おろおろさせない負けず嫌い 竹内 朱莉さん  2011/03/29(TUE)
先を明るく視るオトコ。オトムギ三銃士 中神 一保  2011/03/28(MON)
気っ風と気合いと気遣いの甘噛み姐さん。今藤 洋子さん  2011/03/27(SUN)
三億円少女システムと 朴訥な天の邪鬼。磯和 武明さん  2011/03/26(SAT)
あらがいようのない笑顔力。宮原 将護さん  2011/03/25(FRI)
Faraway YOKOHAMA 何日君再来  2011/03/24(THU)
容れものを空っぽにするオトコ。斉藤 佑介さん  2011/03/23(WED)
友だちではないオトコ。和泉 宗兵さん  2011/03/22(TUE)
宛書きをする幸せ。岡井 千聖さん  2011/03/21(MON)
だれでも知ってることだけど  2011/03/20(SUN)


おろおろさせない負けず嫌い 竹内 朱莉さん

「のうち」または「竹ちゃん」こと竹内朱莉さんはとても良い声の持ち主。
あの声できもちよく「はいっ」って返事をされると非常にイイ気分になる。
あまりにイイ気分になりすぎて、何を言おうとしたか忘れたこともあった

そんなきもちいい「のうち」や「どぅー(工藤遥さん)」と接していると、
学校の先生っていいかもなぁーなんて思ったりするけど、もちろん世の中、
あんなイイ子らばっかじゃない。そのくらい世間知らずのオレも知ってる。
この季節に この関係でお会いできたことを うれしくありがたくおもいます

「のうち」は、すごい負けず嫌いなのだそうだ。オーディションでもそう
言ってたし『1974』期間限定ブログでも語っていたので本当なのだろう。

・・しかし、オレは、負けず嫌いというのは・・

話は変わるが、オトムギがいつも舞台美術をお願いしてる田中敏恵さんは、
塩田も仲間たちも敬愛してるとっても素敵なヒト。お渡しした脚本が敏恵
さんの脳でどんな魔法を経てあんなセットに生まれかわるのか、意外性に
満ちてて、それでいて演出の要請にも俳優の生理にもばっちりかなってて、
めくるめくようにファンタスティックだ。敏恵さんご本人も、懐が深くて
いたずら笑いが可愛らしい、とってもファンタスティックな女性なのだが
・・
それは今現在の話で、敏恵さんいわく「デビューした当時はもんのすごい
負けず嫌いでしたねえ」。舞台監督や照明技師とセットの色をめぐる意見
が分かれ、言い負かされた悔しさで、翌朝は集合時間よりも早くに一人で
裏口から劇場入りして、薄暗い中、ペンキを塗りはじめ、スタッフさんに
「おいおいー困るよトシエーまだ作業はじめていい時間じゃねえんだよぉ」
と怒られ「うぅ、ずみません、でもここの色がどうしてもぉ許せなくてぇ」
と号泣して おろおろさせたエピソードもあったという

負けず嫌いの女の子というのは、例えばこの昔の敏恵さんのようなことを
指すって思ってた。燃えあがるきもちと自分への歯がゆさゆえの頑張りが、
まわりをおろおろさせてしまうような。オレなんかもうふっにゃふにゃの
「まわり」代表、すぐにおろおろしちゃうタイプなので、そのオーラには
敏感なはずだが、「のうち」にはおろおろとさせられたことがない

待ちのあいだは、じーっと他の俳優の芝居を視ていて、面白ければ爆笑し、
休み時間には、きゃっきゃきゃっきゃと元気にTシャツ短パンで走り回り、
自分の出演シーンになると、前の稽古の演出をよく考えて一人でいっぱい
練習してきたことが伝わって来る演技をきもちよくやってみせる。新たに
いわゆる「ダメ出し」をすると、きもちよく「はいっ」っと返事をくれる。
役の上で、共演者(誰だと思いますか?乞うご期待)にきっついセリフを
当てるシーンもバシッ、と全力でやりきって、でも終わった後、ぽつっと
「かわいそう」なんて相手の身になったりする感受性豊かな一面もあって

おっとぉ!こんな、健やかで伸びやかな、まわりを誰もおろおろさせない
「負けず嫌い」があったのか?!

人類が日日、進化しているのか、それとも「のうち」が特別にすごいのか

稽古はじめには序盤しか存在しなかった脚本『1974』(ぎゃー。恥)
中盤は、そんな「のうち」のきもちのいいまっすぐな声からもらって、
終盤は、そんな「のうち」の、まわりのことをよく見ながら己と向き合う
健やかで かしこい 負けず嫌いっぷりからもらって、
当初イメージしてた役ではない少女を、幸せに宛書きさせてもらいました

高原で森林浴しているみたいな気分にさせてくれる負けず嫌いの女優さん

大人の麦茶 十八杯め公演『1974』の竹内 朱莉

どうぞ、おもいっきりたのしみに待っていてください!!

『1974』稽古の日日は、ほぼ毎日の勢いでフレッシュに更新をしてくれる
「のうち」や「どぅー」の期間限定ブログ日記がたのしみでならなかった。
地下鉄が圏内になるたんびに、一日に三回くらい覗いたこともあったほど。

長いインターバルを超えて再開するであろうブログも楽しみに精進します!
Date: 2011/03/29(TUE)


先を明るく視るオトコ。オトムギ三銃士 中神 一保

さて、木蓮が色づきソメイヨシノも芽吹いて季節はめぐっていきますが、
ここムギムギでは 『1974』出演俳優さんの予告編的ご紹介コーナーが
今も続いております。だって十二月はまだ遥か彼方。脱線したりしつつ
ゆるゆるまいりますので、ゆるゆるお付き合いいただけたら幸わいです

