ」】

 第3新東京市、この街に10年ぶりに父に呼ばれた14歳の少年の姿があった。不慮の事態で電車が止まってしまったため、待ち合わせの場所にまで辿りつけなかった彼の前に街を破壊する巨大な怪物が現れる。

「な、なんだ!?」

 動揺する少年。そしてその化け物に対し、自衛隊が放ったミサイルによって爆風が巻き起こる。

「おまたせ、あなたがシンジ君ね」

 爆風に巻き込まれかける少年。しかし、そこで殺到と現れた美女が彼を救う。
だが、そこで彼を救った美女は気づく。シンジの後ろに彼女の知らない、黒髪の少年と栗毛の少女と銀髪の少年の姿があることを。

「シンジ君、後ろの3人は?」

「ああ、みんなは僕の友達で……」

◇秋津マサトは既に仲間になっている
◇氷室美久は既に仲間になっている
◇クォヴレー・ゴートンは既に仲間になっている









【エピソード2:地球が終わるので勘弁してください】

「シンジ、クォヴレ-、もし僕がマサキの意思に飲まれたら、その時は君達が僕を止めてくれるかい?」

 ゼオライマーから降り、憔悴した表情で尋ねるマサトにクォヴレ-が自信を持った態度で答える。

「任せておけ。いい方法を知っている」

「何か考えがあるんですか? クォヴレ-さん」

 期待を込めてクォヴレ-を見る2人に対し、彼は乗機であるディス・アストラナガンに一瞬視線をやって答えた。

「ああ、とある世界で魔導師の少女に教わった方法だ。“全力全開”で“お話し”するらしい」









【エピソード3:でもよく考えたらいつものことでした】

「“お話し”ですか。確かにそれでマサトさんが正気に戻ってくれればいいですけど……」

 言葉の意味を正しく理解しないまま不安そうに言うシンジ。しかし、クォヴレ-は自信を持った態度を崩さなかった。
 そしてその理由を説明する。

「大丈夫だ。この方法には実績がある。俺は昔、仲間達と一緒にこの方法で、洗脳された勇者王も暴走した平行世界のお前も、核兵器を平気で撃つ狂信者紛いの軍隊さえも止めて見せたことがある」









【エピソード4:現実は予想の斜め上を行く】

 マサトが危惧したマサキの人格、しかし現実の事態はそれを上回る最悪の状況を生み出していた。今、3機の機体が自分以外の2機を敵として戦い合っていた。

 一機はディス・アストラナガン。「負の無限力」の力を無尽蔵に吸収し続ける動力炉である「ディス・レヴ」を搭載し、次元を超え、因果律すらも捻じ曲げる力を持った機体。

一機はゼオライマー。『天』の称号を持つ最強の八卦ロボ。次元連結システムにより別次元から無限のエネルギーを引き出すことを可能とし、全てを消滅させる圧倒的火力。全方位に張れるバリアー、空間跳躍の機能を備えた機体。

そして残る一機はエヴァンゲリオン初号機。無限の力を引き出せるS2機関を搭載し、暴走時には虚数空間すらも破壊する力を持った機体。そして今その背中にはATフィールドの羽が生え、パイロットであるシンジの意思を飲み込み暴走していた。


 無限の力を持った3機が互いに喰らい合う。その光景を見ながら、一人の男が息子に対し、謝罪の言葉を漏らす。

「すまなかったな、シンジ……

 ……
 
 ……

 ……

 ……と、言うか俺が悪かったから!! 頼むから怒りを鎮めてくれえええええええ!!!!」

 そしてそのまま男は土下座して大声で叫びをあげた。まあ、無理も無からぬことである。目の前でハルマゲドンもかくやという戦いを繰り広げられてはどんなに覚悟してようが心も折れようものである。死の恐怖だとかそんなものをぶっちぎりで超越する程に怖い。

 尚、その戦いの結末であるが、異世界からよく歌を歌う機械の神が降臨してきて。彼等を仲裁してくれたおかげで地球は滅びることなく、無事に戦いは治まるのであった。









【エピソード5:誰か私を見て!!】

 最強の使徒ゼルエル。それに対し、向かい合うは4機の機体。
 
 ディス・アストラナガン
 
 ゼオライマー
 
 F型装備をつけてフルアーマー化したエヴァンゲリオン初号機
 
 そして…………………………B型装備のエヴァンゲリオン二号機であった。








【ラストエピソード:逃げなきゃ駄目だ!!】

 全ての使徒を撃退、そして最後の使徒である渚カオルとは和解して見せたシンジ達。しかし、彼等の前に新たな敵、使徒を遥かに上回る力を持った存在『ラ・グース細胞』が迫る!!
 迎え撃つはまたもや4機の機体。

 ディス・レヴの出力を全開にしたディス・アストラナガン!!

