東日本大震災 ゴンだけが残った…自宅付近で4日後 宮古
毎日新聞 4月2日(土)15時0分配信
|
拡大写真 |
奇跡的に助かり、預けられた女性になでてもらうゴン=岩手県宮古市で2011年3月31日、伊澤拓也撮影 |
【気仙沼では海保に救助された犬も】
愛犬家の山本さんはゴンの散歩を朝晩欠かさず、口癖は「ゴンも扶養家族にしたい」だった。津波でコンビニも自宅も被害を受け、山本さんは死亡、妻園子さん(56)、同居していた母チヤさん(82)は今も行方不明だ。
百合子さんは地震直後、夫とともに軽トラックで避難所に逃れ、山本さん一家を捜した。山本さんとは携帯電話のメールでお互いの避難状況を確認し合っていた。弟からきた最後のメールは「大丈夫か? 本当にちゃんと避難したな」だった。
避難所で「(山本さんの)コンビニは津波でめちゃくちゃ」「(地震で停電したため)津波が来る直前まで水やロウソクを求める客に対応していた」と聞き、「覚悟を決めた」という。
「ゴンのような犬が山本さん宅のあったあたりにいた」と連絡があったのは被災から4日後の朝。近所の人が山本さん宅付近でうろうろしている犬を見つけ、車に乗せて避難所まで運んだ。特徴のある茶色と黒が交ざった背中としっぽの毛。百合子さんが「ゴン」と呼ぶと車から降りて駆け寄ってきた。百合子さんは「おまえだけでも生きていて良かった」と涙を流し、抱きかかえられたゴンは足を震わせていた。
周辺の家屋はすべて津波で倒壊しており、家にいたゴンがなぜ生き延びられたのかは分からない。飲まず食わずで飼い主を捜していたのか、水を与えると一気に飲み干した。今でも海のある方向に連れていこうとすると足を踏ん張り、余震には体を震わせ、おびえているようだ。
百合子さんはゴンを被災を免れた知人に預けた。いずれ引き取るつもりだ。「散歩するたびに弟一家を思い出すでしょう。『大丈夫、ゴンとちゃんと一緒にいるよ』と言いたい」【石戸諭、伊澤拓也】
【関連記事】
【安否やサポート情報】被災地の内外をつなぐ「希望新聞」ウェブ版
【被災地のために】義援金の主な受け付け窓口
【写真ドキュメント】4月2日 被災地の表情
【東日本大震災 図説集】各地の被災状況、原発の仕組みや避難区域など
最終更新:4月2日(土)15時0分
ソーシャルブックマークへ投稿 37件
この話題に関するブログ 7件
関連トピックス
主なニュースサイトで 東日本大震災 の記事を読む
この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます
- 原発避難で野良犬化=かまれた住民も―福島(時事通信) 3月31日(木)15時57分
- 中国人研修生救った不明男性、大連で英雄に(読売新聞) 4月2日(土)13時51分
- 東日本大震災 「増産もう無理」 飲料水メーカー悲鳴写真(毎日新聞) 3月31日(木)14時9分
- 一部の遺体、傷み激しく身元確認断念…宮城県警(読売新聞) 3月31日(木)14時3分