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[26457] 【チラ裏から移動】マブラヴ~合意と見てよろしいですね?~(メダロットクロス)
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:b50a47bc
Date: 2011/03/31 15:52
           せーの、メダロット!!



 白い世界に俺、白銀 武はいた。全てが終わった。今胸に残る思いもなにもかもを全て忘れ、俺は元の世界に、いや、正確には純夏の望むように再構成された世界に帰る。

 それは悲しいことで、まだできることがあるはずだけど、それでも今は喜びたい。みんなで勝ち取った勝利を。人類に光明を与えられたことを。

 でも、できたら……意識を失う寸前に、今度は地球を狙う侵略者ではない異星人に会いたいな。とちょっとだけ思った。











 そして、目が覚める。俺は……がばっと起きた。そこは俺の部屋だった。確かに見なれた俺の部屋。だが、少し違和感がある。

 いったいなんなんだ、何度も世界をやり直したけど、違和感を感じたことなんて……そこまで考えてふと気付いた。なにも忘れてない。俺の中に元の世界の記憶がちゃんとある。

 い、いったいどうなってるんだ?

 混乱する中、布団が若干膨らんでいた。

 ここが、もし元の世界なら、冥夜かと思ったけど……冥夜ならもう少し膨らんでるんじゃ?

 俺は恐る恐る布団を捲って……





















 そこにロボットがいた。


















 ぱたんと布団を戻す。それから再び広げ、やっぱりロボットがいた。

 ……なぜロボットと寝てるんだ?

 身長は一メートルほど。直線的でスマートなデザイン、デフォルメされた武御雷っていう感じ。そして、紫色の装甲は鉄のような感じではなくどちらかというとプラスチックっぽい。

 ……ロマンだ。目の前に男の子のロマンがある。

「起きたか武」

 そのロボットは冥夜の声で問いかけながら体を起こした。

 は?

「冥夜……か?」

 俺は信じられないものに問いかける。

 冥夜がロボット? いやいや、待て待て俺。それはどちらかというと純夏の役……そこまで考えて少し哀しくなった。

「いきなり泣きだすとは、どうした武?」

 うん、落ち着け俺。

 夢にしてはリアルだ。ならこれは……

「そうか御剣財閥か」

 きっと、冥夜が男の子のロマンを理解し、自分のデータをインプットしたロボットを送り込んだのだ! そうに違いない!

 それなら、大丈夫だ。万事解決!

「確かに私のパーツは優勝者の私たちに御剣が進呈したものだがどうしたのだ?」

 ほらな。やっぱり御剣財閥が関係して……いや、待て優勝者ってなんだ?

 問い返そうとして、

「武ちゃんおはよー!」

 そこで、とても愛おしい声が部屋に突入してきた。

 振り返る。

 赤い髪、大きなリボン、くりっとした大きな瞳、頭から生えるみょうちくりんな触手。満面の笑顔。そこに純夏がいた。

 そう、純夏だ。俺が鈍感なせいで苦しめてしまった、とてもとても大切な幼馴染。

「純夏!!」

 俺は反射的に純夏を抱き締めていた。

 愛おしい人にあったら誰でもこういう反応だろ。うん。と自分を納得させる。

「きゃ! 武ちゃん、どうしたの?」

「……羨ましいなスミカ」

 ぼそっと冥夜(?)が呟くが気にしない。

「白銀さん大胆ですね……」

 霞?!

 確かに霞の声が聞こえた。俺は周りを見回して、

「私はここです」

 と、純夏の後ろからちょこんと兎が出てきた。

 うん、兎。冥夜と同じような身長一メートル程度、頭頂部に霞がしていたのと同じようなウサミミのついたロボット。

「霞、なのか?」

「はい」

 こくりと霞が頷く。

「もー、武ちゃん何言ってるの? 霞ちゃんとはいつも会ってるのに」

 純夏の触手がクエッションマークを作るのを見た瞬間、

「純夏、ちょっと霞借りてくぞ!」

 俺は、霞を抱えて部屋を、家を飛び出していた。












 少し離れた公園まで走り、霞のプラスチックでできた硬い肩を掴む。

「霞、一体この世界はなんなんだ? なんで、お前や冥夜がロボットになってるんだ!!」

 いったいなにが起きたんだよ。知り合いがロボットなんて……んなの受け入れられるか!!

「やっぱり、白銀さんもなんですね……」

 『も』ってことは……

「はい、私も『前の世界』の記憶があるんです」

 よ、よかった。なら、

「教えてくれ霞。いったいなにがどうなってるんだ」

 霞ははいと重々しく頷く。

 そして、

「ここは、メダロットの存在する世界です」

 しばらく沈黙が走る。

「あー、メダロットってなんだ?」

 まずは、根本的な質問をする。

「私たちのようにメダルで動くロボットの総称です」

 メダルで?

 俺の疑問を察したのか、霞が背中を向けてスイッチを押すように指示を出す。

 言われるままに俺がスイッチを押すと、背中のパネルが開く。

 そこに、六角形で、中心に輝く宝石のようなものがある、兎の意匠が彫り込まれたメダルがあった。

「これが、メダルです。私たちメダロットの頭脳であり、魂です」

 そこから霞は説明してくれた。

 この世界はメダルで動くメダロットが、良きパートナーとして人間と共にあり、世界中にメダロットと、持ち主であるメダロッターがいる。

 そして、メダロット同士を戦わせるロボトルという競技があり、この世界の俺は日本で五指に入る実力者らしく、近々開催される世界大会の選手に選ばれているらしい。

「まじ?」

 ヴァルジャーノンでは、そこそこの腕はあっても決して地方ランカーになったことない身としては信じられないんだけど……

「はい」

 霞は重々しく頷いた。





 そう、ここは武が望んだ世界。『侵略者としてやってきたが、その役割を放棄した異星人』であるメダロットの存在する世界だった。












 一方、香月夕呼……

「返せ! あたしの努力を返せえええええええ!!」

 メダロットの存在を知って、自宅で大暴れし、パートナーメダロットのピアティフに止められたという。








~メダロット紹介~


冥夜
武のメダロット。武が小学生の時に拾ったクワガタメダルで、主人である武に忠誠を誓ってる。
ただし、最近は忠誠というより、恋慕の情が上回り始めている。





武と同じ『前の世界』の記憶を持つ。純夏のパートナーで、妹のような存在。
メダルは七歳の誕生日に純夏の両親がプレゼントしたウサギメダル。




オリメダ


KWG-00R 武御雷
冥夜に使用されているパーツ。名前に反し、一応女型。
御剣財閥がメダロット社の傑作機『ヘッドシザース』を参考に開発した『シラヌイ』をベースに発展させたもの。
シラヌイの特徴である脚部の跳躍ユニットを装備し、高出力化したのも相まって高い機動力を発揮する半面、シラヌイを無理に発展させた弊害に機体バランスが悪く、他のパーツと組み合わせて使うのにはメダルに相応の技量が必要。
御剣主催の大会で優勝した武と冥夜なら扱いきれる、と判断した次期総帥の御剣悠陽から二人にパーツ一式が贈られた。




