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[26821] 仮面ライダー剣~ブレイド&ブレイド-Someday Somewhere-~
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2011/03/30 21:25
ものすごくお久しぶりです。ホットコーギーです。
リアルの忙しさ アイデアの枯渇 地震によるゴタゴタでまったく電ハルが進んでおりませんでした。
ようやく落ち着き、そろそろ何か考えて再開かと思った矢先に地震、電気が止まってる間に考えたけどどう考えても思ったとおりの展開まで持っていけないことから、電ハルはもうしばらく止めておくことにしました。

代わりに、改めて剣崎主役のSSを書いていこうと思います。
主役は剣崎一真、そしてもう一人のブレイド剣立カズマです。
二人の共演はディケしゅごでもやったのですが、もっと突き詰めて書いてみたいと思いましたので、今回は完全に一真とカズマ、敵キャラに絞って書いていこうと思います。
なのでクロス作品は無く、ライダーだけで話を進めます。
敵はオリキャラを使いますので、敵でもオリキャラは苦手という方にはオススメできません。

書き忘れましたがこの作品は私が書いた剣ハル、ディケしゅごとは関係ありませんので二人のブレイドは初対面です。



[26821] プロローグ
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2011/03/30 18:38
プロローグ
11人の仮面ライダー達の活躍により、世界の崩壊を防いでから一年後…
滅びの減少の速度を限界まで抑え、仮面ライダーディケイドを旅へと導いた九人の「オリジナル」の仮面ライダー達は、
再び世界の壁を越えて終結し、ある脅威を追っていた。
ライダー達は自分達が駆るスーパーマシンを走らせ、揺らめく時空の水平線を走る。
今回の事件はディケイドの力を頼り、利用することを彼らはしなかった。
彼を過酷な運命に導いてしまった罪を償うために、自分達でこの大事を治め、世界を守らなければならないと考えたのである。
そのライダー達のマシンの列の最後尾で、仮面ライダーキバ・紅渡の駆るマシンキバーは、仮面ライダーブレイドが操縦するブルースペイダーの
隣に並んだ。

「剣崎さん、もうすぐ目的地に着きます。」
「何処なんだ?」
「…ブレイドの世界です。」

ブレイドはキバの言葉を聞くと、仮面の奥に隠れた目を細め、自嘲気味に苦笑した。
まさか向かう場所が自分と同じ仮面ライダーブレイドが守っている世界とは…まったく皮肉なものであるとブレイドは思った。
その世界にはブレイド以外にも、昔自分と共に戦ったレンゲルやギャレンといったライダー達が戦っていることは知っていたため、自分の仲間達
と同じ姿のライダーの姿を見て懐かしさと同時に寂しさを感じてしまうであろう自分の姿を想像すると、多少気が乗らなかった。
しかしそんな事は言っていられない。
今回の事件はライダー達の力を悪に利用されてしまうかもしれない重大な一件なのだ。
一刻も早くブレイドの世界に辿り着き、悪の陰謀を阻止しなければならない。
そんな時、アンデッドに備わった研ぎ澄まされた感覚が疼き、ブレイドに危機を知らせ、ブレイドは急ブレーキでマシンを停めた。

「ッ!?」
「どうしました!?」

ブレイドと併走していたキバは彼の異変に釣られてマシンを停める。
先を走る七人のライダーもキバの後すぐにブレイドの異変に気付いたものの、それぞれのマシンの猛スピードを緩めることが出来ず、ブレイドと
キバから少し距離を取った位置に停まった。

「まずい…皆!そこからすぐ下がれ!」

ブレイドは警告したが、既に遅かった。
七人のライダー達は、突如地面に出現した紫色に輝く魔方陣に閉じ込められ、不気味な光を浴びたのである。

『ぐあああああああ!!』

光は徐々にライダー達の姿を消滅させていき、クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、響鬼、カブト、電王の七人ライダーはやがてマシンごと何処かへ姿を消してしてしまった。

