EM-EXPO 2003 > 比嘉教授講演

シンポジウムプログラム
2003.1.29
”提言”近未来型行政力(自主自立×住民幸福度)の指標

琉球大学農学部教授 比嘉 照夫

 


池本 皆さまこんにちは。今日は活力自治体フェアにようこそおいでくださいました。これからの2時間は、琉球大学農学部比嘉照夫教授にお話を頂戴したいと思います。
 私は本日の進行役を務めさせていただくことになりました、池本よ志子と申します。瀬戸内海を産・官・学・民一体となって、浄化しよう、そんな活動を始めました。そこで、EMとご縁ができたのですが、のちほどその話をゆっくりとさせていただきます。
 何でも、最初の心構えが大事と言います。つい先日、イチローや、サッカーの小野などの、メンタルトレーニングの指導をしていらっしゃる、豊田一成さんにお会いしてお話を伺いました。成功するためには、まず最初に身を整え、息を整え、心を整える、これが大事だそうです。
 身を整えるというのは、姿勢を正すというのもあるのですが、どうか皆さん、心の姿勢のほうも、この2時間で、何か皆さんの宝物、ヒントを見つけよう、とそんな気持ちでお聞きください。
 息を整えるというのは、聖路加病院の日野原先生に伺いましたら、瞑想に近い息というのは、簡単にできるんだとおっしゃいました。ちょっと皆さまに伝授いたしますね。息をハーっと全部吐いてみてください。全部吐いたらいったん止めて、止めた後、もうひとつ、ハッと吐ききってください。そして吸ってください。もう一回、全部吐いてください。全部吐いたと思ったところで残ったのをハッと吐く。なんだか息がファーッと入ってきますね。これを10回くらいすると、ほとんど瞑想状態になるそうです。迷う方の迷走にならないようにしてくださいね。最後に吐ききったのは、「残気」残った気を出しきったわけです。そうすると、いい空気がしっかり入る。健康の秘訣でもあります。いい歌を歌いたい人はどうぞこれを練習してください、と先生はおっしゃっていました。
 物の考え方もそうだと思いますが、今までのいろいろなことを全部一回捨ててみて、からっぽになって、真っ白なキャンバスにして、これからの時間をお過ごしいただければと思います。
 真ん中に小さなランの花が3つございます。これは沖縄から届きました。EMを使って育てられたものです。小さいですが、よく見てください。カバーの色が黄色、赤、ピンクですね。黄色は幸せを希求する色、請い求める、皆さんの夢や目標を持ってください、赤は行動、アクションの色です。何かに向かって行動してください。ピンクは至福の色。幸せに至る、幸福に至る。こんな3つのステップで、皆さんの夢をかなえてください。沖縄からエールが届きました。どうぞよろしくお願いします。
 大変お待たせいたしました。このスリーステップをいろんな所で実現していらっしゃる、琉球大学の比嘉先生、お願いいたします。
 本日は「”提言”近未来型行政力の指標」ということでお話しをしたいと思います。よろしくお願いいたします。会場いっぱいになりましたね。

比嘉 ありがとうございます。

池本 いつもにこにこと、笑顔いっぱいの比嘉先生ですが、その笑顔の秘訣が、今日これからお話しする中に出てくると思います。昨年、初めて自治体の皆さまに、こういった形で発信したら、ずい分反響があったようですね。

比嘉 はい。3万人という話もありました。それなりに大きな役割を果たしたと思っております。

池本 自治体・住民・ボランティア・産業界の方たちの間に、これまでずっと静かに広がっていたのが、その後、大きな波になって広がってきたようですが、なぜこの時期に、自治体で取り上げられるようになったのでしょうか。

比嘉 環境に対する認識が変わってきた。今の状況をなんとか変えたい、自分の住んでいる地域を良くしたいと、皆さん思っている。しかし今までのしくみでは、環境改善は役所の仕事と思われ、個人ではなかなかできなかった。しかしEMは、米のとぎ汁を使って自分でEM発酵液を作り、個人レベルで周りの環境のをきれいにしながら、みんなが力を合わせていけば、川も海もきれいにできる。これが知られてきた事が、EMが広がっていく原点になっているんですね。
 大半の役所、この20年間EMに抵抗ばかりしてきました。しかしこの数年、やはりお金もないし、住民の皆さんと協力していこうという考え方になってきた。ですからそういう意味で、EMの広がりはもう根付きました。そして生活化し始めました。中には「EMライフ」と言いますか、EMなくしては生活できないくらいの方々が増えてきまして、非常にいい意味で、EM病に感染していただきました。ありがとうございました。

池本 先ほども、「随分試行錯誤もあったけれど、一つの成果と喜びを得ると、またもっとやる気になる」とおっしゃっていた方がいました。では今、どれくらいの自治体が、EMに取り組んでいるのですか?

比嘉 去年は、500の自治体が、何らかの形でEMを導入している。今年は600を超えています。実は昨日またダーっと情報が入ってきまして、EM導入はもう700自治体を超えているのではないかと考えています。
 北海道などはあまり数に入っていなかったのですが、昨日の情報では、相当数の市町村が、あるいは国連までがEMをやろうという状況になって、どんどんその輪が広がっています。これは去年の活力自治体フェアのおかげでもありますが、社会全体が、やはり住民協力の自治を推進しなければいけない、環境問題もみんなの協力を得なければいけない、という背景が非常に強く出てきましたね。

池本 実は私もEMに触れたのは10年前だったのですが、その時は野菜作りや、酪農の方たちの現場を見せていただいて、すばらしいなと思っていました。昨年の9月に「瀬戸内海環境フォーラム」があり、ご縁がありまして、その進行役を仰せつかりましたので視察に行ったのです。そこで驚きました。やはりこれを見なかったら、私も頭でだけ理解をしたと思いますが、実際に現場に行って、五感で感じてしまったのです。ちょっと皆さまにもそれをご覧いただきたいと思います。参議院議員のツルネン先生と一緒に視察をしまして、フォーラムでご紹介した模様です。

●ビデオ(事務局にて作成)

池本 よろしくお願いします。私たちはわくわくしながら瀬戸内海の現状を見に行きましたが、その時に同行されたのが…。

ツルネン 私たち二人、それから環境ジャーナリストの枝広淳子さんも一緒でした。そして多くのマスコミ、東京から日本テレビ、そして広島から中国放送も同行して、私たちは二日間、このEMの働きをじっくり見て回りました。

