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取り押さえ死無罪、遺族無念さにじませる

記者会見で無念さをにじませる孝行さん(左)ら(佐賀市の県弁護士会館で)=真子生次撮影

 佐賀市の安永健太さん(当時25歳)が警察官に取り押さえられた直後に死亡した問題を巡る審判で、佐賀地裁は29日、県警巡査長の松雪大地被告(30)に無罪を言い渡した。県警側は主張が認められたことを冷静に受け止めた一方、安永さんの父、孝行さん(49)や代理人の弁護士らは、審判の内容や制度などを批判した。

 「被告人は無罪」――。午前10時過ぎ、地裁1号法廷で若宮利信裁判長が主文を読み上げると、黒色のスーツ姿の松雪被告は直立不動のまま、ほとんど表情を変えず前を見据えた。

 傍聴席に座った遺族を支援する人からは「あーっ」と、短い落胆したような声が上がった。検察官役の指定弁護士の横に座っていた孝行さんは、松雪被告の姿をじっと見つめ、その後、目を固く閉じたり、天井を見上げたりしながら判決を聞いた。

 判決が終わり、松雪被告は、駆け寄った報道陣の前で「主張が認められた」などと短く感想をコメントして地裁を離れた。孝行さんは県弁護士会館で記者会見に臨んだ。

 孝行さんは、警察官を含めて現場の状況を法廷で13人が証言し、うち2人が「殴ったように見えた」と述べたことに触れ、「(殴ったのを見たとする)目撃証人の数が、私の思っていたよりも少なかった。もっと多かったならば、判決は変わったかも知れない」と不満を漏らした。

 この場に同席した代理人の河西龍太郎弁護士は、捜査記録や一緒に取り押さえた警察官の証言を認めて判決が下されたことについて、「不当判決」と批判。その一方で、「警察官の行為が保護行為だとは言っていない。死亡させた責任が警察にあるかどうかは、今後の民事裁判で問われる問題だ」と語気を強めた。

 また、県庁で記者会見を開いた検察官役の本多俊之弁護士は「付審判となった事件は、(検察官役に)捜査する力が求められるが、有力な証拠を見つけ出すのは難しい。裁判所に出てきた付審判の資料だけで法廷に臨むことの限界を感じた」と振り返った。

 一方、松雪被告の弁護人を務めた安永宏弁護士は「被告が殴ったことはなく、当初から確信を持っていた。目撃証人のうち、殴打した場面を見たという人は誰一人としていなかった。これほど明瞭な完全無罪はない」と語った。

2011年3月30日  読売新聞)
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