東京都民よ!「自粛」なんかよして、花見に行こうぜ!
耐震設備がしっかりしていて、どんな地震がこようとびくともしない都庁のテレビで被災地の様子を眺めて「天罰だ」とのたまった都知事、さらにとんでもない発言をしてくれました。その名は「花見自粛令」(下記リンク参照)。
じっさいに「令」のかたちはとってないみたいですが、桜の名所・上野恩賜公園では「うえの桜まつり」の実施を見送り、いたるところに自粛を呼びかける看板を設置してるとか。都内の桜名所も次々に似た策をとり、東京都では事実上、「花見自粛令」が実行されるようです。
一応節電のため、という理由もあるらしいけど、都知事発言は明らかに自粛に力点があります。昼間もやるなって言ってるわけだから。
このたびの災害で日本を襲った問題は無数にありますが、大別すると3つになります。ひとつは被災者の生活と被災地復興の問題。もうひとつは福島原発の問題。最後が、経済の問題です。
経済は目に見える形で悪くなっています。アジアの自動車会社が、東北の部品工場が生産を中止したために自動車生産に支障が出て、ヨーロッパから部品を買うことを選択したという。部品工場が元の生産体制を整えても、また取引してくれるかどうか。かなり難しい、といわざるを得ないでしょう。こんな例がいくつもあるばかりでなく、首都圏の企業だって、計画停電のせいで通常営業しているとはいいがたい。私はついこないだの日曜日、用あって秋葉原に行きましたけど、人がすくないことと、あの「世界の電気街」に外国人が全くいないことに慄然としました。
経済の停滞を身をもって感じる。こんなことは、平成不況のときにもリーマン・ショックのときにもなかったことです。
外需が減らざるを得ないならば、内需を活性化させなければなりません。簡単にいえば、みんながお金を使うこと。それをやらないと、企業はモノが売れなくなって労働者の賃金をカットし、労働者はお金がなくなってモノを買わない、という悪循環になってにっちもさっちもいかなくなります。いわゆるデフレ・スパイラルです。バブル崩壊以降、日本を幾度となく襲った現象ですが、こんどのやつはたぶん、やばいほどでかい。
ガソリンがねえんじゃクルマは売れないし、電気がねえんじゃテレビは売れない。だとすれば、せめてそれ以外のものでお金を使ってもらわないといけません。よくいわれることですが、お金は血液と同じ。ちゃんと流れないと大きな害が出ます。
みんながお金を使ってくれないと、政治だって困るんです。だって税収が減っちゃうんだから。日本はむろんのこと、東京都だって同じことです。
でも、都知事は「花見」という、日本人の伝統であり元手も大してかからない(花はほっといても咲く)イベントを、「自粛令」で抑制してしまいました。
さらに、自粛の理由がまたふるってます。戦時中の日本人の連帯感は美しい、見習うべき、だから自粛しよう。
…その連帯感のせいで誰も講和をいいだせなくて、毎日空爆されて原爆2個くらって、それでも講和がいえなくて、どうしようどうしようと思っているときに本来意見をいわないはずの天皇が「御聖断」され、ようやく終戦に至った、という歴史の流れを知らないんでしょうか。
日本人の連帯感は美しい。それは認めたっていいです。でも、政治が・上から・連帯感を強制したりすれば、おかしなことになる。今度の花見自粛は戦時の悪しき連帯感と構造的に同じです。上野公園の職員だって、せめて昼間ぐらい花見したほうがいいと思ってる人はたくさんいる。でも都知事がいうもんだから、立てたくない看板を立て、自粛要請せざるを得ない。花見客をあてこんだ上野公園界隈の商店、テキ屋たちは商売あがったり。ヘタすりゃ倒産するところも出るでしょう。
今は花見なんかすべきじゃない……そう思う人だけがしなければいいんで、それがほんとの「自粛」です。政治が強制するなんて愚の骨頂。上に述べたとおり自粛は経済を悪化させるだけで、いいことなんてなにもないんだから!
都民のみなさん、震災も原発も経済も関係なく咲く美しい花を眺め、おおいに歓談してやろうじゃないですか! 幸いにもアルコールは買い占めの対象になってないから、しこたま買い込んでへべれけに酔っぱらってやりましょう。節電で夜がダメってんなら昼間やればいい。幸いにも最近は企業も早じまいですし、夕方ってのもオツなもんです。
花見の後にレストランや居酒屋に行ってもいいし、勢いで帰れなくなってマンガ喫茶に泊まるのもいい。調子に乗って風俗店に行くのもいいし、恋人どうしはラブホテルで一泊! とにかくクソの役にも立たない「自粛」なんてよそうよ。春を謳歌すべきだ!
それが日本のためだし、東京都のためだし、ひいては被災地の人のためになる。きれいな花が咲いているのに一歩も外に出ず、自粛と称して鬱々と部屋に籠もっていたって、被災地の生活はちーともよくならないし、日本経済は悪くなるばかりです。
もし都知事が日本のこと・被災地のことを真剣に考えているなら、花見自粛なんて決して言い出すべきではなかった。逆に花見を奨励して大宴会を開催させ、募金箱持った都職員を走り回らせるべきです。花と酒でいい調子になってりゃサイフのひももゆるむ。募金はたいそう集まるでしょうし、「被災地復興チャリティー花見」と称して客からカネとってもいいんだ。みんな後ろめたい思いなく存分に宴会を楽しめる。
経済を抑制し人々を困窮に追い込み、日本と東京都の税収を減らし、そのうえ被災地の人たちのために募金を集める機会さえ奪う「自粛」。都知事ご本人はおそらく愛国者のつもりだと思うけど、やってるこたあその逆です。
戦時の連帯感を出すくせに、やることなすこと愛国心がまるで感じられないよ。頼むからもうちっとアタマ使ってくれ。
■ 参考サイト
花見は自粛を=被災者に配慮必要―石原都知事
(http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jiji-29X917/1.htm)
【東日本大震災】石原知事“花見禁止令” 戦争時の「連帯感は美しい」
(http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110330/mca1103302006015-n1.htm)
(草野真一)
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