VAL-99 ラビスルーズ
霞に使用されているパーツ。武が武御雷とともに贈られたパーツをプレゼントしたもの。
武御雷と同様に御剣財閥がメダロット社のVALシリーズを参考に開発した。
シラヌイと比べ、バランス良く性能が上がっている。また、独自の改良として、頭部に兎の耳のようなパーツがある。これは、シラヌイにも採用された空力カウルの効果を狙ったものである。
VAL型とのパーツ性能の差異としては、右腕パーツがフリーズではなくサンダーであること。






久しぶりにメダロットをやったら思いついてしまった。
マザーメダロットを送ってきたのはBETAの主たちと同じという設定です。
うーん、師匠と纏めた方がいいかなあ?



[26457] 第二話
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:b50a47bc
Date: 2011/03/16 17:11
 一度、ここでメダロットについて説明しよう。

 ティンペットという素体に頭、右腕、左腕、脚部の四つのパーツを装着、完成したボディーにメダロットの頭脳であるメダルを装着することでメダロットは完成する。

 そして、所有者であるメダロッター同士がメダロットを戦わせる競技をロボトルといい、今ではロボトルは世界的な競技へとなっていた。








 とまあ、そういう基本的な知識を思い出しながら、昼休みに夕呼先生の呼び出しで物理準備室へと向かう俺と霞。

 純夏と冥夜不満そうだったっけ。俺たちだけ来るようにって。

 メダロットになっちまったから表情を作れない冥夜だけど、バイザーに表示されるアイコンや仕草だけで十分どう思ったのかわかるから面白いよなあ。

「いきなりなんですか先生?」

 準備室に入ると、そこには先生と涼宮が待っていた。

 ……なんだろう、この二人の取り合わせってすごく不安になるんだが?

「失礼しま」

『逃がすかあ!!』

 一瞬で俺は二人に拘束されてしまった。









「も、もしかして二人とも……」

 霞と俺に記憶があって、純夏と冥夜に記憶がないところで、もしかしたらって思っていた。

 そして、二人が揃ってたからそれはほぼ確信になっていた。

 二人が頷く。

「ええ、私たちには『BETAのいた世界』の記憶があるわ」

 やっぱり……たぶん、あっちの世界で死んでない人間には記憶があるんだな。

 そして、説明が始まった。涼宮の話しでは俺がいなくなった後に先生に俺がどんな存在だったか説明を聞き、先生に受けた説明の通り、俺の存在を忘れ始めた頃、気づくとこの世界にいたらしい。

「あまりに突然で、びっくりしたわよ。朝、お姉ちゃんと多恵に起された時はつい泣いちゃったんだから」

 そっか、こっちでは涼宮中尉は生きてるんだ。

 ちょっと待て。

「涼宮、多恵って?」

 聞き覚えがあるが、誰だかまでは思い出せない。でも、すっげえ嫌な予感。

「あんた下の名前知らないか。築地多恵、こっちでは私のメダロットなのよ」

 ああ築地、お前、猫になるだけじゃなくて、メダロットにまでなっちまったのか……

 と、俺がしくしくと泣いていたら先生に顔を掴まれた。

「さて、白銀、申し開きすることはないかしら?」

「と、突然なんですかあ?!」

 怒り心頭と言わんばかりの先生。

「なにすっとぼけてんのよ!! あんたでしょ? あんたのせいでこんな世界なんでしょう?!」

 お、俺のせい?

「メダロットですって? 人間のように考えて行動するロボットですって? あたしが開発した00ユニットと同等以上の性能を持ってるなんて、あたしの苦労をどうするつもりよ?!」

 そ、そんなこと言われたってえ!!

「さあ、言いなさい。間違っても鑑がこんな世界望むはずないんだから、原因はあんたなんでしょ?!」

「ふ、副司令落ち着いて」

 と、涼宮が助け舟を出してくれるけど、ヒートアップした先生は止められない。それと、涼宮、今、副司令って呼んでたぞ?

 そ、そんなこと言われても……あ。

「そういえば、BETAじゃない異星人に会ってみたいって思ったような……」

「それよ」

 俺の言葉に先生が額に手を当てて唸る。

「あんたが不用意にそんなこと願ったもんだから、鑑の望む世界に変化が生じたのよ」

 マジですか?

 まあ、それくらいしか原因はなさそうだけど……でも、メダロットは、

「メダロットはロボットですよ? 異星人ではないんでは?」

 と、涼宮が代弁してくれる。

「そうですよ先生」

 と、俺もそれに続く。

「涼宮、白銀、メダロットのメダルは人間が作ったものじゃないわ」

 え? 人間が作ったものじゃない?

「古代の遺跡から発掘されたものなのよ。メダルを誰が作ったか、誰ひとり知らないのよ?」

 そ、そうだったのか。

 つまり、もしかしたらメダロットは宇宙人の創ったものかもしれないって先生はいいたいのか。

 正直に言えば、冥夜が異星人だなんて嫌だなとも思った。でも、先生が嘘でもそんなこと言うわけないしなあ。

「ねえ、社、あなたメダロットになったならなにかわからないかしら?」

 ふるふると霞は首を振る。

「すいません、私の中には、純夏さんに名前を付けていただいてからの記憶しかありません。あと、今はカスミです」

 そう、と残念そうにでも、予想どおりそうに先生が頷く。

「なら、念のために調べないとね。涼宮、白銀、なにかわかったことがあったら連絡しなさい。こっちもわかったことは教えるから」

『は!』

 俺と涼宮は揃って敬礼し、先生に「堅苦しいことはやめなさい」と言われてしまったのだった。

「ところで、私がこうなったのって白銀さんのせいだったんですね」

 ……言われてみたら、確かに俺の願いのせいだな。

「すまん霞……あと築地」

 俺は霞に土下座で謝った。










 まあ、メダロットが加わったおかげか、世界はだいぶ変化していた。

「彩峰さん、今日こそ決着をつけるわよ。勝負!!」

「……受けて立つ」

 なんと委員長と彩峰がロボトルで競い合う仲なのだ。

 もとは、校則を守ろうとしない彩峰に、ロボトルで白黒つけようとしたのが始まりらしい。以来彩峰が勝てばよほど目に余る行為以外は見逃す。逆に委員長が勝てば彩峰は次の勝負まで大人しくするという取り決めらしい。