 他の八卦ロボ機能を取り込みグレートになったゼオライマー!!
 
 ATフィールドの羽を自由に展開できるようになったエヴァンゲリオン初号機!!
 
 相田ケンスケをパイロットに乗せたエヴァンゲリオン四号機!!

「ラ・グース、“あの存在”を滅ぼすために生み出された存在か……」

「なんて威圧感なんだ!」

「怖い……。けど、二人が居てくれれば!!」

「やっほー!! 遂にエヴァに乗れたぜ!! よーし、やるぞ!!」

 彼等(特に一人)は生き残ることができるのか!?


(後書き)
色々とごめんなさい。



[24294] マブラヴAL×ゼオライマー(完結編)
Name: 柿の種◆eec182ce ID:5a731e18
Date: 2010/11/27 02:14
※マブラヴAL×ゼオライマーの続きです。前回はまだ、自重していましたが、今回は自重を大幅に緩めました。次元連結システムのちょっとした応用祭りです。幾らなんでもそりゃ、無理だろって感じな位やっちゃってます。他にも悪乗り一杯してます。後、超短いです。そんな話でもよいという方は暇つぶしにどうぞ。







 秋津マサトと白銀武、地球を救った二人の英雄は、今、並び立ち宇宙からある星を見下ろしていた。
 そう宇宙からである。



 地球上のハイブ全てを潰し、更に月や火星までもその大半を攻略したマサト達は次にBETAの創造主たる珪素生命体を見つけ出すことを考えた。如何に太陽圏内のBETAを駆逐しても、何時また外宇宙から新たなBETAが襲来するかもわからない。根本的な解決をするためには珪素生命体との接触は必要不可欠であった。そこでマサト達は珪素生命体を見つけ出すためにBETA同士が念話に近い形で意思疎通していることから、その意思を逆探知できれば、珪素生命体に辿りつくのではないかと予測を建てそのアイディアを実現するシステムの開発を行った。
 次元連結システムのちょっとした応用である。
 完成したシステムを使用した所、予測は見事に当たり、珪素生命体の居場所を突き止めことに成功する。そして地球側は彼等との意思疎通し、和解することを試みる。地球人類にしてみれば恨みのある相手ではあるが、まともにやり合うにはあまりに不利な相手であると考えられたからだ。
 しかし、その試みは失敗してしまう。造物主である彼等は自らが造った存在であるBETA同様に炭素生命体を生命として認めようとはしなかったのだ。そればかりか自らの創造物と類似の存在でありながら、自分達と対等な立場に立とうとする地球の生命体の存在を疎ましく思い、滅ぼそうとしてきたのである。
 それは最悪の事態だった。宇宙に10の37乗以上の数居ると言うBETA、その全てが敵となって襲いかかってくるのだ。しかも人類を敵として見なしていなかった今までの戦いと違い、珪素生命体の指示の下、戦術の行使や“兵器”を用いてくる可能性が予測される。そうなれば如何にゼオライマーを有するとはいえ勝ち目は無いことは明らかだった。  
 そこで、マサト達は滅ぼされる前に相手を滅ぼす道を選び、準備を開始した。まずはゼオライマーの改造、ゼオライマー以外の八卦ロボの機能を組み込み、ゼオライマーをグレートゼオライマーへと進化させると共にスサノオに“風”と“雷”の機能を組み込むことで戦力の増強を行った。
 そして最後にある手を打って万全の体勢を整えると、珪素生命体への本星へと乗り込んだのである。ちなみに移動の手段であるが、空間転移はゼオライマーの基本機能の一つであり、その距離を伸ばしただけの次元連結システムのちょっとした応用である。

「武、緊張してるかい?」

「いや、何せ、こんな頼もしい仲間がいてくれてるしな」

 珪素生命体の本星を前にして会話する二人。そして武が振り返るとそこにはグレートゼオライマーが“四体”並んでいた。

「しかし、改めて見て凄い光景だよな、これ」

 それを見て武は思わず笑う。四体のグレートゼオライマー、実はこれに乗るのは全て秋津マサトである。
 このうちの一人は勿論武と戦い続けてきたマサトであり、残りの三人はそれぞれマグネイト・テンという部隊で戦い続けてきたマサト、特務分艦隊という部隊で戦い続けてきたマサト、そして碇シンジとクォブレー・ゴートンと共に使徒と戦ってきたマサト。つまり、平行世界のマサト達であった。
 次元連結システムのちょっとした応用と元因果導体である武、武を因果導体にした純夏、そして夕呼の協力によって平行世界のマサトとの対話に成功し、彼等に助力を頼むという反則技。それが彼等の選んだ必勝の策であった。だが、実際にはその策は期待を遥かに上回る成果を実現する。この場には平行世界の三人のマサトと“彼等の仲間”が揃っていたのである。