池本 この海苔を作っていらっしゃる、養殖業者の方の所に行きました。海苔の養殖というのは、環境に非常に負荷を与えると聞いておりましたので、そのあたりも含め、いろいろと伺いながら見せていただいたのですが、海苔の養殖はかなりたくさんの水をリサイクルして使うという…。

ツルネン そうです。そしてその水にもいろんなものを入れますね。

池本 消泡剤を使って泡を消したり、塩素を入れて消毒をしたり、ということがございます。そしてなんと…。

ツルネン
 一箇所だけで、1日1千トンの海水を流しているのです。そこでは広島県の内海町の兼田さんという人が、その毎日海に流している1千トンの水にEMを入れて流した。それで大きく変わったことがすでに起こっています。

池本 ご紹介したいと思います。広島県沼隈郡内海町、ここはご存知の方も多いかと思いますが、四方が海に囲まれた漁業の町です。海苔の養殖を営む、兼田功さんにお会いしました。
 豊かな海を資源として、昭和38年ごろから天然の海苔の養殖が行われてきました。近年の海の汚染が原因で、漁獲高の減少が大きな問題となっています。そんな中、兼田功さんは平成9年から、海苔養殖にEMの技術をいち早く取り入れ、大きな成果を上げていらっしゃいます。

兼田 6月の末に海苔の網を雨にさらしますが、腐敗しているので、すごい臭いがあり、住民を困らせていました。しかしEMのぼかしと活性液を使って発酵型にすると、海苔網の種付けにもいいし、迷惑をかけないし、いい方向にいくのではないかと教えていただいた。臭いもなし、洗い機で洗わなくても水を流したくらいできれいになる。
 まず、セラミックスと1万倍に薄めたEMXを、貝殻の入った水槽の中へ入れ、それから種付けを始めたのです。それで種付いたものを容器の中へ5時間から6時間浸け置きして、水を切って、また1万倍のEMXでスプレーして冷蔵庫へ保管する。また種を育苗する時期に、1号2号3号を入れた希釈液で散布します。
 普通海苔というのは、加工したら魚のうろこのように、ガサガサするんです。でも今年のは、ポンプで詰まってすごく硬い海苔ですが、加工したら1番か2番くらいの海苔ができた。1800枚やってる中で、普通網というのはだいだい3分の1は悪いのです。悪い年には全滅ということもある。しかし1800枚が、1800枚皆同じ網なのです。赤潮が出ても生き残るという状態になりました。それだけの差があるということですね。
 工場の中に、12月から2月の末までリサイクルしている水ですが、普通リサイクルしてる水は、5日から1週間したら腐敗して臭くて、工場の中には入れない状態です。しかしEM処理することによって、抗酸化、発酵にもっていくから臭わない。
 今年で4年になりますが、平成9年に私が初めてEMを知り、水路をきれいにするという経験がありました。台風が来て、満潮と重なって大雨になると、水路が満タンになって、道路を越して水が流れる状態になるので、その対策を考えてくださいと、町長さんと話していたのです。その工場で処理水を1千トン流したことで、70センチくらい溜まっていたヘドロが、3ヶ月で全部なくなって、コンクリの生地が出てきた。そのすごさに私は感動した。その年に漁獲などの変化はありませんでしたが、平成11年にトリ貝が異常発生した。その年はいっぱいの船が20日くらいで300万の水揚げ。のぼり潮には、尾道水道から出てくる水と因島から流れてくる水とガッチンコするんです。のぼりからさげになってくるときには沖の潮がひろいから、沖の方へ、布刈の方へといく。そうしたら田島沖を通る潮が多いわけです。つまり、EM処理した水が流れる方向にあたるコースにトリ貝が異常発生した。それで今年は岡山県の神島、下は因島まで流れが行って、EMが分解し、トリ貝・ワタリ蟹・カタクチイワシ・アサリなどが捕れるようになった。アサリといえば、山波の州は、潮干狩りでこの近辺では有名なのです。それがここ5年くらいは、韓国から稚魚を入れても育たなかった。でも今年は何もいらないし、約3600人が潮干狩りに来た。尾道の漁協の方が、ボーナスが下りたと喜んでおりました。

池本 これは皆さまに見ていただきたい、2つの事実、実証データです。まず、田島漁協さん、さきほど海苔がたくさん取れるようになったとおっしゃていましたが、海苔の生産枚数をちょっと見てください。平成6年は3687枚、平成8年、9年はほぼ同じですが、平成10年からこんなに増えてきて、平成13年は6千枚を超えているのです。

ツルネン 倍近くに増えてますね。

池本 そしてこれは走島地区の水揚げの実績。イカ・ナゴ・チリメン・カエリ・ イリコ・アミエビ、その他ですが、この赤くなっているところはどんどん減ってきましたが、平成12年あたりから上がってきて、なんと平成12年には平成10年の倍近く、平成13年には3倍近くになっていますね。


池本 私は先ほどの海苔業者の方の工場も拝見しました。細い水路がありまして、上流から水が流れてきて、すぐそこまでヘドロがまだあるのです。そして、海苔業者の方の工場の排水が流れる所からない。あれはもう本当にびっくりしました。

比嘉 川でもそうですね。EMを流すと、上流は汚いのですが下流はきれいになる。こういう現象は皆さん、たくさん経験されていると思います。

池本 やはりこれを見たときには驚きました。データもかなりあちこちで出されておりまして、これもまた驚くべき数字ですよね。

比嘉 だいたいEMを使いはじめると、1年目は稚貝や稚魚が増え始めるのです。だから小魚などが目立ってきます。そして2年目からじわじわと漁獲高が上がりはじめ、3年目から爆発的に増える。ここ千葉県もイセエビは全国1位になっています。過去最高の倍になっているのですよ。でも千葉県はなにもやっておりません。守谷市の下水処理場で毎日3万トンのEM処理された下水が利根川を通って房総沖に出ているのです。ですから千葉県の皆さんは守谷市に10パーセントくらいお礼をした方がいいと思いますよ。
 今の瀬戸内海も有明海もそうです。EMを始めると、だいたい1年目には小魚や稚貝が増えて3年目くらいから爆発的に増えて、しかもそれは汚染がひどかった所ほど、生産力も高いという現象が起こるのです。

池本 先ほどのお話の中にございました、山波の州というのは干潮になったら現れる、海の中の尾道沖のアサリの名所だったのですが、かつては潮干狩りに訪れる方がずい分減ってしまって、千人くらいしかいらっしゃらなかったのが、平成12年には3500人、そして平成13年が5000人、昨年はなんと、3万人の方が訪れた。それだけアサリが成長して、いいアサリができているということですよね。