 それが、いつの間にかお互いを認めるとまではいわないが、いいライバル関係らしい。

「はあ、今度の試合大丈夫かなあ?」

 タマが少し不安そうにしていると、隣にいた狐型のメダロットが背を叩いた。

「大丈夫ミキはすごいから」

「ありがとうクーちゃん」

 タマはそばに自分の力を認めてくれるパートナーがいるおかげか、上がり症ではないらしい。

 自信を持って「今度は勝ちます!」なんてタマが自発的に言うとは思わなかったぜ。

 そして、尊人はこっちではちゃんと男だった。ただ、

『やっほータケルー』

 ステレオで尊人の声、そう、尊人のメダロットは美琴。と言っても名前はそのままではなくミトだけど……尊人と美琴を同時に相手をしている感じで二倍どころか、四倍にも疲れが溜まった気がするんだよなあ。

 なお、まりもちゃんのメダロットはウォーケンという名前だった。

 ……夕呼先生はピアティフ中尉だったけど、なにか理由があるのか?

 






 学校帰り、週刊メダロットの今月のランキングを見る。

『一位 宇宙メダロッターX
 二位 辛口コウジ
 三位 天領イッキ
 四位 白銀武
 五位 ユウヤ・ブリッジス
 以上五名が今年の日本代表選手です』

 と、記事にでかでかと載っていた。

「俺、本当に日本代表なんだ……」

 聞いてたけどいざ現実を見ればかなり驚いた。

 と同時に不安になる。実際に俺は世界で戦えるのか?

「もー、なに言ってるの武ちゃん? あんなに喜んでたのに」

 と純夏が不思議がる。

 だけどなあ、あまりに突然過ぎんだよ。俺からすると目が覚めたら突然国の代表選手なんだからなあ。

「世界大会かあ、俺やってけるかなあ?」

 少し弱音を吐いてしまう。あっちではもう弱音を吐かないって決めたが、まあいいだろう。

「大丈夫だ武。そなたには私がついている」

 と冥夜が慰めてくれる。

 ありがとう冥夜。

「って、大会は三人チームだったよな。なんで五位までなんだ?」

 ふと思い出した。公式では変則を除けば三体までとあったはず。

「えっとね、確か前回の大会で『宇宙メダロッターX』って人が、何度も代理を立てたから、補欠が必要になった時のために選手枠を増やしたんだって」

 純夏の言葉で思い出した。

 確か代理がランキング上位からだったり、下位だったりしたんだったな。で、それが問題になって選手枠を増やしたっと。

「もう、これ武ちゃんが言ってたことだよね? どうしたの?」

 わりいわりいと純夏に謝る。

 どうやら、必要に応じて思い出すみたいだ。霞に話を聞いてからだいぶ『思い出せる』ようになった。

「たけるー! ロボトろうぜぇ!!」

「だぜ!」

 うお!?

 といきなり赤いツンツン頭と真っ赤で長く伸びた二つの角が特徴的なメダロットが俺の前に立ちふさがった。

「りんたろうまたか?」

 自然と言葉が出る。

 波島りんたろう。白綾柊でのクラスメート。二年にしてロボトル部のエースでもある。

 学園で俺と対等に戦える数少ないメダロッターで、全国ランキングでもトップクラスとすらすら目の前の相手のプロフィールが出てきた。

 そして、もう一つ。俺の数少ない男友達。別にそっちの気はないが、嬉しく思えるのはなぜだ? と、考え、ああ、前の世界だと俺、男友達は尊人しかいないんだったなあ。思い出すだけで涙が出そうな事実だ。

 その相棒のカンタロスは、重量級カスタムKBTアークビートル。

「ああ、いいぜ」

「ふむ、勝負だ」

 俺はメダロッチを構え、ぶんと空中モニターを写し、冥夜も答える。

「合意と見てよろしいですね?」

 聞こえた声に顔をあげる。白綾柊自慢の桜の上に立つ人物……ミスターうるち!

 ミスターうるちは桜から飛び降りると、すたっと地面に降り立つ。

 おいおっさん、足は大丈夫か?

「それでは、ロボトルーファイト!!」

 ミスターうるちが掲げた手を振り下ろすと同時に冥夜とカンタロスが動いた。

「いけえカンタロス!」

「やれ冥夜!」

 カンタロスは左手のマシンガンで冥夜を牽制。冥夜は跳躍ユニットの機動力で懐に入ろうとする。

「冥夜、一番!」

「了解!」

 冥夜が左手を構える。

 そして、跳躍ユニットが火を噴き、高速でカンタロスに迫る。

 俺命名、衝撃のファーストブリッド! ただ、冥夜は技名嫌がるんだよなあ。なぜだ?

 冥夜のハンマーがカンタロスに叩きつけられようとして、

「カンタロス! 受け止めるんだぜ!」

 がしっとカンタロスは勢いに押されながらも、ハンマーを受け止めた。さすがカンタロス。カブトメダルだが格闘戦も得意だもんな。

 その状態でも両腕の銃口から冥夜を狙うカンタロスに、跳躍ユニットを使った大ジャンプで冥夜は逃げる。

 がんがんと数発が冥夜に命中するが、深刻なダメージはない。

 さっきの一番といい、ロボトルに関する知識は自然と出てくるな。

 冥夜は軽いステップでカンタロスの攻撃を回避する。狙いが正確だから、なかなか接近できない。だが、

「冥夜、飛び越えろ!」

「ああ!」

 冥夜は跳躍ユニットのパワーで、カンタロスの頭上を飛び越えて後ろに回る。

 貰った!

「甘いんだぜ! カンタロス!!」

 跳んだ冥夜を追って、頭上に掲げられたカンタロスの腕。だが、その腕の側面にある銃口から弾丸が放たれる。

「ちっ?!」

 冥夜が身を反らすが、右肩に弾が当たり、肩のパーツが弾ける。

「冥夜!」

「大丈夫だ!」

 冥夜が飛び跳ねながら答える。

 しまった。カンタロスの腕には三つずつ銃口があるんだ。後ろに回っても六つの銃口のどれかに狙われるか。

「武、指示を!」

 冥夜の言葉に考える。死角がない。なら……

「冥夜、ダイブ!」

「了解した!」

 再び冥夜は跳躍する。

「何度やっても同じなんだぜ!」

 同じ? いや!