劇団 大人の麦茶。旗揚げが2002年春なのでもう足掛け十年になります。

十年の間に色んなことがありました。その中で劇団を離れる決意をする
人があれば、引き止めたいではなく、共に過ごした時間に感謝して袂を
分つ未来によき事が待っていますようにと前向きに見送ったつもりです。
ですが、そんな自分が(池田とかにめちゃイヤがられたにもかかわらず)
池田・並木・中神、三人の劇団員に『オトムギ三銃士』なんて呼び名を
つけたのは、こいつらにはできればやめて欲しくねえなぁ、「三」って
つけたらやめづらいんじゃねーかなー、というきもちのあらわれだった
かも知れません。なにやら暗めの話で申しわけありませんが、こんなん
書くにもそれなりに理由があって、つい先日(詳しくは書きませんが)
中神さんの身にものすごくたいへんなことがありました。
塩田は誰にも相談しないまま「これを機に、私、中神、劇団を・・」と
言われるんじゃないかなー、とひそかに予感して 憂いていたのでした。

が、そんな大変も大変の真っ只中、ナミチョウに耳を寄せたカズさんは、
「『1974』組の女子にホワイトデーのお返しプレゼントってどうする?」
・・えぇーっ?!(Part 1)
稔に「12月まで延期になっちったから、夏ぐらいに芝居やりたくね?」
・・えぇーっ?!(Part 2)

まいった。塩田まいりました。

この、しぶとくスマートに先を明るく視る大らかさが、中神一保さんの
もっとも良いところの一つであり、すなわち、劇団 大人の麦茶の宝です。

『1974』宛書きをする幸せシリーズ、続けてみます

こないだ岡井千聖さんのこと書かせてもらった項で、そんなカズさんの
稽古序盤のスロースターターっぷりについて触れましたが、中神一保の
追い込み馬(役者)としてのインパクトは、本気で強烈にディープです。
いつのまにかもうどうしてもその役にしか見えないヒトになってしまい、
昨日も明日もある芝居で、演出を心酔させる。『コトブキ珈琲』イクラ、
『外は白い春の雲』のウシさん、『サバンナチャンス』のナイキちゃん、
めろめろに惚れ惚れしながら、ああ、今度こそもっと早く脚本を書こう。
もっと早くこのカズさんに逢おうっておもう「追い込み馬系」作家です

先々週の深夜未明。前述の誰にも言えない憂いを抱えつつ、大人の麦茶
『いちころソング』のシオダ撮影版DVD(画質&カメラマンの腕最悪系。
記録映像の域に達してない)を視て、あろうことか、号泣してしまった。

元気のカケルに、ハッシーのしのぶに、ざね芬芬を見詰める将護タオに、
長澤 やすこに全方位的な波状攻撃をくらって、並木トリガイのまさかの
「そりゃあコロされるわけだよォ」漢泣きに背後からバックドロップを
キメられ、最期は主役の二人、オトコ池田カルキと中神アソブちゃんに、
いちころにコロされてしまったのだった

自画自賛ですみませんが、やっぱオトムギの役者、めちゃくちゃいいわ!
思わずにはいられなかったです

(『いちころソング』ご観劇でない方、なんのこっちゃですみません。
もはや今からDVDで観ていただくわけにもいかぬ過ぎ去った作品です)

あの芝居のあと、必ずや中神か池田に(あるいは両方に)なんかデカい
仕事が舞い込むことを信じていた塩田は、そういったこともない日常に
負けかけて、一度『友だちではないオトコ』和泉宗兵ちゃんとさし呑み
した時に、弱気が口から負け出て「俺たちは乗ることができなかったの
かなぁ、俺たちは乗せてもらえはしなかったのかなぁ、オトムギの終電
はもう出ちゃったのかなぁ」などと(われながらダセー)タレたところ
宗兵ちゃんは超めずらしく怒り「オレ、泰造さんソンケーしてんだから、
くだらねぇこと言わないでくださいよ!終電なんか出たって、正月には
一晩中電車は動いてんですよっ!深夜バスだってあるじゃないすかぁ!」
ってちからづよく叱り飛ばした

オレは、宗兵のその、こころある檄入れにあっさり「あ、そうだよなー」
と思い直して、現在に至る。

最年長中神一保を先頭に、終電なけりゃあ始発まで線路を歩いてやるぜ!

本日のムギムギは『宛書きする幸せ』から趣旨がずれてしまいましたが、
中神一保さんの『1974』には、カズさんの「家族をおもうまなざし」を
いただいて書かせてもらいました

が・・カズさん自身は呑みの席でスタッフの美女さんを相手に「なぜか、
ぼくの隣りはいつも女性がいるんです。必ずそういう役がくるんですね」
などと明るくほざいておった

先を明るく視てしぶとくスマートに大らかにいきたい我らオトムギです

大人の麦茶 十八杯め公演『1974』の中神 一保

どうぞ、おもいっきりたのしみに待っていてください!!


四枚めのイラストは
塩田が描いてみた『いちころソング』のインナミ アソブ=中神さんです
Date: 2011/03/28(MON)


気っ風と気合いと気遣いの甘噛み姐さん。今藤 洋子さん

半年くらいまえのこと、斉藤佑介さん出演の「一の会」を観に行った夜、
その芝居が面白過ぎて浮き浮きになったオレは、ナミチョウやショーゴ、
脚本・演出の太田さん、初対面の佐藤二朗さんたちと痛飲し、上機嫌の
千鳥足で真夜中の高円寺を漂いながら、ショーゴにこそこそ質問をした

「ショーゴ、さっき、あのいかれたかっちょいい酔っぱらいの姐さんに
何度もアゴを『おらぁっ』て引っつかまれてたけど、アゴ痛くねえの?」
ショーゴこたえていわく、
「それがまるっきり痛くないんですよ、こう、なんてゆーんですかねー、
ネコでいう甘噛み(あまがみ)?みたいな、絶妙のいたぶられかたで」

うーむ。やはりか・・。そんな気はしたんだ・・。

その、「いかれたかっちょいい酔っぱらいの姐さん」の名は 今藤 洋子。
オレは、度し難い楽観的なお調子者だけど(そんな自分に震災を通じて、
激しい自己嫌悪に落ちましたがそのことは後日改めてちゃんと書きます)
こと芝居のキャスティングに関してだけは異常に慎重に長考するタイプ。
だって芝居の命は座組力。俳優さんに心を預けきらなければ作品として
成り立たないいつくりかたをしているし、一人でも残念な役者がいたら
もう最高にはならないってシビアにおもうから

