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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロイン40【悪堕ち】

1 :名無しさん@ピンキー:2011/01/29(土) 12:38:14 ID:GFp/pi4m
調教や洗脳などで悪の奴隷に堕ちるヒロイン達・・・
【ヒロイン悪堕ち】シチュ全般に激しく萌える心優しき同志が、
数少ない情報を共有して楽しんだり、まったりと過ごすスレッドです。
OVAやゲーム、漫画などの情報、SSの投稿も歓迎します。

◆前スレ
調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart39
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1290732186/

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657 :178 猟血の狩人10回:2011/04/02(土) 22:41:27.24 ID:CI2sfEAv
本当にお久しぶりですが猟血の続きでございます

「…ちょっと、まだ村にたどり着かないの?」
先程より何時間経っただろうか。
もはや日は完全に落ち、生い茂った木々が月明かりすら遮断した真っ暗な森の中をティオとニースはランタンを持ったタオファに先導され村へ続く道を歩いていた。
最初はタオファの口ぶりから少し歩けば村にたどり着けるものと思い込んでいた。
ところが、行けども行けども村は影すら見えてこず、これならさっきの道を進んでいたほうがマシというレベルにまでなっていた。
「もうちょっとですよ。もう少し頑張ってくださーい」
ニースの愚痴にタオファが軽口で受け流すのも一度や二度ではない。
実際、ニースはかなり苛立っていた。
さっきはティオに窘められて矛を収めたものの、未だにニースはこのタオファを信用できないでいる。
こっちのピンチにいかにも都合よく現れたことといい、変に親切ぶっているところといい胡散臭さがプンプン匂ってくるのだ。
(こいつ……。ティオちゃんはうまくはぐらかせたみたいだけど、私はそうはいかないんだからね……)
ニースは敵意を込めた目でタオファの一挙手一投足を見つめていた。
もしタオファが後ろを振り返ったら、闇夜に紅く煌めくニースの双眸を見ることが出来ただろう。
幸い今は夜だ。もしタオファが下手なことをしようとしても、今のニースなら軽く阻止することが出来る。
(ちょっとでも変な動きしてみなさい……。その瞬間に頭を跳ね飛ばしてやるから…)
ぱきぱきと嫌な音を立ててニースの爪が長くせり伸びてきている。
昼間に思うようにティオを守ることが出来なかったことも相まって、ニースはひどく攻撃的になっていた。
「ち、ちょっとニース……。何いきり立っているのよ」
ニースのただならない殺気にティオが小声で注意するが、耳に入っていないのかニースはティオのほうを振り向くことさえしなかった。
その時

「あっ」
「っ!!」

タオファが不意に二人のほうへ振り返り、それに反応したニースが物凄い速さでタオファのほうへと駆け出した。
「ニース!!」
ティオが止めるのも間に合わず、ニースは降闇から刃物と化した爪を突き出しタオファの喉首目掛け突き出したが、
「きゃっ!」
間一髪身をかわしたタオファの側面をニースは通り過ぎ、茂みの中へ頭から突っ込んでしまった。
ゴィン!と堅い木に何かがぶつかる音がしたがそれがなんなのかはあえて語るまでもない。
「な、なんだったんですか今の〜。いきなり暗闇からなにかがドーンって突っ込んできて……」
「さ、さぁ〜〜。大蝙蝠でも明かりに釣られてやってきたんじゃないかなぁ〜〜」
どうやらタオファはランタンを二人に向けておらず向って来たのがニースだとは気づいていないみたいだったので、ティオは適当に誤魔化して場を繕おうとした。
「で、何かあったの?タオファさん」
「あっ。そろそろ村が見えてくるころだから知らせようと思いまして……」
「あ、そ、そうだったの。
よかった〜〜〜。これでやっと一息つけるわ〜〜」

