きょうの社説 2011年4月1日

◎石川県議選告示 地域の未来託せる候補を
 地震と津波による未曾有の被害に打ちひしがれ、福島第1原発の危機的状況が続くなか 、石川、富山の統一地方選が、きょう告示の県議選で本番入りする。国民が心を一つにして立ち向かうべき国難を前に、各陣営は対立軸を打ち出しにくく、自粛ムードも手伝って運動のしづらさを感じているという。

 だが、有権者は政策論争の自粛を望んでいるわけではない。各候補が地域の将来像をど のように描き、どんなアイデアを持っているか、具体的で夢のある地域の青写真を示してほしいと願っている。政党間の対決色がかすみがちであるなら、これまで以上に候補者個人の見識や理念が問われよう。

 新たな県議の任期は、北陸新幹線の金沢開業の時期と重なる。石川県が大きく飛躍する 「新幹線元年」というべき貴重な4年間である。安全安心を含めた地域の未来を託せる候補は誰なのか。じっくりと主張に耳を傾け、私たちの一票を投じたい。

 今ほど政治家の資質が問われているときはない。戦後最大の日本の危機に立ち向かう政 府・与党、野党の議員たちは何をしているのか。全身全霊をこめて仕事をしているのか、空騒ぎをしているだけなのか。どこにいて何をしているのか、よく分からぬ者もいる。

 地域においても、災害に強いまちづくりの処方せんを再検討し、東北沿岸で猛威をふる った津波の備えをゼロから考え直さねばならない。「震災選挙」ゆえの新たな争点が浮上している。古里で大災害が起きたとき、私たちの生命・財産を託せるのは誰だろう。地方議員を選ぶ選挙に何を大げさな、といわれるかもしれないが、それほどの決意と厳しい目で、意中の候補を選びたい。

 自粛ムードがどうしても気になるという陣営があるなら、宣伝カーをむやみやたらと走 らせ、名前を連呼するだけの選挙運動を見直す手もある。動員をかけて気勢を上げる総決起集会の派手な演出をやめ、政治家として地域の課題を語り、政策を論じ合う場を設けるのであれば、むしろ有権者に歓迎されるはずだ。自粛を言う以前に、従来型の選挙運動を見直す機会にしてほしい。

◎原子力防災 拠点施設の見直しも課題
 東日本大震災の重大な教訓の一つは、地域の防災拠点施設や避難先に指定された施設の 多くが被害を受け、役に立たなかったことである。福島第1原発の事故では、現地対策本部が置かれる緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)が本来の機能を発揮できず、宮城県の女川原発のオフサイトセンターも設備が破壊された。志賀原発を含め全国のオフサイトセンターの見直しを迫る深刻な事態である。

 国の職員である原子力防災専門官らが常駐するオフサイトセンターは、東海村臨界事故 を教訓に、全国の原子力施設立地県に設けられた。重大な原子力事故が発生したとき、国や自治体、電気事業者らが一堂に集まって対策を打ち出す前線基地となる。地域住民が参加する原子力防災訓練の拠点ともなる施設である。

 問題点の第一は、原発施設との距離である。原子力災害対策特別措置法では、原発施設 から20キロ未満の地点にオフサイトセンターを設置することになっている。福島県のセンターは福島第1原発から5キロの地点で、震災で通信機能などを失った上、放射能漏れの拡大で、当初、センターに置かれた国の現地対策本部は、福島県庁舎に移らざるを得なくなった。

 全国のオフサイトセンターのほとんどは原発施設から10キロ以内にあり、石川県のセ ンターは志賀原発から5キロの能登原子力センターに設けられている。北海道のセンターは泊原発から2キロの近さである。各センターには代替施設が指定されており、志賀原発の場合は七尾市の県事務所があてられているが、福島原発のような事態になれば対応が困難になる。

 重大事故の対応策を実際に行う拠点の確保も大きな課題である。福島原発事故では施設 の敷地内の「免震重要棟」が作業員の待機場所となっているが、環境の悪化により、原発から20キロ離れたスポーツ関係の施設や福島第2原発の施設も待機場所にあてることになった。政府と原発立地自治体は原子力災害に対応する緊急拠点施設と代替施設の在り方を、もう一度考え直さなければならない。