「皆!?クッ…!」

ブレイドは自分のミスを呪った。もっと早く気付いていれば、こんな事態にはならなかった。

「そんな…」

キバも突然の衝撃に呆然とし、肩を落とした。
その時、二人の耳にぼそぼそと呟くような喋り方の女の声が聞こえてきた。

「二人…逃がした…」
『!?』

ブレイドとキバの前に、ボディラインが浮き立つスカート丈の短い袖なしのワンピースと、ガーターベルトで止めたオーバーニーソックス
を身に付け、その服装と交じり合うような漆黒のローブを纏い、先端に紫色の宝玉状の物体が付いた機械的なデザインの長い杖を手に持った
黒い長髪の少女が現れた。
少女は、一見すればかなりキュートな印象があったが、その目はまるでなにかに取りつかれた様に虚ろで、どことなく不気味な印象を
ブレイドとキバに刻み付けた。

「お前…誰だ!?」

ブレイドは怒りを露にして叫ぶと、再び虚ろな喋り方で口を開いた。

「私は、魔術師・アイリ…渾名のとおりその身に魔力を与えられた改造人間…」
『改造人間…』

ブレイドとキバは同時に呟く。
改造人間…それは自分達九人のいわゆる「平成仮面ライダー」達が戦ってきた怪人達と違い、主に仮面ライダー1号、2号といった「昭和仮面ライダー」達
が戦った悪の組織が作り出す、優秀な人間を改造手術して誕生させる怪人達である。
勿論、平成仮面ライダー達にとっても許せぬ敵だ。
だが二人は解せなかった。今回の件に昭和ライダーたちが戦った悪の組織は関係が無い。
なぜ改造人間が立ち塞がるのだろうか?
しかし二人の疑問が口に出される前にアイリという少女はライダーの変身ベルトのバックル部に似た赤い物体を取り出し、それを腰に当てると、ベルトが伸び、装着される。

「またの名を…」

アイリは、「R」の文字が刻まれた一本のダークブルーに彩られたUSBメモリに似たアイテムを取り出し、そのスイッチを押す。

『Ruin』

Ruin…「破滅」という意味を秘めた電子音声がそのメモリから響くと、アイリは声を少し大きくして言った。

「変身…!」

アイリはそれを腰のバックルに装備すると、バックルを操作する。
するとまた『Ruin』と電子音声が響き、アイリの周りをダークブルーの粒子が多い、やがてスーツ状に彼女を包む。
そして彼女はメモリと同じダークブルーに染められた女性的なイメージのアーマーを身に纏い、頭部には額に紫色のシグナルを付けた「R」の文字を逆さにし、
形を見栄えのいい角状に整えたアンテナが装備された仮面が生成されていた。
その複眼も杖の宝玉、シグナルと同じ紫色に光り、首には彼女が纏っていたものと同じ黒いローブが巻かれたことで変身は完了した。

「仮面ライダー…ルイン。」
『まさか!?』

ブレイドとキバは再びその身に驚愕を味わった。
しかし、ここにきて自分達と同じ仮面ライダーがその前に立ち塞がったのであるから、その点に驚いたのであれば仕方が無いのかもしれない。
だが二人が驚いたのは、アイリという少女が自分から改造人間といったにもかかわらず、自分達九人のライダー殆どのメンバーと同じ、発達した
科学技術によるシステムを使ったいわゆる「外付」の変身機能を使用してライダーに変身したことであった。
改造人間としての仮面ライダーは元々殆どが悪の組織によって改造された「怪人」として作られた戦士であり、彼女もモンスターのようなデザインの
怪人ではなく、仮面ライダーに似た姿に変身したとしても、不思議ではない。
しかしアイリは自分の体に付けられた機能ではなく、他の技術によって作られた変身ベルトを使用して変身しており、悪の組織が作った改造人間にして
は自分の能力を使って本来の姿に変身しないことは不自然だ。
しかし二人が疑問を浮べている間にも、仮面ライダールインは自信の武器である杖「ルイン・ステッキ」を構え、ゆっくりと二人に迫った。

