注記:この作品はISとオーガンのクロスですが捏造設定やオリジナル設定がかなり入っています。注意してください。
俺には前世の記憶がある。
前世での名は“オーガン”。侵略を繰り返す種族、イバリューダの中で勇者と呼ばれる存在だった。だが俺はある時、彼等を裏切った。遺伝子の奥底に眠る俺の記憶が覚えていたのだ。地球の、遠い俺達の故郷のことを、そして人の心が持つ光、その温かさを。その記憶が侵略を繰り返す自分達の行為を間違っていると教えてくれた。
地球に帰るために一人逃走をはかった俺だったが、追っ手を刺し向けられ、逃げ切れないことを悟った俺は、地球の技術と照らし合わせ、自分の体を再構築するためのデータを地球へと送った。そして、それによって得た新しい体でもう一人の俺、『真道トモル』と合身し、地球を守るため、イバリューダと戦った。
そして地球人達の協力もあり、その戦いで勝利したものの体が崩壊し、二度目の死を迎えた俺は今、3度目の生を得ていた。
「オーガン、ここいいかしら?」
会社の食堂で、一人の女性が俺に声をかけて来る。彼女の呼んだオーガンと言う名前は当然のことながら今の俺の本名ではない。今の俺の正式名称は相羽トモヤ。二度目の死を迎えた俺は相羽タカヤと相羽アキの夫妻の子供として、人間として転生したのである。そして今は地球のアメリカに住む一市民。
そんな俺を何故、女性はオーガンと呼ぶのか。それは、彼女は俺がオーガンだったころからの知り合いであるからだ。
「ああ、勿論だよ、リーブ」
声をかけてきた赤髪の女性に答え、隣の席をすすめる。俺が呼んだ“リーブ”という名はオーガンが今の俺の本名でないのと同じで、今の彼女の本名でない名前だ。彼女の本名はジェシカ・アイゼンハワー、俺と同様に生まれ変わった人間、そして俺と同じく前世はイバリューダであった女性である。前世において、種族を裏切った俺と敵対しながらも、俺の心に理解を示してくれた相手である。死んだ筈の彼女は俺と同じように転生し、大学時代に再開、そして恋人同士になっていた。前世においてそうであったように。
「ところで今日、夜は時間取れるかしら? いいレストランをみつけたんだけど」
「悪い。今日は少し無理だ。研究が忙しくってな」
恋人のデートの誘いを少し心苦しい気持ちで断る。今、俺は、レスキューや危険域での作業用のパワードスーツの開発を行っていた。自分達自身で改造した体をもつイバリューダは戦士であり、科学者な種族だ。それ故に、前世で自分自身の体を地球の技術で再現するための設計図をつくることができた。しかも地球の技術力調査のために得た地球の技術の記憶も俺にはある。それを生かし、高性能なパワードスーツ、『セーフティアーマー』の開発を行っていた。
「またなの?」
「ISとか言うのがでてきたおかげで旗向きが悪くってな。このままだと研究事態が打ち切られかねないんだよ」
不満気な顔をする恋人に謝罪する。しかし、今は研究に専念しなければならない理由が存在した。
IS、正式名称インフィニット・ストラトスと呼ばれるそれは2年前にある信じられない事態を引き起こしたパワードスーツのことだ。何者かのハッキングにより操作され日本に発射された2000発のミサイル、ISはそれをたった一機で食い止め、更に捕獲のために動いた軍隊を撃退してみせたのである。通称『白騎士事件』、その事件により従来の兵器がISの前には無力であることを世界は知った。そしてその技術が開発者より公開されたことによって、各国は競いあってその研究・開発に力を入れ、その煽りを受け他分野の研究が縮小される傾向にあるのが昨今の風潮となっている。中でも同じパワードスーツということもあって、セーフティアーマーの開発は特に風当たり強いものになっていた。一刻も早く成果を出さなければ予算削減どころか、研究自体が打ち切られる可能性が高いのである。
「まあ性能に自信はあるし、完成まで後、僅かだ。そしたら、思いっきりデートでもしよう。それまでは許してくれよ」
「そうね。期待してるわ」
もう一度謝り、許しを得ることができ、ほっとする。