そんなオレが、一度も芝居を観たことがない、呑みの席で会っただけの
今藤姐さんをオトムギにお呼びしたくなっていた。なんだろう?きっと
このヒトは絶妙にイイ芝居を魅せる予感。なおかつオトムギ座組に風を
呼び化学変化をもたらす予感、がデジャブー現象のように浮かんだのだ。
「もしも今藤さんに出演依頼をしたくなったらどうすればいいですか?」
と聴いたら、「そんなもん、ここにメールくれりゃいいんすよぉーっ!」
と手帳に書き殴ってくれたアドレスはぐじぐじで翌朝判読できなかった。
その後、夏に太田善也さん作・演の大衆演劇を観に浅草の木馬亭に行き、
粋で鯔背なコンドウ版「森の石松」を目撃し、もう絶対誘うって決めた。

『1974』宛書きをする幸せシリーズ、続けてみます

果たして塩だの予感はずばり的中し(それを本当に決めるのはお客さん
ですが)オトムギのコンちゃん(今藤洋子さんのあだ名)は思った通り、
思ったよりも素晴らしくて、座組に飛び切りの新風を運んできてくれた。
「立て板に水」の気っ風のいい、それでいて「甘噛み」の緩急を心得た
粋な風を

待ちの間は他の俳優さんの芝居を視ていて、「いい」って思う感受性が
新鮮で的確で、年若い女優さんの芝居に対してもはっきり「いい」って
素直に口にするのが素敵だった。稽古後の呑み屋で感想を語り、突発的
に和泉宗兵を嬉しさにむせぶ男泣きさせたりしていた

以前、nicogoriさんという方に、愛にあふれたとっても深い劇評を頂き、
その際、塩田演劇には「母親が登場しない。どの家族にも母は影も形も
ありません。『母なるもの』などという贅沢は先にこの世界から消えて
しまったかのよう」という、示唆深い感想を拝読した時から、いつかは
母性を描けたらな、って思っておりました。その片鱗を(片鱗ですけど)
『1974』のコンちゃんに託します。

そして、昨日のムギムギに書いた『三億円少女システム』。座組唯一の
十代ではない女優さんコンちゃんには(初参加にもかかわらず)塩田の
突然「ちょっとやってみて」お願い指令が連発され、そのたびに、潔く
やり切ってくれるコンちゃんはいつしか年若の女優さんから母のように
慕われるようになりました。

が、本人は母的存在にはおさまりきらず「あたしは代役をやる人が代役
と思ってやったら、見る人にまったく意味がないって思っているんです」
と気合いのはいったコメントをもう何杯めか数えられないハイボールを
片手にしてくれたのが格好よかった

ちなみに、しらふのときのコンちゃんは 誰よりも気遣いの人です
実は酔っぱらった時も「甘噛み」なので 誰よりも気遣いの人です

役について詳しく書けなくて申しわけないですが、紹介篇ということで

大人の麦茶 十八杯め公演『1974』の今藤 洋子

どうぞ、おもいっきりたのしみに待っていてください!!

四枚めの似顔絵は オトムギの絵師 並木秀介画
他の方のも追ってご紹介しますけど、絶妙に切り取ってますよねー
12月の『1974』イラストレーターとして物販デビューかもです!
Date: 2011/03/27(SUN)


三億円少女システムと 朴訥な天の邪鬼。磯和 武明さん

磯和武明について知ってる幾つかの事柄。

上京してきた週にオトムギ『いちころソング』を手伝ってくれた。
昨春に期間限定で結成された『ガンガントクスルズ』のメンバー。
働き者で、演じることが好きな気のイイ自転車野郎。太陽礼拝男。
なんか風呂のない倉庫?で快適に居住してるらしい。我慢強そう。
頑丈で俊敏そうな細い体躯。特徴的な太い声。笑うと少し可愛い。
「欲しがらないマイペースな低い声」(大人の麦茶 並木秀介談)。
『三億円少女』で依子の秘密の声(紙芝居のウミガメ・犯行当日)
をやってくれた頃からいつか一緒に組みたいなーと願ってました

そして、いったん話は変わりますが

昨年秋の舞台『三億円少女』は大人の麦茶公演ではないけど我ら
ほぼ総力戦で臨んだ作品。そこで生まれた方法論は大人の麦茶の
演劇を劇的に変貌させました。公演毎に入れ替わってゆく七人の
主演女優全員に是非とも悔いなく主演をやりきってもらいたくて、
時間が無い中で必然的に生まれた方法論は、通常稽古の七分の一
しか返し稽古が出来ない主演女優に一つでも効果的な演出が行き
渡るよう、可能なかぎり(他の役で出ていないシーンは)全ての
返し稽古を視ててもらって「今の依子、ここが良かった。参考に
して下さい」と「誰かが演じた依子の良かったところを、全員で
共有財産にしていくやり方」でした。これは演じる方も視る方も、
座組の信頼が築けてないと大惨事になりうる危険な賭けでしたが、
とても理性的に受け入れてもらえ、さらには客演の大人俳優一同
もベリーズ工房の七人の女優さんも、全員が全員の役を演じられ、
いつでも寸暇を惜しんで反復稽古が可能というありえないほどの
チームワークが形づくられていきました。本当に類い稀な協調の
力と献身する心、それにずばぬけた才能の結集で成し遂げられた
今かんがえても 奇跡の舞台であったと、有り難くおもいます。

その過程で演出(塩田)は「このセリフ、このシーン、ちょっと
やってみて」と本役ではない方にお願いすることがたびかさなり、
本役の方も「え?なんで他の人が演じるのを見るの?」ではなく
「参考になるいいこと、やってくれるんだ」と抵抗なく積極的に
臨んでくれ直後の稽古からどんぴしゃに絶大な効果がありました。

これは言い出す演出は気楽でも、場を仕切る演出補佐(稔)には
繊細なデリケートさが必要とされ、演じて見せる本役でない俳優
の方には「演技の精度の高さ、理解力、瞬発力」が、視てくれる
本役の方には「柔軟さ、理解力、強靭な心、信頼」が要求される
難度Dの稽古法だと思います。でも、ぼくは、これは座組の力を
信じきれるなら、大人の麦茶公演でも相応の効果があるはずだと、
今回の『1974』の稽古でも 部分的に踏襲することに決めました