「お前も奴の仲間か!?皆を何処へやった!?」

ブレイドは声を荒げ、ルインに問いかける。
ルインはそんなブレイドとは対照的に、無感情な声で答える。

「七人とも私達が捕まえた…貴方達も…すぐに捕まる…」
「ふざけるな!貴様に邪魔はさせない!渡、後は任せるぞ!」

ブレイドはブルースペイダーからおり、ルインと戦おうとする。
しかし、キバがブレイドの肩に手を置いて怒れるブレイドを止めた。

「待って下さい剣崎さん!ここは僕に任せていってください!」
「何言ってんだ渡!皆がああなったのは俺の責任だ!」

クウガ達が彼女の罠にはまった責任を自分のせいだと考えていたブレイドは、その落とし前を付けるために、自分が
ここで囮になり、キバをブレイドの世界に向かわせるつもりだった。
しかし、キバはそれを拒む。

「でも、剣崎さんが気付いてくれたおかげで僕だけでも助かりました。僕こそ貴方に恩を返さなきゃいけません!それに、折角のブレイドの世界にブレイドが
行かないと、何か違和感があるじゃないですか!」
「渡!」

キバはマシンキバーから降りて、ファイティングポーズを取った。

「口論の時間はありません。どうしても責任を背負うつもりなら、敵の野望を止めてください。」
「っ!…分かった…後から必ず追いつけ。」
「当たり前ですよ、こんなところで死ねません。僕はまだ…父さんのバイオリンを越えるバイオリンを作ってない!」

二人は会話を終えると、ブレイドは「マッハジャガー」のカードをブルースペイダーのカードリーダーにラウズし、「マッハスペイダー」で
駆け抜け、ルインの上を飛び越えてブレイドの世界へと向かった。

「逃がさない…」
「お前の相手は僕だ!」

キバは翼を広げるような姿勢で走り、ルインに挑んだ。

「ハアァァァァァア!!」
「そう…ならまず…貴方から…」

キバは持ち前の俊敏性を生かしたキックや連続パンチを用い、ルインを攻撃した。
ルインは、元の少女の姿からは想像もできない反応のよさでルインステッキを駆使し、キバの攻撃に対応した。
キバは純粋にルインの強さを肌で実感した。
流石は肉体を改造された改造人間、ライダー七人を生け捕りに出来る強力な魔法だけではなく、身体能力は自分にも引けをとらない。
やがてキバは攻防の中で両手を交差し、ルインステッキを受け止めて膠着状態に入った。

「クッ…強い!」
「私と互角…でも…!」

ルインは突如凄まじい腕力を発揮し、キバをステッキで突き飛ばした。

「うわ!?」

キバは地面を転がり、何とか体制を立て直して立ち上がり、ルインを睨んだ。
するとルインはぼそぼそと…だが、初めて何か感情を露にしたかのように言葉を発し始めた。

「私は負けない…負けられない…負けたらいらなくなっちゃう…いらなくなるのは嫌…寒いのは嫌…恐いのは嫌…一人は嫌…一人は…嫌ぁ…」
「(何なんだ…このライダーは?…けど!)」

キバがルインから感じ取ったのはとても悲しく、そして同時に恐ろしいほどの力を秘めた何かであった。
このままでは何かがマズい…このライダーは絶対にここで倒さなければならない。
そう察したキバは、短期決着のためにエンペラーフォームへの変身を決めた。

「タツロッ…」

しかし、タツロットを呼ぼうとしたその瞬間、キバの足元に緑色に輝く魔方陣が浮かび上がり、キバの体を凄まじい圧力をかけて拘束した。

「うわあああああ!?」

魔方陣の上で、キバは立ち上がったまま動けなくなった。

「まさか…僕と戦っている間にこの罠を…」

キバの予想通り、ルインはキバと接近戦を繰り広げている間に拘束用の魔方陣を自信の念力で描き、キバの後方に罠を設置していたのである。
一方ルインは、自分の力を誇示することも無く、ぼそぼそとした喋り方で言葉を発し続けたまま、「ロストドライバー」のバックル部に装填された
「R(ルイン)のガイアメモリ」を引き抜き、ルインステッキに装填した。

