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8歳からのサイエンス ~ハチはどれだけ賢いの?~

  • (2011/01/07)
  • カテゴリー: General

昨年末、ちょうどクリスマスの頃にこんなニュースが世界を駆け巡りました。
「英小学生のハチの研究、実は大発見 権威ある学術誌に掲載」(AFPBBニュース)

イギリスに住む8~10歳の小学生がハチの採蜜行動について観察して論文を書き、科学論文雑誌に掲載されたというのです。

なんともビックリするニュースですが、肝心の研究の中身があまりよくわかりません。そこで実際に彼らが書いた論文を読んでみることにしました。


権威ある論文雑誌に掲載された、小学生の論文とは
論文雑誌『Biology Letters』で発表されたこの論文は、小学生の発想から、彼らの親のひとりである科学者が手助けして実験を行い、最終的に子どもたちの考えを口述筆記するようなかたちでまとめられたものです。

 

※論文は無料でダウンロード可能です。リンクは記事最下部の参考文献をご覧ください。

 

タイトルは「Blackawton bees」。Blackawtonとは彼らが通っている小学校の名前です。その内容は、以下の書き出しで始まっています。

———ここから引用———
1.    INTRODUCTION
(a)    Once upon a time…
People think that humans are the smartest of animals, and most people do not think about other animals as being smart, or at least think that they are not as smart as humans. …
———引用ここまで———

訳してみると、以下のような感じになります。

1.    背景
(a)かつて・・・
多くの人は、人間こそが最もかしこい動物で、他の生き物は愚かだったり、少なくとも人間ほどは賢くないだろうと考えていました。・・・

さて、こんな書き出しから始まる論文はどのように展開し、どのような実験が行われたのでしょう?ここからは論文の内容を要約・意訳しながら、小学生たちの思考をたどるような書き方で進めていきたいと思います。


ハチはどれだけ賢いのだろう?
人間以外の動物はどれだけ賢いのかを知ることができれば、彼らに対してどう接すればいいのかがわかるはず。そう考えて、科学者たちはサルのような、人間に近い動物を使って研究をしてきました。

僕たちは、ハチが自然の中で蜜のある花を探し出す姿を知っています。かといって、彼らが人間のような―例えば「数独」を解くような―賢さを持っているとも思えません。

じゃあ、ハチはどれくらい「パズル」を解くことができるだろう?

さまざまなパズルについて、そしてハチについて考えた末に、「色を見分ける」ことについて疑問を持ったのです。

ハチは色と色の空間的な関係を学んで、蜜を持つ花を探し出すことができるのか?これが、僕たちが持った疑問です。
それを検証するために、図1のような装置をつくり、ハチのトレーニングと実験を行いました。



 

装置の中のフィルター部分は、色を変えられる「花」になります。

まず5匹のハチにトレーニングを行いました。最初のトレーニングでは色のフィルターは何も入れない状態で装置の蛍光灯をつけ、全部の「白い花」に砂糖水を置いて、この装置の中でエサを手に入れられることを学ばせます。
そして5匹それぞれに違う目印をつけ、次のトレーニングをしました。(目印はオレンジ、黄色、青+黄色、青+オレンジ、青、のマーカーで色を塗りました。この記事中では便宜的に、1番~5番のハチとします。)

2番目のトレーニングでは、図2のように青と黄色の「花」をつくって、内側にある4つだけ(黄色に囲まれた青、または青に囲まれた黄色)に砂糖水を置きました。




10~40分おきに花の位置を入れ替え、ハチの匂いが残らないよう装置の掃除もしながら、砂糖水の場所をハチに学習させます。2日間のトレーニングのあと、外側の「ハズレの花」には塩水をおいて、さらに2日間トレーニングしました。

さあ、これで準備は完了。ハチは砂糖水をもつ花の位置を学ぶことができたのでしょうか?

テストその1 ハチは蜜の場所を覚えているかな?
まずはハチの記憶を確かめるため、砂糖水がない状態で2番目のトレーニングとまったく同じように花をつくって、5匹のハチがきちんと学んだ花を目指すかどうかを実験しました。ハチが花にとまって舌(口吻)を伸ばした回数をカウントしていきます。
その結果が、表1です。



ハチたちはしっかりと正解の花を選び出せました。ただし、1番のハチはどちらかというと青が好き、3番は青が好き、4、5番のハチは黄色が好きなようです。残念ながら、2番のハチはこのテストのときは巣から出てきてくれませんでした。
全体として、ハチたちの正解率は139回中126回、90.6%でした。


□この結果から、どんなことがいえるだろう?