これに面食らってしまったのが、タケ坊だったかも知れません。

『1974』宛書きをする幸せシリーズ、続けてみます

磯和武明さんは当年24歳の青年。今回の舞台となる1974年には
まだ生まれていません。(といっても 塩田とて物心がついてる
程度で 大部分わかったつもりの空気感頼りで書いてるんですが)
そんなこともあってか、稽古序盤には、演出の言葉が空回りして
役へのアプローチに苦労しているようでした
そこでオレは「じゃ、ちょっと稔、やってみて」と言いました
・・
「ハァッ?」声に出さぬまま、タケ坊はおもったのではないか?
・・
自分の役を誰かが演じるのを視る。しかも、それは不在が理由の
代役ではなく「ぶっちゃけ」現時点でそのシーンをより効果的に
演じられるからという見本みたいな理由です。果たして、スッと
やってみせた池田稔は役の勘所を瞬時に掴んだ、抜群に素晴しい
芝居をしました。タケ坊は、「はい。とても参考になりました。」
としっかりした声で言い、直後の本役の稽古で、まったく参考に
していない芝居をしました。

オレは、ま、そりゃそうだよな。この演出法って塩田がよく言う
『宛書き=あなたが演じてる姿を見たくて書きました理論』とも
真っ向から矛盾しちゃってるずいぶん暴力的な進め方だもんなー、
耐えられなくてもあたりまえかもしれん、と思ったりしました。
だけど、磯和武明が演じてる姿を思い浮べてこの役を書いたのは
紛れもない本当なんだ、と思ったりもしました。

んで翌々日の稽古。

そのシーンの立ち稽古で、ぶわあーーッと風の音が聴こえました。
磯和武明の身体から吹いてくる風圧のぶっとい強風が見えました。

タケ坊は、塩田脚本を骨の髄まで理解しきってる池田稔の芝居を、
しっかりと解釈した上で、もうまったく池田の演技にかぶらない、
ほとんど参考にしていない、磯和武明の演技を魅せました

見事で、圧巻でした

オレが思わず「タケ坊が良くって、うれしい!!」って叫んだら、
なっきぃやちっさー、どぅー、座組の皆から割れんばかりの拍手
が飛びました。みんな、そう、同じことを同時におもったんです!

そうしたら、磯和タケ坊は(真っ赤に紅潮した)すました表情で
「かんべんしてください。褒められて伸びるタイプじゃないんで」
と言いました。

磯和 武明について知ってる事柄。追加。

飾らない朴訥(ぼくとつ)とした、落ち着きのある仮面の下では、
意地っ張りでふてぶてしい不屈な天の邪鬼の血が燃え滾ってます。

「若者はこうでなくちゃ!」なんてことは思いません。
「若者は、こうだよなっ!」って思います。

大人の麦茶 十八杯め公演『1974』の磯和 武明

どうぞ、おもいっきりたのしみに待っていてください!!

そして、絶対読んでないと思うが、もし万が一、磯和本人がこれ、
読んでたら、わかってるよな、タケ坊。世界放浪の旅、ぜんぜん
オッケー。だけど、必ず 11月には帰って来てくれよな!

よなっ!
Date: 2011/03/26(SAT)


あらがいようのない笑顔力。宮原 将護さん

最近の将護は、ともかく たのしそうだ
稽古前も 稽古中も 掃除中も 帰り道も 呑みの席でも
なにをするのも 本当に 本当に 果てしなく たのしそうで、
この魅力には あらがいようがないなぁ とつくづくおもう。
なにかに一生懸命に取り組んでいる人を見ると、
「ああ、がんばってるんだなぁ」と尊敬したり
「自分もがんばらなくちゃなぁ」と反省したり
ある程度、客観的っぽい感想を持てるものだけど、
たのしくてたのしくてたのしい人には無条件幸福するしかない

『1974』宛書きをする幸せシリーズ、続けてみます

宮原将護と初めて会ったのは2008年『美女木ジャンクション』
遅刻して駆けこんだ会議室に将護が待ってて、涼やかな笑顔を
オレに向けた。そのあまりにすがすがしすぎる格好よい笑顔に
(オレはめったにそんなふうに考えるタイプじゃないんだけど)
「こいつはこんな異常に素敵な笑顔なのは、きっと絶対性格が
すげー悪い残酷なやつにちがいない」と、内心、すっげー失礼
なことを考えながら、おじぎなどして初対面の会話をすすめた
記憶がある。(今さらだけど本気ごめんー)

それで(なんて短絡的なんだ塩)『美女木ジャンクション』の
将護は悪役となってしまったのだが、稽古がはじまるやすぐに、
すがすがしい格好よいルックスの奥には、真直ぐな一所懸命さ、
ひたむきな向上心を秘めた、超いいやつであることが判明した。
オレはすぐに失礼な第一印象を手のひら返しで忘れて大好きに
なってしまったのだが、そのころの将護は、真面目で線の細い
ちょっと堅苦しい空気もまとっていたようにおもう

『美女木ジャンクション』の打上げの席ではびしっと言われた。
「なんで和泉さんにつけるような細かい沢山の演出をぼくには
つけないんですか?言っても出来ないって思ってるなら非常に
心外で非常に不愉快です。できると信じて演出して欲しいです」

オレは演出中、そんなつもりはなかったのでびっくりしたけど、
それじゃこの真直ぐオレを視ている青年への返事にはならない
と思い、なぜそういう印象になったか振り返り「サッカーでも
パスを刻んで回すミッドフィルダーと、いざって時に後列から
駆けあがってロングシュートを打つディフェンダーには求める
ことがちがう。そういうことだと思う」と答えた。そうしたら
将護はびしっとした目を少しだけ細め「あ。そういうことなら
理解しました」と言った。オレは、新撰組の隊士みたいなやつ
だな、こいつとまた真剣に芝居をつくりたいなーっておもった