「必要とされないのは嫌…誰も見てくれないのは嫌…一人は…嫌…」
『Ruin Maximumdrive』

ルインステッキにはガイアメモリが持つエネルギーと、アイリ自信が持っている強大な魔力が合わさり、紫とダークブルーの二色の輝きがルインステッキの先端に
付けられた宝玉に集中していく。

「クッ…!」

キバは動けない万事休すの状況に仮面の下の奥歯を噛んだ。
そして最後に、ルイン…アイリの感情は溢れ出した溶岩のように高ぶり…泣き喚くように叫んだ。

「一人ぼっちは…嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

ルインはエネルギーが充填されたステッキをキバに向けて突き出し、彼の腹部に直撃させた。
ルインステッキを用いた彼女の必殺技「フォール・イン・トゥ・ルイン」である。


戦いの後、キバは意識を失い、変身を解いたアイリの魔術によって何処かへと消え、アイリは空ろな表情のままその場に立ち続けていた。
そんなアイリの後ろに突如揺らめくオーロラが現れ、中から東洋系の黒髪をした男が現れた。
男は見る限り20後半から30前半の年齢で、背は高く、年齢に見合った美しさを持つ外見をしており、ネクタイを付けない漆黒のスーツ姿で、
ロングコートのように長い白衣をはためかせていた。
男はアイリのすぐ後ろに来ると、優しい声色で彼女に話しかけた。

「アイリ。」
「!?…プロフェッサー…」

プロフェッサー…そう呼ばれた男の本名は沖田将和(おきた・まさかず)。
ある財団の科学者で、アイリにロストドライバーとガイアメモリを与えた男であった。
ライダー達が追っていた「モノ」は、この男が作り出したものである。

「ごめんなさいプロフェッサー…ブレイドを逃がしてしまったわ…これじゃ…役に立てない…」

アイリがぼそぼそと悲しそうに言うと、沖田は優しくアイリを抱きしめ、髪をなでた。

「プロフェッサー?」
「何を言うんだ。八人もライダーを捕まえれば上出来だ。それにブレイドならば逃げた者も含めればこれから向かう先に二人も居る。
どちらかだけでも捉えてくれればいいさ。」
「私のこと…いらなくなってない?」

アイリは沖田から離れ、上目遣いで彼を見上げて聞いた。

「勿論だとも。君は可愛くて優しい私の「道具」だ。君のようないい子を私がいらなくなるはず無いだろう?」
「…!」

沖田の子供をあやす様な口調にアイリは頬を赤くして微笑み、喜びを露にした。

「ありがとうプロフェッサー、大好きだよ…プロフェッサーはアイリが守ってあげるよ。」
「ありがとうアイリ。私も心強いよ。」
「所で…」

アイリは微笑んだ顔から疑問を持った表情へと変わると、新たに質問を口にした。

「プロフェッサー、あの人はどうなの?」
「ああ、完全に覚醒したよ。私の「R(リバイバル)のメモリ」の力は凄まじい。彼には既に仕事を頼んである。」

そう言うと、沖田は不敵な笑みを浮かべ、口元を歪ませた。


ブレイドの世界…この世界では今、大きな異変が起こっていた。
アンデッドが居なくなり、世界の崩壊が収まったことで平和を取り戻していたこの世界に、突如謎の白い仮面ライダーが現れ、街を破壊し始めたのである。
平穏だった街は恐怖に包まれ、白いライダーの凶行に廃墟と化していった。
そしてこの世界の仮面ライダーブレイドである剣立カズマより先にその現場へと到着していた彼の仲間、仮面ライダーギャレンと仮面ライダーレンゲルは…