比嘉 漁協長の話では、平成10年ごろは1日船でがんばって、100キロも捕れなかった。でも今はうまくすれば1.5トン、船が沈んでしまうくらい捕れるそうです。この山波の州には、兼田さんの海苔のEM処理された水が流れていくのですが、これは12月から3月くらいまでのシーズンなのです。ですが、この山波の州に流れ込んでいる川の上の方に、日本一の有機豆腐を作っている椿屋さんがあります。ここは豆を洗うときから工場の掃除、すべてEMで徹底的にやっている。
 栄養の高い豆腐の廃液が、EMをいっぱい増やして、これが同時に流れ込んでくるようになった。毎日150トンくらい流れているのです。ですからあの驚異的な成果があった。兼田さんの所がまず引き金でしたが、今はもう両方挟み撃ちという感じです。漁協組合の方々は、特に漁協長さんは、EM以外何もやっていないのだから、これが本当の力だ、と感動的に話してくれました。

池本 微生物というと、ゆっくり変化が起きると思われがちですが、こんなに急速に変化がおきるというのは?

比嘉 微生物は幾何級数的に数が増えるのです。しかも条件がよければ15分から20分に1回します。ただこれは栄養条件次第です。温度と栄養が合えばすぐ増える。汚れていて、有機物がいっぱいあれば、奇跡的というか本当に考えられないようなスピードで増えていきます。汚れがひどければひどいほど、うまくいく、とこういうふうに理解していいと思います。

池本 初めてお聞きになった方は、え? と思われているかと思いますが、ブース展示の方にも数値がたくさん出てございますので、ご確認いただきたいと思います。
 広島を始めとして、瀬戸内海のあちこちで取り組んでいらっしゃる方がいることによって、瀬戸内海がどんどん変わってきています。ここで瀬戸内海の問題と広島の動きをご紹介して、さらにご理解いただこうと思います。
 広島県では県知事の支持により、このたび県の環境保健センターで、室内実験ですが、本当にEMは効果があるのか、ということを実証実験することになりました。この他にも広島県の地域事務所で、EMによる環境の浄化プロジェクトがスタートするなど、かなり力が入っているようですが、これはどういうきっかけがあって、こういう動きになったのですか?

比嘉 これは皆さん似たような悩みなのです。つまり、行政がお金がなくなってきた。ですから、金がかからずにやる方法はないかと考え始めた。もう一つは、行政だけでやっていくにはもう限界がありまして、住民の協力が得られるかどうか、ということ。また行政側の立場としては、ある仕事をした時に、うまくいかずに責任追及されたら困るわけです。
 例えば化学肥料農薬や合成洗剤を使って、便利にはなった、農業も楽になった、しかし結果として、環境を破壊し、自然を破壊し、資源もだめになり、人間の健康も破壊するという、こっちの方のお金がすごくかかってしまった。これは行政側から言えば大失敗なのです。でも行政側はこれを失敗とは言っていない。行政が言う失敗というのは、何かをやって責任を追及されるのを失敗という。でもEMはこの失敗がまったくない。どんなにやっても責任を追及されるような失敗は起こらない。EMを撒いて、ここで効果が出なくても下流の方で必ず効果が出ます。そういう意味で、安くて住民の協力が得られて、行政の立場としては失敗がない、これはやらない方がどうかしている。
 今までみんなEMはまゆつば物だと思っていたので、なかなかそれが理解されなかった。でも広島EM普及協会とか、瀬戸内海をきれいにしたいという方々が増えてきた。安芸津町などは環境条例でEMを使うと決めて、もうすでに大きな効果を上げているのです。結果的にこの成果を見て、広島県もやろうという形に結びついたと思います。またそういうお話をお聞きしました。

池本 もし県全体で本当に取り組んだら、どういうことになるでしょうか。

比嘉 はい、これから出てまいります、宮崎村現象というのが起こると思いますね。資源が循環するのです。今まで環境汚染源だったものが、環境を浄化する。それだけではないです。農業に使えば生産性もすばらしく上がる、当然ながらこの食べ物を食べる人たちは健康になる。水産も同じで、一次産業が元気が出て、しかもそれは廃棄物でまかなえるのですから、お金がかからない。一次産業が元気になると、二次産業も、三次産業も元気になるのです。
 今日本が枯れているのは、一次産業が瀕死の状態にあって、これが元気がない、というところに大きな問題がある。当然国際競争もありますが、この原点を環境問題と同時に解決して、そして資源を循環し、環境問題を解決し、経済的なプラスを生み出し、その上で、たくさんの人々が健康になる。みんな力になって、それがリンクして、レベルが高くなって、気が付いてみたら活性化する。広島県全体、環境も人間もみんな健康になる。EM活用はここが一番大きなポイントだと思います。

池本 EMを見るときには、本当にピンポイントで見るのではなく、考察の三原則、根本的に見るということ、多面的、長期的に見るという見方をすると、どれくらい価値があるかというのが良く分かるという。

比嘉 これは社会会計学、あるいは個人でいえば、人生会計学です。例えばゴミを捨てればこれを処理するためにお金がかかる。汚染が出ればさらにと、こういうふうに連鎖的に赤字を生み出すようなしくみ、これが赤字社会会計学になるわけです。しかしゴミが資源に変わり、その知恵をお互いに交換し合いながら人間のレベルが上がっていくと、本当に必要なものを深めていって、それで社会に何一つ問題が起らず、クリエイティブな社会になっていく。そうなると、同じ予算でもかたや天国、かたや地獄ということが起こるのです。これは自分がやっていることと、社会に及ぼすいろんなプラスやマイナスを生み出すもの、これがリンクした会計学、社会会計学なのです。人生会計学も同じです。自分が健康であり、どんどんいろんなことにチャレンジして行ければ人生はすばらしいものになる。でもそれができなかったら、非常にやっかいな人生ということになる。
 思いをそこまで広げて対応できるというのが、EMの楽しみでもあるのです。それはある意味でクリエイティブ、創造的な世界です。今までの世界はそうではない。すべてあるものを使う、消費者的な世界です。このあたりのEMのポイントを理解いただければと思います。

池本 人生会計学で一人ひとりが黒字転換になるということ。私も広島県民の一人として、何かできればなと思うのですが、大きな目標も小さいことから可能になるんだ、と思った瞬間に体が動きそうです。
 そのきっかけになったのが、昨年の8月の終わりに「瀬戸内海環境会議」という、瀬戸内海を産・官・学・民一体となって、浄化して、活性化していこうという、動きができたことなのですが、そのフォーラムの中で、産・官・学・民の代表の皆様方にお話をうかがいましたので、みなさまにお聞きしていただきたいと思います。

