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2011年4月3日(日)付

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震災と寄付―被災地へ、志を託そう

駅前で、レジで、ウェブサイトで。被災地を救おうと募金活動が広がる。朝日新聞厚生文化事業団でも受け付け中だ。誰もがボランティアに行けるわけじゃない。個人で物資を送るのも混[記事全文]

八百長処分―「復興場所」で再起を

角界を揺るがした八百長問題が、ひとつの山を越えた。日本相撲協会は23人の力士らが八百長に関与したと認定し、引退勧告などの処分を科した。事実上、角界からの追放を意味する厳[記事全文]

震災と寄付―被災地へ、志を託そう

 駅前で、レジで、ウェブサイトで。被災地を救おうと募金活動が広がる。朝日新聞厚生文化事業団でも受け付け中だ。

 誰もがボランティアに行けるわけじゃない。個人で物資を送るのも混乱につながりやすい。ならば、思いと志をお金に託そう――。いろんな人が参加できる、有効な支援の方法だ。

 家族や家を失った人に直接見舞金として渡されるのが「義援金」だ。日本赤十字社や共同募金会などを通じ自治体に届けられ、配られる。被災者個人への公的支援が乏しい中、過去の災害では大きな励ましになった。

 阪神大震災では空前の1800億円が集まった。日赤によると今回はその3倍近いペースで先月末現在、約700億円。海外からも寄せられている。

 問題は、被災者に届けるめどがまだ立たないこと。被災の全容がわからず、自治体は被災証明を出せず、配分の基準を決める手はずが整わないのだ。

 せっかくの熱い善意だ。各県と関係機関で早く合同配分委員会をつくり、とりいそぎ簡易な手続きで、第一弾のお金を渡せるようにできないか。

 もう一つの寄付の形が、現地で活動する災害ボランティア団体やNPOを応援する方法だ。炊き出しや医療、子どものケアといった支援に、様々な団体がかけつけている。

 暮らし再建までの長い時間、被災者のそばにいて、きめ細かに支援をする存在が必要だ。阪神の後、そうした経験を積んだ団体が各地に育っている。頼りは市民や企業からの寄付だ。

 どこを応援するか、初めは迷う。中央共同募金会や日本財団は、様々なNPOの活動を支援するための募金も始めた。先月末には150近い団体が加わる「東日本大震災支援全国ネットワーク」が発足。これらのホームページも手がかりになる。

 肉親を奪われた孤児たちを支えたい。被災した障害者が気になる。そんな思いに合う「マイ寄付先」を探してみる。お金がちゃんと生かされているか、団体の活動報告も調べる。もう一度寄付する、「いいね!」と知人も誘ってみる。息の長い支援への一歩になる。

 折しも、NPOへの寄付について税制上の優遇措置を広げようと、震災前から検討が進められていた。今国会で実現させ、後押しとしたいものだ。

 「公助」ではとても追いつかない部分を、市民力で埋める。寄付はその燃料になる。

 遠い昔に思えるけれど、今年の日本は、タイガーマスク運動で幕を開けたのだった。

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八百長処分―「復興場所」で再起を

 角界を揺るがした八百長問題が、ひとつの山を越えた。

 日本相撲協会は23人の力士らが八百長に関与したと認定し、引退勧告などの処分を科した。事実上、角界からの追放を意味する厳罰である。

 土俵への信頼を失墜させた今回の問題に厳しい態度で臨まねば、角界に未来はない。八百長の存在を初めて公に認め、異例の大量処分を言い渡したのは、協会の危機感の表れだろう。

 処分を受けて、協会の大相撲新生委員会は近く、再発防止策をまとめる。放駒理事長が本場所再開の条件に挙げた「問題の全容解明」「関与力士の処分」「再発防止策」の3点セットのうちのひとつだ。

 3月の春場所の中止以降、協会が思い描いてきたシナリオは5月の夏場所前に3点セットをそろえ、問題を収束させるというものだった。

 だが、大量処分で幕内6人、十両9人を含む21人もの力士が土俵を去る事態だ。まだ疑惑が残るため、特別調査委員会の調べは続く。今回の処分で区切りとする青写真は狂った。とても、席料をもらって場所を開ける状態ではない。

 この際、夏場所での本場所再開は見送るべきだ。かわりに、大震災の避難所をまわって、無料の「復興場所」を開いてはどうか。

 大相撲は元来、寺院や神社などを建立、修繕する寄付を募るための勧進相撲に端を発している。東北は力士が多く輩出する地域で、相撲熱は高い。

 校庭やお寺の境内に円を描くだけでもいい。力士同士の勝負はもちろん、子どもらとの相撲も喜ばれるだろう。出直しの一歩の意味もこめ、角界が貢献できることがあるはずだ。

 今回の八百長問題の調査は、弁護士らを中心に構成される特別調査委が担った。

 当初明らかになった八百長メール以外に物証がなく、関与を認めた親方らの証言に多くを頼った。処分への手順が十分だったとは言えない面もあり、不満を抱く力士らが提訴する動きもある。しかし、協会と力士が泥仕合になれば、捨て置かれるのはファンだ。

 角界が今、やるべきことは何か。それは、皆が納得できる再発防止策を作ることだ。ファンが安心して応援できる相撲を、取り戻すのだ。

 大きな痛みを伴った今回の大量処分を、角界は、自らの立ち位置を再確認する契機とするべきだ。ファンに支えられファンとともにある大相撲を、もう一度築き上げよう。

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