その後しばらく話し、そろそろ仕事に戻らなくてはいけないとお互い席を立ち別れる。そして研究室に戻る道中、俺の姿を見つけ、声をかけてくる男が居た。その男はセーフティアーマーの研究チームのリーダーで、個人的な友人でもある男マイケル・シューマッハだった。
「オーガン、ちょっといいか?」
マイケルを始めとして親しい相手は俺をオーガンと呼ぶ。リーブの奴が俺をオーガンと呼ぶことをまさか前世のことを語る訳にもいかず、由来をぼかして周りにはニックネームだと説明していたら、何時の間にか定着し、そう呼ばれることが多くなっていた。
「ああ。けど、あまりいい話じゃなさそうだな?」
マイケルの表情には明らかに不快な感情が浮かんでいた。それを見るだけで話しの予想は何となくついた。そして、その悪い予想は見事に当たってしまうことになる。
「ああ、上からのお達しで3ヶ月以内に成果を見せろとさ。でなければ、研究は中止だそうだ」
セーフティアーマーの研究は技術面では俺がリーダーだが、マイケルの方が交渉能力に優れているため、肩書上はマイケルがリーダーで俺が副リーダーになっている。そして、今日、マイケルは上役に呼び出され、研究報告を命令されていた。それて昨今の情勢を考えれば、話しの内容は予想の範疇の話しである。
「3ヶ月か。開発自体は多分間に合うだろうが、問題はそれで納得させられるかどうかだな」
期限を設けられたことに俺は顔をしかめる。既に試作品は大凡完成し、性能テストも半分位は終了している。その結果は目標値を達成し、通常であれば間違いなく、賞賛を帯びるものだ。しかし、問題はISという比較対象があるということである。
「ああ。現状では、セーフティアーマーはどうあがいてもISには敵わないからな。まあ、兵器であるあっちとは予算も用途も違うんだから仕方ないが」
「一応オリジナルのISは宇宙開発用に作られたものなんだろう?」
「それは建前だろ? ISの開発者が身内以外には全く興味を持たない社会不適合者だってのははちょっと耳が効く奴なら誰でも知ってる話しだ。そんな奴が宇宙開発に興味を持つとは思えんよ。まあ、一人であんなもんを作ったってのが本当なら正に天才ってのは認めざるを得ないけどな」
セーフティアーマーはEDFのエクテクトアーマーをベースにこの世界の技術レベルで再現困難なところはレベルを落とし、逆に一部にイバリューダ-の技術を加えた代物だ。オ―バリウム製の装甲も反物質溶鉱炉も持たないため、ISのように従来の兵器と隔絶したと言える程の性能は持たない。それでも使われている技術自体は従来の兵器の水準を大きく上回るし、オリジナルのエクテクトアーマーと同様に装備を換装することで、さまざま状況に対応できるという特性も引き継いでいる。仮に戦闘用として設計し直したのなら、少なくともISと従来兵器の中間程度の性能を得られる程度のポテンシャルはあるだろう。またISのように女性にしか扱えないという欠点も無く、コストも抑えられている。無論、本来の運用目的である、レスキューや宇宙開発用としての機能や操縦者を保護する安全性は万全だ。胸を張って見せられる出来栄えなのだが、問題は見せる相手がそれを理解してくれるとは限らないということである。
「『白騎士事件』のインパクトはでかかったからな。俺達も何か派手なデモンストレーションでもしないと、ISの紛い物や劣化品だとか思われちまう。そうなったら、どんなに構成品でも商品価値は得られないからな」
「ああ、どうしたものかな」
一応考えるが、全くと言っていい程いい考えが思い浮かばない。そこで、俺は一度マイケルの方に話しを振ってみることにした。
「マイケル、お前は何かいいアイディアはあるのか?」
「そうだな。まっ、これを見てくれよ」
俺の問いかけに答え、マイケルが俺に向かって何か紙の束のようなものを放り投げてくる。右手で受け取り、広げてみるとそれは新聞だった。そして良く見るとその記事の中に赤い丸が付けられた箇所があることに気付く。3面記事の片隅に乗せられたその内容はNASAのスペースシャトルの打ち上げ実験を行うというものだった。
「宇宙開発の方もISのおかげで、予算も注目度も下がり、そんな扱いになっている。多分、この打ち上げが終わったら、さらに縮小されることになるだろう。このまま注目せず、ただの打ち上げ実験で終わったらな」
