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毒劇物の容器散乱、家屋内にも 宮城沿岸の工場から流出

2011年3月28日0時5分

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写真:津波で流されたメタンガスタンク=25日午前9時48分、宮城県岩沼市押分、渡辺洋介撮影拡大津波で流されたメタンガスタンク=25日午前9時48分、宮城県岩沼市押分、渡辺洋介撮影

写真:家の中に流れ着いたドラム缶。「火気厳禁」と表記されている=24日、宮城県石巻市、南出拓平撮影拡大家の中に流れ着いたドラム缶。「火気厳禁」と表記されている=24日、宮城県石巻市、南出拓平撮影

写真:プロパンガスのボンベを回収する業者。宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区には各所に火気厳禁の張り紙がある=24日、金川雄策撮影拡大プロパンガスのボンベを回収する業者。宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区には各所に火気厳禁の張り紙がある=24日、金川雄策撮影

 油やメタンガスの巨大タンク、薬品が入ったドラム缶……。人々の生活を根こそぎ奪った津波が、やっかいな置き土産を残した。宮城県の沿岸部を中心に、工場などに保管された毒性の強い薬品や可燃性の化学製品が各地で流出している。県や自治体は「発見したら触らずに通報して」と呼びかけるが、実態把握は進んでいない。

 宮城県石巻市の石巻漁港では、東側の一角に直径約10メートルの円柱形のタンクが横倒しになっていた。周辺の道路に油が流れ、独特のにおいが充満している。工場の屋根の上や路上には「火気厳禁」と書かれた赤色や青色のドラム缶も散乱している。

 港近くに住んでいた男性(63)は津波で家が流され、小学校で避難所生活を送る。工場地帯の油が気になり、自転車で様子を見に来た。「倒れているのは重油タンク。ガソリンや軽油と違って、発火点は高いから大丈夫だとは思うけど、爆発したら怖い」と言い、足早に去った。

 この地区から100メートルほど離れた場所に住む会社役員、亀山茂貴さん(34)の自宅には、1階の風呂場と居間にドラム缶2本が転がっていた。何が入っているかはわからない。津波に襲われたときは自宅にいなかったが、1階は冠水し、2階にも水が入った形跡があった。

 「油のにおいはとれないだろうし、ドラム缶も危なくて触れない。家の骨格は残っているが、油とヘドロのにおいでもう住めないだろう」と亀山さんは言う。

 岩沼市では、冠水した田んぼに半径15メートル、高さ16メートルのメタンガスタンクが野ざらしになっている。津波の衝撃で下部がへこみ、「火気厳禁」の注意書きをした看板もつけられている。約1キロ東にある県の下水道浄化センターから流されたらしい。県によると、ガス漏れは確認されていないが、タンク内にガスが残っている可能性があるという。

 他にも石巻市内で、防虫用に保管されていたシアン化合物のドラム缶2本が発見された。殺虫剤などに使われ、毒劇物取締法で劇物に指定されている臭化メチルのボンベ125本なども流出している。

 「硫酸や塩酸入りのポリ容器が散乱しています。見つけた人は連絡してください」。多賀城市内では、ラジオでこんな情報が流れている。同市と仙台市にまたがる化学薬品販売会社・木田株式会社(本社・東京都)の流通センターが津波に襲われ、薬品を小分けしていたポリ容器約2300個が建屋ごと流された。このうち1100個には塩酸、硫酸などの劇物が入っており、約700個は回収されたが、約400個の行方が分かっていないという。

 県によると、これらの薬品類は化学薬品工場のほか、輸入、販売、運送業者の倉庫などにあったものとみられる。また、農家が保有していた農薬も流出している恐れがあり、「毒物や劇物がどの程度流出したのか全く把握できていないのが現状。できるのは触らないで欲しいと促すぐらい」と担当者は話す。

 薬品の容器の外側には「劇物」「毒物」と表示されている。発見された容器は県の保健所などが回収し、一時的に保管しているが、処理方針は決まっていない。燃料については各地の消防が対処することになっているが、救助活動を優先しており、手が回っていない。地震発生以降、人体への被害はまだ確認されていないという。(高橋昌宏、南出拓平、川端俊一)

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