 冥夜はカンタロスの頭上でくるっと上下を逆さまにする。そして、天に向いた跳躍ユニットの推力で真下のカンタロスに向けてつっこむ。

「冥夜、カムイだ!」

 俺の指示に冥夜は右腕のソードを構える。

「カンタロス!」

 冥夜の右腕が突き出される。

 ぎんと音が鳴った。ソードが突き刺さった音と思ったが、違う。カンタロスはその長い角で冥夜の一撃を受けていた。ぱきっとカンタロスの頭部の角が半ばから折れる。

 なあ?!

「カンタロス!」

 そして、カンタロスが両手の銃口を地に足を付ける直前の冥夜に向ける。

「逃げろ、冥夜!!」

 冥夜は跳躍ユニットを吹かして避けようとするが、カンタロスの撃つ弾が冥夜の装甲を穿つ。

「ぐあああ!?」

 全身を撃たれた冥夜ががしゃんと倒れる。

「冥夜!!」

 メダロッチに次々と冥夜のダメージが表示される。

 左脚部装甲欠損。右跳躍ユニット大破、自切。右腕、肩部欠損、ソード破損、使用不能。左腕、ハンマーに若干の損傷あり。頭部左、正面センサーマスト破損、索敵性能五十五パーセントダウン。

 決して小さくないダメージが次々と表示される。

「冥夜、大丈夫か?!」

「だ、大丈夫だ……」

 俺の言葉に、冥夜が立ち上がる。だが、その動きは、いつものきびきびしたものではない。

 くそ、どうする? とりあえず、カンタロスの武器の中でもっとも強力なビームは角を折ったから使えない。だが、まだ両腕の武器が残ってる。こっちは、片方の跳躍ユニットがなくなって、ハンマーのミナルもそう何度も使えないし……

 その時、ふと思った。冥夜のボディはいわばこちらの武御雷といえるもの。なら……

「冥夜、二打目だ!」

「だが、武、跳躍ユニットは片方しかないぞ!」

 ああ、わかってる。だが、

「俺を信じろ冥夜」

 冥夜はじっと俺を見る。そして、

「信じるぞ武」

 冥夜が左腕のハンマーを構える。


 片方だけの跳躍ユニットの勢いで跳び込む冥夜。スピードは半減している上に……

「ぐう!?」

 流石の冥夜も片方だけの跳躍ユニットにバランスを崩す。右の推力が大きすぎて、片足が地面から離れる。

 俺の予想通りに。

 カンタロスの射撃が外れる。冥夜は無理やりバランスを修正し、カンタロスに迫るが、再びバランスを崩す。そのたびにカンタロスの射撃は外れる。

 冥夜には負担をかけてしまっているが、この不規則な動きはさすがのカンタロスでも一苦労だろう。

 そして、冥夜が懐に入る。そこでまたバランスを崩し、右足が持ち上がる。

「冥夜、蹴りだ!」

 冥夜はバランスを崩しながらも、上がってしまった右足を振る。

「カンタロス、ガードするんだぜ!」

 そして、冥夜の蹴りは……ざくっとカンタロスの左腕を深く斬った。

 そう、武御雷の足は、スーパーカーボン製ブレードエッジ。つまり、『斬る』ことができる!

 まあ、半分思いつきの攻撃だったが、うまく言ってよかった。そこは、冥夜の高いバランス感覚が決め手だな。

「か、カンタロス!?」

 リンタロウが驚きの声を上げる。

 だが、まだだ、

「させないんだぜ! カンタロス!!」

 冥夜が左腕を引く。カンタロスの残った右腕が動く。

「最終打!!」

 カンタロスの頭部に迫った左腕と、カンタロスの右腕の銃口が接触し……

 ドン!

 一発の銃声。

 それで決着がついた。









 最後の一撃で、カンタロスの右腕を破壊したものの、同時にカンタロスの弾丸に冥夜のハンマーを破壊され、互いの攻撃パーツがなくなったことで引き分けとなった。

 一応足のブレードは残ってるが、攻撃パーツとなるのは頭部、右腕、左腕。これらのパーツが破損した時点で戦闘続行は不可能と判定される。

「やはりそなたは強いなカンタロス」

「ありがとうだぜ」

 と、冥夜とカンタロスがお互いの健闘を讃えあう。

 そして、俺の胸も熱くなっていた。ロボトル、なんて熱い戦いなんだ。バルジャーノンを超えているぜ……

 なるほど世界的競技になるのもわかった。世界の強豪と戦えるのが楽しみだ!

「あ、そういえば、武知ってるか?」

 と、意気込んでいたら、りんたろうが思い出したように聞いてきた。

「ん? なにがだ?」

「最近、この近所に変な野良メダロットが出るらしいんだぜ」

 それが、世界に関わる大事件の幕開けとは、この時の俺は知らなかった。




メダロッチ・ver.4
メダロッチの最新モデル。
従来の機能に加え、空中に立体モニターを映す機能が付加された。
また、携帯やパソコンと接続することで、機能を拡張できる。