「がっ…は…」

レンゲルはレンゲルクロスを内部メカがむき出しになるまで破壊され…

「ば…化物…!」

ギャレンは白いライダーの圧倒的な力に隠しきれぬ恐怖心を抱き、体を震わせていた。

「貴様…俺が何者か知っているか…?」

白いライダーは何かを求め、焦燥するような口調でギャレンに話しかけた。

「教えろ…俺は何だ?何で呼吸をするのがこんなに空しいんだ?どうしてこの体の「使い方」だけしか覚えていないんだ?」
「や…やめろ…来るなぁ!」

ギャレンは慌ててギャレンラウザーを連射するが、白いライダーは何も言わず、まるでそんなものでは死なないとでも言うようにまっすぐ、ギャレンに迫ってきた。

「誰なんだ…?」
「来るなぁ!来ないでくれえぇぇぇぇぇぇぇえ!!」

ギャレンはさらにラウザーを連射し続けたが、やはり効果は無かった。
ギャレンもまた、恐怖で錯乱して冷静な判断が出来ずにいた。

「あの女は…誰なんだ…?」
『Eternal Maximumdrive』

白いライダーは自らの武器である短剣に自らの力の源である「ガイアメモリ」を装填すると、電子音声と共に短剣の刃は光刃を纏った。

「何で…泣いているんだ?」
「う…う…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!あ…あ…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

既にギャレンの恐怖心は限界に達し、ただ無意味な銃撃を繰り返すだけの「獲物」へと成り下がった。
白いライダーは背に纏った漆黒のマントをはためかせ、的となったギャレンの前に立った。

「知らないのか…ならもういい…」

白いライダーは短剣を振り上げ、自分の問いに何も答えられなかったギャレンを用済みと判断すると、自分に付き合ってくれた「お礼」とでも
言うように、残虐に言った。

「地獄を楽しみな!」

蘇った不死身の亡霊戦士・大道克己…仮面ライダーエターナルの死神の刃は、恐怖に支配された哀れな戦士へと振り下ろされた。




やべー、凄い長いプロローグでした…
また言いますが今回は他の作品は無し、仮面ライダーだけで話を進めます。
ライダー作品だけで書くのは初めてですし、オリキャラの扱いも上手くは出来ないかもしれませんが、意見を頂ければ幸いです。
蘇った大道について参考にしたのは恐らく皆さんお分かりと思いますが、ライスピ版ゼクロスです。
なぜ彼が蘇ったのか?ライダー達は何を追っていたのか?アイリはなぜ改造人間でありながら怪人の姿に変身せずロストドライバーを
使うのか?沖田と言う男の目的とは?
すべて、後の話で明かしていきます。お楽しみに。

一応、もし映像になるならキャストはどうなるんだろう?と痛い妄想をして明確には剣崎と渡しか出しませんでした。
でももし本当に映像化するなら間違いなく生き残るのは電王こと溝口君版良太郎とイマジンズだろうなぁ…



[26821] プロローグ2
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2011/03/31 01:11
プロローグ2「Eの復活/よみがえった悪魔」

数時間前…
長い長い戦いの末、ようやく「死」という名の安息に辿り着くことができた悪魔(エターナル)が、「安らかな無の世界」から「血生臭い光の世界」へと
引きずり戻された瞬間から、ブレイドの世界での惨劇は始まった…


『ようこそ…死神の世界に…』
『過去が消えていくなら…せめて俺は明日が欲しい!…その為に足掻き続けてるんだよ!』

-何だこれは…?俺の…記憶なのか…?-

晴れて行く意識の中で、大道克己は自分の脳裏を駆け巡る様々な出来事、現れる人々の姿に押し流されていた。
喋っているのは自分…だが思い出せない。
まるで霧に覆われたように、過去が霞んで何も見えない。