あれから三年。。。

二時間の芝居なのに、登場が、一時間四十分たってからという
『いちころソング』濤(タオ)で、塩だ理想の漢(おとこ)を、

稽古初日に脚本が十ページ。しかもそれを「全部書き直します」
火が点きそうにたいへんだった『タイガーブリージング』では、
塩だの複雑な想いを整理がつかないまますべて預けてしまった
影の主役「田中情=カタギリジョー」を、

世界初「前代未聞のレインボー主役公演」『三億円少女』では、
七人の依子の相手役(=お客さまの気持を投影し体現する存在)
昭和の一朗ちゃんを、

全ステージ「すべてを新鮮に(すべせんにぃ)」演じ切って・・

(それ以外にも、ミラクル・ガンガン・ベリーベリーな季節を
駆け抜けて)

いつのまにか、初対面の将護とは、まったく別人になった

全細胞を集中させて役に臨み続けた結果、まるで筋トレとかで
膨張してパンプアップした筋肉が、戻る時にひとまわり大きく
なっていくみたいに、線の細い 堅苦しい すがすがしい青年は、
ぶっといでっかい漢になった

そして、現在。冒頭に戻る。

『1974』の将護は、ともかく、ものすごくたのしそうである。
演じてもらう豊島大地という役は(『いちころソング』のタオ
ほどではないけれど)かなり出番が遅めの役なのだが、将護は
呑み会で「全部のシーンの稽古がたのしい!この先どうなって
いくのか、もう全部たのしい!」とにこにこ言い「で、ぼくの
役割が今現在まったくわからん!」とそのにこにこ笑顔のまま、
たのしそうに言った。いいなぁ将護と思わずにいられなかった

通し稽古をご覧になった℃-uteのチーフマネージャーNさんが、
「なんですか?あの宮原さんの笑顔は。岡井と中島を視ている
自分がときどき持っていかれちゃってます!」と驚嘆していた。
なぬっ?!天下の℃-uteのなっきぃ ちっさーから時々とはいえ
視聴率をさらってるとな・・?!
ぼくはNさんのこの言葉を聴いた瞬間、将護の笑顔力の正体が
わかった気がした

どうして将護のあのたのしそうな笑顔にはあらがえないのか?

それは「今、ぼくはあなたとここにいるのがたのしい!」って、
力いっぱい 素直に表現されているからだ。
ヒトはそんな態度を素直にあらわされてしまうと、もはや対抗
する手段を持たない。ただもう無条件に幸福になってしまう。

そんな将護に「宛書き」をさせてもらった豊島大地は、簡単に
紹介するなら劇中、ちっさーとなっきぃにチャチャ入れをする
役割(将護自身がオトムギHP『チャチャ入れデイズ』にそう
書いていて爆笑した)・・いやいや作家に言わせてもらうなら
けっこう新しい挑戦と思って書いてますよ、今まで視たことが
ない宮原将護だって自負してます。でも、役への向き合い方と
いう個人的挑戦を超えて印象の強い鮮度が高い「たのしそうな」
チャチャ入れっぷりにプロ中のプロNさんをして「あーうちの
中島や岡井とシーンをつくるのを本気でたのしんでるんですね」
という微笑ましいうれしさで目が離せなくなったのだとおもう

観る人を無条件幸福にしてしまう笑顔。
こんなすごいことってなかなかない。

そんな俳優さんと芝居をつくれること、芝居を上演できること、
このうえない幸せをかんじます

大人の麦茶 十八杯め公演『1974』の宮原 将護

どうぞ、おもいっきりたのしみに待っていてください!!
Date: 2011/03/25(FRI)


Faraway YOKOHAMA 何日君再来

年明けくらいからここムギムギにも幾度か書かせてもらっていた
四月中旬に横浜美術館で開催を予定していたあるプロジェクトで
今ごろは(『1974』の初日が無事に開けたらほぼすぐの約束で)
韓国とシンガポールに行き、映像・音像の最終仕上げをすること
になっていました・・のですが、
こちらは『1974』と違って中止になることが正式決定しました

プロデューサー川添さんや一柳さんの実現に向けての熱意溢れる
ご尽力で、一時は六月実施延期ということでまとまったのですが、
このプロジェクトは 30,000ルーメンのプロジェクター 9台使用、
計100K以上の電力が必要となる屋外での映像企画であるため
みなとみらいは計画停電対象外になっていますが、対象外であれ、
この状況下ではやはり不適切との判断で、この決定となりました

日本では殆ど前例の無い、建造物をメインにした壮大な映像企画、
新しい広告表現の先駆けとなるエンターティメントであること、
スタッフの方々がめちゃ優秀で心意気のいいメンバーであること、
塩田親友青島太郎くんとの共同演出であること、などの理由から

ものすごーっくわくわくしていたプロジェクトではありましたが、
ものすごーっくわくわくしていた塩田にも中止の理由はまったく
異存の無い、正しい判断だとおもいました

今まで(3月11日まで)一つ一つ万事順調に進行していたので
またいつかこのメンバーで臨むこのような仕事のご報告ができる
って信じております。

余談ですけど、技術スタッフチームのマットとクリスティーンに
「次回の打合せ、うまくタイミングがあったら観に来ないか?」
って『1974』のチラシを渡したら、二人とも「Oh!Cute!」って
声を揃えていました。へいへいへーい!

最後に、今回の技術スタッフチームが、シンガポールで手掛けた
『建造物をメインにした映像表現』をご紹介。かっちょいいです

http://www.youtube.com/watch?v=Pm9yb1w7-Lc&feature=player_embedded#at=39

じゃーな YOKOHAMA!またな! へいへいへいへーい!!
Date: 2011/03/24(THU)


容れものを空っぽにするオトコ。斉藤 佑介さん

なりふりかまわず没頭していた仕事に一区切りついて
散乱した本を本棚へ返し、丸まった鉛筆をぜんぶ削って、
散らかった机をきれいに拭いて、空っぽの空間のまえにすわると、
よし、さぁ次へかかるべしっというすがすがしいきもちがわいてくる。
いつも「もっと短いタームで区切ってきれいにしたい」とおもいつつ
なかなかそれができない だらしな塩駄です

