【東京】日本共産党の吉井英勝衆院議員が2010年5月に開催された衆院経済産業委員会で、自然災害により原発のバックアップ・システムが崩壊し、炉心溶融につながる可能性を指摘したが、これに対し、経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は、そのような事態は実質的には起きないとの認識を示していたことが分かった。
吉井議員は、地滑りや地震などで原発の非常用内部電源や外部電源が断たれると、炉心を冷却する能力が奪われることになると指摘。この事故は実際に約2週間前に福島第1原発で起きた。
今回の事故については、日本の原発の監督当局と原発を運営する電力事業者が最悪の事態に備えることを怠ったとの批判も出ている。電力業界は、非常事態には電源を確保し、冷却水を原子炉に送り込む多重防護措置が講じられていると指摘していた。
同委員会の議事録によると、吉井議員は違った見解を取った。
吉井議員は、内外の過去の経験に基づき最悪の事態を想定すべきで、原発の停止後に原子炉の熱を冷やす能力を失えば、炉心溶融につながるという最も深刻な事態に備える必要がある、と強調していた。
これに対し寺坂院長は答弁で、理論的にはあり得るが、ほんとんど考えられないとの認識を示していた。
同院長は、炉心溶融は外部電源と非常用の内部電源の喪失、近隣の発電所からの電源融通ができない事態の時に起きるが、これらの事態の一つでさえも起きる確率は極めて小さい、と述べていた。
議事録によると、同院長は「最悪の事態が起こらないように工学上の設計をしている。ほとんどそういったことはあり得ないだろうというぐらいまでの安全設計をしている」と答弁していた。
福島第1原発を運営する東京電力は、通常及び非常用電源が断たれた今回の地震と津波の規模について、同社の想定を上回っていたとしている。
吉井議員はインタビューで、結局、かれらは深刻な事故は決して起きないだろうと考えていただけだ、と述べた。
原子力安全・保安院は昨年の同委員会での答弁についてコメントを控えた。
継続的な核エネルギー利用に反対する同議員は国会で、これまにもこのような問題を提起していた。06年3月には原発の冷却水をくみ上げるディーゼルエンジンが津波で浸水し機能しなくなる可能性を指摘していた。このような事態は福島第1原発でも起きた。