「うん、これだけの仲間がいればきっと勝てるさ」

 マサトの言葉通りそれは十分な、否、圧倒的な戦力だった。
 四体のグレートゼオライマー、その後ろには平行世界のマサトの仲間であるマグネイト・テン(神聖ラーゼフォン含む)、特務分艦隊、碇シンジの乗る羽根付エヴァンゲリオン初号機他四体のエヴァ、そしてクォヴレ-・ゴートン、更にそのクォヴレ-を通して集まってくれたαナンバーズ(イデオン含む)、ノイ・ヴェルター、時空管理局輸送艦アースラ、並列世界をまたぐ同盟組織NEUN、銀河系を支配する星間国家樹雷の艦隊等々。
 前半の戦力は正義感と友情から後半の戦力はそれにプラスしてBETA達から軽く侵略を受けていたことから共通の敵を持つもの同士として協力を申し出てくれていた。
 尚、これらの集団をこの世界へ呼んだ手段であるが、それは勿論、次元連結システムのちょっとした応用……では無い。
 如何に次元連結システムと言えど、如何にマサトが天才科学者、木原マサキの知を受け継ぐと言えど平行世界の存在を呼ぶばかりでなく、同位体を同一次元に存在させるなど簡単に出来る筈もない。
 つまり、これは次元連結システムの“本格的”な応用である。

「それじゃ、行こう!」

 マサトの号令で始まったこの戦いの結果は述べるまでも無いものであった。



[24294] 主題歌の似合う二人がマブラヴ世界に(マブラヴAL×???)
Name: 柿の種◆eec182ce ID:5a731e18
Date: 2010/12/03 04:17
※チートシリーズ第4段です。ただし、今回はシリアス100%で行きます。少なくとも書いている本人はそのつもりです






「おい、 大丈夫か?」

 誰かの声、目を開くとそこには俺の知らない目に傷のある男の人の姿があった。意識が覚醒仕切っておらずよく働かないままの頭で問われたことを考える。
 体はどこも痛く無い。だるさも感じない。

「ええ、大丈夫です」

 口に出して答えると共に意識を失う前のことを思い出した俺はある疑問に気付く。自分は“ヤツラ”と戦い重傷を負った筈、いや最後に弾幕を受け死んだ筈である。にも拘わらず、自分は今、生きている。それどころかやけに調子がいい。もしかしたら生きているというのが間違いで自分達は死人なのではないかと考える。

「もしかして、ここはあの世ですか?」

「あの世か。もしかしたらそうかもしれんな。そして、だとしたらここは地獄だろうな」

 思いついた言葉にどこか自分を責めるような辛そうな口調で言う男の人。段々と意識が覚醒してきた俺は立ちあがり周囲を見渡す。最初に目に入ってきたのは廃墟。なるほど、確かにこれは地獄であろう。そして“ヤツラ”の所為で今は世界中がこんな風な地獄になってしまっている。しかし見慣れた筈の光景に俺は違和感を感じ、よく見て見るとあることに気付く。

「こんな建物はみたことないな。ここはどこなんだ?」

「わからない。実の所、俺も気がついたらここに居てな。周囲を歩いてみてお前を見つけたんだ」

 どうやら彼もここがどこだか分からないらしい。先程はあの世と言ったが、この光景はどうも違う気がする。とりあえずは目の前の相手と色々と話して見ようとしてふと気付いた。目の前の相手の名前も聞いていないことに。

「俺は―――です。あなたは?」

「俺は――――、いや―――――だ」
 
 自己紹介し、名前を尋ねた俺に対し、男の人は最初偽名、っと、言うよりもニックネームのような名前を名乗り、その後に本名らしき名前を名乗った。取り合えず本名と思われる名前の方で呼ぶことにし、そしてその後、お互いの事情を話した所、俺達にはある共通点があることがわかった。それは、意識を失う直前まで戦っていたこと。そしてその戦いで死んだと思ったら、気がついたらこの場所に居たことである。

「一体どういうことなんでしょうね?」

「わからん。それに俺の体はボロボロだった筈なのにすっかり治っている。本当にあの世かと思えてくるよ」

「俺もですよ」

 数年前に無くなった左腕以外は元通り。それどころか服まで綺麗になっている。不思議な現象にお互い首をかしげながら、とりあえず他に誰かいないか探すために俺達は二人で一緒に移動することにした。
 
「誰もいないですね」

「そうだな」

 数分、歩くが見えるのは瓦礫となった廃墟のみ。周囲にも気配は全く無い。そこで俺は探る範囲を広めることにした。この方法で見つけると―――さんへの説明が少し面倒だが、物音がしたとか適当な言い訳をすれば怪しまれないだろう。そしてそこで俺は思わず声をあげてしまった。

