2011年3月19日
小池あきら
東京都民のみなさん。
東日本大震災は、まさに「国難」ともいうべき未曽有の大災害となりました。今この瞬間も現地では、懸命の救援活動が行われ、命がけの原発事故対策が進められています。
私はお亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。そして現地で救援に当たられているすべてのみなさんに敬意を表するものです。
このような中で行われる東京都知事選挙にあたって、わたくし小池あきらは、被災者の救援、被災地の復興、都民の生活防衛のために、総力をあげてとりくむ都政を実現し、いのちを守る「福祉・防災都市 東京」に転換することを呼びかけます。
都民のみなさん。
被災者の救援と被災地の復興に、今こそ首都東京の持てる力をすべて出しつくす時です。わたくし小池あきらは、都民の支援活動の先頭に立つことを、東京都知事としての最初の大きな仕事として取り組みます。
被災地に救援物資を直ちに届けるとともに、被災者の命と健康を守る医療体制を緊急に確立するため、医師や看護師などの救援チームの派遣を抜本的に強化します。
被災地からの住民の受け入れのために、いま東京都が提供しようとしている公営住宅は600戸ですが、都営住宅だけでも募集停止している空き家をはじめ1万戸以上が活用可能であり、これを最大限提供します。また区市町村とも協力し公共施設なども活用します。さらに民間宿泊施設の借り上げもおこない、首都東京の持っている条件を総動員します。
被災地の復興に要する期間も費用も、これまでの災害とは比べものにならない規模になることが予想されます。生活再建を復興の土台にしながら、住民の合意に基づいて、行政機能の回復と失われたコミュニティの再建を進めるために、東京都の持っている人的・財政的な力は大きな役割を発揮できるはずです。
国を挙げての被災地復興は、これまでにない一大事業となるでしょう。わたくし小池あきらは、すべての東京都民が立場の違いをこえて、行政も住民も企業もNPOも、心ひとつに被災地の救援と復興に取り組むことを呼びかけるとともに、私自身がその先頭に立って奮闘することをお誓いするものです。
都民のみなさん。
東京は東日本大震災の被災地でもあります。わたくし小池あきらは都知事の責務として、被災地の救援・復興と同時に、都民の生活を守るために全力を尽くす決意です。
「計画停電」によって鉄道の運行が制限され、都民の通勤・通学や外出に多大な困難をもたらしています。水道の断水、濁水による被害や、医療機関や介護施設、在宅医療の現場や学校給食などへの深刻な影響も出ています。「計画停電」の発表が前日の夜遅くになったり、発表内容が二転三転するなど、周知のまずさが混乱に拍車をかけています。
わたくし小池あきらは、鉄道や水道、医療機関や介護施設、在宅治療中の患者さんなどに最優先で電力を供給するよう東京電力に強く求めます。ガソリンや軽油などの燃料不足が、消防・救急医療や医療機関、介護施設の停電時の自家発電などに影響を及ぼさないよう、関係業界、事業者に安定供給を求めます。同時に東京都としても発電機や燃料の緊急提供など、最大限の対応をしなければなりません。
物不足も深刻になっています。被災者や買い物が困難な高齢者などへの物資の供給のためにも、買い占めも売り惜しみもやめて、都民が力を合わせてこの困難を乗り越えていくことを心から呼びかけます。
福島原子力発電所での日本の原発史上最悪の事態が都民の中に大きな不安を広げています。東京都は、都民に時々刻々のすべての情報を公開しなければなりません。都としてヨウ素剤を確保・備蓄して緊急時に対応できるようにするとともに、都民のいのちを守るためにあらゆる可能性を視野に入れた対策を検討します。中央防災会議の「基本計画」にもとづいて、放射線観測をおこなうモニタリングポストを都内各所に緊急に増設します。
江東区や江戸川区などで液状化現象が起こり、都営住宅の建物や土台への亀裂が発生し、断水や下水道管の破断も起きています。住民の不安にこたえる緊急対策とともに、液状化の危険性のある地域の総点検をおこないます。市原などではタンク火災も起こっています。東京湾沿岸のタンク火災の危険に対する総点検と緊急対策に、近県と協力してただちに着手します。
豊洲の市場建設予定地で液状化現象が確認されました。表層の土壌対策を行っても、有楽町層などの下から有害物質が噴出する危険性は否定できません。そうなれば首都圏全体の食料品供給がストップするという重大事態に発展します。豊洲移転は白紙撤回し、今回の地震でも被害のなかった築地で、耐震化も含めて再整備することをあらためて表明します。
都民のみなさん。
福島での原発事故は決して「想定外」のものではありません。以前から地震や津波による深刻な事態の危険性は指摘をされていたのです。原発の「安全神話」と決別して、原子力行政を、“安全最優先”の原子力行政に転換し、ただちに全国の原発の総点検をおこなうことなどが求められています。
そして、原発だのみの政策からの計画的な脱却をはかり、太陽光・熱、風力、水力、バイオマス(生物資源エネルギー)など、再生可能エネルギー中心の政策に転換していかなければなりません。
ドイツではすでに発電力の16%(2009年実績)を再生可能エネルギーでまかなっており、2020年には30%、2050年には80%をめざしています。私は都知事として、東京での再生可能エネルギー活用の具体的な数値目標をつくり、エネルギー自給自足の街づくりに本格的に取り組んでいきます。
都民のみなさん。