『俺は仮面ライダーエターナル…ガイアメモリによって命運を握られた、哀れな箱庭の住人達を…解放する者だ…』
『さぁ…地獄を楽しみな!』

-地獄…
そうだ、邪魔な物を全て潰しながら自分は血塗れた道の上を歩き、両手を真っ赤に染めてきた。
何度も死線を潜り抜けてきたが、自分はその度にそれを乗り越え、生き延びてきた。
…違う、生き延びてきたんじゃない。
俺は「死ねなかった」だけだ。
だがなぜ?なぜ俺は死ねなかった?誰が俺をこんな風にした?-

理由を思い出そうとすると、克己の記憶は突然扉が閉められたように闇に彩られる。

-そうだ、俺以外にも居た…
俺のように死なない体を与えられ、共に死線を戦ってきた仲間達が…
…仲間?違う。俺はあいつらをそんな風に思ったことは無い。
「奴ら」はただの「武器」だった。
それ以上の感情を俺はあいつらに抱いたことは無かった。
どれだけあいつらが俺を慕っても、俺があいつらを仲間や友と思った事など一度も無かった…-

『さぁ、お前の罪を数えろ!』

-俺と最後に戦った「仮面ライダー」が言った。
俺は罪を数えるどころか、子供でも出来る反省すらせずに即答した。-

『今更数え切れるか!』

-俺は「蘇って」から多くの罪を犯してきた。
何人も傷つけた。
何人も悲しませた。
何人も裏切った。
そして…何人も命を奪った。
愛してくれた人さえも…
…俺を愛してくれたのは誰だ?
…なぜだ、なぜ思い出せない?-

『これが…そうか…これが…』
『そう…それが死だ…大道克己…!』
『久しぶりだなぁ…死ぬのは…クッハッハッハッハッハ!ハッハッハ…グアァァァァァア!!』

-俺は…死ねなかった俺は、この時ようやく死を迎えた。
身を焼く炎はとても暖かかった…血に塗れた体をやさしく抱きしめられたようだった…
そして、俺は「二度目」の死を迎えた。-

自分の最期の記憶まで閲覧した瞬間、克己の目の前は柔らかな光で包まれた。
眩しくはなかった…むしろ優しかった…まるで…まるで…
…克己には続く言葉が思い当たらなかった。
それは人間にとって身近すぎて当たり前のようであるが、何よりも優しくて、暖かくて、居なくなっても記憶の中で行き続ける存在だったはずなのに…

-…誰だ?-

昔、大切だったその人の姿を思い出せず、無意識にもがいていた克己の前に、白い柔らかな服を着た自分よりいくつも年上な女性が現れた。
その疲れきったような白い肌の女性の頬は、瞳から流れ出る涙にぬれていた。

-誰だ…?俺を知っているのか?
俺は誰なんだ?教えてくれ!
…待ってくれ…頼む!消えないでくれ!
嫌だ…待ってくれ!待って!俺を置いて行かないで!
待って!かあさ…-


何かの装置のカプセルの中で、大道克己は目を覚ました。
自分は何も着ていない裸の状態で、辺りを見回すと薄暗い部屋の中で大掛かりな機械がいくつも稼動している。

「ここは…どこだ…?俺は…誰だ?」

克己は何も思い出せなかった。
自分の名前も、今まで何をしていたのかも…
さっき、録画した映像のように夢の中で見たはずなのに…

「お~やおや…目が覚めたようだね。」

突然部屋の自動ドアが開き、左手に小さなスーツケース、右手にジュラルミンケースを持った白衣の男が部屋に入室してきた。
克己はその男を、獣のような瞳で睨む。

「何者だ?」
「そう恐い目で睨まないでくれたまえ。私の名は沖田将和、プロフェッサー沖田とでも読んでくれ。君と直接会ったことはないが、財団Xの科学者だよ。」
「財団…X…ッ!」

克己の脳裏に鋭い痛みが走った。
財団X…自分達の体を「死ねないゾンビ兵士」へと改造し、自分の過去を…暗闇色に塗りつぶした組織…
眠った記憶は克己にそう告げていた。

