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【社会】

工場被災 廃業も 笹かま 再生ピンチ

2011年3月31日 夕刊

津波の被害で工場が閉鎖。泥をかぶった笹かまぼこを作る金型を見つめる木村弘幸さん=30日、宮城県塩釜市で

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 東日本大震災の影響で、宮城県の名物「笹(ささ)かまぼこ」が危機に直面している。主要生産拠点である塩釜、石巻、気仙沼など沿岸部の各市が大津波で被災したからだ。被害を受けた工場の多くは中小企業で、自力再建は困難な状況。廃業を決める業者も出てきた。 (沢田佳孝)

 「ああ、もうだめだ」。笹かまぼこ製造・卸業「ヤマタカ木村商店」の木村弘幸社長(38)は、中小のかまぼこ工場が並ぶ塩釜市北浜地区の一角で、泥だらけになった自社工場を見て嘆いた。

 工場の設備は全壊。廃業を決めるしかなかった。「もう一度、生産を始めるにも、十分な売り上げがあればいいが、現実は厳しい。借金がないのが幸いだ」

 一九八〇年代後半のバブル景気のころ、塩釜市には観光客が詰め掛け、街は大型バスであふれた。木村さんは「売れすぎて人手が足りず、小学生のころから家業の工場を手伝っていた」と振り返る。一億円を超えていた売り上げも近年は約二千万円。機械の更新はできず補修を重ねていたところで、津波被害を受けた。

 工場の片付けや従業員の雇用保険の失業給付の手続きなど、会社の残務整理に追われる木村さんは「家族や家を失った同業者に比べれば、うちはまだいい」と寂しげに話す。身の振り方はまだ決めていない。

 同じように笹かまぼこ一筋の「マルヨ鈴木商店」の鈴木義久社長(52)は「五月の大型連休明けには、何とか生産の一部を再開したい」と再建への意欲を語る。

 再び生産を始めるには、五千万円程度の設備投資が必要となる。年商約一億五千万円の同社には大変な額だが、鈴木さんは「『いつ再開しますか』と待ってくれるお客さんがいる。仕入れ先の業者も従業員もいる。やめるわけにはいかない」と話す。

 県内の笹かまぼこ工場の多くが被害を受け、流通量は激減している。JR仙台駅の土産物店は三十一日に営業を再開したが、笹かまぼこの商品ケースは空きが目立つ。沿岸部の製造工場が被災した仙台市の大手業者の女性店員は「当面は震災前の一〜二割しか生産は見込めません」と話した。

 

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