宮城のニュース
「技、役立つとき来る」気仙大工、気力振り絞る 陸前高田
 | 津波に襲われた民家の応急措置に当たる藤原さん=21日、陸前高田市小友町 |
|
陸前高田市の気仙大工たちが、東日本大震災に複雑な思いで立ち向かっている。巨大な津波が自慢の丈夫で美しい家、そしてまち全体をも押し流した。伝統を守り続けてきた職人たちは大きな衝撃を受けながらも、「自分たちの力が復興に役立つはずだ」と気力を振り絞る。 「この辺では、今度の地震でも壊れた家なんかない。気仙大工が建てた家だからな」 陸前高田市気仙町要谷の元大工吉田環さん(72)はそう言って続けた。「地震には強いんだがな…」 現役時代、100軒以上の建築を手掛けた。そのうち今回の津波で押し流された家がある。経験に裏打ちされた予想をはるかに超える津波を苦々しく思う。 被災者はもう一度、伝統工法で家を建ててくれるだろうか。「無理だろうな。経費と時間がかかる」と吉田さん。「そもそも、何人が地域に残ってくれるのか」と不安を漏らす。 同市小友町中里の大工藤原出穂さん(63)は家族も自宅も無事だった。 「できる人間がやらないといけない」と、知人や避難所で暮らす人の世話に奔走する。21日は民家の壊れ具合を確かめて歩き、応急措置も施した。 全国から注文が来る棟りょうだ。市内の被害を知った仲間は「東京で仕事をすればいい」と言うが、離れるつもりはない。 「復興へ気仙大工が役立てることはきっとある。今は一歩ずつ進むしかない」 まずは津波で使えなくなった市役所の仮庁舎の整備に取り掛かる。職人たちに一緒に頑張ろうと、声を掛けている。(鈴木美智代)
<気仙大工>岩手県沿岸南部の気仙地方を発祥とする出稼ぎ大工集団の総称。くぎを使わずに木材を組み上げる伝統工法で日本家屋を建てる。その家屋はすそが緩やかな曲線を描き、城郭のように見える屋根など特徴的な造形美で全国に知られる。
2011年03月26日土曜日
|
|