リスクと報酬が比例する国、しない国

2011/3/30 11:00

   ウォール・ストリート・ジャーナル日本版に、興味深い記事があった。原発の下請け作業員の月収は20万円ほどで、サラリーマンの平均29万円より低いのだという。ちなみに、社員平均年収800万円の東電なら50万円前後に上るはずだ。

   一方、リビアのカダフィ派は、最大で日給2000ドル(約16万4000円)でアフリカ諸国から傭兵を募集しているそうだ。戦場というリスクに加え、カダフィ派が敗れれば独裁者の走狗として処罰されるリスクもあるわけで、日給が高騰するのは当然だろう。

   同じ危険の伴う仕事にもかかわらず、原発と戦場でこれほど処遇の違う理由は何だろうか。

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日本を支える「声の小さな人たち」の頑張り

   当たり前の話だが、世の中のあらゆる事業には予算がある。原発を作るのにも軍隊を作るのにも予算があって、その中に人件費も含まれる。

   あとは、業務内容に応じて仕事に値札をつけ、人を雇うだけの話だ。予算の範囲内で、リスクの高い仕事には高い値札が付くことだろう。

   ところが、自由に値札を付けられないような規制があったとしたら、どうなるか。

   たとえば「賃金を下げてはいけない。クビにしてもいけない」という規制があったとしたら。声が大きく、政治力のある集団がまず必要なお金を確保した上で、手が回らない仕事については外部に発注するだろう。

   そういう仕事は、たいていキツく汚く危険な仕事にもかかわらず、きっとビックリするほど安い値段で卸されるに違いない。だって、声の大きな人たちが、余ったお金で声の小さな人にやらせる仕事だから。

   これが、日本国内にハイリスク・ローリターンな仕事が存在する理由である。リスクに値札をつけることなく、声の大きな人がトクをするシステムだと思えばいい。

   大手電機や自動車、そして原発まで、この歪みは日本中に溢れている。そして、リスクをかえりみない声の小さな人たちの頑張りが、この国を支えている。この構図を言い表すのにもっとも適当な言葉は、「身分制度」だろう。

(続く)

城繁幸(じょう・しげゆき)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログはDoblogに障害が発生したため、gooブログに移転中。

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