2011年4月3日3時1分
宮城県多賀城市内では3月、マンホールから一時汚水があふれ出した=16日、多賀城市伝上山1丁目、同市提供
浄化機能が津波で破壊され、下水道からの汚水がためられている仙塩浄化センター=1日、宮城県多賀城市、竹花徹朗撮影
浄化機能が津波で破壊された仙塩浄化センター。下水道からの汚水を非常用のポンプでくみ上げ、パイプ伝いに施設内にためている=1日、宮城県多賀城市、竹花徹朗撮影
下水管も陥没などで破損し、千葉県浦安市など液状化現象によってマンホールが隆起し、管路が断絶した地域もある。下水関連の被害総額は、まだ全体像をつかめていないものの「少なくとも数千億円」(国交省下水道部)という。
下水管や処理場が復旧しないと、汚水が路上にあふれ疫病を引き起こす恐れすらある。このため新潟、札幌、大阪など自治体の下水道事業者からのべ2600人が応援に駆けつけ、被災状況の調査や簡易処理での復旧の手助けをしている。
だが、本格復旧は遠い。阪神大震災で被災した神戸市東灘区の処理場が本格復旧したのは約4年後。国交省の松井正樹・下水道部長は「生活が平常化するほど下水などの能力不足は深刻になる。風呂や洗濯の回数を減らすなど節水に協力してほしい」と話す。
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上水道も、沿岸部では津波被害が大きかった。
「一からやり直さないと」。日本水道協会の御園良彦専務理事は、3月下旬に現地入りし、宮城県石巻市や福島県いわき市で情報を集めた。「橋の下の配水管が、橋もろとも流された。沿岸部はいつ復旧するか見当もつかない」
厚生労働省によると、岩手、宮城、福島県では、実態把握が進んだ3月16日時点で断水が90万戸近くに達した。全国から水道事業者が給水車を派遣するなどし、急場をしのいだ。
3県の水道管の耐震化率は2割未満と低い。ただ、太平洋沿岸とは対照的に内陸部では持ちこたえた管路が多かった。浄水場もほとんどが難を逃れた。下水とは逆に、高台にあることが多いためという。
最近は電気の復旧で内陸部を中心に送水ポンプも再稼働している。3県の断水も約20万戸に減った。仙台市や福島市など都市部では「9割近くの能力が回復した」という。ただ、どれだけ上水が回復しても、下水の復旧が遅れれば普段のような水の使い方は難しくなる。(鳴澤大、田中美保)