658 :猟血の狩人:2011/04/02(土) 22:42:37.21 ID:CI2sfEAv
昼間からリビングデッドとの激戦で心身共に疲れ果てていたティオは、村が近いというタオファの言葉に張り詰めていた緊張の意図がくたくたに緩む気がしていた。
「そうと聞いたら力が湧いて来たみたいだわ。タオファさん、早く行きましょ」
「は、はい……。あれ?ニースさんはどこに行ってしまったのでしょう……?」
「気にしない気にしない。ちょっとどっかで頭を冷やしていると思うわ。
あの子、夜目が利くからすぐに追いついてくるわよ。ささ、早く早く!」
ニースがいなくて戸惑うタオファを尻目に、早く休みたくて仕方がないティオはタオファを引きずるようにして先を急いでいった。
そんな二人のやり取りを、木に激突して地面に突っ伏しているニースは苦々しげに聞きつつ

「ティオちゃんの……、バカーっ!!」

と、やり場のない怒りを爆発させていた。





「………」
あの後、憮然とした顔をして追いついてきたニースは一言も声を出さないままティオの後を足音も立てずに進んでいる。
もっとも、吸血鬼は足音を立てることはないのだが。
「自業自得よ。意味もなくタオファさんに突っ込んだりするから」
ティオはそんな臍を曲げているニースに厳しい視線を投げかけている。ニースにどんな理由があったのかは知らないが、自分達を助けてくれた恩人のタオファを無意味に攻撃しようとしたニースに同情の気持ちが湧いてこないのだ。
「……意味あるもん…」
「どうせ自分の思い込みでしょうが。ったく、人を無闇に疑ったりするのはよくないわよ」
「うぅ〜〜〜〜〜!」
確かにタオファに対する疑念は多分にニースの妄想から来ているものがあるかもしれない。
だが、こういう時の自分の勘というものをニースは信じていた。
吸血鬼の感覚から来る直感ではない。たくさんの吸血鬼をその手で討ってきた『狩人』としての戦場の勘だ。
どっちかというとお人よしのティオと違い、ニースは人間だったころから心の根本で人を信用していない。
そんな自分の心に目の前のタオファという人間は酷く信用ならない者として描かれていたのだ。
「もう少ししたら一息つけるから。そうすれば血が上った頭も冷めるでしょ」
(そんな熱い血なんか、私には流れてないよ…)
いつもなら心を和ませるティオの軽口も、今の状態では酷く煩わしく感じてしまう。
このままではフラストレーションが溜まりすぎて、ティオがいるにも拘らず誰彼構わず引き裂いてしまいそうだ。
そんな中、満月の月明かりすら通さない暗がりをそれまですいすいと進んでいたタオファの歩みが、不意にぴたりと止まった。
「……あら?」
「…?どうしたの、タオファさん」
不審に思ったティオがタオファに詰め寄ると、タオファが怪訝な顔をして振り向いてきた。
「いえ、この道を下ればもう村なんですけれど……。変なんです。
明かりが、全然ついていないんです……」
「え……?!」
タオファが指差した先は森が切れて月明かりが指しており、その月光によっていくつかの建物の屋根が照らされている。
が、それらはタオファの言ったとおり暗闇に覆われており、人の営みが全く感じられてこない。


659 :猟血の狩人:2011/04/02(土) 22:43:37.12 ID:CI2sfEAv
「どういう、こと……」
せっかくゆっくり休めると思っていた矢先の異変に、ティオのそれまで抑えていた疲れがドッとでかけた、その時