冥夜パーツ設定
H:ムゲン 速度 まもる 索敵
R:カムイ 速度 なぐる ソード
L:ミナル 速度 がむしゃら ハンマー
F:キドウ 速度 二脚
と、基本KWGの装備。


~~~~
つい続いた第二話。
りんたろうがアークビートルを使ってることからも、この作品は漫画ベースに世界大会に関してはアニメが混じった世界観です。
無印漫画で世界大会はあったし、それのルールアニメと同じに変わったと言う感じと思っていただければ。
白稜柊には他にもハスケとドギーもいます。



[26457] 第三話
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:b50a47bc
Date: 2011/03/21 23:55
 野良メダロット。

 主人が死んだ、もしくは棄てられたなどの理由で主を失ったメダロットたち。

 最近、メダロットと人間の寿命の差が社会的に問題となってる。








 翌日、りんたろうが野良メダロットに会いに行くんだぜって言い出したもんだから、放課後に俺たちは噂の雑木林に向かった。

 にしてもメダロットって便利だな。内臓されたスラフシステムってのでロボトル後にはパーツが自動修復されるんだから。すでに冥夜から昨日のロボトルで受けた傷は見当たらない。

 といっても、なんでもすぐに治るってわけじゃなくて、大破した跳躍ユニットは時間がかかるみたいだから予備ととっかえて、弾けた肩は自分で付けたけどよ。

 で、俺と冥夜、純夏と霞、りんたろうとカンタロスは件の雑木林に訪れた。

「なんでもその野良メダロットはKWGタイプで、『金色のカブトムシ』ってのを探してて、近所の子どもたちに虫のことを教えたりしてるらしいんだぜ」

 とりんたろうが噂の内容を教えてくれる。金色のカブトムシねえ。そんなのいるんだなあ。

 なんて関心していたら、冥夜が足を止めていた。

「どうした冥夜?」

「……何かが来る」

 俺の問いに冥夜は簡潔にそう返すと、カムイを構える。

 その途端、ピリピリした空気が空間を支配する。

「カンタロス」

 りんたろうもメダロッチを構えて警戒し、純夏は霞と俺たちの後ろに隠れる。

 そして、

「来たぞ!」

 冥夜の言葉と共にそれが現れた。

 頭部から伸びる立派な一本角、両腕の銃口に青い装甲、シルエット自体はカンタロスよりもオーソドックスなKBTタイプ。だけど俺の知らない型だった。

「りんたろうわかるか?」

 ふるふるとりんたろうが頭を振る。

「俺にもわからないんだぜ」

 KBT使いのりんたろうも知らないならカスタムタイプか?

 じっとKBTタイプはまるで品定めするように冥夜を見る。

 なんだ? なに見てやがる?

「ふっ、早速当たりとは」

 そして、突然そう呟いた。当たり?

「貴様のメダル、頂いていく!」

 だが、それを尋ねる前にそいつは俺たちに向かって飛び出した。

 両腕の銃口が火を噴き冥夜を狙う。

 冥夜はそれを横にステップを踏んで避ける。

「おい、りんたろう話が違うぞ!」

 KBTだし、人を襲うじゃねえか!

「お、俺に言われても……援護だぜカンタロス!」

 りんたろうの指示にカンタロスがKBTを狙う。

 身軽にカンタロスの攻撃を避けるKBTタイプ。カンタロスといい以外と身軽なんだなKBT。

「二対一は好かんが!」

 そこに冥夜が右腕のソードで斬りかかるが、紙一重で避けるKBT。

「この!」

 さらに斬りかかるが、全て避けられる。

 銃声。カウンター気味に冥夜がダメージを受ける。

「くっ!」

 さらに冥夜のソードを身をかがめて避けるとともに、両腕の銃口が火を噴き冥夜の右足をズタズタに引き裂いた。

「ぐああああ!!」

 がしゃっと冥夜が膝をつき、KBTが離れる。

「冥夜!?」

 冥夜の動きは悪くない。ただこのKBT強い!

「大丈夫だ!」

 冥夜はその状態でも気丈に振る舞う。

 被害がメダロッチに表示される。右脚部損傷、被害甚大。戦闘機動に支障あり。

 嫌な記憶が蘇る。あ号にやられたのも右足……

 がしゃっとKBTが両の銃口を冥夜に向ける。

「止めろーー!!」

 俺の静止も虚しく、KBTタイプは両の銃を撃つ。土煙に覆われる冥夜。

「冥夜ぁ!!」

 あんな足じゃ冥夜は……

 そして、煙が晴れるとそこにカンタロスと霞が立ち塞がっていた。

「りんたろう、純夏?」

 へっとりんたろうが鼻を擦る。

「カンタロスの方が装甲は厚いんだぜ」

 確かにカンタロスのボディに傷はあるが大きなダメージはない。

「冥夜はやらせないから!」

「やらせません!」

 メダロッチを構えた純夏と左手の盾を構えた霞。

「行くんだぜカンタロス!」

「やっちゃえ霞ちゃん!」

「おう!」

「はい!」

 りんたろうと純夏の檄に霞とカンタロスが飛び出す。

「貴様等に用はない」

 二体に目標を変えたKBT。だが、カンタロスの厚い装甲と霞の盾に致命打は難しかった。

 これなら!

 そう俺が思った瞬間、がしゃっとKBTの肩から伸びたアームが右腕の銃口にパーツを接続した。

 なんだ? ロングバレル、か?

 そして、KBTは動きながらその右腕でカンタロスを狙う。

 一発の銃声。カンタロスの頭が跳ね上がる。

「カンタロス?!」

 カンタロスが顔を抑える。

「目が……」

 まさか、カンタロスのカメラを狙ったのか?!

 確かに、カメラは装甲出来ない位置だが、どういう射撃精度だ?!

「だけどまだ両腕のセンサーが」

 カンタロスが両腕を構えて、今度は二回。その両腕が弾かれる。

「あるん、だぜ……」

 まさか両腕のセンサーまで?!

 カンタロスは目隠しされてしまったように右往左往し、最後は足を引っ掛けて倒れてしまった。

「カンタロス!?」

 そして、KBTは次に霞に右腕を向ける。

「霞ちゃん、盾!」

 銃声。だが、霞はそれを、KBTの攻撃を的確に盾で防ぎ接近する。

 すげえ……俺の中では純夏はそこそこ腕が立つとはあったが、ここまでできるのか。

 そして、射程に入った霞は右手の剣を振る。

「ちっ!」

 KBTはそれをロングバレルで受けるが、ばちっと電流が流れる音が響く。

 そうか、霞の右腕はスタン効果があるんだ。

「ぐっ!?」

 地面に落ちるロングバレル。

「引いてください」

 油断なく霞は盾を向ける霞。

 俺の記憶に純夏はそこそこ腕が立つとはあったけど、こんなに強かったのか。

「ち、貴様程度に煩っている暇はないんだ!」

 KBTは腰を落とし、一瞬で霞に接近した!

「霞ちゃん!」

 とっさに盾を構える霞。だが、そこにマシンガンの弾幕。

 勢いに負け、跳ね上がる霞の左腕。KBTは霞の後ろに回り、霞の左足に左腕のマシンガンを突きつけ、乱射。

「ああっ?!」

 ズタズタに引き裂かれる霞の左足。

 それでもなお、霞は抵抗しようと右腕を振るが、肘を抑えつけられ、ライフルで手首から先を吹き飛ばされる。

 そして、KBTは霞を地面に叩きつけると、背中の装甲を引き剥がし、

「しろが……ね、さ、ん」

 そのまま、無理やりメダルを抜き取った。

「かすみー!!」

「霞ちゃん!!」

 がしゃっと崩れ落ちる霞のボディ。KBTはメダルを見て、

「やはり違うか」

 無造作に霞のメダルを放った。

「霞ちゃん!?」

 純夏は泣きながら霞のメダルに駆け寄る。

「てめえ……!!」

「貴様、よくも……!!」

 俺の中にさっき感じた恐怖は吹き飛んでいた。代わりに激しい怒りが湧きでる。

 よくも純夏を泣かせて……霞をそんな目に……

「冥夜ぁ!!」

「ああ!!」

 冥夜は残った足と跳躍ユニットで跳ぶ。

 ソードを突き出し、避けられる。さらに次に出したハンマーも回避される。

 畜生! なんで当たらないんだ!