「う…うおぉぉぉぉぉお!!」

克己は本能の赴くままに自分を閉じ込めている特殊強化ガラスのカプセルを殴り始めた。
バズーカ砲でも壊せないカプセルは、克己の拳を傷付け、赤い血を滴らせながら醜く潰していく。

「おお、恐い恐い…」

沖田はそんな克己を見ても恐れを抱かず、陽気な口調で歪んだ笑みを浮べていた。
その時、再び克己の頭に激痛が走る。

「グッ…!」

同時に、財団Xについて蘇ったわずかな記憶も、泡のように消えてしまい、克己は両手で頭を押さえた。

「財団X…思い…出せない…!?」

気付くと、強化ガラスを殴り続けた拳から痛みを感じなくなっていた。
それどころか血は勝手に止まり、潰れた拳は元の形へと戻っていたのである。

「なんだ…これは?」
「フッフッフ…「NEVER」の力は完全に復活したようだね。記憶は不完全なようだが、記憶データは用意してある。それに記憶がない方がやりやすいか。」

沖田はそう言いながら部屋の中心部にある装置に近づくと、中央に指された赤紫のガイアメモリを引き抜いた。

「なんだそれは…?」
「リバイバルメモリ…その名のとおり「復活」を意味するガイアメモリだ。」

沖田は克己にメモリを見せると、すぐに白衣のポケットにしまい、それからパネルを操作してカプセルを開き、スーツケースを克己に投げ渡した。

「着換えたまえ。裸じゃみっともない。」
「…」

克己は無言でスーツケースをあけると、中には男物の下着と共に、リンゴに一本の短剣が突き刺さり、周囲に四匹の蛇が描かれた白いエンブレムと、アルファベットで
「NEVER」という文字が刻まれた赤いラインが入った黒いジャケットとズボンが入っていた。


克己は渡されたユニフォームに袖を通した。
克己はこの服に懐かしさを感じていた。
かつてこの服は、自分「達」を象徴するものであった…
しかし、それだけしか思い出すことは出来なかった。
克己はふと口を開き、沖田に話しかけた。

「貴様…俺を知っているのか…?」
「ああ、知っているさ。」
「…!」

克己は沖田の胸倉を掴み、眉間に皺を寄せた。

「教えろ…俺は…大道克己とは誰だ?」
「フフ…最強の兵士ともあろうものが、過去など気にするのか?悪いけど簡単に君の記憶データを返すつもりは無いよ。返したら君は、ここを出て行ってしまうだろう?」
「教えろ…出なければ殺す!」
「…奢るなよ、この死人臭いゾンビ兵士が…!」

沖田は克己の手を掴むと、強力で無理矢理克己の手を引き剥がし、捻った。

「ぐ…うあ…!」
「まさか、科学者がフィクションのように脅せば言うことを聞いてくれるような腕っ節の弱い奴等ばかりだと思ったか?」
「貴様…何者だ…?」
「君と同じ「化物」だよ…肉体を強化手術で改造した、財団X製の改造人間だ!」

沖田は克己を正拳突きで突き飛ばすと、克己は壁に激突し、悶えた。

「グアッ!」
「まぁ、異世界の改造手術と違って怪人の姿は手に入らなかったが、私にはリバイバルの力がある。下手な力よりずっと強力で安全だ。」

沖田はまた歪んだ笑みを見せると、克己は再び立ち上がり、沖田を睨んだ。

「貴様ぁ…」
「ふん、止めたまえ大道。今の君…いや、「E」の力を持っていたとしても同じT2として作ったリバイバルには勝てない。」
「何…「E」の力だと…?」

克己が疑問を口にすると、沖田は右手に持ったジュラルミンケースを克己に投げ渡した。

「これは…?」

克己はケースを空けると、中にはA~Zまでのアルファベットが刻まれた様々な色のガイアメモリ、上部には「L」の字を象った赤いベルトのバックル状の物体が
仕舞われていた。

