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佐賀県警保護の青年死亡:目撃証言の扱い焦点--あす判決

 ◇検察役「内容ぶれない」/弁護側「ただの推論」

 佐賀市で07年、知的障害がある安永健太さん(当時25歳)が佐賀県警の警察官に取り押さえられた直後に急死した事件で、特別公務員暴行陵虐傷害罪で審判に付された県警巡査長、松雪大地被告(30)に対する判決が29日、佐賀地裁(若宮利信裁判長)で言い渡される。松雪被告は「殴っておらず、けがをさせてもいない」と無罪を主張している。事件から3年半。遺族が真相究明のため付審判請求した事件の決着が注目される。

 刑事裁判の起訴状に当たる付審判決定書によると、松雪被告は07年9月25日、佐賀市南佐賀1の歩道で、安永さんを保護する際、胸などを数回殴り、全治約1週間のけがをさせたとされる。

 審理は昨年7月の初公判から今年2月の論告求刑公判まで計12回。計23人の証人が出廷した。争点は(1)松雪被告の暴行(2)暴行によるけがの有無--の2点。現場近くで取り押さえを目撃した女性の証言に対する判断が焦点になる。女性は公判で「あおむけの安永さんに乗ったようにして、拳を3回振り下ろし殴ったように見えた」と証言したが「拳が体に当たった瞬間は見ていない」とも述べた。

 検察役弁護士は、松雪被告が殴ったのは「歩道で安永さんをあおむけに取り押さえていた74秒間」と指摘。その上で、女性の証言を「内容がぶれず、覚えていない部分があることも認めて慎重に発言している」と評価した。

 これに対し、被告の弁護士は女性証言について「被告がどの手で、安永さんの体のどの部分を殴ったかなど、基本的、重要な部分が不明確だ」と指摘。「推論でしかない」と、信用性を疑問視した。

 事件では、遺族が08年1月に佐賀地検に刑事告訴したが、地検は同3月、取り押さえた警察官5人について不起訴を決定。遺族が4月に佐賀地裁に付審判請求し、地裁は09年3月、松雪被告だけを特別公務員暴行陵虐罪(同傷害罪に訴因変更)で付審判を決定した。【蒔田備憲、田中韻】

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 ■ことば

 ◇付審判

 公務員を告訴・告発した人が検察官の不起訴処分に納得できない場合、裁判所に刑事裁判を求めることができる制度。請求が認められれば起訴と同じ効果があり、裁判所が指定する弁護士が検察官役を務める。最高裁によると、1960~2010年に全国で計約1万8500人を相手に請求があったが、認められたのは18人で、うち有罪が確定したのは6人。

毎日新聞 2011年3月28日 西部朝刊

 
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