 さらに冥夜は飛びかかり、KBTの銃口が冥夜を狙う。しま……

「終わりだ」

 その言葉とともに銃声、だが、冥夜には当たらなかった。

 横から飛び出した何かが冥夜を救った。

「貴様……」

 がしゃっと冥夜を抱え降り立つそいつは、頭に二本の角を持つ白いメダロットだった。確か初代KWG……

「ヘッドシザースだったな」

「しかも初期型だぜ」

 りんたろうが目を丸くする。

「あまり森を荒らされては困るな」

 そのヘッドシザースは俺たちのそばまで来ると、そっと冥夜を下ろした。

「貴様……そうか、まさか一日で二つも見つかるとは」

 若干、愉悦の籠もった声で笑うKBT。

 二つ? 冥夜といい何を言ってるんだ?

「貴様のメダルも頂いていく!」

 KBTはヘッドシザースに狙いを定める。

「無益な戦いは好まぬが、致し方ない」

 かしゃっとソードとハンマーを展開するヘッドシザース。

 そして、二体の戦いが始まった。

 飛び出す二体。離れ、接近し、まるで舞踏のように動き、ぶつかり合う。

「すげえ……」

「スゴいんだぜ……」

 冥夜とカンタロス、霞の三体ですら太刀打ちできなかったKBTタイプと互角に戦っている。

「おぬし、なかなかやるな!」

 ヘッドシザースがソードで斬りかかり、それを銃身で受けるKBT。

 返事もせずヘッドシザースを狙うKBT。だが、ヘッドシザースはそれを避ける。

「次元が違う……」

 冥夜が悔しげに呟く。確かに、あのKBTも、ヘッドシザースも今の俺たちでは全然敵わない……

 このままあいつがなんとかしてくれれば……

「おい兄ちゃん、人任せにしていいのかい?」

 突然かけられた声にドキッとする。

「誰だ?!」

 振り向くとそこに、サングラスと麦わら帽子を被ったおっさんがいた。しかも、こんなところでひよこ売っている……

 って、いつの間に?!

「で、いいのかい兄ちゃん、ダチをやられたのに悔しくないのか?」

「な、なんだよいきなり」

 いきなり現れてそんな内面を見透かすような……

「しかたねえだろう、俺たちじゃ全然相手にならない」

「バカ野郎!!」

 突然の大声に俺は竦んでしまった。

「重要なのは力じゃねえ。心だ! 窮鼠猫を噛む、本気をだしゃあ、鼠だって猫に一矢報いるんだ!!」

 窮鼠猫を噛む……

 俺はぐっと握りしめる。そうだ、俺たちは敵わないかもしれないが、一矢報いるくらいは!

 周りを見る。今俺たちに使えるものは……

 その時、目に入ったのはカンタロスの長い角だった。
 
 そうだ!

「りんたろう、プロミネンスは使えるか?!」

「使えるけど、今のカンタロスじゃ狙えないんだぜ」

 わかってる。なら!









「仰角修正……よし」

 冥夜がカンタロスの頭の向きを変える。

 そう、カンタロスのセンサーが使えなくても冥夜のセンサーは生きている!

 名付けて『1+1は灼熱の炎作戦』!!

 射撃は冥夜の得意分野じゃないが……冥夜は次にどう動くか予想して角の向きを変える。

 そして、ヘッドシザースがKBTの動きを止めた瞬間、

「離れろ!!」

「撃つんだぜカンタロス!!」

 プロミネンスを撃つ寸前に、冥夜が叫ぶ。

 ヘッドシザースはこちらの意図を読んでKBTを蹴りバランスを崩した。よっしゃあ! あれなら避けられねえ!

 そして、放たれた灼熱がKBTを飲み込んだ。

「やったか?!」

 油断なくヘッドシザースがKBTのいた空間を睨む。そこに左腕を失ったKBTが立っていた。

 くそ! 微妙にずれてたか?! だが、かなりの損傷は与えられた!

「くっ、今日の所は一先ず引かせてもらう」

 そう言ったKBTの頭部の角からミサイルが放たれ、それが俺たちの周りに着弾した。

「ぐっ!?」

 巻き上がる土と衝撃に遮られ、視界が晴れた時には、KBTはいなくなっていた。

「いったい何だったのだ?」

 冥夜の言葉に、誰も返事を返せなかった。








 俺たちがそれぞれのメダロットの状態を確認していたら、例のヘッドシザースが近づいてきた。

 例のヒヨコ売りのおっさんはいつの間にかいなくなってた。なんだったんだあのおっさん?

「大丈夫か?」

 例のヘッドシザースが聞いてくる。

「ああ、助かったぜ」

 正直、俺たちだけじゃどうしようもなかった。

「そなた、名は?」

 冥夜が名前を聞く。ああ、確かに気になるな。

「私の名はロクショウだ」

 簡潔に答えるロクショウ。

「助かったロクショウ、そなたに感謝を」

 足が動かなく俺に背負われた冥夜が礼を言う。

 霞もメダルが見つかり、今はメダロッチの中で待機している。

「なに、森を荒らすものを追い払ったまでだ。礼を言われるほどのことじゃない。しかし、いったい何があった?」

 ロクショウの問いに俺たちはいきなり襲われたこと、冥夜のメダルを狙っていたことを説明する。

「なるほどな」

 それだけ答えてロクショウは考え込む。

 うーん、少し話しただけだが、立ち振る舞いとかまるで武士のような印象があるな。

「さきほどのKBTは見たことがない。メダロット博士に聞いてみるか」

 え?!








ロクショウ
かつての主節原教授が保護していた金色のカブトムシを探す野良メダロット。礼儀正しいが、割とノリもいい部分がある。昔の名前は『ヨウハク』
ボディはKWGシリーズ『ヘッドシザース』
見た目はただのヘッドシザースではあるが、メダロット博士の手で内装は改良が重ねられており(初期型のパーツが手に入らないというのもある)ロクショウ自身の技量もあって、最新型とも互角以上に戦える。








おまけ

『機動武闘伝Gメダロット』

 ネオイタリア市街。

「おい、町の中央広場でよそ者とミケロのバトルが始まるってよ!」

「なに! 早くいかないと!」

 中央広場に集まる人々、その中心、二人の男と二体のロボットが対峙していた。

「さあ、始めようぜ!」

「きやがれミケロ!」

 ばっと二人が左腕を構える。

『ロボトルファイト、レディーゴー!!』

 だんと二体のメダロットが飛び出した。








 ロボトルファイト。

 宇宙に上がった人類は、コロニー間の全面戦争を避けるため、四年に一度、コロニー国家連合主導権をかけた戦いを行う。

 その代理戦争は各国家が威信をかけて開発したメダロットとそのパートナーであるメダロッターが戦う。

 メダロッターには、各国家代表として優れた武道家やトレーナーが選ばれる。なぜならメダロットとメダロッターは一心同体。メダロットだけが優秀でも宝の持ち腐れ、優れたメダロットには優れたパートナーが必要なのだ。






「行けネロス! 銀色の脚だ!!」

「はい、マスター!」

 ネロスが足を振りかぶる。

「お前が銀色の脚なら」

「ああ、ドモン! 俺たちは黄金の指だ!」

 対し、ドモンとシャイニングは手を振りかぶり突進する。

『必殺!!』

 二人の叫びが重なる。

『う、うわあっ! は……速いいっ!?』

 その速度にミケロとネロスが驚愕する。

『シャアアイニングゥウフィンガァアァーッ!!』

 シャイニングの手がネロスの頭部を掴む。

「ぎゃあああああ!!」

「ロボトルファイト国際条約第一条、頭パーツを破壊されたものは」

 さらにシャイニングの手が輝く。

『失格となる!!』

 そう、この戦いは頭パーツを破壊されれば失格となり、敗者は勝者にパーツを奪われる。つまり、国家の威信をかけた技術の一部が敵に奪われるのだ。

 そして、ネロスの頭部は破壊され、ドモンとシャイニングが勝者となった。









「へ、俺のお陰だな」

「何を言う、俺の指示のお陰だ!」

 俺だ! 俺だ! と言い合うドモンとシャイニングの姿に、ロボトル時のコンビネーションはなんなのかと頭を抱えるレインがいたと言う。



