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リビア:激しい戦闘、深い傷跡…東部アジュダビア

リビア政府軍の砲撃で破壊された東部アジュダビアの住宅街=2011年3月28日、杉尾直哉撮影
リビア政府軍の砲撃で破壊された東部アジュダビアの住宅街=2011年3月28日、杉尾直哉撮影

 【アジュダビア(リビア東部)杉尾直哉】リビア反体制派がカダフィ大佐の政府軍から奪還した東部の要衝アジュダビアに28日、入った。民間人を無差別に攻撃したカダフィ体制への住民の憎しみは深く、「解放」の歓喜はなかった。

 街の中心に近い住宅街では、石ブロック作りの家屋が砲弾で破壊され壁には機関銃の弾痕が生々しい。家屋に、長さ1メートルの不発弾が突っ込んだまま放置されていた。

 住民らによると、カダフィ派の攻撃は、米英仏などの多国籍軍がリビア空爆を開始した19日から4日目の22日朝、始まった。政府軍は街を包囲し、兵士は市内の食料品店から食べ物などを奪い、若者らを拘束・殺害したという。多国籍軍の空爆激化を受けて政府軍は退散、反体制派が26日に街を奪還した。

 軍の砲弾は、市内の病院にも降ってきた。負傷者の手当てに追われたハキム・ジルガフ医師(26)は「死者は100人を超え、その後数えるのをやめた。負傷者が何百人搬送されたかは分からない」と語った。

 戦闘中、自宅に身を潜めていた学生、ファラクさん(18)は「同じリビア人なのになぜ無差別に殺すのか。カダフィはムスリム(イスラム教徒)じゃない」と、何度も繰り返した。

 日雇い労働者のカリドさん(29)も反体制派兵士に加わった。「普通の民間人の私に銃を取らせたのはカダフィだ」と語気を強めた。

 郊外には、多国籍軍の空爆で砲身が吹っ飛んだ戦車など政府軍の車両が転がっていた。病院の入り口には、カダフィ派に拘束された行方不明者の多数の顔写真と並んで、反体制派に殺害されたカダフィ派の兵士たちの写真が見せ物のように掲げられていた。ある男性は、記者に「こいつらのぶざまな死に顔を撮影してくれよ」と得意そうに話した。戦争はこうまで、人々をすさんだ心にさせるのか。

 リビア国営テレビは、カダフィ大佐支持の住民集会の模様を連日放送している。公務員のベル・ガジムさん(45)は「あいつらと和解することなど絶対にできない」とはき捨てるように語った。

毎日新聞 2011年3月29日 19時59分(最終更新 3月29日 23時46分)

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