●ビデオ(事務局にて作成)

「海の汚染の原因は」 (山口大学工学部教授 浮田正夫)
浮田 我々は一般的に、水質は改善傾向にあると把握しているわけです。しかし一方で、漁獲量が非常に減少している。いろんな場で漁業者の方から悲観的な話を聞くことが多くなっている。考えられる要因として、例えばやはり浅海域の藻場・干潟、こういうのは漁業の再生産の場として非常に重要な場なのですが、これを我々は今まで埋め立てで、ずい分失ってきているのです。時間遅れでその影響がじわじわ出てきたのではないか、ということがひとつ、それからこれが重要なのですが、農薬・合成洗剤・医薬・環境ホルモンと言われる微量の化学物質の影響も考えなければいけません。

「山口県周辺の状況は」(NPO法人地球環境共生ネットワーク地区リーダー 浦上卓三)
浦上 なによりも海の底を見ますと、ミカン畑の下に草が生えてない赤土が見えるように、海の底には除草剤を撒いたように、生物がいないのです。草が生えていない。そして魚も見えない。これは何が原因だろう、やはりこれは薬品が強い影響を与えているのではないか、その中でも塩素の害が大きいのではないか、と私は感じております。
 この映像は知的障害者の皆さんに応援していただいて、油谷湾にアサリの放流をしております。しかし5月18日に調べてみたら、10センチ下は全部死骸になっていました。その前に私たちはEMで土壌作りをしたのですが、うまくいきませんでした。そんなに簡単に土壌改良はできなかったということを知りました。
 どうしてアサリが捕れなくなったのか、というのを潮が引いてからよく調べてみました。これは琉球大学の比嘉先生の園芸学教室の学生の皆さんが来たときに、一緒に調査したものです。その干潟をよく調べてみますと、この管のずっと先には処理水が放流されるようになっております。ところがたまたまここが漏水して、日焼けしておりました。近くの漁師さんが「そこ見てみな、塩素の臭いがするけ」、と言うので行ってみますと、本当に塩素の臭いがパンパンしておりました。この塩素がずっと先まで行って、海を汚しているんだな、と僕は本当にびっくりしました。そして、その処理場を調べてみましたら、このように塩素が投入し、塩素の下をくぐって水が放流されている。全国の施設として、小さな施設でもそういうふうになっているのではないかと思います。
 それでこのように活性液を大きなタンクに運びまして、その中に毎日出る米のとぎ汁を入れてもらうようにしています。そして毎日その台所からとぎ汁活性液を流せるという、簡単なしくみになっております。
 そのようにしたら、先ほどの塩素で焼けたところが、青々と蘇っていました。この写真は今年の6月26日の写真です。そしてアサリも捕れるようになった。それじゃあもう塩素を入れるのはやめたかなと思い、今年の8月14日、琉球大学の学生が来てくれた時に一緒に調べました。やはり塩素は入れていました。まだ入れていたにもかかわらず、また塩素以外の薬品が害を及ぼしていたかもしれないのに、EMを投入することによって、海がよみがえり、アサリが捕れるようになったという、ひとつの実例としてご覧になっていただきたいと思い、この写真を用意しました。
 この時のCODを測ってみたら、値が10くらいでした。これは比嘉先生にお聞きしたのですが、CODが10くらいになったら、大腸菌は3000はいないと(注:1ccあたりの基準値)、もう塩素を入れる必要はない状態になっていると。にもかかわらず、塩素は毎日投入されている。こういう法律がいいのでしょうか。法律が魚を殺したり漁民が食べられなくなっているという現実を、皆さんと一緒に考えていだたきたいと思います。

池本 こういうことについて、町の方の対応はどうなっているのですか?

浦上 EMの効果を感じ始めた漁協と、町役場、産業振興課、琉球大学の学生と一緒に、船にたくさんのEMセラミックスを乗せております。600キロほどのセラミックスを、EMで作った液の中に2日浸透させて、それを海に投入しました。町が動き漁協が動くようになりました。そして何よりも学生が農協の皆さんにも指導してくれているので、学生ががんばってくれるということで、町の人がとても熱心に受け入れるという体制ができてきました。
 これは農業関係の方々が一緒にぼかし作りをしているところです。
 これは山の上から琉球大学の学生たちと一緒に、EMの活性液を流しています。今ではこれは公有地ですが、漁業者のための用地です。これを町がどうぞ使ってくれということでお借りしました。それと漁業組合の方がボランティアの私たちに、是非海を浄化してくれないか、ということで漁業組合の委託を受けて、このように海を浄化するためのタンクを30個ほどここに設置してあります。
 そしてこれは下にあるポンプとパイプですが、海水を導入して海水でEMを培養して海に戻すことを考えています。海を浄化するのだから、海水を使うのがいいのではないかと思って海水でEM活性液を作っているところです。そして山の上にもっていき、左側の細いパイプから点滴で、川に落ちるようにしてあります。1日で400リットルくらい落ちます。
 これでどういう結果が出たかといいますと、これは安下庄漁協のイリコの取扱高についてのグラフです。平成11年、12年ごろからぐんと急カーブで上がってきました。12年から13年にはおそらく倍以上になったと思います。これは必ずしもEMのおかげだとは言い切れませんが、兼田さんの海苔のことを聞きますと、やはりEMを撒いている影響があるのではないかと思っているところです。

「大きく変わったまち安芸津町の現状は」(広島県安芸津町助役 山脇弘史)
山脇 これは最近の映像ですが、アマ藻が生えてきております。環境浄化の表れではないかと漁業者の方も認めてきています。その他、メダカが発生したり、ヘドロがなくなって臭いが消え、蚊もいなくなる、という現象が出てきております。やはりEMの効果は早く出るということ、それから使いやすいし、費用が安くつく。
 うちの場合、協同体制については、環境衛生対策プロジェクトチーム以外にも、福祉行政を使っております。それはどういうことかというと、共に支え合おうというのが基本です。それを今度は条例化することにしました。平成13年12月1日、安芸津町環境美化および浄化に関する条例を制定しまして、行政の責務・住民等の責務・事業者等の責務ということで、全員が責任分担して環境浄化・美化をしようと。その中に住民の責務として、EMを使って環境浄化に協力しましょう、という条項を入れております。これで一つの指針的なものができましたので、これに基づいて今進めております。
 昨年の暮れごろから、牡蠣筏でEM団子を投入しております。この4日に調査した結果、EMが浸透しつつあるという状況でした。これから明確なデータが出てくると思います。そういったことで視察する方が多くなりました。行政の町長さん、議長さんが来られる目的は、やはり行政の抱える悩み、予算を出してもいいが、出せないのでどうしていくか、という取り組みの仕方です。うちの協同体制について聞かれることが多いです。それから一般の方の場合、ここはヘドロが30センチから50センチ減った所ですが、EMの作り方とか、EMの効果を視察にくる。ですから、視察のポイントが来られる方によって二通りあるということです。