「ガァ―――ッ!」

茂みから突然、唸り声と共に一体のリビングデッドが飛び出してきた。
「リビングデッド?!」
緊張の糸が切れかけたところの不意打ちにティオの反応は一瞬遅れ、懐の長剣の柄に手をかけた時にはリビングデッドは既に攻撃態勢に入っていた。
が、次の瞬間
「……ガァ?!」
ティオを捉えようとしたリビングデッドの手は二の腕辺りからばっさりと切れ、その次には肩口が切れ、そのまま胴が吹っ飛んでから首が暗闇へと消えていった。
「………フン」
目の前でバラバラになるリビングデッドを唖然と見ているティオの目に、リビングデッドの後ろでぶん!と血糊の着いた手を払うニースの姿があった。
「ニース!ありが……?」
が、ニースは感謝を述べるティオなど目もくれずにずかずかとタオファのほうへと進み、タオファの胸倉を力一杯掴み上げた。
その瞳はあまりの怒りに真っ赤を通り越して白く輝いているようにも見える。
「ちょ……ニースさん。なにを、苦し……」
「貴様!やっぱり私たちを騙したんだなぁ!!」
首を襟でぎゅっと絞められてタオファは息苦しそうに喘ぐが、ニースは全く力を緩めることなくタオファを締め上げている。
ただでさえ人間よりはるかに強い力を持つ吸血鬼の、しかも日が暮れてパワー全開になったニースの渾身の絞めにタオファの顔からはみるみる血色が消え失せ、酸欠になった体は不規則な痙攣を繰り返している。
「こんな山奥まで私たちをおびき寄せて、夜中で目が利かないところでリビングデッドに襲わせるなんて実に姑息で卑怯な真似するじゃない!
でもお生憎様!私は夜のほうが五感が冴えるのよ!
こんなくだらない真似をして。タダで済むなんて思わないこと……」

「なにやってんのよニース――――っ!!!」

このままでは確実に絞め殺される未来しかなかったタオファを救ったのは、ニースの横から飛んできたティオの豪快な飛び膝蹴りだった。
「うきゃっ!」
ティオの膝は勢い良くニースのわき腹に食い込み、その拍子でニースの掌もタオファから外れ、タオファはそのまま地面に崩れ落ちた。
「………ゼェ…ゼェ……ゲホッ…!」
どうやら窒息死は免れたみたいでタオファは激しく咳き込みながら体を小さく丸めている。
その頭上で不満げなニースと怒りを爆発させたティオが激しく睨みあっていた。
「さっきから!なんであんたはことある毎にタオファさんに手を出すのよ!!なんか恨みでもあるの?!まだ会ったばかりじゃないの!」
「ティオちゃんはわかってない!こいつは絶対危険な奴だよ!放っておいたら、何をしてくるかわかったものじゃない!」
「なんでよ?!この人は私たちを助けてくれたじゃないの!もし悪意があるんだったら、あのまま私たちを放っておいたらよかったじゃない!
そうすれば勝手に死んでくれるんだからさ!!」
「それも私たちを嵌めようとしての考えかもしれない!とにかく、こいつをこのままにはしておけないんだ!」


660 :猟血の狩人:2011/04/02(土) 22:44:37.17 ID:CI2sfEAv
ティオもニースも半ばムキになり、感情を剥き出しにして口喧嘩を展開している。
ニースが吸血鬼になって…いや、二人がコンビを組んで以来ここまで二人の間が険悪な状態になったことはなかった。
もう回りがどんな状況になっているかなんてことは完全に無視し、二人は決して相容れることのない自己主張を叫びあっていた。
「だから、なんであんたは分かってくれないのよ!」
「ティオちゃんもなんでそんなにこいつの肩を持つのよ!もしかして、いつの間にかこいつに暗示でもかけられているんじゃないの?!」
「あんたじゃあるまいし!バカ言っているんじゃないの!」
「バ、バカって言った?!バカって言うほうがバカなんだよ!ティオちゃんのバカ!!」
「バカはあんたよ!!」
もはや売り言葉に買い言葉。収拾がつかずにギャンギャンと喚き続ける二人の足元からその時、ようやっと落ち着いたタオファがよろよろと起き上がってきた。
「あ、あのぉ〜〜〜。あんまり騒ぎすぎますと……そのぉ……」

「「なに?!」」

口論を邪魔されたティオとニースは同時に烈火の如き怒り顔をタオファに向け、タオファはその迫力に圧倒されつつおそるおそる指で二人の背後を指差した。
「リビングデッドが……たくさん集まってきてしまいますよぉ……」