~~~~
ロクショウ登場。三話でいきなり話し加速させてしまったが、ま、いいか。
他にも漫画版で重要な役を張った連中がもう少し出る予定です。
オリKBTの武装はなにかで見たオリメダを参考です。

最後のおまけは頭部破壊で負けという設定の共通点に気付いたため作ってみた。



[26457] 第四話
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:a9f084e4
Date: 2011/03/31 22:46
 ロクショウに連れられ俺たちはメダロット博士に会うことになり、メダロット社へとやってきた。

 で、でけえ……流石全世界のメダロットを作ってる会社。

 社に入れば訝しげな視線が集まった。まあ、野良メダロットに如何にも学生の集団だからな……しかも冥夜は他社のメダロットだしな。

「あ、ロクちゃん久しぶり」

 ロクちゃん?

 ロクショウが振り返る。そしたら、金髪の美人が駆け寄ってきた。

「きらら殿、そのロクちゃんは止めて頂きたいのだが……」

「まーいいじゃない」

 とそのきららというお姉さんが笑う。

「博士に用なんでしょ? ちょっと待ってね」

 きららさんは内線を取って繋げた先に一言、二言言葉を交わす。

「許可はもらったから私が案内するわね。ところで後ろの子たちはロクちゃんのお友達?」

 と、今度は俺たちに目を向ける。

「白銀武です」

「冥夜と申します」

「鑑純夏です」

「霞です」

 ボディがない霞がメダロッチから答える。

「りんたろうだぜ!」

「カンタロスだぜ」

 ……今更だけどこんな大人数迷惑じゃねえか?

「私はきららよ。よろしくね」

 そして、俺たちは応接室に案内される。

 そこできららさんにいただいたお茶を飲みながら少し待つと、がちゃっとドアが開いた。

 入ってきたのはサングラスをかけたじいさん。

「ロクショウ、どうしたんじゃ?」

「メダロット博士、突然申し訳ありません。実は彼らが」

 と、ロクショウがそのじいさんと話し始める。

 この人がメダロット博士か……

「ふむ、白銀武くんじゃったな。はじめましてワシがメダロット博士じゃ」

 と、博士が俺に声をかけてきた。

「はじめまして白銀武です!」

「冥夜といいます」

 俺はばっと立ちあがって礼をする。

「ああ、そんなかしこまらんでいい。しかし、本来なら大会のために会うつもりだったが、こんな形で会うことになるとは思わなんだ」

 と、博士が笑う。それから口元を引き締める。

「では、君からも話してもらいたい。なにがあったかを」

 博士の言葉に俺は頷いた。









 そして、俺はロクショウの噂を聞いて会いに行こうとしたこと。そしたら見たことないメダロットに襲撃されたことを説明する。

 メダロット博士は俺たちの話を聞き終えると、ふむと唸る。

「そうか、君らもか」

 君らも?

「君らを襲ったのはこんなメダロットじゃなかったかの?」

 そう言って博士が見せたのは組み立てかけのメダロットの写真だった。

「こいつです!」

「確かにこいつだぜ」

 なんでメダロット博士がこいつを? しかも組み立ても終えてない姿を?

「博士これは?」

「こいつはメダロット社と御剣財閥が合同で開発を進めておった試作機、名前はKBT−09F『ファントムビートル』」

 ロクショウの問いに博士が答える。

 御剣と?

「メダロット社がこれまで培ってきたKBTの設計に、御剣独自の設計を融合させたものなんじゃ。だが、先日、御剣の研究所からこの機体が盗み出されたのじゃ」

 盗み出された?

「と同時に全国で白銀くん、君たちのようなランキング上位者がこいつに襲われる事件が多発しておる」

 ランキング上位……

「なんでですか? あいつ冥夜のメダルを狙ってたんですけど……」

「……わからんが、その冥夜くんじゃったか? そのメダルになにかあるのかもしれんなあ」

 博士の反応に、ふと『元の世界』の先生が俺に事実を教えてくれなかったことを思い出した。

 もしかして、博士もなにか心辺りがあるけど隠してるんじゃないか?