『1974』宛書きをする幸せシリーズ、続けてみます

斉藤佑介さんは、どういうヒトなんだろう。

『タイガーブリージング』の超お馬鹿で純粋、ひたむきな
かっとびヨコハマ。
『三億円少女』の超サイコな危険人物、全ての悲劇の元凶、
ハカイダーリーチ。
ご一緒するたび、冴え冴えと水際立った芝居で、舞台上に風を吹かせる
凄い役者さん。そのあまりに見事なぶっとび加減に
斉藤佑介本人もぶっとんだやつなのかなー?って思ったりするんだけど、
でも、次に会った時の佑介には、前の役の残り香(のこりが)がしない。

すごく感じがよい、謙虚で、礼儀正しく、明るい、ピュアな、涙もろい、
「どこにもぶっとんだ印象がない」すてきな涙もろい(あ、二回書いた)
好青年なのだ。

佑介さんは演劇界の超売れっ子俳優なので、今まで一度も稽古初日には
出席できたことがない。そして、別の本番を終えて合流したその日から、
さぞかし全身全霊で取り組んでいたであろう「昨日までの役」の匂いを
全く感じさせず、ここの現場に最速できもちよく飛び込んで来てくれる。

それは、ひとつの芝居ごとに、自分のこころの容れものを空っぽにして、
いわば机をきれいにして臨むことを自身に徹底しているからではないか。

塩田が尊敬する哲学者内田樹さんの『内田樹の研究室』というブログに、
『こびとさんをたいせつに』という、「ヒトの才能の本質」についての
ものすごく示唆深い文章がある。長くても読んでみて下さい。特に後半。

http://blog.tatsuru.com/2009/10/03_1726.php

いわく、
『スランプというのは「自分にできることができなくなる」わけではない。
「自分にできること」はいつだってできる。
そうではなくて
「自分にできるはずがないのにもかかわらず、できていたこと」
ができなくなるのが「スランプ」なのである。
それはそれまで「こびとさん」がしていてくれた仕事だったのである。』

佑介さんは、内田さんのいう「こびとさんに機嫌良くいてもらう」方法を
本能的に知っていて、それをストイックに自分に課しているのではないか。
だから、あんな「できそうもない」凄い芝居が「できちゃう」のだと思う。

演劇に生きると決めたから、そのことを第一にすえて、誠実に生きている。

そのブレない姿に、請けた仕事の全てに優劣をつけず一所懸命に臨む姿に
いつも衝撃的に感動してしまう。現場を共にできる感謝にふるえてしまう。

で、ここまで書いて、また冒頭に戻ってみます。

斉藤佑介さんは、どういうヒトなんだろう。

役になるまえの、こびとさんが舞い降りて来て「ぶっとぶ」よりもまえの
すごく感じがよい優しい好青年の佑介さん、そのエッセンスの、その先に
隠されてるものを「三度目まして」の『1974』に書いてみたくなったのだ

なので、今回は前もって脚本も送らずに(われながら意地悪ぃなぁ オレ)
まったく初見の佑介の本読みってやつを聴かせてもらった。そしたら・・

宗兵は『1974』特設ブログに「どうして初見であんなしっかりした芝居が
できちゃうの」と書いてたし、カズさんは「いやいや彼は満足してないよ、
ありゃもっともっとくるよ」とか言って、その夜の呑み会は不在の佑介の
(ホント失礼。さぁーせん。許して)演技論で盛りあがったりしてたけど、

オレは視てしまった。佑介が、試行錯誤の中で、役に風穴を開ける瞬間を。
「あ。そういうことかぁ。。」ってハッてなった。ハッてかなしくなった

なにが「そういうことかぁ」ってうまく書けなくて申しわけないのですが、
毎回、容れものを空っぽにする精進をしてるけど、本当は人一倍、空っぽ
にしたくないヒトなんだ・・たいせつなものを、たいせつになったものを
手放したくないけど、しかたなく「外付けのハードディスク?」に預けて
先へ向かおうとするヒトなんだ、というようなことが、手触りの慣れない
新しい脚本に必死に向き合う佑介さんの懸命さから伝わってきたんです

地震の最初のすごい大揺れがあった次の日、『三億円少女座組』のみんな
から誕生日プレゼントで贈られた「ブタの貯金箱」が割れてしまった話を、
笑いながらしようとして、笑えないで一瞬、涙ぐんじゃった佑介・・

どういうヒトなのかは、もう前から知ってたじゃんかっオレっておもった。
そして、なんか今までも好きだったけど もっと好きになった

そして、「われながら意地悪ぃことをした」自分に自己嫌悪になりながら、
ごめんね、有り難う。って思いながら、その風穴佑介の越えてゆく瞬間に
すべてをもらって、その時の衝動に貫かれ、残りの佑介の全部のシーンを
書きました

長々と書いたのに肝心なところ、書けなくてすみません。だけど、
くすりフィンガーのシンペイとも、ヨコハマとも、リーチともちがう、
じんじんきちゃう佑介さん、お魅せすることを約束します

大人の麦茶 十八杯め公演『1974』の斉藤 佑介

どうぞ、おもいっきりたのしみに待っていてください!!

注。
四枚めの写真はイメージで、当然、佑介さんの三億円貯金箱じゃないです。
昔、ネットサーフィンしてたら見つけた写真です。もう二度とそのページ
に行けないし、思い出すことも無理です。なら載せるなって話なんですが
無断転載、申しわけありません
Date: 2011/03/23(WED)


友だちではないオトコ。和泉 宗兵さん

『1974』宛書きをする幸せシリーズ、続けてみます

オレは、和泉宗兵ほど情にあつい人間に逢ったことがない

現在、命を懸けて日本を救い続けてくれている東京消防庁
ハイパーレスキュー隊をテレビで視て冨岡総隊長の無言の
目に大感動しながら、無意識に宗兵さんを思い出していた

非常に士気が高く思い遣りの深い漢なので、一緒にいると
すてきな気分になり、「今夜の呑み、宗兵は行くのかなぁ、
宗兵が行くならオレも行くかなぁ」とか依存しちゃうほど、
一方的に友情をかんじている