「なっ!?」

「どうした?」

 俺の声に驚く―――さん。しかし気にしている暇はなかった。気付いてしまったからだ。たくさんの気が次々と消えて言っていることに。瞬間、“ヤツラ”の仕業かと考えるが直ぐに気付く。消えていく気の近くに、それよりも少し大きな気が大量に存在していることを。これは“ヤツラ”の仕業じゃない。しかし、どちらにしも放ってなどおけない。俺は力を隠すのを辞めて空に飛びあがる。

「飛んだ!? ―――、お前はいったい」

「すいません。それは後で説明します。急がないと、もっとたくさんの人が殺されてしまう」

「!!」

 驚く―――さんをその場に残して俺は急ぎ気が消えて行っている場所へと向かう。そしてやがて視界に入って来たのは大きな街に大量に溢れる見たことも無い醜悪な怪物とその怪物が人々を次々と殺している姿だった。

「お前らあああああ!!!」

 俺は怒りから気を解放する。髪の色が黒髪から金髪に変わり、目の色が緑になる。そして俺は特にたくさんの化け物が密集している街の広い路地のある場所へと飛びこんだ。

「てえりゃああああ!!!」

上方から飛びこみ、速度を落とさず怪物の中でも一際でかい奴をパンチで貫いてやる。そして小型の怪物の群れに気功波を放って纏めて吹き飛ばす。しかし、さらに湧いてくる化け物。更に気功波を放ち、化け物を蹴散らす。だがその時、左方向から光が飛んでくる。

「くっ」

 不意をつかれ直撃をうけてしまう。しかし多少熱いが耐えきれない程では無いようだった。気を感じないところレーザーのようなものであると考えると、俺は反撃で気功波を放ち、そのレーザーを撃っていた化け物を跡形も無く消し飛ばしてやる。
 するとそこで聞こえてくる轟音。音の聞こえる方を見ると少し大柄な化け物が大量に突撃をしかけてくるのが見えたので俺は迎撃の構えをとる。

「か~め~は~め~波!!!!!」

 収束した気でまとめて吹き飛ばす。しかし近くにはまだまだ化け物が溢れていた。俺は即座に移動し、逃げ遅れたと思われる人達を庇いながら化け物を倒していく。しかし、化け物の数はあまりに多すぎた。

「くそぅ!!」

 街の中でなければ纏めて消し飛ばすこともできたかもしれないが、ここでそんなことをすれば罪の無い人達までも巻き込んでしまう。仕方なく俺は街を周り続ける。そうしながら少しずつ敵を片づけていくしか手段はなかった。

「あれは?」

 何度か移動を繰り返した先、そこには化け物達と戦う巨大な人型ロボットの姿があった。ロボットは銃を撃って化け物を撃ち殺している。しかし、そのロボットは化け物を全て倒した訳でも無いのに銃を撃つのを急に辞めてしまう。
 銃を捨て、大きな刀を抜くロボット。それを見て弾が切れたか銃が壊れたのだと気付いた俺はロボットと無数の化け物の間に飛びこんで、化け物に向かって飛びこむと気功波を放ってやる。

「喰らえ!!」

 その一撃で化け物は纏めて吹っ飛ぶ。ロボットの中には誰か乗っていたらしく、俺に話しかけてくる。化け物の正体とか色々と聞きたい話しもあったけれど今はそんな時間は無い。俺はその人を置いて次の化け物達の居る場所へと急いだ。
 そしてそこで見たのは赤い髪で14、5歳位に見える女の子とその手をつなぎ引っ張って逃げる同じ位の年の男の子の姿が。

「武ちゃん、武ちゃん!!」

「純夏、今はとにかく逃げるんだ!!」

 二人は安全な場所を求めて必死に逃げているようだった。しかし化け物達に見つかってしまい、化け物は二人が走るよりも遥かに速い速度で迫る。

「させるかああ!!」

 その怪物が二人に追いつく寸前、俺は怪物に対し思いっきり体当たりをしかけた。数十メートル吹っ飛んでいく巨大な怪物の体。それを見て二人は呆気に取られたようで目を丸くしている。
 驚くのも無理は無いかもしれないけれど、今はそうさせてあげている余裕は無い。

「ここは俺に任せて。あっちの方へ逃げるんだ!!」

 化け物の気を感じない方向を指さして二人に指示する。突然現れた俺の言葉に二人は戸惑っていたようだが、頷くと直ぐに駆けだす。ところが何を思ったのか踏みとどまり、こちらを振り返った。

