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このままでいいのか:医療/下 暗中模索続く医師集め /秋田

 ◇都市に集中する研修医

 JA秋田厚生連の湖東総合病院の相次ぐ医師退職などを受けて10年7月、病院のある八郎潟町と周辺町村、厚生連、県と住民代表が一堂に会した「湖東総合病院の医師確保対策を推進する協議会」が設けられた。

 八郎潟町の桜庭規祥副町長は初回の会議冒頭に「再編計画で建て替え方針は決まったものの、それで医師が来てくれるかというと難しい」と発言。協議会として医師募集を知らせるホームページの開設や、地元開業医への夜間の入院患者対応の支援要請などに取り組むと決めた。

 ただ関係者によると、ホームページは昨秋に開設してから情報があまり更新されず、閲覧者の反応もない。町村職員の親類や友人知人などあらゆるルートで医師を探したが、来てくれそうな医師はいなかったという。さらに厚生連が12月に入院病床を休止し、開業医への支援要請も不要になってしまった。

 ある自治体幹部は「病院の運営主体は厚生連で、我々に何の権限もない。医師確保の支援が精いっぱいだが、それで厚生連が動いてくれるわけでもない。なのに再編計画で赤字負担を割り当てられる」とこぼす。

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 地方の医師不足の一因に、研修医が自由に研修先を選べる04年度に始まった制度にあるとされる。

 研修医は臨床例が豊富な都市部の病院に集中。県によると秋田大医学部でも02年度の医局入局は57人、03年度は40人だったが、04年度の初期研修採用医師は29人、05年度はわずか8人。その後も十数人で推移し、医師派遣要請になかなか応じられない。

 さらに厚生連と秋田大医学部の意思疎通の不十分さを指摘する声もある。ある厚生連関係者は「秋田大は何かというとすぐ病院から医師を引き揚げようとする」と不満を漏らし、秋田大医学部関係者は「研修医をいきなりへき地に派遣しても力は付かない」と反論する。

 それでも昨年11月に秋田大と厚生連、県医師会などの関係者が一堂に会した県医療政策会議で両者が歩み寄った。茆原順一・秋田大付属病院長は「県全体の医療を担う使命感がある」と述べ、より多くの研修医を確保できるよう大学での研修内容見直しに言及。一方で付属病院と他の臨床研修病院で支払われる給与の差が大きいことを訴えた。

 秋田組合総合病院長などを務めた坂本哲也・秋田緑ケ丘病院統括顧問は「秋田大のこうした姿勢が伝わらず県全体の協力態勢が取れなかった。今後は情報発信に意を砕いてほしい」と応じた。

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 行政が運営主体となっている病院も、医師確保に奔走している。

 仙北市立田沢湖病院(佐々木英人院長)は06年、救急指定を取り下げた。常勤医3人のうち内科医1人が退職したためで、理由の一つに「救急対応による重労働」を挙げていた。

 残る市内の救急告示病院は市立角館総合病院のみ。田沢湖地区からは搬送に20分かかる。市担当者は「その間に亡くなった患者もいるようだ」と明かす。

 経営悪化で診療所化も検討された田沢湖病院だが、佐々木院長の提案で09年1月から重度障害者を受け入れて病床利用率を上げ、赤字を大幅に圧縮した。常勤医も1人増え再び3人となったが、それ以上の確保には至っていない。

 市長自ら秋田大や岩手医大、自治医科大を訪問して医師派遣を要請したが「他にも同じ状況の病院が多い」と断られた。民間の医師紹介サイトにも登録したが、条件が合いにくい。担当者は「勤務医は休暇の取得や家族の生活などを含めた環境を重視する。高い報酬を積めば来てくれるわけではない」と語る。

 そこで市は4月、病院事業管理者として地域医療に精通した他県の医師1人を配置。同病院と市立角館総合病院で週1回診察する他、自身の人脈を生かして医師確保を目指す。

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 文部科学省は10年度から、大学医学部卒業後の勤務地を指定する「地域枠」を設け、地方を中心に医師を増やす方針に転換した。ただ対象者が活躍するのはまだ先。湖東総合病院の地元自治体幹部は「地域枠の医師が来るまでどうするか、解決策はまったく見えない。右往左往、暗中模索している」とため息をついた。

毎日新聞 2011年4月1日 地方版

 
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