福島第一原発の事故では地震の規模、そして原発を襲った津波の高さが「想定外だった」という声が根強くある一方で、大津波によって今回のような事故が起きることを心配し、東京電力に警告していた市民グループがいます。警告は、なぜ生かされなかったのでしょうか。
東日本大震災の大津波の襲われ、深刻な事態が続く福島第一原発。原子炉を冷やすポンプを使えなくした津波の高さは実に14メートル。
「想定外を大きく超える」
「ちょっと想定を超えていた」(東京電力の会見)
襲った津波は「想定外だった」、そう強調する東京電力。だが、今回の危機をもたらした大津波を警告していた人たちがいました。
「この経過を東電は知っていた“想定外”は最悪の言い逃れ」
原発問題住民運動全国連絡センターの伊東達也さん。8年前から福島原発の津波対策に疑問を持ち、東京電力に改善策の申し入れを何度も行ってきたといいます。「東電の津波想定は低すぎる」、だが東電の対応は・・・。
「『大人のする議論ではない』と。その態度が問題」(原発問題住民運動全国連絡センター 伊東達也筆頭代表委員)
実は、東京電力が想定した津波の高さは5.4メートルから5.7メートル。この想定に基づき、原子炉を冷やす海水をくみ上げるポンプは、海面から5.7メートルまでの高さに設置されました。ポンプを覆う建物などはなく、ほぼむき出しの状態。そこに14メートルの津波が襲ったのです。
「(1960年の)チリ津波は5〜6メートル(の津波が来た)と言われた。だからぎりぎりなんですよ」(原発問題住民運動全国連絡センター 伊東達也筆頭代表委員)
大きな被害を受けたポンプ室。燃料棒を冷やすという重要な機能が失われ、原発は危機的な状況に陥りました。
「『想定外の津波でした』とは、絶対に言えないはずだ」(原発問題住民運動全国連絡センター 伊東達也筆頭代表委員)
6年前、東電の社長あてに出した申し入れ書には、「福島原発の場合、現状のままでは発生が想定される引き潮、高潮に対応できない」と記されています。この文章をある人物に見てもらいました。
「(文書で指摘されたことが)実際に今回起こったことは間違いない。それに対する対応策は自主的にまず(東電が)やるべきことだったと思う」
国の原子力安全委員会で、原発の地震対策を取り仕切る入倉孝次郎耐震設計特別委員長。5年前、原発の耐震指針を見直しました。その機軸をなる考えは・・・。
「想定以上の災害が来ても大丈夫なように、原子炉というものは設計されていないといけない」(原子力安全委・耐震設計特別委員長 入倉孝次郎博士)
実はこの耐震指針の見直しで、津波対策をとった原発があります。日本原子力発電の東海第二原発です。
ここでは津波対策として、高さ3.3メートルの防護壁に加えて、2.8メートルの側壁が設置されました。防護壁は海面から6.3メートル。襲った津波は5メートルで、ほとんどのポンプは守られ危機は免れました。
「福島第一原発は甘さがあったと言わざるを得ない。“人災”の要素は否めないと思う」(原子力安全委・耐震設計特別委員長 入倉孝次郎博士)
ただ、入倉委員長は津波をめぐる国も指針も不十分だったと悔やみます。東京電力は市民グループからの申し入れについて、1日の会見でこう述べました。
「(市民グループから)申し入れがあったのは聞いています。今回のような、こんなに大きな津波が起こって、海水系ポンプが全滅することは考えていませんでした」(東京電力の会見、午後6時ごろ)
(01日23:42)