東日本大震災の悲痛な犠牲や甚大な被害は、日本の今までの行政のあり方を根本から問い直すことを求めています。12年間の石原都政によって、都民のいのちを守るための行政にどのような問題が生じているのかも、真しに、洗いざらい見直すことが必要です。
石原都知事は「何がぜいたくかといえばまず福祉」と言って、都民のための医療や福祉の施策を大幅に後退させてきました。その結果、災害時の医療拠点となるべき都立病院は、16あったものが8つに半減し、東京都の歳出に占める老人福祉費の割合は石原知事就任時の全国2位から47位に急低下しました。特別養護老人ホームの整備率も全国27位から43位に後退し、認知症グループホームなどの介護施設の整備率は全国最低です。子育て支援のための認可保育所も、かつて革新都政の12年間で認可保育所784か所、9万300人分を増設したのに対して、石原都政の12年間では157か所、2万800人分と二割程度に過ぎません。
こうした福祉切り捨てによって東京都民、とりわけ医療や介護を必要とする人たちや子育て世帯に、大きな犠牲が強いられてきたのです。
都民のいのちと財産を守るための、東京都の震災対策はいったいどうなっているでしょうか。
1971年に制定された東京都震災予防条例は「地震は自然現象であるが、地震による災害の多くは人災である」(前文)として、都民の生命と財産を守るために全力をつくすことを表明しました。この条例にもとづき、木造密集地域対策としての白髭東防災拠点(墨田区)の整備や広域避難所の整備などが進んだのです。
しかしこうした施策はその後、後退を続けました。そして石原知事が就任後最初に手がけたのが震災予防条例の改悪でした。新たな「震災対策条例」は、それまでの震災予防条例の理念を180度転換させ、前文で震災対策の原則の「第一は『自らの生命は自らが守る』という自己責任原則による自助の考え方」だとしたのです。そして超高層ビルと大型道路優先の「都市再生」による都心部への集中が加速する一方、防災予算が縮小され、木造住宅密集地域の改善や、地下街などの都市施設やライフラインの安全対策、100万戸を超えたといわれる分譲マンションの安全確保や、今回の地震でも問題になった数百万にのぼる帰宅困難者対策など、未解決の課題が山積みになっています。東京都の人口当たりの救急車の数は全国最低、消防ポンプ車の数も全国46位で、倒壊した家屋などから救助活動を行うための東京消防庁の重機は全都でわずか8台と大きく遅れています。
都民のみなさん。
福祉切り捨ての都政も、防災は「都民まかせ」で後退させてきた都政も、命を軽んじるという点で根っこは同じです。石原知事の「津波は天罰」発言も、撤回はしましたがこうした知事の姿勢の表れだといわねばなりません。
いまこそこうした石原都政を“チェンジ”すべきときです。わたくし小池あきらは、「いのちを守る福祉・防災都市 東京」への転換で、医療・介護・福祉を充実させるとともに、災害に強い都市をつくることで、都民のいのちを守る東京都政を実現します。
普段から医療や介護、福祉、子育て支援の強い基盤があってこそ、災害時にも力を発揮します。東日本大震災で一番深刻な被害が出ているのが、いわゆる「災害弱者」と言われる高齢者、障害者、妊産婦や子どもたち、そして病気を抱える人たちであることを見ても、「福祉都市建設」の重要性は明らかです。
わたくし小池あきらは、都立病院つぶしをストップし、東京都として責任をもって医療・介護のネットワークを強めます。4年間で特別養護老人ホームを1万5,000人分、認可保育所を2万人分建設し、介護難民、保育所待機児童の解消をめざします。これは地元業者の仕事や雇用を増やすことにもつながります。高すぎる国民健康保険料(税)の引き下げや医療費無料化の拡大など、都民のくらしを支える都政に大きく転換します。
被災地では多くの中小企業や農林漁業者が壊滅的な被害を受けており、全国的な波及も懸念される中で、東京経済の主役である中小企業や自営業者などの営業を支え、仕事と雇用を守ることにも東京都として全力をあげます。住宅リフォーム助成制度の創設、全国で最も遅れた30人学級を急ピッチですすめていくことなど、すでに発表した「小池ビジョン」にもとづいて都政の転換をすすめていきます。
わたくし小池あきらは、今回の震災被害をふまえて、東京都の地震対策を洗いざらい見直して、「震災予防」に抜本的に転換・強化します。
震度6を想定してつくられている東京都地域防災計画を震度7対応へと引き上げ、それに見合う計画とします。個人住宅とマンションの耐震診断・改修の助成を拡大し、倒れない住居、火災につよい街づくりをすすめます。電力、ガス、上下水道などの安全対策をつよめ、ライフラインを守ります。消防車・救急車、ハイパーレスキュー隊やがれき除去のための重機など消防・救急体制を抜本的に強化します。JRや私鉄各社をはじめ関係機関と協力して、鉄道、道路、橋梁などを総点検し、緊急に整備します。堤防などを総点検、補強し、津波・水害対策を総合的におこないます。さらに具体的な内容は、別途「小池あきらの震災予防政策」(仮称)として発表します。
東京都民のみなさん。
日本国憲法は、9条で戦争放棄をうたうとともに、25条で国民の生存権を保障しています。憲法を生かした都政をいまこそ実現するときです。
「いのちを守る福祉・防災都市東京」を力合わせてつくる仕事に取りかかりましょう。そのことが、今回の東日本大震災で無念の中で命を落とされた人々やご家族、被災地で懸命の活動に取り組む、すべてのみなさんの思いにこたえることになると確信しています。
わたくし小池あきらは、全力をあげてその仕事に取り組む決意です。
都民のみなさんの大きなご支持を心からお願い申し上げます。