なんで「一方的に」と書くかといえば、以前、宗兵さんに
「ぼくは泰造さんを友だちだって思ったことはありません。
あまり自分のことを知られたくないって思っています。」
と、ぴしっと言われたからだ

オレはそれを言われた瞬間、がーんっ!とはなったけれど、
同時に、有り難いきもちにもなった

人は、男でも女でも、人を好きになると惹かれて近よって
もっともっと知りたくなる・・そして、そのことは同時に
好きになればなるほど熱心に情報は蓄積されてしまうので
結果的に、新しい情報は減少してゆくことも意味している。
極論すると 人は人を好きになるほど飽きてゆく のである。

この矛盾は、実は人間が抱えている永遠の問題のひとつだ。

反対意見もいっぱいあるとおもう。人は人のことは結局は、
わからない、という、よく耳にする信憑性の高い説もある。
だけど、わからなくてもわかったニュアンスにはなるのだ。
「新しい情報はない。すべてがおまえらしいな、まったく」
そのニュアンスが友情を確認させる。こころをリラックス
させストレスを解放し、心地よい安心を与えてくれるのだ

オレなんて、たとえば大好きなラーメン屋とか呑み屋には
もうまったく新しい味覚を、チェンジを、ニュースを希望
していない。いつものとおりの「ああ、この味、この空気」
そういうもの(だけ)を切実に希望している。
昔からの友に逢えば「かわらない安心感」を巻き戻し再生
しながら(だけ)酒を酌み交わすことが基本的には理想だ。
「新規の事業をはじめてさ」とか「オレ、愛人ができてさ」
というニュースは、実はあんましウェルカムではないのだ

だけど、ともに芝居をつくる役者と作家・演出家の関係は
もちろん、そんな関係ではだめで、それではたちゆかない。

和泉宗兵さんとともにつくってきた芝居

マフネを演じてくれた『サバンナチャンス』
トーマスを演じてくれた『美女木ジャンクション』
ミハルを演じてくれた『ネムレナイト2008』
ヨーダを演じてくれた『いちころソング』
ウマシネを演じてくれた『サンクユーベリーベリー』
カワトウを演じてくれた『三億円少女』
そして、アクトリーグで毎週毎週稽古をともにした二年間

ぼくは宗兵さんの人間としての魅力、役者としての魅力を
知れば知るほどに惹かれ、常に物語の中で「ここのところ
を是非引き受けて欲しいんだっ」という役をお願いし続け
見事に応えてもらってきている。それは得難い関係であり
時間なのだと思うけど、その積み重ねて来た得難さの中で、
親愛の情、同士としてのおもい、が深まれば深まるほどに、
宗兵は、なにも出し惜しみしないままに、できないままに
(毎回真剣勝負なので、出し惜しみなどするわけないのだ)
作演出への「あたらしい宗兵」がなくなってしまうことを
よしとせず、もがき苦しみながらも、明るく、鮮度を高く
存在し続けようと闘っている。あつい血潮を燃やしている。

それが、「友だちと思ったことはない」の真意なのだろう。
オレはそれをとても有り難くうけとめ、友だちになるのは
いつか老後にとっておこうと決めた

今回『1974』では、そんな明るく人間臭く血を流している
役者和泉宗兵の今の今の今を宛書きさせてもらったつもり。

応援するウマシネでも目撃するカワトウでもない、当事者。
感情を剥き出しに 肉体を躍動させ 魅力を迸らせる宗兵を

12月のサザンシアターが待ち遠しく武者震いがしてくる

お客さまにとって観るにあたいする演劇をつくるために
作家として、俳優になにか、あたらしいものを提示したい。
演出として、俳優のなかに、あたらしいものを発見したい。
決してあたらしいものを狙ったあたらしさではないものを

暑苦しくなってすみません

和泉宗兵には、
アクトリーグ・カルツの憧れの和泉さんだったころのこと、
「和泉さん、オトムギに出てくれるって」と感動したこと、
忘れずに
近しくなって特別に見せてくれた、色んな瞬間の表情や声、
忘れずに
あたらしい和泉宗兵を見つけにいきたい、とおもっている。

大人の麦茶 十八杯め公演『1974』の和泉 宗兵

どうぞ、おもいっきりたのしみに待っていてください!!
Date: 2011/03/22(TUE)


宛書きをする幸せ。岡井 千聖さん

ちっさー こと 岡井千聖さんとはじめてお会いしたのも
前述のオトムギ初ゲキハロ『寝る子は℃-ute』でした。
はつらつとした笑顔と、さくっとボーイッシュな雰囲気、
風とおしのいいギャグセンスに惹かれ、茅奈(ちな)と
いう、物語に他のみんなとは別の切り口でからんでくる
「カリスマ占い師の娘」というスパイス的な存在の役を
宛書き(あてがき)させてもらいました

その宛書きは、じまんっぽくなっちゃってすみませんが、
岡井さんの魅力にばっちりあっていたようにおもいます。
・・そして、だけど稽古がはじまってしばらくたつうち、
ちっさーはそれ以外に、いつもはかくされた特別な力を
持っていることにぼくも大人たちも気づきはじめました

『寝る子は℃-ute』には主題歌があって、歌詞の一部に
『二人で手をつないで、星を見たくて』というパートが
あります。振り付けの先生は、当然「二人で手をつなぐ」
振りをつけていくのですが、二人ずつ組んだら℃-uteは
一人あまってしまいます。ぼくが、そのことに気づいて
「うっ、どうするべ」とあせる間も無く、岡井ちゃんは
タタッと一人で遠くに駆けていきながら「じゃー千聖が
『二人でー♪』のあいだは、一人でこうダンスやってて
『星を見たくて♪』の時に、サッてなっきぃと舞ちゃん
のとこに手をつなぎに行きます」と、一瞬で言いました。
誰もあせりだす前に、自分を犠牲にして解決しちゃった
・・なんじゃ??この娘は・・??