「もしかして、この件に何か絡もうとしているのか?……まさか!?」
セーフティアーマーとスペースシャトルの打ち上げ、その関連性を考え、俺はある可能性に辿りつき、思わず叫んでしまう。
それを見てマイケルは真剣な表情で頷いた。
「ああ、その通り、乗せるのさ。こいつに俺達のセーフティアーマーを。セーフティアーマーはあらゆる環境での活動を想定してる。当然、絶対零度に近く、放射能に満ちた宇宙空間だって装備を変えりゃあ活動できる。でっ、宇宙開発を名目に掲げながら実際は兵器に治まっちまってるISよりも先に宇宙へ行っちまおうって訳だ」
目の前の男が簡単に言ってのけた言葉を信じられず、俺は思わず尋ねた。すなわちそんなことができるのか、っと。
「NASAにはちょっとコネがある。それにさっきも言ったように向こうも結構追い詰められている状況だからな。話題性は是非とも欲しい筈だ。会社の方も俺がなんとかしてやる。3ヶ月の猶予だって上が1ヶ月って言ったのをそこまで引き延ばしてやったんだぜ」
マイケルの言葉は自信に充ち溢れていた。そして、この男がそう言うのならば俺の答えは決まっている。
「わかった。宇宙用の調整、任せておけ」
「おう、頼むぜ」
友の信頼に答えること、それが俺の答えだ。俺の答えを聞いてマイケルは無言で拳を前に突き出してきた。その意味を察し、俺はそれに合わせる。お互いのやるべきことをやる、そういう信頼の決意の表明だった。だが、その決意と信頼を示しても俺にはまだ少し心配なことがあった。
「けど、仮に上手くいったとして、これで本当に注目を集められるのか? いや、注目自体はどうにかなるかもしれないが、宇宙空間での活動なんて、従来の宇宙服でもできることだ。セーフティアーマーの性能を示すには少し足りない気がするんだが」
「ああ、そうだ。言い忘れてたな。お前には単に宇宙空間で活動できるだけじゃなく、別のことができるようにして欲しい。つまりな……単独で大気圏を突入できるように作ってくれ」
(後書き)
旧版の設定をほぼ全とっかえしました。
ネタとしては外した感がありましたし、やっぱ神様チートはあんまりよくないかなと思いなおしまして。
主人公の相羽トモヤはオーガンの転生体設定ですが、肉体を得た影響か性格的にはトモルに近くなっています。ちなみに主人公の両親が相羽夫妻なのは、スパロボWでイバリューダの始祖がタカヤの父親だったことからのネタです。この世界はラダムに侵略を受けていないので、タカヤは普通の人間でテッカマンブレードにはなれません。
とりあえず、後編に続きます。その後は評判とネタが思い浮かぶかどうか次第で。
下記に没にした旧版を載せます。
(没バージョン)
19歳のある日、よくあるテンプレ小説のように子供を庇って車にひかれ死亡したら、神様に出会って、チート能力付きで異世界で転生できることになった。
選べるということで貰った能力はデトネイタ―オーガンにでてきた、オーガンタイプのソリッドアーマーを召喚して、リスク無しで装着できる能力といくつかの漫画やアニメにできたロボットの構造に関する知識とそれを理解することができるようにIQ200位の頭脳、Fate風に言うと黄金律B位の幸運をもらった。
そして生まれ変わることになった世界は、ISの世界、ISという女性にしか動かせない新兵器によって旧来の兵器が無力化し、女尊男卑の風潮が産まれた世界である。
転生した俺は、産まれて直ぐに産みの親に捨てられた。いきなりの出来事に目の前が真っ暗になるが、その後直ぐに優しいおじいさんに拾われることになる。しかもそのおじいさんてか今の俺の親父は大会社の会長で、親父には実の子供が3人、俺から見れば兄二人と姉一人が居るから会社の後継者とかにはまずなれないけれど、その分気楽な御曹司という恵まれた立場を手に入れたのである。そしてこの世界で転生し、早12年。ある程度、自由に動ける年齢になった俺は遂に野望を開始することにした。今の俺にはチートな能力と御曹司の立場がある。これだけのものが女尊男卑の風潮なんて屁でも無い。俺はこの世界で………………
レスキュー用のパワードスーツをつくる!!!!!
