小林武史とミスチル櫻井和寿の節税目的NPOがとんでもない

ap bankとは

ap bankは、音楽プロデューサー小林武史と、Mr.Childrenの櫻井和寿の2名に、アーティストによる自然エネルギー促進プロジェクト「Artists’ Power(アーティスト・パワー)」の発起人である坂本龍一氏を加えた3名が自己責任において拠出した資金をもとに、2003年に設立されました。ap bankの「ap」は「Artists’ Power」のAP、そして「Alternative Power」のAPでもあります。

このNPOのap bank(一般社団法人APバンク)、役員構成は代表理事が小林武史氏、理事に反原発の運動家で自称、文筆家の田中優氏が名を連ねています。
田中優氏に関しては、調べた限り、社会運動家になる前の一切の経歴は不明。

そんな二人が、ap bank自らが運営する媒体、エコレゾ ウェブで対談を公開しているのですが、その内容が酷いのです。
対談の中で、田中氏は台風でもゆっくり回って発電することができる風車や、九州大学が開発した海に浮かせる風車を紹介しているのですが…。

田中  今の電気をまかなうのに、そんなに本数はいらないからね。東京電力が東京大学に委託して、犬吠埼に風力発電を建てたらどれだけ発電するかを調べたそうです。そうしたら出てきたデータが「東京電力がまかなっている電気が全部作れます」というものだった。犬吠埼の沖合だけで、だよ。

小林  すごい。

田中  そうしたら東京電力は「そのデータは公表しないでください」と言った。だけど、こっそりとインターネットに公表されていたのを僕は検索して見つけてさ。

田中氏の主張の元となっている論文は紹介されていませんが、おそらく次の論文ではないかと推測している人がいます。
「メソスケールモデルと地理情報システムを利用した関東地方沿岸域における洋上風力エネルギー賦存量の評価」(PDF

原論文にあるのは、関東地方沿岸に海岸からの距離50km まで風車をまんべんなく配置した場合に得られる理論上の最大電力が,2005年の東京電力の年間電力販売量とほぼ等しいというものです。まんべんなくとは風車のローター直径の8倍間隔で前後左右に配置する計算で、ざっとモデルになっている直径92mの風車だと、海岸から67本、これを関東地方沿岸全てに736メートル間隔で67本ずつ敷設することになります。現実的ですか?これ。

また、計画停電実施時の東京電力の需要予測が3400万キロワット。2007年に三菱重工が発表した風力発電基の発電量が2400キロワット。これだけで計算しても1万4千基必要です。

いったい、こんなご高説を垂れる田中優氏は、どちらで教育を受けられたのでしょうか。プロフィールに書いてないと言うことは書けないか書きたくないんですよね、きっと。
どさくさに紛れて、自分の主義主張を誤ったやり方で実現しようとしないで頂きたいです。

【追記】
ご指摘頂いて、加筆・修正を行いました。
今回、少し感情的に書いてしまいましたが、たとえ人災であっても今、事態の収拾に取り組んでいる人、停電などで困っている人、被災して苦しんでいる人がいる、そんんな状況で、自身の反原発信仰を成就するためなら、原発に対する不安が高まってるのに乗じて、でまかせを言っても構わないという姿勢には正直、怒りを隠せません。

via エコレゾウェブ 1 2 and WIkipedia and 蝸牛の翅

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  • http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20110321 相楽

    幾つか問題のある記述が見受けられます。

    まず、

    「原論文にあるのは、関東地方沿岸に海岸からの距離50km まで風車をまんべんなく配置した場合に,2005年の東京電力の年間電力販売量とほぼ等しい電力が得られるとあります」

    というのは違います。そんなに得られません。

    原論文の該当記載(ページ番号74の「まとめ」の4)はこうです。

    「海岸からの距離50km までの全海域を対象とした場合に,風力エネルギー賦存量は年間287TWhとなり,2005年の東京電力の年間電力販売量とほぼ等しい」

    ここで、「賦存量」=「理論的に算出しうる潜在的な資源量」です。
    「得られる」のではなく、理論上の上限値です。要するに、書かれているよりもずっと酷い話です。

    原論文を紹介するのならば、引用も正確であるのが望ましいと思います。

    一方で、「理事に反原発の運動家で自称、文筆家の田中優氏が名を連ねています」とありますが、amazonで著者名検索するなり、wikipedia「田中優」でもみればすぐに分かる話ですが、一応、多数の著書があり、河出書房や扶桑社からも刊行されています。
    自称ではなく、普通に文筆家です。
    私見を言えばそれはまぁ、ダメな文筆家なのでしょうが、そういう人への批判であっても、出来るだけ正確を期すべきと思います。

    最後に。

    「計画停電実施時の東京電力の需要予測が3400万キロワット。2007年に三菱重工が発表した風力発電基の発電量が2400キロワット。これだけで計算しても1万4千基必要です。」

    これ、説明も無しに「2007年に三菱重工が発表した風力発電基」をベースに計算されているのは唐突です。
    こちらも論文のページ番号69に、

    「賦存量の算出にあたっては,風車および風車の配置を仮定する必要がある.ヨーロッパで既に建設されている大規模洋上ウィンドファームでは2MW 級の風車が使用されている.そこで,本研究では定格出力が2.4MW の三菱重工業のMWT-92/2.421)を仮定し,賦存量を算出した」

    とされている旨、出典を明らかにするのが適当だと思います。

  • 匿名

    ご指摘、ありがとうございます。
    確かに書籍を出版している以上、内容や行為に不満でも田中優氏が文筆家なのは間違いありません。訂正させて頂きました。

    引用に関してですが、引用を避けたわけではなく、このサイトでは出来る限り平易な文面を心がけていつも紹介させて頂いております。しかし、この記事の「賦存量」に関しては説明が不適切でした。後ほど書き換えたいと思います。
    また、三菱重工が発表した風力発電基の例ですが、読者の皆さんにも「東京ドーム何杯分」といった感じで理解して頂けると思います。そのままにしたいと思います。

    今回、自分も原論文に関しては主に田中優氏のミスリード部分を指摘するために、ざっと目を通した程度です。他にも至らない表現があるかもしれませんが、その際は、またご指摘頂けると幸いです。

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