「こういった動きに市民の立場からの感想は」(画家・エッセイスト 宮迫千鶴)
宮迫 民と官のパートナーシップを条例化しようという動きは、すばらしい発想だと思いました。私も伊豆に住むようになって最初にぶつかったのが、ゴルフ場開発運動と、飲み水の貯水池の関係の問題でした。今から12、13年前の話ですが、私の住んでいる町の行政の方には、今のようなお話はまったく聞くことができなくて、行政というのはひとつの壁なのではないか、というふうに民の一人としては感じてしまったのです。ですから今回、このフォーラムが民・官・産業界、そして学術的立場、という言ってみれば社会全体がひとつになって、目的に向かうという姿勢が、「え? こんなことあるんだ!」と本当に感動したのです。
 私は市民の立場から言いますと、市民の運動もずい分盛んになっていると思いますが、やはりこれからは行政の人たちが、今おっしゃったような方向にスイッチを切り替えていただいて、いかに柔軟に対処していただけるか、それによって民の力もまた倍加するのではないかと思っています。

「内海町の影響を受けてからの尾道の対応は」(尾道市山波漁業組合理事 浜原道由)
浜原 山波の州は、ちょうど松永湾から流れてくると、尾道水道があります。そこの潮が渦巻くというほどではないですが、潮がまわっているんです。このように赤潮が発生しますと、こういう形で山波の州の干潟が全滅になるのです。これではいけないといろいろ考えていました。今はEMを撒いたおかげでこの赤潮が発生しなくなった。
 ではこれを山波町民を挙げてやろうではないか、ということでこのEM菌を取り寄せたわけです。その機械をどこへ置くかと、いろいろ問題がありましたが、海がきれいになるのなら、漁業組合に置いてそれから町民の皆さんに使ってもらおうということで、そこに置き、皆さんに配付しているのが現状です。
 それだけではなく、海の周りはアサリが一切わいておりませんので、EMを撒いて、種アサリを撒いたら土へ入りだした。いかにEM菌が活用したか、素人なりに分かりました。63年に捕れた最高1万5千トンのアサリが、平成10年には3千トンしかできなかった。潮干狩りにくる人も千人足らずだったのです。それが年々増えてきて、今では5千人から7千人、来年には1万人を突破するのではないかと言われています。それくらい山波の州のアサリはわいて来た。それまでは皆泣いていたのです。明日の生活はどうするかと。若い者は漁師をやめておかへ上がる。本当に漁民は路頭に迷っていた。ところがそういう状況に変わっていった。lいかにEMが環境衛生に良いか、ということを私は本日報告したかったわけです。

「漁連婦人部としての取り組みとは」(愛媛県漁協婦人部連合会会長 富岡喜久子)
富岡 愛媛県下では、西条、今治、松山、八西、宇和島、南宇和と6つのブロックに分かれております。そして、55の漁協婦人部の組織で部員数が現在、4210名です。
 各ブロックなどで,EMの研修もおこなっております。川之江漁協婦人部の松本さんは、ヒラメの養殖をされておりますが、地域の方たちの協力を得て、お米のとぎ汁EM発酵液を利用し成功して喜んでおられます。
 今治ブロックの壬生川漁協婦人部の海苔養殖業の方たち、家族で協力しあい、EM利用で高品質の海苔を生産され、また、重点婦人部活動の取り組みによりまして、津倉漁協婦人部の矢野ヒロ子さんを中心に、吉海町のバラ公園および横の堀や川がきれいになり、また石垣のヘドロがなくなり、水が本当にきれいになりました。 見学して感動し、そして婦人部でEMによる活動の輪が広がっていきました。
 私たち上灘漁協婦人部加工部では、平成7年3月より、ふたみシーサイド公園内に、じゃこ天のお店を始めました。みんなでこのEM活動に取り組んで、本当によかったと思っています。そしてこのタコもEMにつけます。そうしましたら、茹がきましたときに、つけてないタコとつけたタコとでは、色の鮮やかさがちょっと違って、つけたタコは色もきれいで柔らかくて、味がおいしいです。これはたこ焼きとしてずいぶん販売させてもらっております。
 毎日鯛めしや、いろいろなご飯を炊きますので、とぎ汁発酵液は必ず毎日作ります。フライヤーの油がすごく付きまして、掃除に困っていたのですが、これを発酵液の中に一晩浸けますと、油が簡単に落ちてきれいになります。そしてミンチの機械には、毎日100倍に薄めた発酵液をシュシュと霧吹きで、吹いておきます。そうすると悪臭が全然なく、きれいに取れます。
 そしていつも悩みの種でした浄化槽ですが、1ヶ月も掃除しないと周りに臭いがして、「早く掃除してな」という声がありましたが、これも毎日発酵液を流して掃除をすることによって、これ8年目のじゃこ天の店の床です。タイルもいつもきれいで、みんな一生懸命掃除をしてくれます。
 私どもの海では、海が荒れると山が荒れる、山が荒れると海が荒れるという言葉がありますが、本当にお魚いっぱいです。じゃこ天の原料である雑魚もかなり捕れますし、また最近は近年にないほどのイワシの豊漁です。現在はチリメンが毎日捕れております。ほくほくでございます。(会場笑い)
 私ども婦人部も、EM活動を5年間してきた成果ではなかろうかな、と自負しながら、まだ公表はいたしておりません。(会場笑い)でも海はごらんのようにとてもきれいでございます。

池本 本当にいきいきと語ってくださいました。常にクリエイティブに研究していらして、最後のメッセージを出してくださった方は、あの会場の後でもまた先生に、「先生、こういうふうにしたいんですが、大丈夫ですか、どうですか」とずっと考え続けていらっしゃるのですね。