「大道、君と共にリバイバルの力で復活させた「T2ガイアメモリ」と君の「ロストドライバー」だ。」
「T2…ガイア…メモリ…」

克己は26本のうち、「E」の文字が刻まれた白いガイアメモリに視線が釘付けになった。

「「エターナルメモリ」…俺はこれを知っている…他のメモリも…「ロストドライバー」も…すべて…」
「ほう…どうやら、戦い方だけは忘れなかったか。記憶データを一部戻す手間が省けたよ。」

沖田は安心すると、また不気味に微笑んで話を続けた。

「大道、取引をしよう。」
「取引?」
「ああ。実は私はある計画を練っていてね、上層部の人間達を駆逐して財団Xのトップに立ちたいんだ。」
「トップだと?」
「そうだ。だがその計画には一つ、重要な要素が欠けている。忘れているだろうが、以前君の計画の中で最後の一本のメモリが足りなかったようにね。
君はその重要な要素を手に入れるための手伝いをしてくれればいい。」
「貴様を信用していいのか?」

沖田は微笑を崩さず、話を続ける。

「君の勝手だが、自分が誰だか知りたがって私を手にかけようとするくらいだ。君も何も知らないままというのは苦しいだろう?それに、記憶データを戻さなくても
君の戦士として体に染み付いた記憶が君に全てを思い出させてくれるかもしれない。」

克己は再び眉をしかめ、沖田を睨んだ。
しかし沖田が動じるはずも無い。

「記憶が戻れば私を殺せばいい。まぁ、出来たらの話だがね。」
「…良いだろう。」

大道はケースからロストドライバーとエターナルメモリを取り出すと、ドライバーを腰に装着し、メモリのスイッチを押した。

『Eternal』
「変身…!」

メモリから電子音声が響くと、メモリを装填してバックルを操作した。
再び『Eternal』の音声が流れ、克己は「E」の文字を180度回転させて角状に形を整えた鋭いアンテナが付いた黄色い複眼の白い仮面を
被り、その身はロストドライバーも含めて26個のメモリ用スロットを体中に巻き付けた白いアーマーに包まれた。
最後に黒い大きなマントを背に纏い、大道克己は「仮面ライダーエターナル」へと変身を遂げた。
白い悪魔が、再び闇の中から目覚めたのである

「戦うことが俺の記憶に繋がるのなら…俺は喜んで悪魔でも死神にでもなってやる…!」


エターナルは高層ビルの屋上から、ブレイドの世界を見下ろしていた。
平和な世界だ…だが今からこれを壊す…全ては自分の記憶のために…
その時、再び夢の中に訪れた女性がエターナル・克己の脳裏に浮かび、涙を流した。

「またお前か…なぜ泣くんだ?何が悲しい?」

エターナルの疑問に答えることなく、女性は姿を消した。
エターナルは空虚な気持ちを感じていたが、「W」の文字が刻まれた白いメモリを取り出し、ロストドライバーのスロットに装填してスイッチを押した。

「…俺が、記憶のためにこの世界を壊すからか?」
『Weather Maximumdrive』

同時に電子音声が響き、エターナルの周囲には暗雲が立ちこめる。

「だが俺は知りたい…俺自身を…そして…女、貴様を…その為ならば…!」

暗雲からは雷、吹雪、突風、大雨…「天候」による強烈な自然の力が発せられ、雲は膨れ上がっていく。

「俺は…すべてを壊し続ける!永久にな!」

エターナルの激情と共に雲は一気に巨大化し、雷と吹雪と突風と大雨は街を飲み込み、エターナルの目に映る全てを壊し始めた。
エターナルはこれから始まる地獄のショータイムに人々を歓迎するため、サムズアップをし、それを180度回して親指の先端を地面に向け、叫んだ。

「さぁ…地獄を楽しみな!」



プロローグ・エターナル編です。
大道にもドラマを用意しているので、このプロローグも用意しました。
台詞の中にVシネマ「仮面ライダーエターナル」の予告に登場した台詞がありますが、発売前とはいえ大道の過去なので入れてみました。


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