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菅首相“KY”視察、被災地で笑えぬ冗談 (2/2ページ)

2011.4.3 05:04
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菅首相“KY”視察、被災地で笑えぬ冗談

多くの住民が避難している米崎小学校で、被災した女性と話す菅首相=2日午前、岩手県陸前高田市【フォト】

  • 石巻市立大川小学校近くで見つかった泥だらけのランドセルやかばん。同小は全校児童108人中、約7割が死亡・行方不明で、4月2日の集中捜索でも女児1人の遺体が収容された=3月18日、宮城県石巻市

 誰も笑えない。津波で市街地が壊滅した岩手県陸前高田市にあり、約160人が避難生活を送る市立米崎小学校で首相の“暴言”が出た。

 午前9時過ぎ、真新しい青い作業服に運動靴姿の首相がバスで到着。そこで赤いランドセルを見つけた首相が、昨年末から「伊達直人」名で全国の児童施設にランドセルが贈られた“タイガーマスク運動”を引き合いに出し、「何とか直人がくれたのかと思った」と言ったという。

 宮城県石巻市立大川小学校では、全校児童108人のうち約7割が死亡・行方不明で、同小近くで泥だらけのランドセル多数が見つかっている。また2日は自衛隊が同小周辺を集中的に捜索、午後1時ごろには女児の遺体が収容されている。ジョークにもならない“KY”ぶりだった。

 首相はこの日朝、官邸から陸上自衛隊のヘリで陸前高田市へ。午前8時半ごろ同市役所仮庁舎に到着し、達増(たっそ)拓也岩手県知事(46)、戸羽太陸前高田市長(46)らから被災状況の説明を受け、その足で市立米崎小に向かった。政府関係者によると、被災者から首相へ罵声を心配してマスコミはシャットアウト。被災者によると、視察中は首相に詰め寄るような場面は見られなかったが、後のインタビューでは政府への不満が噴出した。

 首相と話した40代女性は「陸前高田はこんなに変わったのに、(首相から)今後の対応については何もなかった。聞くだけで終わった感じ」。「来るだけでは腹の足しにもならない。まずは援助を考えてほしい」と憤ったのは70代男性。

 ある女性は「(首相が)到着するから会場をきれいにしてくれって。あと、車を整理してとか、何で大変な時に体裁を作らなければならないのか」とあきれる。

 同小を後にした首相は再び陸自ヘリで福島第1原発事故の対応拠点「Jヴィレッジ」(福島県広野町など)へ。自衛隊や東電関係者から作業状況について説明を受け、関係者らを激励した。

 同原発周辺から福島市内の体育館に避難している住民らは複雑な表情。原発作業員で双葉町から避難した50代男性は「今更(首相が)来ても、事態は何も変わらない。現場の対応は専門家に任せ、政府として補償問題などに専念すべきだ」と苦言を口にした。

 結局、視察は米崎小が約20分間、Jヴィレッジが約55分間。午後2時20分ごろには陸自ヘリで官邸に帰着したが、被災者らに「迷惑」と「毒」をまき散らしただけのようだ。

(紙面から)



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