「あの、助けてくれてありがとうございました」

「ありがとうございます」

 そして二人は俺に対し頭を下げて礼を言うと直ぐにまた走り去って行った。残された俺はその短い言葉は思い、胸が温かくなるのを感じる。こんな気持ちを覚えたのは何時以来だろうか、少しの間だけそんな感慨に浸ってしまうが、直ぐに気を引き締め直す。今の二人のような人達を守るためにも自分は戦わなくてはならない。気を探り化け物の多い場所をみつけそこへ急ぐ。そうして化け物退治を再開する。
だがやはり敵の数は多すぎ、そしてこの街は広過ぎた。守るにはどう頑張っても一人では無理で、人の気が次々と消えて行ってしまう。さっき見た様なロボットなども頑張っているらしく、時折その姿を見かけたり化け物の気も消えて行ってはいるがやはり圧倒的に戦力が足りないようだった。
 そしてとうとう、目の前で取り返しのつかない事態に遭遇してしまう。

「うわああああ!!」

 大勢の人の塊に怪物が迫るのが見える。俺は助けようと必死に飛ぶ。しかし幾らなんでも遠すぎた。気弾を撃てば周りの人も巻き込んでしまう。どうしようも無い無力感を噛みしめたその時だった。
 強い気が生まれたのを感じ取ったのだ。それは化け物等よりも遥かに強く、そしてその気の持ち主が化け物の体を纏めて貫き、化け物達はその場に崩れ落ちる。

「大丈夫ですか!?」

「あっ、はい」

 襲われていた人達に声をかけ無事を確認すると、俺はほっとするし、怪物達を倒した人に目をやった。いや、人かどうかはわからなかった。人の形はしていたけれど、白い鎧のようなものを着ていたからだ。けれど邪悪な気は感じない。だから、俺はその人が味方だと思い、声をかけようとする。
 けれど、その前にその人が口を開き、そしてその声を聞いて驚いた。

「俺は向こうの方の敵を片づける。お前は向こうの方を」

「!? その声、―――さん!?」

 それは先程会った目に傷のある人と同じ声だったからだ。気を感じとって見ると、強くはなっているが、確かに同一人物のようだった。

「お互い話は後だ。行くぞ!!」

「あっ、はい!!」

 疑問を発しようとする俺を遮って―――さんは言う。確かにその通りだ。今は一刻も早く化け物を倒し、一人でも多くの人を救わなくっちゃならない。俺達は反対方向に飛び出す。
 そして20分後、化け物達の掃討に成功し、周囲から化け物の気は消え失せるのだった。








「―――さーん!!」

 化け物の気が消えるのを確認すると、俺は―――さんのもとへと飛び、彼と合流する。するとそこには先程見たのと同じようなロボットの姿があった。

「生身の人間が空を飛んでいる……聞いてはいたが本当だったとはな。君達は何者なんだ?」

 そのロボットに乗る人は俺の姿を見て驚いたようだった。そしてその人が俺達に尋ねてくる。一体どう答えようか、迷う。いっそ逃げてしまいたいとも思うが化け物達の正体やここがどこであるのか聞かなくてはならない。そう考えていた時だった。巨大な気と更にたくさんの気が固まった状態で近付いているのを感じたのは。

「一体どこから!?……危ない!!」

 俺がロボットを突き飛ばすとその瞬間に地面の下からとてつもなく巨大な化け物が現れ、そのまま俺を押しつぶそうとするかのようにビルに叩きつける。

「―――!!」

 ―――さんが俺を心配して名前を呼ぶのが聞こえたけれど、実際には大したダメージは無かった。しかしそれよりも大変なことがある。先程感じた多数の気の塊はこの巨大な化け物がその正体。つまり、この化け物の中には大量の化け物が詰まっているのだろう。それが排出されて散らばってしまえばまたたくさんの人が死んでしまう。

「そんなことはさせるもんかあああ!!!!!」

 俺はその化け物を掴む。そして全長1キロは超えるであろうその化け物をぶんまわし、そのまま邪魔するものの無い空に投げ飛ばしてやる。
 そしてかめはめ波で消し飛ばしてやろうとするが、それよりも先に動いた人が居た。

「うおおおおおお!!!!」

 気合いの掛け声と共に―――さんの白い鎧が鋭角的なものに変わりその気が更に強くなる。

「ボルテッカアアアアアアア!!!!!!!!」

 そして―――さんから放たれた強烈な光が化け物をその内部に詰められた化け物毎、跡形も無く消し飛ばしてしまうのだった。









「っと、まあ、とんでも無い話よね」

 香月夕呼は本を閉じると、そう言って締めくくった。彼女が幼い娘に読んで聞かせたのは、この世界を救った異世界の英雄『孫悟飯』とテッカマンブレードこと『相羽タカヤ』のこの世界での最初の戦いを書いた物語。自書形式で書いたのは本人では無いが本人の心を読み取った人物が書いたノンフィクションのストーリーである。そう世界は今、二人の英雄と彼等に看過されたたくさんの英雄達によって平和を取り戻していた。