「まあ、今日はここらにしておこう。またなにかわかったら」

 と博士が話を終わらせようとして、

「博士、強くなりたいです」

「冥夜?」

 いきなり冥夜が博士に切り出した。

「私は自分の剣に自信がありました。ですが、そのものに私の剣は届きませんでした。もし、ロクショウが現れねば私は、私は……博士、私は強くなりたい!!」

 冥夜……

 博士はふむと呟くとずいっと冥夜に顔を近づけた。

 それからぐるぐると冥夜の全身を見る。

「は、博士?」

 戸惑い気味に冥夜が博士を見るとふむと博士は頷く。

「よく整備されておるのお。セッティングは反応速度と突進力を最重視しておるのか」

 見ただけで俺たちのセッティングがわかった?!

 それから博士は懐から出したメモになにかを書き出す。

「ふむ、ならここに行って、これを渡してみたまえ。恐らく君の力になってくれる」

 と冥夜にメモを手渡す博士。

「はい、メダロット博士、あなたに感謝を! 往くぞ武!!」

「ちょ、待て冥夜! ありがとうございました博士!」

 俺は冥夜に無理やり引っ張られドタバタ出ていく羽目になった。








anather side

「博士、ダニーのことですが」

 全員が出ていった後、ロクショウはメダロット博士に問いかけた。

「すまんがスラフシステム以上に厳重で進展はあまりないの」

「そうですか……」

 先日、ロクショウはバートンとダニーを整備していると、ダニーの中にかつてロボロボ団に狙われたスラフシステム以外に大容量のデータが隠されているのを発見した。

 ロクショウはそのプロテクトの解除を試みたが、手に負えずメダロット博士に依頼することとなったのだ。

「じゃが、一部だけじゃがデータの内容はわかった」

「いったいどのような?」

 メダロット博士は少し黙り込み、

「レアメダル」

 答えた。

「それは……」

「君にメタビーくんたち、そして……」

 メダロット博士は武たちが出ていったドアに視線を向ける。

「恐らくは、あの冥夜くんに関わる研究データじゃ」











 霞の修理のため純夏たちと別れてから、冥夜に引っ張られ、電車に乗り、俺たちは柊町まで戻ってきた。

 それから、また「こっちだ!」と引っ張られる。冥夜、お前やっぱり強引なところあるよなあ。

「ここだ!」

 そう言って冥夜が見るのは、「無現鬼道流」と言う看板を掲げた道場。激しく嫌な予感がすんだけど……

「往くぞ武!」

「あ、ちょっと冥夜」

 俺を引っ張り道場の門を開ける冥夜。

 仕方なく俺は敷地に入って……誰かが倒れてた。おい!

「あんた大丈夫か!」

 慌てて駆け寄るとそいつが誰かはっきりわかった。

 倒れていたのは……

「コウジ?」

 以前、花園とのロボトル大会で手合わせして以来の友人である辛口コウジだった。

「武くん? なぜここに?」

「俺は博士に紹介されてなんだけど……お前は?」

「僕もだ。ラムタムと大会までにさらに腕を磨こうと、博士に紹介されてこの道場に来たのさ」

 そうなのか。

 ラムタムはコウジのメダロットのことで、STGタイプ、エクサイズのパーツを愛用した格闘タイプだ。

 って、そういえばラムタムは?

 俺がきょろきょろとラムタムの姿を探して、

「かーつ!!」

「ぐあああああ!!」

 道場から一体のメダロットが吹っ飛んできた。あれはラムタム!

 ドサッとラムタムがコウジの横に落ちる。

「ラムタム、大丈夫か?!」

「冥夜、か?」

 冥夜がラムタムを助け起こす。

 初めてのロボトル以来、互いに認める好敵手みたいなんだよなこいつらは。

「甘いぞ辛口コウジ、ラムタム!」

 と、出てきたのは……げえ、やっぱり。

「紅蓮大将かよ……」

 流派の名前から予想できたけどやっぱり現物見るとなあ……

 ああ、そういえば、最初の世界では紅蓮大将と冥夜って師弟だったなあと思いながら、そろっと怖気づいて逃げ出そうとして、

「む、貴様たちは?」

 と、俺たちに視線を向ける。ち、見つかったか。

「冥夜と申します。博士からこれをあなたに渡せと言われました」

 紅蓮大将が冥夜から手紙を受け取る。

「なるほど、博士からの紹介か」

 と、頷くと冥夜に視線を投げかける。

「冥夜だったな。改めて聞く。なぜ強くなりたい?」

 紅蓮大将が冥夜に問いかける。

「もう、負けないためです」

 冥夜が顔を伏せながら答える。

「先の戦いで私は完膚無きまでに敗北しました。もし、助けが現れなければ、今頃私はマスターである武から引き離されていた。それがたまらなく嫌なのです」

 冥夜そんなに俺のことを……

「私は武と別れたくない!! 何卒ご指導お願いいたします!」

 真剣なまなざしを紅蓮大将に向ける冥夜。紅蓮大将は頷く。

「よかろう、だが、ワシの指導は厳しいぞ」

「覚悟の上です!」

 こうして、冥夜が紅蓮大将に弟子入りすることが、決まったが、 うう、ループの中で帝国に入ってから大将しごかれた頃の記憶ががガガガ!

「がんばれよ冥夜! 俺はこれから純夏と用事があるから帰るわ!!」

 すまねえ冥夜、お前の気持ちは嬉しいが、あんな目にまた会うのは二度とごめんだ!

 ばっと逃げ出そうとして、がしっと肩と腕を掴まれた。

 振りむけば、紅蓮大将と冥夜が俺の肩を掴んでいた。

「武、スミカと約束などなかったと私は記憶しておるのだが?」

 はい、嘘ですごめんなさい。だからカムイ突き付けないで。

「メダロッターとメダロットは一心同体、貴様も共に修行だ!」

 わかったから手から力抜いてください、肩が痛くて仕方ないんだけどおおおお?!

 こうして、俺たちは紅蓮大将の元で訓練を受けることとなった。それが、どんな結果になるかは、まだわからない。







~~~~
紅蓮大将に冥夜が弟子入りです。そして、コウジ&ラムタム登場! アニメ本編でも出せばよかったのにこの愛称と思う今日この頃。
順次、マブラヴとメダロットのキャラは出てくる予定ですそれでは!


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