ハチたちはきちんと蜜の場所を学習し、記憶するという「パズル」を解くことができるようです。でも、選ぶ花の色がハチごとに違ったことから、彼らのパズルの解き方にはいくつかの方法があり、「より賢い」ハチもいれば、そうでないものもいるようでした。

パズルを解く方法は、いろいろと考えられます。たとえば
(1)真ん中の花を目指し、色は無視する
(2)青が周りにある場合は黄色、黄色が周りにある場合は青を目指す
(3)周りを取り囲んでいる花には行かない
(4)数が少ない色を目指す
などなど・・・。
そこで次のテストでは、ハチたちが色を無視して真ん中を目指しているかどうかを確かめることにしました。

テスト2 ハチは色を気にしない?
このテストでは、図3のように花を用意しました。緑の花に砂糖水があることを学ぶトレーニングはしていないので、もしハチが緑に集まったなら、色を無視して真ん中の花を選んでいるはずです。



結果はどうだったでしょう。表2のように、成績はバラバラでした。



緑の花を選んだ確率は110回中76回、30.9%。テスト1の90.6%と比べると、とても低かったです。

□この結果から、どんなことがいえるだろう?

少なくとも3匹(1、2、3番)のハチは、色を無視して真ん中を目指すわけではないことがわかりました。
でも、4、5のハチは、他と比べて緑の花を選ぶことが多かったので、他のハチとは違う方法を学んでいたのかもしれません。

テスト3  少ない色を選んでいる?
3番目のテストでは、図4のように花を用意しました。もしテスト1で少ない色の花を選んでいたなら、角に移動させても同じように選べるはずだと考えたのです。



結果は……少ない方の色を選んだのは、145回中85回。40.1%でした(表3)。やっぱりテスト1より低いです。そして4、5番は、他のハチと比べて「真ん中の花を選ぶ」ことが少ないという結果が得られました。



□この結果から、どんなことがいえるだろう?

ハチたちは、少ない方の色の花を選んでいるわけではない、ということがわかりました。そして、テスト1で見られたのと同じ「色の好み」があるようです。


結論 ハチたちは複雑なルールを学ぶことができる
ここまでの結果から、僕たちは「ハチたちは“色の数だけ”や“位置だけ”ではない、複雑なルールを理解して花を選ぶことができる」と結論づけました。彼らは「色の空間パターン」を覚えて正解にたどり着く賢さを持っていたのです。
そして同時に、ハチごとの個性(好みの色の違い)が、集団になったときには自然とお互いに協力して働くことにつながります。
彼らは自然の中で、花の位置パターンを覚えながら、他のハチがすでに蜜を吸っているところを避け、効率的に蜜を集めることができるのです。


子どもたちが憧れる、サイエンスの世界
……さて、彼らの研究はいかがだったでしょう?
この論文の最後、子どもたちはこんな言葉で締めくくっています。

Science is cool and fun because you get to do stuff that no one has ever done before.

(今までに誰も成し遂げたことがないことをできるサイエンスは、カッコよくて楽しい!)

ハチの視覚については、これまでに色彩の認識(ハチは黄色、緑、青、紫外光を見分けることができる)や、白黒でつくった模様(縞模様や、図形など)の認識についての論文が発表されてきました。しかし、「色彩のパターンを認識している」という実験結果は、このBlackawton小学校の児童たちによって初めて報告されたのです。

「サイエンス」や「研究」というと、どうしても「難しそう!」というイメージが強いのではないかと思います。でも、この研究を行った小学生たちは、ハチの行動解析実験を「ハチはパズルを解けるのか?」という素朴な疑問から出発して、まるでゲームのように楽しんで行ってきたようです。

さまざまな薬品や機械を扱って実験をすること、それ自体は研究の本質ではありません。それよりも大切なのは、シンプルな疑問を「どうやって確かめようか?」と考えて、実際にチャレンジしてみること。最先端の現場にいる研究者も、世界を読み解くためのパズルを解くような気持ちで、楽しみながら研究を行っているのです。

言葉を変えれば、「研究は誰にでもできる」ともいえるでしょう。だって、小学生にもできたのですから。みなさんも、日常の中で小さな疑問を持つことはあるはずです。そんなときには、「ま、いいか」と忘れてしまうのでなく、「どうやったら調べられるかな?」と考えてみてはいかがでしょう。意外と、その先にはおもしろい道が続いているかもしれませんよ。(文・西山 哲史)

 

<参考文献>

Blackawton bees, Biology Letters, Published online before print December 22, 2010, doi:10.1098/rsbl.2010.1056

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