「あいつら、今頃どうしてるのかしら?」

 そして夕呼は元の世界に戻った二人を思う。この世界は平和になった。しかし、彼等にはまだ、元の世界で辛い困難が待ち受けている。彼等はその戦いに勝てるだろうか、そう考え、そして彼女は一つの結論を下す。

「勝つわね。きっと」

 それは根拠も何も無い彼女にしては珍しい楽観論。しかし、彼女はそれを信じていた。太陽系内に既にBETAは居ない。危惧されていた国同士の争いも冷戦状態ではあるが辛うじて免れている。そんなお伽噺のハッピーエンドをもたらしてくれた二人なのだ。もしこの世界に神様が居るとしたらドけちでドSの糞野郎だろと夕呼は思うが少し位のご褒美を与えてやっても構わないだろう、そう思いながら夕呼は本の2巻を手に取った。



[24294] 3話裏話(+星界,ハルヒetc)
Name: 柿の種◆eec182ce ID:5a731e18
Date: 2011/02/19 17:16
※マブラヴAL×ゼオライマー完結編の裏話というか舞台裏というか、そんな話しです。元もネタな話に対し、中途半端に理屈っぽいので蛇足かもしれません。
ネタはネタでそういうのはいらないという人はスルーしてください。(踏み台・台無しとかにはなっていないと思います)





「突入部隊は勝利したようだよ。それと同じタイミングで全てのBETA、っと言っても全てのBETAを確認出来た訳じゃないけど、少なくとも認知している限りの全てのBETAが活動を停止したことが確認できたみたいだ。どうやら無事に終わったみたいだね」

「……そうだな」

 地球を中心とした連合軍と珪素生命体の戦い、それは連合軍の勝利に終わった。
 そしてこの戦いに対し、連合軍は突入部隊に全てを賭けていた訳ではなかった。万一、
突入部隊が破れた時、あるいは珪素生命体を倒したとしてもBETAが活動をしなかった時に備え、ゼントラーディ艦隊、バルマー艦隊、バックフラン艦隊、銀河殴りこみ艦隊Ⅱ、樹雷艦隊、ギャラクシーポリス、ENEU連合軍、時空管理局、ガミラス帝国、紅蓮団などが集まった戦艦・機動兵器を合わせれば兆の単位を超える程の大連合軍が控えていたのである。
 尚、BETAの数は上位種だけでも10の37乗居ると言われて居たが所詮は計算上の数に過ぎなかったのか、この場に集まった勢力の未開拓なエリアで増殖しているのかはわからないが、確認されている範囲で上位種どころか全BETAの数を合わせても10の18乗程しか見つかっていない。それでも100京という数なのだが、計算上に比べれば1000京分の1以下である。また、連合軍の兵器とBETAのキルレシオを見た場合、比喩抜きで一騎当千ができるものが半数を超え、一騎当万、一騎当億、一騎当兆さえ存在することから時間さえかければ掃討は可能とされていた。
 とはいえ実際に総力戦となった場合、最悪では兆に届く死傷者数が予測され、ましてや当万~当兆クラスの戦力が揃った精鋭部隊が全滅でもしていた日に敗北の恐れもあったのだから、この結果に誰もが胸をなでおろすものであった。

「不満そうだね。もしかして戦いたかった?」

 しかしにも関わらず、連合軍に含まれた勢力のひとつ、アーヴによる人類統合帝国の皇族の一人であり戦艦の艦長である少女、あるいは年齢からして女性と言ったほうがしっくりくる年頃になった女性は不満そうな顔をしているようにその副官を務める彼女とは恋仲でもある青年の目には映った。
 なので、彼はその原因について思いついたことを口にだしてみる。すると女性はその言葉を聞いて表情を不満そうなものから不機嫌なものへと変えた。

「まさか、本気で言っている訳ではないだろうな?」

「ごめん。口に出して直ぐに気付いたよ。自分が物凄く馬鹿なことを言っているってね」

「それはつまり、一瞬は本気思った訳だな。お前は私を侮辱しているのか?」

「アーヴは戦いが好きってことがまず思いついてね。それと結果を結びつけるのが遅れた」

 睨む女性に青年は頭を下げる。女性はアーヴという種族で、アーヴは種族的な特徴として確かに戦いを好む、戦争を好む。しかし、それは野蛮であることとは必ずしも直結しない。少なくとも目の前の女性は部下達を始めとした数千億の命が失われる可能性がある戦いが無為に起こることを望むような人物でないことを青年は知っている。
 更に言えば、命が失われることを気にしないようなアーヴであったとしても今回の戦いを望むものは、極めて少数であったであろう。アーヴが好むのはもっと知略を駆使した戦い数を頼りにした相手に対する掃討作戦など、恐らくは彼等が最も嫌う作業であることは彼等の性情を知っているものなら少し考えれば分かることである。