「「え」」

二人ともその一言でふと冷静になり、タオファが指差している先へを恐る恐る目を向けると…
そこには何十体ものリビングデッドがわさわさと群れをなしていた。
「げっ!!」
口げんかに夢中になってリビングデッドの接近に全く気づかなかったティオは、慌てて腰の剣に手をかけて迎え撃とうとしたが
「ちっ、うざい!!」
その前にニースが目にもとまらぬ速さでリビングデッドの群れへと突っ込んでいった。
「ニース!ちょっとま…」
幾らなんでも数が多すぎる。ティオはニースに自重しろと声をかけようとしたが、その声が出る前にニースの前にいた3〜4体のリビングデッドが細切れになって崩れ落ちた。
「え」
その呆気なさに呆然とするティオを尻目に、リビングデッドの真っ只中に入り込んだニースは物凄い速さで動く死体を物言わぬ塊へと変えていく。
「このこのこのこのぉぉ!!クソ死体め、二度と動き出せないように細切れのミンチにしてやるぅぅ!!」
昼間のストレス、タオファへの不信、ティオへの不満が一気に爆発したのか、ニースはそれまでティオが見たこともないほどの速さでリビングデッドを血祭りへと上げていく。
そして、ティオが結局剣を抜くまでもなく数十体いたリビングデッドはすべて細切れの腐肉へと料理されてしまった。
「ふん、手ごたえがなさ過ぎるよ…
ティオちゃんももうちょっとしっかりしなよ。疲れて頭がボケているのはわかるけどさ!」
まだ怒っているのか舌をべぇと突き出しながら自分をを睨むニースにムッとしながらも、ティオは改めて夜の吸血鬼の戦闘能力の高さを思い知ることになった。
何しろ、昼間にあんなに苦戦していたリビングデッドをまるで鼻であしらうようにあっけなく解体してのけたのだ。
ニースと戦うことはないとはいえ、こんな吸血鬼と夜間に一対一で戦う羽目になろうものならとても勝てる気がしない。
だからこそ、『狩人』での教えでは必ず吸血鬼には二人以上で対峙することになっている。
が、それでも今のニースに勝てるかといえば…疑問が残ったりする。それほどの強さだ。


661 :猟血の狩人:2011/04/02(土) 22:45:37.24 ID:CI2sfEAv
「は〜〜〜っ。ニースさん、昼間はからっきしでしたけど今は凄いですね〜〜」
そんなニースの大立ち周りを、タオファもまた目を丸くしてみていた。
「そんなに強かったんでしたら、昼間にあんな追い込まれることなかったんじゃないですか?」
「…私は昼間は調子が出ないの!あまり苛つかせること言うんじゃない!!」
もしティオが睨みを聞かせていなかったら、ニースはそのまま帰す刀でタオファの首を刎ねていただろう。
だがもちろんそんなことは適わないので、ニースは強烈な殺気を込めた視線をタオファにぶつけていた。
並の人間ならその殺気に触れただけでも気がおかしくなりかねないほどの殺気。
勿論ニースはそれほどの殺気をわざとタオファにぶつけていた。
直接手を出せないなら、自分の仕業とはわからない方法で潰してやる。しかし
「あ、あの〜〜。ニースさん、私そんな悪いこと言いましたかしら〜〜」
当のタオファはニースの殺気を真正面から喰らっているにも関わらず、ニースの態度に脅えるくらいでさしたる変化を見せてはいなかった。
「……?」
さしたる変化も見せないタオファにニースは首を傾げ、込める殺気が足りないのかとさらに鬼の形相でタオファを睨みつけようとしたが、それより先にニースの拳骨が上から降ってきた。
「ニース!」
ゴチン!と激しいショックがニースの頭を揺さぶり、さらに間髪入れずにティオはニースの両肩を掴んで自分のほうへと振り向かせた。
「ニース!あんたまたタオファさんを魔眼で操ろうとしていなかった?!」
タオファに聞こえないように小声で、しかし強烈な怒気を含めながらティオはニースに詰め寄った。
普段のニースならここで適当に誤魔化すことも出来ただろう。
が、頭に血が上っていたニースはつい
「そんなことしてない!あいつの頭をバカにしようとしていただけだよ!!」
と、言わなくてもいいことを口に出してしまった。
「この、おバカぁ!!」
ティオのさらなる拳骨がニースの頭に炸裂し、そのままティオは訳がわからずに首をかしげているタオファの元へと駆け寄っていった。
「大丈夫ですかタオファさん?!体がどこかおかしなところはありませんか?!」
「い、いいえ〜。別になんともありませんけど……。ああ、それよりも村が……!」
「村?!」
そう言われてティオも気がついた。
タオファに言われるままについてきたのは、体を休める村を求めてのことだったのだ。
その村の灯りが消え、村の周りをリビングデッドが徘徊しているということは……
「それって……、とってもやばいんじゃないの?!」
「やばいと…、思います…」
なにがやばいのかを即座に察したティオは、タオファの腕を掴んで即座に駆け出した。
「あ、あらら?!」
戸惑うタオファを気遣う余裕もなく、ティオは人気の消えた村目掛け一目散に走っていく。
その後ろ姿を呆然とニースは眺めながら
「……いいかげんにしろティオちゃん―――っ!!」
怒りのあまり横にあった木を力一杯殴りつけ、その衝撃に耐えられなかった木はバキバキと折れ崩れてしまった。


