【東京】福島第1原子力発電所では、過熱した原子炉を冷却する努力が続いているが、危機を招いた原発の設計と安全性に問題はなかったか問われ始めている。
福島原発は日本でも最も古い原発で、原子炉6基は1970年代に稼働を開始した。比較的旧式の技術である沸騰水型原子炉で、太平洋岸の6つの立方体の建物に収容されている。沿岸近くにあるのは、必要な場合、海水をくみ上げやすいし、重い資材を船で運搬できるためだ。
福島原発は10年前、記録偽造スキャンダルの中心となり、原発を運転している東京電力は一時すべての原発の運転を停止し、多数の幹部が辞任した。原子力専門家によれば、この結果、福島原発で報告されていなかった問題が公開されたという。
原子力業界は世界的な原発拡張を推進するにあたって、浮上している設計問題を綿密に精査することになりそうだ。近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長は「先週の大地震と津波は、われわれのエンジニアリング上の想定を大きく超えていた」と述べ、「世界中の原子力産業が原発設計にあたってこうした想定をどうみるか再検討しなければならないだろう」と語った。
精査の対象の一つは、福島第1原発の非常用ディーゼル発電機だ。これは地下にあり、安全な部屋に隔離されていた。原発が電力を失った際に13基の発電機が起動すると想定されていた。
もう一つの精査対象は、原発の原子炉6基が互いに近接したところにあることだ。このため、一つの原子炉が打撃を受けると他の炉に波及し、復旧努力に障害になる。伊藤所長は、互いに近接していることで、機材を容易に移動できるし、労働力を低めに抑えられると指摘。ただし事故が発生した現在、こうした意図は「間違った考え」であったかにみえるとし、「運転上の効率性と安全性のバランスを保つ必要がある」と語った。
米エクセル・エナジー社のテリー・ピケンズ取締役(原子力規制政策担当)は、福島原発と同じような原子炉は全くないと述べた。これは当時、電力会社は自らエンジニアリング会社や建設会社を採用し、カスタマイズされた設計をしていたためだという。米ミネソタ州にあるエクセルのモンティセロ原発では、ディーゼル発電機は出来るかぎり離れたところにある。これは「天変地異によって原発と発電機が同時に破壊されないようにする」ためだ。
福島原発は11日の地震の際に電力を失った。運転していた3つの原子炉は設計通り、自動的に運転を停止した。だが電力が失われたことから、冷却システムが機能しなくなった。東電は、津波で非常用発電機が一つ残っただけだと述べた。地上にあった燃料タンクは津波で流されたようだという。
東電の小森明生常務(原発担当)は先週末の会見で、非常用発電機をどの程度のエレベーション(高い場所、海抜)に設置するかは潜在的な問題だと指摘した。東電スポークスマンはこの発言を確認したが、完全な精査は作業員が原子炉を制御できてからになろうと述べた。
原子力安全・保安院のスポークスマンによれば、福島第1原発の非常用発電機の設計は、日本の他の原発に「かなり普遍的」だという。同スポークスマンは、ディーゼル発電機の設置場所、とりわけエレベーションが問題との議論に反論し、原発は一定の規模の津波に耐えられると結論していたと述べた。同スポークスマンは「11日の大地震に続く津波がわれわれの想定を上回っていたのは疑いない。それが問題だ」と述べた。
東電のスポークスマンは、発電機の設置場所を他に移せば、別の問題が発生すると述べた。同スポークスマンは「原子炉は海岸線から100メートル地点にあり、非常用発電機を収容している家屋はかなり防水機能があった」とし、「発電機をもっと高い場所に設置できたはずだと主張できるが、そうなれば、発電機は地震に脆弱になってしまう」と指摘した。同スポークスマンは「われわれはこうした諸リスクを徹底的に勘案して、非常用発電機を低めの場所に設置した」と強調。「(発電機の設置場所が誤っていたなどと主張するのは)後智恵というものだ」と述べた。