「不意に間違ったことを思ってしまうことは私にも無い訳じゃない。だが、これからはせめて口に出す前にまず吟味するのだな」

「そうするよ」

 女性は青年の言葉に悪意が無かったことを信じたようだった。その程度には恋人である彼を信用し彼がどういう人間であるかを理解していた。
そして青年の方も恋人の諫言を素直に受け取ったことで和解となる。二人の間に短い沈黙が落ち、それから女性は表情の理由を口にした。

「別に不満だった訳じゃない。ただ、少しばかり呆気に取られていたというか考え事をしていたのだ」

「まあ、気持ちはわかるよ」

 女性の言葉に青年が同意の意を示す。
 人型の機動兵器や生身で宇宙空間に生存したり、人間サイズで戦艦を凌駕する戦闘力の持ち主、そして星をも消し飛ばす程の兵器、これらを同時に見せられた日には驚きさえ通りこしてしまうのは無理もなからぬことである。

「彼等が敵にまわることが無いのが、まあ不幸中の幸いかな」

「絶対ではないがな。何時かは断層も破られるだろう。私は人類統合体との戦いを人類最後の戦争と思っていたがどうやらそうなるということはなさそうだ」

「少なくとも数万年、予測が外れても僕が生きている内や子供や孫の世代までにそれが起こることはまずない。そんな遠く先のことまで考えても仕方がないし、どうしようもないよ」

 この戦いの後、この戦いによって初めて出会った全ての勢力は互いに別れ、お互いに干渉し合わないよう絶対なる境界が張られることが決められていた。何せ、この場に集まった勢力のほとんどが元々は自分達の世界の覇者とも言える立場。英雄は並び立たないというように協調の道を進むのは普通以上に困難で、しかもその数が10を超えるとなると争うにしてもどうしていいか分からない。また、仮に全ての勢力を従え頂点にたったとしてもいきなり10倍に増えた領域を統治するなどどこの組織に不可能に近い。そう言った事情から決められた不干渉という取り決めは単なる協定と言ったものではなく、空間に断層を発生させ物理的に接触を不可能にするものであった。
この断層を解除するにはここに集まった勢力の大半が協力しなければ不可能、仮に単独の勢力がそれを成し遂げようとするのならば、最低でも数万年先のレベルにまで技術発展させなければならないと言われていた。
 ちなみに、実際にこの断層が破られることになるのは1万2千年後のことである。その時、この戦いに参加したものの子孫や転生体、時を超えた一部の者があつまり、三命の頂神、旧神となったロリな魔道書、金色の混沌神、ゴッドライディーンと言った創世の神々も参画した全宇宙の命運を賭けた戦いが起こるのだが、当然それを彼等は知るよしも無いことであった。

「生きている内と言えば、“ジント”お前はどの位生きられるようになったのだ?」

「きっちり200年、アーヴの平均寿命とほぼ同じだね」

 女性の言葉に青年、“ジント”は嬉しそうな笑みを浮かべる。今回の連合軍結成に置いて青年が得た最大の益はそれだった。友人だったクォヴレ-・ゴートンを仲介に樹雷の技術生体強化を受け、彼は本来生きる筈だった2倍強の寿命と、宇宙での活動に有利な高加速によるGに耐えられる程度に頑丈な体を手に入れていた。

「そうか」

「うん(けど、これで言い訳も逃げ道もなくなったかな)」

 女性の方もどことなく嬉しそうに頷く。そんな女性に頷きながらジントは先程の教訓を生かし内心で呟く。アーヴという種族には結婚という観念が無く、生涯添い遂げるという感覚が無い。それに対し、青年にはそう言ったものに惹かれる感覚がある。寿命が2倍になったことで、彼女以外を選ぶ選択肢も老いを言い訳にすることもできなくなった。彼にとってはある意味これからの方が苦難とも言える。とはいえ、後悔はしていなかった。

「さて、僕達の戦いはまだ続く訳だけど、とりあえず今は戦勝でも祝わないかい?」

苦難に挑む覚悟などとっくの昔にできている。それだけジントは目の前の女性“ラフィール”に惹かれているのだから。






「俺はどうしてこんなところにいるのだろうな。って、言うかマジで意味あるのか?」

「ある」

 連合軍の戦艦の内一艦。そこに平凡な一人の青年が居た。この場に存在する他の者達に比べれば本当に彼は平凡そのもの、軍人でも特殊能力者でもなく、ただ周囲には少々特殊な存在が揃っているが。
 そしてそんな少年のボヤキに横に立つ少女が頷いて答えた。

