声 

[「強制退去」を命じる司法判決(日本政府報告に対して、カウンターレポートを国連社会権規約委員会へ提出)(2001.06.01)(ウトロを守る会)[English/Japanese]
◆ 日本のウトロに差し迫る、強制立ち退きについて(2001.05.02)(ウトロを守る会)[English/Japanese]
[朴炯圭さん、ウトロへ(1998.11.24)]
[「ウトロの人たち」韓国版イウサラム(1998.3 金瓏教(キムヨンギョ))]
[哀悼 金壬生アボジ(1998.3.10)]
[写真集『置き去りにされた街 ウトロ』(かもがわ出版)(1997.11)]
[『メッセージフロムウトロ』(1990.08.12)]


■日本のウトロに差し迫る、強制立ち退きについて(2000.05.02)(ウトロを守る会)

日本のウトロに差し迫る、強制立ち退きについて
2000年5月2日
ウトロを守る会(文:新屋敷たけし)

1.序


 第二次世界大戦中、日本の朝鮮に対する植民地支配は、多くの朝鮮人臣民を日本での労働力として徴用した。戦後日本は戦時中の彼らの労働に対して補償を行わず、彼らを外国人として扱うことを決め、彼らは多くの就職の機会だけでなく人権の多くをも奪われた。この結果、多くの朝鮮人共同体が現れた。その一つがウトロという、京都府宇治市にある小さな朝鮮人共同体であり、その住民達は、住居からの強制立ち退きの危険に絶えず脅かされている。


2.第二次世界大戦中・戦後の、ウトロ地区の変遷


 1938年、戦中の日本は京都市の南に空港と飛行機工場の建設を計画した。1940年に建設を開始し、日本中から多くの朝鮮人労働者を募集して建設用地の飯場に住まわせたが、計画は1945年の日本の敗戦によって失敗する運命にあった。しかし、戦後日本は彼らを失業させ、極貧状態に放置した。その結果、彼らの多くは何とか帰国したが、その余裕がなく、建設跡地に留まることを選んだ者達もいた。それ故、朝鮮人共同体ウトロができたのである。ウトロには現在約230 人の朝鮮・韓国人が住み、50年以上も住み続けている者もいる。


3.地上げ屋による、ウトロ地区の強制立ち退きを求める訴訟


 ウトロの土地を含む不動産は、失敗した飛行場建設を担当した、元飛行機製造会社が所有していた。この会社は、後に日産車体という、日産自動車の子会社となった。日産車体はウトロ地区の撤去を望み、住民に水道供給の権利を与えなかった。1986年に日産車体は深刻な景気後退に苦しみ、ウトロの土地を住民に売却しようとしたが、うまくいかなかった。1987年3月 に日産車体は、水道供給への住民の要望を認める一方で、ウトロの土地を、ウトロ町内会の会長を自称する住民の一人に、3億円で売却した。この住民は、1987年8月に土地を4 億4500万円で地上げ業者に売却し、そしてこの地上げ業者が、ウトロ住民の住居からの強制立ち退きを求めて、1989年に京都地裁で訴訟を起こしたのである。


4.ウトロ訴訟に対する、京都地裁と大阪高裁の判決


 1988年京都地裁は、ウトロ訴訟に対し、住民は家屋を撤去して地区から立ち退くようにとの判決を下し、時効取得による、住民の地上権ならびに所有権をも認めなかった。判決によると、時効は中断しており、その理由は、1970年に住民が日産車体に、彼らに土地を売るよう請願をしているからである。判決は、住民のこの行動が、彼らの主張する土地の所有権と矛盾している、と見なしたのだった。直ちに被告住民は大阪高裁に訴訟した。しかし、1988年12月に大阪高裁は、ウトロ訴訟のひとつに、京都地裁とほとんど同様の判決を下した。1999年には、約半数の住民が、最高裁への上告を棄却された。その結果、彼らには住居からの強制立ち退きの危険が迫っている。


5.住民の居住の権利と矛盾する、裁判の判決


 京都地裁と大阪高裁のウトロ訴訟への判決は、住民の以下の人権に、明らかに矛盾している。すなわち、彼らの「適切な住居への権利や、それに伴う、住居から恣意的・強制的に立ち退かせられない権利や、住居を奪われることから保護される権利」と明らかに矛盾しているのである。これらの権利の全てが、住民には認められていない。これらの権利は、「日本の全ての公的機関に拘束力がある、国際人権社会権規約において、認められている」にもかかわらず。実際に、大阪高裁だけでなく最高裁も、適切な居住への住民の権利を、これらの訴訟には当てはまらないと片付けている。その際判決は、同規約の第2条1項を援用している。判決はこの条項を、所有権をめぐる訴訟に適用されるものではなく、「漸進的に」(国際人権社会権規約第2条1項)達成されるべき、一般的・抽象的人権を規定するものと見なしている。しかし、この条項を援用することは、判決を正当化するものではなく、明らかに次の条項と矛盾している。すなわち、「当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することはできないとする、条約法に関する1969年ウイーン条約第27条」(『ファクト・シート第16号Rev.1「社会権規約委員会」』第5章、「国内法の範囲における規約の適用性」)に、明らかに矛盾しているのである。したがって、ウトロ訴訟に対する判決は、国際人権社会権規約と、明らかに矛盾している。そしてこの規約は、「日本の全ての公的機関に拘束力がある」だけでなく、それらの機関に「住民に認められた人権と全く矛盾せず、ウトロ住民を住居から立ち退かせることを全く排除する解決策」を見つけることをも、強く迫っているのである。


(翻訳:新屋敷たけし) 


[ English ]

(青ひょん)
この文章は、日弁連がとりまとめる(ことになった)社会権規約政府報告書に対するのカウンター・レポート、居住の権利確立の為の資料として作成しました。これをもってウトロはジュネーブに飛びます。

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