比嘉 あのじゃこ天は、EMXを使ったりいろんなことをしてまして、所ジョージさんが、世界で一番うまいじゃこ天と言ってあちこちでしゃべっています。彼女たちはじゃこ天を売ってヨーロッパへ行こうと言っています。もうハワイは行ってきたんだそうです。

池本
 なるほど。夢があるといろいろなことが変わってくるなと思いますね。その最初の夢を作ったのは、漁協の方がおっしゃっていたように、本当に困って、悩んで、苦しんで、というところからの出発だったと思います。自治体にもいろいろな悩みをもった所もあると思うのですが、そういう悩みを持った所こそ、解決のヒントがここにある、ということになりそうですね。そしてフォーラムに参加された大企業始め、いろんな企業、たいへん感心を持たれていまして、比嘉先生が広島に来られて、県知事や、広島市の経済局長まで話をしていただいたんですが、ずい分感心があるようで、目の輝きが違いましたね。

比嘉 結局今までのやり方は出尽くして、この延長では解決策はない、ということに皆さん気が付いてきた。こんなに安くて、住民の協力も得られて、その結果海がきれいになり、魚も増えてというように、現実に結果が現れてきたのです。
 広島に限らず、日本全体が法律などできっちり決めてあるものですから、高コスト体質になっている。例えば、ダイオキシンもEMを使うと簡単に処理できるのに、燃やすのは800度以上、排気ガスは200度以下に冷やさなきゃいけない、水も何ppm以上は塩素で消毒しなきゃいけない、など全部決めてしまうんです。これに変わるべき良い方法が出ても、ガチッと抑えられている。ですから、今までのしくみや技術の中にEMを入れようとしてもなかなか入らない。法律もあるし、みんなの常識もあります。もっと自由に、あるいは規制緩和ともいいますが、徹底的に自由にする。でないと硬直して先へ行かないわけですから。変わるべきことならなんでも挑戦するという、フレキシビリティが大切なんですよ。
 今は情報が次々とあります。インターネットの時代ですから、世界中から情報を集めながら、EMのように安くて間違いないものを補助的に使っていけば、また次の展開が見えてくるのです。このあたりがまだ少し足りない。これをチャレンジすれば面白い情報が出てくるのではないかと思います。

池本 ありがとうございます。広島のことばかりでなく、先ほどのフォーラムの中では山口県、愛媛県、いろいろな瀬戸内海を囲む方たちの意見を頂戴しましたが、九州の方でも有明海では、諌早開拓の水門の閉鎖問題が、新聞誌上にもありましたが、そんな問題の中でEMによる大きな効果があったということですが。

比嘉 これは内海町の兼田さんの成果を勉強して、これを有明海流に「じゃぶじゃぶプロジェクト」というものを作って、地域のボランティアの皆さんがその取り組みを推進したんです。柳川市のような役所指導型もありますが、多くの役所はとても冷ややかでした。しかし、結果としてすばらしい成果が上がったのです。
 有明沿岸に関しては、元々EMの実績がありました。熊本市の北側にある河内川は、夏目漱石の峠の茶屋で有名です。源流は金峰山から流れているのですが、これが下水が処理されていなかったので、ひどく汚れた川になってしまった。そこで中川さんという婦人会の方が中心になって、各家庭からEM流してEMを生活化した。すると川がきれいになりまして、アユも溯上してきて、蛍も乱舞するようなった。おまけに九州の海苔が色落ちでまいっている時に、この河内湾だけはすごくりっぱな海苔が採れて豊作だった。
 それと瀬戸内海との連携です。瀬戸内海の海苔にEMを使うという話は、実は福岡県で実験された結果を受けて始まったのです。ですから、相互に情報をやりとりして、その連携が危機的な、解決方法が何もない時に、皆さんが覚悟を決めて、必死になってやった。情報はすでにあった、というこういうことなのです。ですから皆さん、自分の周辺を見てみれば、必ずあちこちにヒントがあることに気づくと思います。

池本 解決したい何かがあって、それに集中して、そして周りを見回した時に、大きなヒントがある。ただここでやるかやらないか、色で言えば赤の行動するかどうかです。 みんなが力を合わせて大きな行動をした例が柳川市でございます。
 先生、柳川市ではどういうきっかけで、取り組むことになったのですか?

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比嘉 柳川市の市長選の時、河野氏は選挙公約にEMを上げたのです。絶対に当選できないと言われたそうですが、「EMをやります!」と言ってがんばったら、僅差で当選したんだそうです。
 その時に、私は柳川市の大牟田におりまして、市長さんが県庁へ行く途中に訪ねてこられた。「自分は当選したから、がんばって補正予算を組んでEMを実行ます」、と言ってその後補正予算を1千万組んだ。こんなことする人なんておりません。彼は元々民間の企業におられたそういう感覚のするどい方なので、すぐに実行に移したのですね。同時に役所の職員にもEMの研修をしてもらうし、先進地もチェックするし、各公民館を中心に、公民館長をはじめそこの女性に研修をさせて、EM講習のリーダー養成をして、また住民が生活化するということをやってしまった。ですから、今では培養するシステムから何から住民がほしいと思えば、いくらでもEMが手に入るようなしくみを作って、町全体がEM化してしまった。
 市長さんの考えは明日、ご発表いただくんですが、あの470キロの水路、すごいんですよ。エビもドンコも、昔以上の淡水魚の宝庫に戻りつつある。最近はウナギも戻ってきたと言っている。淡水魚の日本一の産地にもう一度蘇らせる希望が見えてきました。同時に海の海苔も、二枚貝のアゲマキも出てきた、アサリもです。
 そういうことをすると、環境問題も解決して、また皆さんが喜んで協力してくれる。市長さんには賛同できないけど、EMは反対しません、という人たちもいっぱいおられて、1年でここまでやったのです。
 VTRでどんこ舟の船頭さんは上手に竿を引いていますが、実は以前は竿にヘドロがいっぱいくっついて、ヘドロが見えないように水面下でスーッと竿を動かしていたという。今はザバッとやってもヘドロが見えないから、すごく楽しくやっている。
 トップが決心して、最初にEMのモデル都市を宣言して、役所の中にEMのプロジェクトチームを作った、沖縄県の具志川市。ここもそうなのです。市町村の公約で当選してしまった。そして皆さんに協力してもらう。だいたい一期目は準備期間で、2期目にズッと行く首長さんが多くなりましたね。大変うれしいことです。

池本 広島市も今選挙戦に入っていますが、まだEMという声は聞こえてきません……。

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比嘉 先ほどの具体例が出てました、水がきれいになったとか、今度はこの春の売り上げの単価がすごく良くて、収量も多いということです。この春というのは一番積みの有明の海苔です。