えっ? ハーレム? 俺TUEEE? やりませんよ、そんなこと。
そりゃ俺も男だから少し位は興味はあるよ。でもさ、ハーレムとか無理だって。そんな魅力ある奴なら、普通に前世でももてまくりだよ。彼女さえいなかった俺には到底縁の無い話し。まあ、神様チートでニコポとか貰えばできるかもしれないけど、それって洗脳と同じじゃん? 罪悪感強すぎて出来ないわ。
俺TUEEEEもさ、ゲームとかでチートとか使うと最初は爽快でも直ぐに飽きるんだよね。ドラゴンボールのセルの台詞にもあるけど、やっぱり勝負事ってある程度力量の近い相手が居ないと面白くないと思う訳よ。
そんな訳で、これらの願望を却下した俺だけど、折角チート能力貰えるって言うんだから普通じゃできないことがしてみたいじゃん? それで思いついたのが、人型機動兵器に乗ってみたい、作ってみたいって願い。これって男の子なら誰でも一度は抱く夢だよね?けどさあ、フィクションなら確かにロマンでだけど、現実にあるとなると、戦争とか殺し合いとかノーサンキュー。んで、考えたっていうか、前世で生きてた頃から考えていたことなんだけど、現実で人型機動兵器、いや人型巨大ロボットとか人型パワードスーツが役立つ状況ってどんなのかって想定して思いついたのがレスキューだったんだよ。
例えば洪水の川の真ん中に取り残された人をヘリコプターが助けようとするんだけど、ヘリコプターは制止できないからロープを投げても上手く届かないし、高度を下げ過ぎて川に触れれば流されちゃうから迂闊に近寄ることもできなくて中々助けられないって状況。例えば高層ビルの火災に取り残された人を助けようとはしご車がはしごを伸ばすんだけれど、高過ぎて届かないって状況。例えば雪崩生き埋めになってしまった人を掘り起こそうとするんだけど、重機じゃ入れなかったり、二次災害を引き起こすかもしれなかったり、生き埋めになった人を巻き込んでしまったりと言う恐れがあるから慎重に手で掘り起こすしかないなんて状況。
そう言うのをTVで見てさ、ふと思った訳だよ。「こう言う時アニメとかにでてくる人型パワードスーツがあればなあ」って。
アニメとかにでてくるパワードスーツってさ、重機以上のパワーと人間の手の精密さ、繊細さをあわせもち、単独で空を飛べて、しかもヘリコプター以上の細かな旋回性能があって、空中で制止することもできる。人間のからだを一回り二周回り大きくした程度だから屋内でも活動できるし、宇宙とかで活動できるタイプな機密性とかもばっちり。火災現場の火も煙も怖くない、有毒ガスだって全然兵器。考えてみるとおよそレスキューで必要な能力を併せ持ってるって思うんだよね。だからもし将来、現実に作られるんなら、やっぱり兵器とかじゃなくて、そういう使われ方をして欲しい。そんなことを考えてた訳さ。「人類の産み出したらものなら人類を救ってみせろ!!」ってね。
とはいえ、前世では所詮他愛も無い妄想に過ぎなかった訳だけど、神様チートのおかげでそれは俺にとって可能なことになった。その瞬間、俺の中で“妄想”は“夢”に変わったってんだよ。んで、サンプルとしてオーガンをもらって、複製するために、知識と頭脳をもらって、ISとかつくる技術があるから量産とかいけそうなこの世界を選んだって訳。そして、転生してから今までに工学系の知識も身につけてある。チートな頭脳と知識を貰っても基礎的な部分とかは結構足りなかったりしたんだよね。
「ぐふふ、やるぞ、やってやるぞ」
自分でも怪しいと思う笑みを浮かべてしまう。10年以上溜めこんだもんで、夢は野望は再現なく膨らんでいる。ああ、どういうものをつくろうか。あたまの中で妄想、いや、夢が広がる。思わず笑いたくなってしまう。
「わははははは!!!!」
野望を開始したその日、俺は心配した家族に黄色い救急車に乗せられそうになるのだった。