「ほう、では教えてもらおうか“長門”」

「私が安心できる。あなたが側に居るとそれだけでとても心強い」

 更に突っ込んだ問いかけ対し返ってきた答えに少年は凄まじい衝撃を受けた。彼の横にいる少女“長門”は有体に言って万能だ。そもそも人間ではない。情報統合思念体、珪素生命体も炭素生命体とも別種の高度な生命体が有機生命体とコミュニケーションを取るために対人間用インターフェース、分かりやすく言うなら00ユニットあるいはBETAの超高性能版と呼べる存在である。彼女は連合軍と情報統合思念体の間を繋ぐ役割を担ってこの場に存在する。
 そんな少女か安心できると言う言葉を口にした。つまりそれは不安を抱えていたと言うことであり、それをただの人間である自分が側に居るだけで解消できるというのだから少年が驚くのも当然である。とはいえ、驚きはしても信じられないということはなかった。何故なら、少年は少女を万能の存在として見て居ながら、同時に一人の人間として見ていたから。だから素直に受け入れられた少女が不安を感じるということを。知り合いが側にいるだけで安心できる、そんな単純な事象を。
最も、少女が安心できるのは彼が知り合いだからと言うだけでなく、それ以上の意味がある気がするが、生憎少年の考えはそこまで及ぶことはなかった。

「そいつは光栄だな。しかし、お前の親玉の情報統合うんちゃらから見てもやっぱこの戦力って凄いのか?」

「脅威。仮にこの場、全ての戦力全てを敵に回した場合、勝率は10の-37乗と計算される」

「それはつまり勝ち目無しってことか?」

「確率上、ゼロで無いだけと言える」

 少年の言葉に少女は肯定の意を示す。そして彼女は更に口を開いた。

「更に、彼等は涼宮ハルヒとは別種の自律進化の可能性を秘めている。故に、情報統合隊は彼等と対立ではなく、和解の意思を示し珪素生命体の仲介役を務めた」

「んで、失敗したと。何か、その珪素生命体ってのも、半分意地になってる感じがするな」

「その推測は興味深い」

 珪素生命体が人類を見下すと言うのは少年にとって何となく理解できることだった。仮に人間そっくりに物を考えたりできるロボットができたとして、恐らく大半の人間は彼等を自分達と同格とは見ないだろう。また、ロボットにしか見えない生命体、例えばマグネイト・テンの一員であるロム・ストールのような存在を初めて見て自然発生したものと素直に信じるものは少ないだろう。多分、珪素生命体にとっての人類と言うのはそんな感想を抱く存在だったのではないかと少年は想像する。まあ、そう考える少年自身はある意味ロボットのような存在である長門に対し、見下す感情など持っていないというか全くそう意識していないのだが。
 まあ、それはさておき、珪素生命体が炭素生命体を同格と見なせないのはある意味仕方ないとも言える。しかし情報生命体の方は明らかに生命体としては自分達よりも高度な訳でその彼等の言うことにさえ耳を貸さなかったのは何と言うか間違いを認められず、意地になってるのではないかと少年は考えた。

「もし当たってるとしたら、何て言うかちょっと哀れな気がするな」

ふと思った考えに少年、通称“キョン”は手を合わせ、滅びた彼等に対し、念仏を唱えるのだった。



[24294] 無敵の呪文(マブラヴAL×???)
Name: 柿の種◆eec182ce ID:5a731e18
Date: 2010/12/17 21:53
※チートシリーズ第5段。今回は完全な一発ネタです。超短いです。



 BETAの脅威とは何か?
 そう問われればほとんどのものは“物量”であると答えるでおろう。それは全く持って正しい。
 しかし、人類にとって脅威とないBETAの要素は他にもある数多くある。
 レーザー種のレーザの出力や精密性、突撃級の外殻の硬さ。
 そう言った能力を産みだせる技術力や適応力。
 人類を生命体として認識しない価値観。
 BETAの厄介さはあげて行けばキリが無い。
そして、そんな厄介な要素の中のひとつに行動が予測不可能と言った点があげられる。
BETAの行動は非常に不規則で人類の予測を悉く裏切ってしまう。しかもそれは大概の場合悪い方向に機能し、嘲笑うかのうように人類が必死に考えた対策を無にしてしまうのだ。
だが、ある時、異世界から来た一人の男の出現によってそれは解決した。
BETAが人類の予測を裏切ろうが、それによって窮地に追い詰められようが、その男は“魔法の言葉”を口にし、あらゆる問題を解決し、危機を覆してみせるのだ。
そして男は今日もその魔法の言葉を口にする。















「こんなこともあろうかと」




(後書き)
宇宙戦艦ヤマト実写化記念に真田さんでした。まあ、実際には言ったことの無い台詞だそうですけど(笑)


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