662 :猟血の狩人:2011/04/02(土) 22:46:37.09 ID:CI2sfEAv



「これは……」
ティオとタオファの眼前に広がる村は、案の定村は静まり返り満月と星の冷たい光だけが村を照らしていた。
「みなさ〜ん、どこにいったんですか〜〜〜」
タオファの声も暗闇の中に虚しく吸い込まれ、耳が痛いほどの静寂がすぐに戻ってくる。
もう村の中心辺りまで進んで入るのだが人どころか犬猫の気配すら感じすることが出来ず、村中が死の気配に包まれていた。
「タオファさん…、一応聞いておくけど、ここって本当に人がいる村なの……?」
「当たり前じゃないですか〜!私、今日のお昼までちゃんとここにいたんですから!」
憤慨したようにタオファは頬を膨らませるが、ティオとしてはここに昼間まででも人が住んでいたということがどうしても信じられない。
かなり暗くて判別はしづらいのだが、村の家屋はボロボロに朽ち木々も手入れが行き届かずに伸び放題の印象がある。
これで人が住んでいる村というのが信じられないのも無理はない。
「ん?!」
その時、家の影からパキッと折れ枝を踏む音が聞こえた。それはなにか動いている者がいるという証だ。
「だ、誰かいるんですか〜?村は、どうしてしまったんですか〜?」
その音を聞き、タオファはなんの警戒もしないで音のしたほうへと駆けていった。
「タオファさん!迂闊よ!」
タオファのあまりに無用心な行動に、ティオは慌てて剣を抜きタオファを追いかけていった。
すると案の定

「キャーッ!!」

タオファの前に出てきたのは村人ではなくリビングデッドであり、不意を喰らったタオファは悲鳴を上げて体が固まってしまっていた。
「タオファさん!!」
リビングデッドがタオファ目掛けて伸ばしてきた手をティオは剣でバラリと切り裂き、そのままタオファの手を持つとダッ!と駆けてその場を離れた。
「ティ、ティオさぁ〜〜ん」
涙目になってティオを見るタオファに、ティオは悲痛な面持ちで呟いた。
「気をつけて!これだけ人の気配がないっていうことは……、もうこの村はリビングデッドにやられているのよ」
それは、この村のことを知っているタオファにとっては認め難いことであろう。
だからこそ、今のタオファの無用心な動きへと繋がっていたと考えられる。
「そ、そんな…」
厳しい現実を突きつけられ、タオファはへなへなとその場にへたりこんでしまった。
が、こうなってしまってはぐずぐずしている暇はない。
この村一帯がリビングデッドに汚染されてしまったとなると、うろついているリビングデッドの数も半端ではあるまい。
一刻も早くこの村から脱出しないと、どこからどれほどの数のリビングデッドが襲い掛かってくるか見当もつかない。
「早く立って!この村は危険だわ!今すぐに逃げ出さないと……」
だが、少し遅かったようだ。
「ティ、ティオさん!!」
酷く脅えた顔をしたタオファがティオの後ろを指差す。
そこには、一体どこに潜んでいたのか10体ではきかない数のリビングデッドがわらわらと軒先や玄関口から湧き出してきた。
いや、後ろだけではない。
前からも、横からも、まるでティオたちを包囲するかのようにあちこちからリビングデッドが現れたのだ。