池本 今年からはおいしさのバロメーターである、たんぱく質も測って、おいしさを数値として発表するという記事もありました。やわらかくて食感もよく、おいしさだけではなく、ずい分変わったといいますね。

比嘉 贈答用の特級海苔の比率が、圧倒的に増えたのです。ですから、量だけではなく内容も変わった。枚数だけ数えると、税務署をうまく煙に巻くことは可能だと思います。(会場笑い)中身を見ると本当にすごいです。

池本 私も内海町の兼田さんの海苔をいただいたんですが、本当に食感がやわらかくて。それで驚いたのは、海苔は長い間置いておくとだんだん茶色になってきて、黒々としたきれいな色じゃなくなってきますが、兼田さんが3年前の海苔を見せてくれたんですが、全然変わらないですね。

比嘉 EM技術では、熟成が進むとなお質がよくなる。海苔も採って1年2年としっかり密封しておけば、その中で熟成が進んでいきます。1年目は硬いのですが、2年目、3年目とだんだん良くなってくる。これは販売戦略としても非常に重要なことで、もちろん最初からおいしいんですが、置けば置くほどおいしい。これは抗酸化レベルがずっと中へ入って、熟成していくからです。ですから、残飯や生ゴミも廃棄せず、上手に活用するということも可能なのです。

池本 実は私は、HACCP(ハセップ)という高度衛生管理をアメリカで勉強したのですが、今のはHACCPの考え方からいくと大変かな、と思うのですが、そういうものも含めて、これからもっといろんな形で取り組めば、可能性を作ることができる。さっきおっしゃいました、クリエイティブな、創造ということができる。行政だけでなく、また水産業者の方だけでなく、地域住民の方だけではなくて、一緒にコラボレートすることによって、すごいことができそうですね。

比嘉 結局知恵の増幅効果。AとBを足すとAとBの他にプラスアルファが乗ってくるのです。この母数が多いほど、増幅効果は高い。EMの基本は常に公開原則・正直主義・草の根です。そういうものがつながっていくと、ある目標さえできれば、1足す1は2で解決できなくても、みんなで協力すると、大ピラミッドのような解決法が出てくるわけですから、これがまた楽しいということです。

池本 そういう中で自治体の皆さんがどういうリーダーシップ、もしくはサポートをしてくださるか、これも大切ですよね。

比嘉 そうです。さっきの柳川市みたいに、まずトップの決断が大事です。そして関連する人たちのレベルを常にアップするしくみ。それから、使う皆さんがいつでもEMが手に入り、楽しく使う、EMを生活化する。こういうしくみです。安芸津町や沖縄県の具志川市はまさにその典型です。ほとんどの市民がEMを使うようになり、それを楽しく、それをベースに会話が生まれ、そしてあっちが汚いからみんなできれいにしようとか、この学校のこのあたりをこうしたいとか、自発的な提案で、みんなが片付けていくのです。そうすると行政コストは見る見るうちに安くなっていく。こういうことを行政関係者のみなさん、是非ポイントとして認識いただきたいと思います。

池本 この時代になぜ自治体が取り組むか、というのはそのあたりにあると思います。困ったときに必ずEM。成功した事例を見ると、本当に困ってEMに取り組んだというのもそのあたりなんでしょうね。
 ではなぜ今の時代に、自治体に注目されたかについて、切り口をまとめていただけますか。

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比嘉 基本的に、EMが本物であるということです。本当に効果があるということ。20年以上叩かれっぱなしだったのに、結局これだけ広がったということは、本物だということです。自治体が活性化していく、情報も高度化している。しかしいろんな事が起きて、行き詰っている。これを解決するには、本物でしか解決できない、という背景がある。では本物というのは何だということになるのですが、口では本物と言っても、山ほど偽者はあるわけです。
 このチェックポイントとして、安全かということ。使ってみて絶対に安全か、悪いこと起こらないか。これは機材でも、我々の組織も、社会のあり方もみんなそうです。それから快適であるか。EMを使った時は爽快な気分になります。私たちの生活も、組織も、それが居心地がいいか。安全で居心地が良ければまず一次合格です。また高ければだめで、安いかどうかです。安いというのは買ってくるのではなく、EMの場合は自ら生み出すし、自分で作れる。種菌はほんのちょっとで済みます。大きな病院でも、いろんな悪臭対策をするのですが、1ヶ月のコストが千円以下という所もあります。もし薬品でやろうとしたら、十数万というコストになってしまいます。そしてハイクオリティ、質が良いかということ。安くても質が悪かったらだめなのですよ。高いものは質が良い、というのは今までの常識ですね。しかし安くても質が良い、というのは本物の基本なのです。
 今ITや、いろんな形でこのレベルの追求が始まっています。これはあくまでも物であって、EMがこれができるということは生き物であるからで、それを増やしてあげられる。しかも抗酸化力が出てきますから、使えば使うほど、使われたものの質が良くなっていく。累積的に良くなっていくのです。それと同時に、サステナビリティと言って、使えば使うほど、この効果が乗っかっていって、最後は長い時間使えば文化財になるくらい、誰でもがそういうレベルのものが作れるという楽しみも付加される。
 安全・快適・低価格・高品質である。そしてやればやるほど良い。これらのチェックポイント。私たちが何かをする時、自分のチーム編成をする時、いろんな技術開発をする時、これらすべてに行きわたる大原則なんです。技術開発、イノベーションあるいは組織を、この原則に従った方向に変えれば、あらゆる問題が解決されるということを、EMはちゃんと皆さんに教えてくれますから、是非本物をベースにして、問題解決にあたっていただきたいと思います。これはあくまでもベースで、例えの話です。
 「安全・快適・ローコスト・ハイクオリティ」というキーワードを、くどいほど申し上げますが、これを頭に入れて、対応してください。そうすると必ず、物の観察力や思考がどんどん良くなっていって、プロフェッショナルでクリエイティブな人間になれる。プロフェッショナルでクリエイティブな社会、本当にローコストハイクオリティな社会を作ることができるのです。

