われわれは昨日、Twitter Japanがフォロワーから購読料を取る有料モデルを1月から導入すると発表したことを報じ、またこの有料購読モデルが日本ではうまく行くかもしれないと論じた。
ところが、なんと、そういうことにはならないという。先ほど、デジタルガレージ(日本でのTwitterの運営会社)はプレスリリース(英語版PDF、 日本語版PDF)を発表し、Twitter Japanにはいかなる有料購読オプションを導入する計画もない、予見しうる将来にわたってTwitter Japanは無料サービスを維持する」と述べた。Twitter Japanチームはまたブログ記事を公開した(ただし、この記事はプレス発表のテキストをコピー&ペーストしてあるだけで、それ以上の説明はない)。デジタルガレージは、Twitterのコンテンツを一部有料化するというメディアの報道はデジタルガレージの子会社、DG Mobileの発表が「誤解を呼んだ」ものとしている。
いったい何が起きたのか? そもそもことの起こりは、他ならぬDG Mobileの杉建 一COO自らが、東京のITカンファレンスで行ったプレゼン [JP]でデジタル・コンテンツ・ビジネスの未来について述べた内容だ。これを日本最大のオンライン・ニュース・サイトの一つ、IT Mediaがまず日本語で報じた(昨日のRobin Wautersの記事で引用されているのがそれ)。この話題は他の日本語メディア( Slashdot Japan)でも取り上げられ、有料化プランが詳しく紹介された。開始は2010年1月、月額料金は100円から1000円のマイクロペイメント。デジタルガレージの手数料は30%。多数のファンをフォロワーに持つ有名人ユーザーを主なターゲットとする。等々。
ここまで詳しく説明しておいて、今度は「誤解だ」とは解せない話だ。あるいは日本のTwitterユーザーからの当初の反応のほとんどが否定的だったために急きょこのような方針変更になったのだろうか? 事情がどうであれ、有料購読モデルは当面お蔵入りとなった。(われわれはデジタルガレージにコメントを求めているところだ)。AsiajinブログにはTwitterと日本のパートナーであるデジタルガレージとの関係など、背景を紹介する記事が掲載されている。
個人的には、世界で3番目に巨大なインターネット市場である日本でTwitterの有料購読モデルが成功するかどうか、大いに興味があったのだが。他のアジア諸国ではおおむねこうしたモデルは成功している。たとえばフィリピンではセレブからの短いメッセージをSMSのストリーム(Twitterではないが、似たようなKTextというサービス)で流している。セレブがファンにメッセージを送ると、ファンの電話料金の口座に小額が請求される仕組みだ。一部のセレブには何万という有料購読者がいて、KTextと収入を分け合っている(@mikewalshの情報提供に感謝)。おそらくデジタルガレージが日本に導入しようとしていたのも、こういったモデルだったのだろう。少なくともアジアの一部地域では、Twitterの収益化の手法としてこうした方法には現実性があったと思う。
以下はデジタルガレージの問題のプレスリリースの全文。〔以下の訳文は伊藤穰一取締役のブログに掲載されたもの〕
「Twitter Japan」がTwitter 上で有料アカウントサービスを始めるという一部報道がありま すが、こうした事実はありません。日本においてTwitterは無償のサービススであり、Twitter 社 や株式会社デジタルガレージが、有料アカウントについて検討したり計画を立てたりしたことはありません。また、Twitter 社と DG は事業パートナーシップを結んでいるものの、ジョイントベンチャーの 設立についての事実がないこともここに改めてご説明します。
本件に関する報道は、DG の子会社である株式会社 DG モバイルが、サードパーティとしての有料サービスの可能性について誤解を招きかねない説明を行ったことが発端になっています。DG モバイルの説明は、Twitter 社とデジタルガレージのパートナーシップとは関係ない別個の ものです。
デジタルガレージ(私自身を含む)は、このような誤解を招いたことおよび、その修正についてのお知らせが遅れたことを深く お詫びします。この説明によって、Twitter社に協力することを通じてTwitter を無償のサービスとして日本のユーザーに広めていくという弊社の方針を、多くのみなさまが理解してくださることを望んでいます。
アップデート:残念ながらデジタルガレージは私の問合せにまだ返事をくれない。一方、上の記事中のリンク先のプレスリリースはなぜか削除されて、次のような文言に置き換えられている。
Twitter 社のサービス有料化につき、誤解を招く一部報道がありましたが、そうした事実はありません。当社取締役伊藤穰一のブログで修正させて頂きます。
◆「Joi Ito’s Web」へのリンク
「Twitter 関連サービスに関する一部報道について」
<URL:http://joi.ito.com/jp/archives/2009/11/28/005435.html>
ところが現在これを書いている時点では、リンク先の伊藤穰一氏のブログ記事は最初に私が上で引用したときと変わっていない。いったいデジタルガレージは何をしたいのか、いささか理解に苦しむところだ。
アップデート2:
プレゼンを行った杉建一氏はこの件に関するコメントを避けた(私は今日(11月30日)杉氏に直接インタビューした)。
情報源によると、デジタルガレージ(および子会社DG Mobile)はコンテンツの一部有料化をTwitter Japanで1月にスタートさせる準備を整えていたという。ところが週末に米国Twitter Inc.からレッドカードを突きつけられて撤回を余議なくされたものという。
伊藤氏のブログ記事は依然アップデートされていない。デジタルガレージも私のメールに返事をくれない。
[原文へ]
(翻訳:滑川海彦/namekawa01)