663 :猟血の狩人:2011/04/02(土) 22:47:37.10 ID:CI2sfEAv
「な!囲まれてた?!」
それがリビングデッドの知恵なのか、それとも本能なのかは分からないが、ティオとタオファはリビングデッドに完全に包囲されてしまっていた。
(なんて迂闊!全然リビングデッドの気配に気づかなかった!)
やはり昼間の戦闘で集中力が極度に落ちていたのだろう。ここまで近づかれているのに全然リビングデッドに気づかなかったことにティオは思い切り臍をかんだ。
だが、見る限りリビングデッドの包囲網はまだ厚さが薄く、一転突破すれば突破口が開けるように見える。
自分の剣技と先ほどのタオファの符術をあわせれば、なんとか突破できなくもないだろう。
「タオファさん!血路を切り開くわ。援護して…」
ティオは比較的包囲の薄いところを指差し、タオファに援護を求めた。が
「あ、あぁ……。なんで、みんな……。おじさん、おばさん……」
どうやらリビングデッドの中に見知った顔がいるようで、タオファは座り込んだまま完全に放心状態になっている。
これでは援護を求めるどころかここから逃げ出すことも不可能だ。
「なっ、ちょ……!タオファさん、しっかりして!!」
ティオはへたりこんでいるタオファの肩を掴んでがくがくと揺すったが、タオファは聞き取れない言葉をブツブツ呟くばかりで正気に戻る気配を感じさせない。
そうこうしている間にもリビングデッドの数はどんどん増えてきて、もはや蟻の這い出る隙間もないほどの厚さになっていた。
これではとても脱出など覚束ない。
「くっ……!」
じわじわとにじり寄ってくるリビングデッドにティオは剣を構えつつ、ちらと上を見た。
このまま背にしている家の屋根に飛び乗ってしまえば当面のリビングデッドの襲撃を凌ぐことは出来る。知能のないリビングデッドに上に登るという行為は出来ないからだ。
だが、それもティオだけならという話だ。
さすがのティオも、タオファを抱えて屋根に飛び乗るなんて行為は不可能に等しい。
ニースなら造作もないことなのだろうが、ニースとは先ほど置いてけぼりにしたっきりそのままだ。
普段は必要以上にベタベタ接してくるのに、こういう時に限って姿を見せてこない。
まあ、間違いなく先ほどまでのタオファへの扱いに対する不満からだろうが。
となると、するべきことは一つしかない。
「…やるしかないか」
ティオは茫然自失のタオファを抱え上げると、今にも襲い掛かってきそうなリビングデッドを牽制しつつしゃがみこむと、渾身の力を込めてそのまま勢い良く飛び跳ねた。
「でぇい!!」
ティオの鍛えあげられたしなやかな脚力は、そのまま二人を空中へと舞い上がらせた。
が、やはり屋根までは無理があり、後少しというところでティオの体は上昇するのを止めてしまった。
「!!」
やはり無理だったか!とティオは歯噛みしながらも、自分のすべき最低のことだけは忘れなかった。
すなわち
ティオは手に抱えたタオファを力一杯放り投げ、タオファはそのまま屋根へ無事落下していった。
「よし!」
タオファがリビングデッドの手の届かないところに行ったことにティオは心の中でガッツポーズをとった。
が、その代償としてティオは不安定な姿勢のまま地面に落下し、急いで体勢を立て直した時はすでに周り中をリビングデッドに取り囲まれていた。
「…こりゃ、だめかな?」
すでに最後の跳躍を許してくれる時間の余裕もなさそうで、ティオに残された手立ては出来る限り抵抗をしてリビングデッドを数体道連れにすることぐらいだった。
「しかたがないわね…。かかってきなさい…!」