『寝る子は℃-ute』は、℃-uteの初めての本格的な舞台。
さぞかし不安も多かろうと、演出家塩田は信頼する仲間、
プロフェッショナル俳優たちを連れて現場に臨みました。
「稽古や舞台上でなにか困ったら彼らを頼ってください。
彼らは海千山千(うみせんやません)絶対なんとかして
助けるから」くらいのことを言っていました。そうして
はじめた稽古で、バカヒロという役の中神さんがセリフ
を忘れてシーンを止めちゃった時(稽古初めの中神さん
にはよくあること、オトムギ稽古なら笑い話なのですが)
塩田はぶち切れて「中神!そんなんじゃ たよれねえよ!
役者だろ、おめえ!」と激しく罵倒をしてしまいました

恥ずかしい話ですが、稽古場は凍ってしまいカズさんは
(めずらしく)うなだれています。そんな重たい空気で
再開した稽古は「バカヒロがボヤ騒ぎを起こした別荘を
みんなで復旧する」という、セリフのないフリー演技の
ちょっとミュージカルっぽいシーンでした。その時です。
皆は掃除や修理に大忙しなのに、一人だけなにもせずに
また煙草なんぞ吸おうとする(役の)中神さんに茅奈役
の岡井さんが(今までそんな動きは見せてなかったのに)
目を強く光らせてぽんぽんぽんぽんからんでいくのです。
言葉のない演技で「あんたも働きなさい。タバコなんか
やめろ」とうったえてるその姿は、まるで「ひっこむな、
ひっこむな、さっきのリベンジをしろ。大丈夫、大丈夫」
ってカズさんを力づよく元気づけているかのようでした
・・なっ、なんじゃ??この娘は・・??

その夜の呑み屋。カズさんは半泣きしながら言いました。
「タイゾーの手のつけられない本気切れで俺は滅ぶかと
思った。俺は俺は今日、岡井ちゃんに救われたんだぁー!
あの子は・・岡井ちゃんは、菩薩(ぼさつ)だぁーッ!」

はい。岡井千聖の いつもは封印された特別な力。それは
菩薩のこころ。ひとの 場の ピンチを引き受ける人間力。
それは初顔合わせの時点では気づけなかったことでした。

ぼくはなんとなく稽古中「今、この瞬間、稽古場の空気
どうかな?」っておもう時、無意識にちっさーの表情を
目で追うようになっていました。「ちっさーが無邪気に
はつらつと笑ってる時は、ばっちしオッケー。まっすぐ
真剣に目を輝かせてる時も、ばっちしオッケー。なにか
『ん?』っていう表情を見せてる時は、どこかかげりが
出てるのかも」って

次回ご一緒するときは、ぜひそこのところを書きたいな
と思って臨んだ今回の芝居です。

そんな『1974』は、作家の思い入れをドドーンと一気に
引き受けて、岡井さんの役は超大変な挑戦になりました
(どんな超大変かは是非12月の『サザンシアター』で
見届けてください!)
でも、稽古期間中、千聖さんは「たいへん」「できない」
とは決して言わずに、日に日に、前日の何倍も素晴しい
演技、目が離せなくなるシーンを魅せ続けてくれました。
回を重ねるごとに役になりきっていって、目がきらきら
輝きを増すのです。「どんと来い」感がすごいオーラを
放っているのです。ほれぼれする取り組み、化けっぷり、
格好のよさに、作家・演出冥利を感じずにはいられない
聖なる時間でした

ご本人が「今回はあたしとはもうぜんっぜんちがう役で、
だからすごいやりがいがあります」って言ってくれてる
のを耳にしてとても嬉しかったのですが、塩田としては
千聖さんからいただいたものをちょっとかたちをかえて
脚本に描いてみたつもりです

カズさんは衣裳合せ中に岡井ちゃんとお話したそうです

「あたしは演技が苦手で、℃-uteのみんなはなっきぃも
舞美ちゃんもすごい演技が上手で、ホントすごいんです、
あぁ舞美ちゃんの演技、見せたいなぁ」

ううん。そうかもしれないけど、今、ヒトのことそんな
すてきにほめたりしなくていいから。あなたはあなたの
能力の異常な高さに自分で気がついていないよ。前の日
に出来なかったこと絶対逃げずに自分のものにしてくる。
その姿は1974座組の全員をとりこにしているよ。
あなたのこの役は、絶対に 岡井千聖でしかありえないよ

カズさんはその時そう思って、思ったけども、本人には
言わなかったそうです
オレもまったくおなじきもちです。でもやはり本人には
伝えられていません

なんせ、ちっさーはともかくほめさせてくれないのです。
「通しすごく良かったよ」って伝えたいのに、ぽろぽろ
涙を流したりしていて、「えっ?!どうしたの?」って
おろおろ心配するまえに「あの、どうか、ぜんぜん気に
しないでください。自分が自分にくやしいだけですので」
と逆に気づかいまでしてくれちゃうのだ・・なんという
自分へのオッケーの高さなんだろう

それは、なっきぃ(中島早貴さん)も同じで、二人とも
本番で、お客さんにいいものを観せるまでやりきること
しか考えていない。「℃-uteは、なかなかほめさせない」

だから客席に喝采で迎えられたら、その時こそほめよう。

大人の麦茶 十八杯め公演『1974』の岡井 千聖さん、

どうぞ、おもいっきりたのしみに待っていてください!!
Date: 2011/03/21(MON)


だれでも知ってることだけど

時間は早めることも止めることもできない

だれかの安否を念っていたり
寒さや恐怖とたたかっている方には
一分一時間が果てしなくながいのだろう

なにも憂うることなく
自分がすべきことに集中して没頭している方には
一日のながさを感じる間もないのだろう

ご自分がとてもたいへんな心理状況にありながら
色んな人のつらさをおもんぱかれる「あるささん」
有り難く、大きな勇気をいただきます ↓

http://ameblo.jp/ashitanokaze-dd

山下治城さんのブログで知った「さとなお」さん
ふだんの美味しい店の食べ歩きや本紹介のコラムは
すごい面白かったけど
今はこんなふうにとんでもない活動をなさってて
有り難く、あたまがさがります ↓

http://www.satonao.com/

ぼくは、ここには書かない時間に涙をながしたり、
うわっ、ふだん毎日会ってる役者仲間のみんな・・
あらためて視ると異常に格好いいんだなぁ、なんて
おもったりしつつ、日日を過ごしています
Date: 2011/03/20(SUN)


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