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【社会】

原発放水 切り札に 高さ58メートル ドイツ製生コン圧送機

2011年3月23日 朝刊

福島第一原発4号機に生コン圧送機で放水作業する関係者=22日午後4時54分(東京電力提供)

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 東京電力福島第一原発4号機の放水作業に二十二日から、高さ五十八メートルのドイツ・プツマイスター社製の生コン圧送機が投入された。その背景には、同社日本法人の元社長で、泊、浜岡などの原発工事現場で技術指導の経験がある会社社長出口秀夫さん(65)=埼玉県春日部市=の熱心な働き掛けがあった。

 「圧送機が放水に使える」。出口さんは事故直後、そう思いついたという。アームの長さは五十メートル以上。遠隔操作で危険を避けながら、ピンポイントで水を注入できる。

 被ばくの危険のある現場には、十分な放水能力のない警視庁の車両までもが投入されていた。それを見て「居ても立ってもいられなくなった」。

 海水の吸い上げには消防ポンプ車を使うこと。逆流防止の弁を設け、アーム先端に放水用ノズルを装着させること。すぐに使えるように具体的な方法をまとめ警察、東電、市役所などに提案。当初はつれない対応もされたが、最終的に官邸が導入を決めた。

 出口さんは一九九五年の阪神大震災を契機とした高強度コンクリートの普及を見て、プツマイスター社の大型圧送機の販売に力を入れた。車両の大きさが保安基準を超えるため、国土交通省に基準を緩和してもらうのに苦労を重ねたという。

 チェルノブイリ原発事故で、原子炉を廃炉にする作業に使われた実績と、日本でも必要になる可能性があることを強調した理由書を作り、許可を得たのは約一年後。その際、ドイツで消防が消火活動に圧送機を使っていることを知った。

 この日は、ベトナムに輸出される予定で、横浜港にあった一機が注水を開始した。

 やっと真価を発揮するときが来た圧送機。出口さんは「今は現場で役に立ってくれることを願うだけ」と、放水の成功を見守る。

 国内最大の五十二メートルの圧送機を所有する業者も、計三台を周辺地域に搬入、待機させている。提供した中央建設(三重県四日市市)の長谷川員典社長(62)は「地元の暮らしが早く元に戻るよう、救済と復興の手助けになれば」、丸河商事(岐阜県恵那市)の日下部猛社長(64)も「うまく動いて事態を収めてくれるといい」と、放水の成功を願っている。

 

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