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771号 掲載記事

<三浦知良と香川真司の往復書簡> 香川選手との初対戦に秘められた不思議な縁。

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2011/02/03 06:00

「32歳までプロで出来たらいいなと考えていた」

 まだ21歳。思えば僕がブラジルで最初にブレークしたのも21歳だった。ちょうど、ジーコやベベットのいたフラメンゴと対戦した頃('88年)で、当時、ジーコは35歳だったと思うんだけど、「この人は何で35歳でサッカーができるんだ」と感じたのを覚えている。

 今の自分からすると、35なんてまだまだこれからだと思えるけど、当時21歳だった僕には全く想像ができなかった。だいたいサッカー選手の寿命は31歳か32歳で、自分も32までプロで出来たらいいなと考えていたくらいだから。それが今は、引退の想定年齢を10歳以上も超えている(笑)。

グアムでは朝6時、夜明けとともにトレーニングを開始、ジョギング、ストレッチに始まり、体幹トレーニング、ダッシュなどさまざまなフィジカルトレーニングをこなした

 ただ、実際に32歳を過ぎてからは、一年一年が勝負で、先のことなんて全く考えずにやってきた。いつ終わるかわからない状況で、今日のこの瞬間を大事にする。その積み重ねの結果が今につながっているんだと思う。

 それに、サッカーを続ければ続けるほど、向上心はあがっている。経験を積むことで、逆に学ぶべきことはどんどん多くなっているように感じるし、サッカーに対する取り組み方も昔よりも真摯になっているね。

 若い頃と比べれば、瞬発力だって落ちるし、体力だって衰えていくのは仕方がない。でも、毎日のトレーニングを全力でやるという気持ちは今も全く衰えていないし、肉体の衰えをカバーするために、考えることが多くなった。

 32歳、36歳、40歳、そして今。30を過ぎてからは、4年周期くらいで自分の肉体やサッカーへの取り組み方を見直すきっかけがある。でも僕は、昔の自分にはこだわっていないし、それよりも新しい自分の可能性を発見していきたいという気持ちの方が大きい。

「要は、変わらない自分のスタイルを見つけること」

 もちろん、昔の自分のよい部分はとっておく。それと同時に、時代や年齢、周りのメンバーに合わせて自分をどんどん変化させていくことが大切なんじゃないかな。

 手紙には「ファッション」についても触れてもらっているけど、一番重要なのは「スタイル」だと思う。僕がよく言われるのは、昔からスタイルが一貫していること。ブラジルにいた18歳か19歳の頃の写真を見ると、今と同じようにサングラスをしているし、中折れ帽もかぶっている。無理しているんじゃないかと言われることもあるけど、自分が好んでいるスタイルだから楽しいんだ。海外旅行に行った時なんか、靴だけで7足、スーツ9着なんてこともあるし、朝昼晩と一日3回、“お色直し”するのも当たり前(笑)。

 もちろん、僕と同じようにする必要などないし、香川君は香川君なりのスタイルがあると思う。要は、変わらない自分のスタイルを見つけることじゃないかな。

 壁を乗り越えるためのアドバイス? 僕から言えるのは、壁なんて気にしなくていいんじゃないかということ。どんな選手にだって、必ず好不調の波はある。チームの状況に左右されることもあるし、怪我の影響や連戦の疲れがたまったりすることもある。その原因をきっちりと把握してさえいれば、あとはそれと向き合っていくだけ。

 香川選手は、新天地のドルトムントでシーズン序盤の勢いを維持して、前半戦で素晴らしいパフォーマンスを見せた。数試合だけ絶好調の選手はいても、それをキープし続けているということは、フロックではない、本物の力があるという証拠。それに、僕が見る限り、香川選手は現状に満足せず、常に地に足がついた状態で取り組んでいるというふうに感じる。その気持ちがぶれなければ、壁なんてすぐに乗り越えられると思いますよ。

 ちなみに、僕の気分転換法は、すぐに切り替えること。何か嫌なことがあっても、立ち止まらない。もちろん、振り返って反省することは大事だけど、それをプラスに変えて、常に前進していく。

<次ページへ続く>

【次ページ】 「香川君も早くドイツ人のガールフレンドを(笑)」

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三浦 知良 香川 真司
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