2011年4月3日3時1分
宮城県多賀城市内では3月、マンホールから一時汚水があふれ出した=16日、多賀城市伝上山1丁目、同市提供
浄化機能が津波で破壊され、下水道からの汚水がためられている仙塩浄化センター=1日、宮城県多賀城市、竹花徹朗撮影
浄化機能が津波で破壊された仙塩浄化センター。下水道からの汚水を非常用のポンプでくみ上げ、パイプ伝いに施設内にためている=1日、宮城県多賀城市、竹花徹朗撮影
東日本大震災で東北地方では、上下水道も激しく損壊した。上水道は内陸部を中心に復旧が進むが、標高の低い太平洋岸にある下水処理場は津波の被害が深刻だ。全国の自治体が給水車を派遣したり設備修繕を支援したりしているが、下水道の本格復旧には数年かかるとの見通しもある。
「自宅前で、きついにおいの水がどんどん噴き出していた」
宮城県多賀城市の洋服仕立業、渡辺敬一さん(69)は顔をしかめて振り返る。約1キロ先にある下水処理場、仙塩浄化センターのポンプなどが津波で損傷し、汚水が逆流。あちこちで下水管からあふれ出た。
仙台市の7割の下水を処理する東北最大の南蒲生浄化センターも津波で稼働停止に。孤立した約100人の職員らは管理棟の屋上で一夜を明かし、自衛隊のヘリコプターで救助された。
どちらの処理場も、国土交通省の仮設ポンプの緊急配備などで処理量は徐々に回復。住宅地で汚水があふれる事態も収まっている。
ただ、微生物を使って汚水中の有機物を分解除去する本来の工程などは省略されたままだ。沈殿や塩素消毒といった簡易処理だけで近くの運河に流している。宮城県によると、水の汚れの度合いは地震前の約20倍だが、水質汚濁防止法の規制範囲内という。
国交省によると、東北の太平洋側にある岩手、宮城、福島の3県に147カ所ある下水処理場のうち、21カ所が稼働停止した。復旧には2〜3年かかるという。福島第一原発の近隣の10カ所は原発事故の影響で状況把握もできていない。
処理場の被害が大きかったのは、その多くが沿岸部に集中しているためだ。家庭から出た汚水や側溝から入る雨水を傾斜を使って管路で流すので、処理場は標高の低い所に設けられる。そこに津波が直撃した。