664 :猟血の狩人:2011/04/02(土) 22:48:37.99 ID:CI2sfEAv
覚悟を決めたティオは大分くたびれている剣を二本構え、包囲を狭めてくるリビングデッドに突っ込もうと腰を低くかがめた。
そして、いざ突撃しようと地面を蹴った瞬間

「それっ……わぁぁっ!!」

ティオの体は突然空に浮き、そのままタオファが倒れている屋根へと吹っ飛んでいった。
その直後、ティオがそれまでいた壁際はリビングデッドによって埋め尽くされていた。まさに間一髪。
「あれ……」
一体何が起こったのか理解できないティオだったが、妙に引っ張られる襟首に気づいて振り向くと、後ろにはぶすーっと不機嫌そうに眉を顰めるニースがティオの襟を掴んでいた。
「ニース…」
「…本当バカだね、ティオちゃん。こんなやつを助けようとして自分が死にそうになるなんてさ」
ニースは相変わらず苦々しそうにタオファを睨んでいる。が、その眼には僅かな嘲りとほんの少しの憐憫が混じっていた。
「自分がするまでもなく勝手に壊れちゃって……。最後まで忌々しい奴だったね」
「ニース!助けてくれたのは素直に嬉しいけど、その言い方はあまりにも可哀相よ!!」
「だって、こいつと一緒にこんなところに来たから今こんなことになっているんだよ!下を見てみなよ!」
確かに、三人がいる屋根の下は夥しい数のリビングデッドに取り囲まれ、壁をガリガリと引っ掻く音や身の毛もよだつうなり声があちこちから聞こえてくる。
「こんな村に来ようとしないであのまま道を進んでいたら、少なくともここまでのピンチにはならなかったんだよ?!
それもこれも、全部こいつが悪いんだ!ティオちゃんが殺されそうになったのも、全部こいつのせいなんだ!!」
「うっ…」
ニースがビシッとタオファを指差した時、ティオは反論が出来なかった。
かなり悪意が篭っているとはいえ、ニースの言っていることも一理あるのだ。
だからと言ってそれを素直に認めることも出来ない。
自分達を助けてくれたタオファを悪く思えないというのもあるが、ニースの言い分があまりにも主観的過ぎてどうしても同意しかねてしまうのだ。
「だから言ったでしょ!こいつは危険な奴だって!経緯はどうあれ、実際そうなっているじゃない!
もし私が助けなかったら、ティオちゃんは今頃死体どもに食い殺されていたんだよ?!
だから、こんな奴放っといてさっさとここから逃げよう!あんな奴ら、すぐに全部バラバラにしてやるから!」
ニースとしては助けるのはティオだけでいい…、というか元々ティオ以外の人間にはなんの思いいれも持っていないから当然の発想なのだが、ティオにしてみたらここでタオファを見捨てるなんて真似が出来るはずもない。
「ダメよ!ここから逃げるなら、タオファさんも一緒にしないと…!」
そのあくまでもタオファを守ろうとするティオの態度にカチンときたのか、ニースはぶるぶると怒りで震え、口から牙を長く伸ばしながら

「……もう、ティオちゃんなんて知るもんか―――ッ!!」

と、大声で怒鳴った後大きく跳ね、闇の中へ消えていってしまった。
「ちょ、ニース!ニース――ッ!」
流石にニースに悪いと思ったか、ティオは大声でニースを呼び続けたが完全にへそを曲げたのかニースは返事も返してこない。
とはいえ、この程度の我がままはしょっちゅうあることなので
「…ま、暫く頭を冷やせばニースも冷静になるでしょ」
と、ティオは時間の経過に任せることにしてしまった。



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