池本 まさに今の時代のキーワードが並んでいました。これはベースです、とおしゃっていましたが、このキーワードが実際に、どんな効果を発揮しているのでしょうか。

比嘉 作物が良くできるだけでなく、作物の生長を通して環境や空気や土もきれいにします。働いている人も元気になり、それを食べる人も元気になる。そして続ければさらに良くなっていくのです。
 今のゴミ処理の方法は燃やすだけで、何も生まない。逆に廃棄ガスやダイオキシンが出る、まさに破壊的処理です。しかしゴミを農業、畜産に使えば、創造的な、クリエイティブな処理になります。物の一面でローコスト・ハイクオリティではなく、全部をリンクして、結果的にトータルですごく安くて、全体の質が良い、こういうことなのです。化学肥料・農薬とEMを比較して、値段が一緒じゃないか、と言いますが、化学肥料を使った時の環境破壊や、健康破壊、後のコストも含めて考える。単純に考えず、複数でいろいろ組み合わせ、どこかで機能性を高め、質を高め、コストを吸収して、気がついてみたら全てが高効率になっていた、ということなのです。

池本 ではその事例をご紹介いたします。茨城県の取手市のEMの活動をご覧ください。

●ビデオ(事務局注 : 以下、上映内容の抜粋
 取手市では市のモデル事業として、地元の非営利団体「NPO緑の会」に生ゴミの回収を委託している。
 当初は20世帯ほどから始め、現在は200世帯を超える家庭がゴミの分別回収に協力している。 しかし、これを取手市全域3万1千世帯にまで広げるには回収システムなどを見直す必要がある。
 さまざまな問題はあるが、環境を守ろうという市民や行政の強い意志があれば克服できると「NPO緑の会」代表の恒川さんは考え、ポイントは「腹を決めること」と話している。

池本 恒川さんの「腹を決めることですね」というのはすごくズシンと重く感じましたが、自治体や行政の皆さんは、どう腹をくくればいいんでしょうか。

比嘉 これは理屈ではないのです。えらい学者がこう言ったとか、そういうことではなくて、現実に自分たちの地域に本当に役に立っている、というのを自分の目で確かめなければいけない。やはり役所というのは、公僕という立場から考えますと、地域の皆さんを幸福にするための、プロフェッショナルな集団でないといけない。ですから、役所の都合に住民を合わせるのではなく、住民が自発的にやるなら役所もそれに変える。そんなことも、腹を決めることのひとつなのです。腹決めるというのは、その地域の皆さんをハッピーにするという大原則があって、それで腹を決めれば住民が協力します。
 例えば今のゴミでも、そのまま置いておけば役には立たない。しかし農家の人がそれを受け取り、または上手に家畜のえさにして、畜産をEMでやり、その糞尿で野菜を作る。こうすればまた拡大的に富を生み出すことができる。だから役所の方で腹を決めて、住民の皆さんにそういう協力をさせれば、明日発表があります船穂町のように、すごいことができるわけです。EMは腹を決めさせるだけの背景がありますし、また腹を決めれば勇気も出ます。そして知恵も出ます、みんなが協力します。だから腹を決めてください。(会場拍手)

池本 こみ上げるような拍手ですね。単体で、オンリーワンでこれだけやっていった20世紀から、21世紀は腹を決めてコラボレートする、ネットワークを作るという時代なのかなと思います。それをするためにはやはり、腹を決めなければならないんだな、という気がします。
 ここでゴミ問題を抱えていらっしゃる、もしくは取り組んでいらっしゃる所も多いと思いますので、簡単にまとめて、皆様方にご覧いただきたいと思います。

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比嘉 ここに9つのゴミ問題があります。これにはレベルを上げたリサイクルが基本となるのです。まずこのようにリサイクルしようとなると、臭いが問題です。臭いと衛生問題が解決しなければ、どんなにやっても結局、燃やすことになってしまう。ですからEMで衛生的に処理をする。EMを撒けば、腐敗菌や大腸菌など有害な微生物はいなくなるし、ハエもいなくなる。
 生ゴミだけではなく、ビニールや他の材料にくっついてしまったら、これをリサイクルするのが大変なのですが、臭いがないように生ゴミを分け、あるいは混じっていてもEMを処理していけば必ず楽に分別できて、またEMで洗えばその他の材料もリサイクルが楽になる。こういうことなんですね。それをしないと、すごいコストになる。

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 EMをやってしまえば、処理場が満杯になっても、上からEMをどんどんかけておけば染み出た水が川へ行き、川をきれいにするのです。従来なら、これはとても大変なのですが、こんなことも同時にできる。従来の不完全燃焼だとか、ダイオキシンだとか、設備を大きくしなければとか、そんな問題はすべて解決できるわけです。
 例えば極端な例だと、生ゴミをもってきて、EMぼかしやEMの活性液をずっとかけ続ける。そして一晩密封して、臭いが消えたら、もう畑へ入れてもいいのです。

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 そういう受け入れシステムを作りさえすればいい。今のように難しいことを羅列しても、EMの側から見れば、そんなに大変なことではありません。このシステムを更に高度化する。これも明日説明があると思いますので参考にしていただきたいと思います。

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 船穂町の場合はこのシステムでゴミを減らし、会社を作り、シルバー人材の雇用を促進して黒字になった。それだけではなくて、この運動を通して町がすっかり活性化していった。こういう大きな力、生ゴミの力なのです。是非そういうい先進事例を参考におおいにいろんな形でアイデアを出していただきたいと思います。

池本 地域の人をハッピーにする、腹を決めたら、いろんな豊かさを生むことができる、という事例をいくつかご覧いただきました。これは明日もですが、ブースの方でさまざまな事例を視覚的に、またお聞きしていただいて確認することができますので、ご覧くださいませ。
 今回のシンポジウムのテーマである、近未来型の行政力の中で、自治体が自主・自立していく。このゴミ問題のひとつを取りましても、すばらしいヒントがあったような気がします。先生の先ほどのご説明の中にもございましたが、リッチになっていく、コストを減らして循環型の社会を作っていく、ということもございました。それから汚染源を町の浄化や、産業を育成する資材に変えて、人を活かして、共に財政的なプラスの要因を作ることもできる、ということがございました。さまざまなヒントを皆さま胸に刻まれたことと思います。
 さて次は、自治体の、世界の国々のこれからの最大の課題について、ずばり先生に切っていただきたいと思うのですが、環境問題と関連した、住民の命を支えて、安心で安全に暮らせる町づくりという部分ではどうでしょうか?

比嘉 従来の常識はエントロピーの原則に従っているのです。エネルギーを使って、そのエネルギーは再利用できなくなって、だんだんレベルが下がっていき、最終的には汚染になる。今の技術は石油・石炭・原子力、何を使っても、材料はエネルギーを失い、最後には汚染を出して、滅ぶ、というしくみになっています。汚染を出さないように努力をして、環境というのは生活の一部であるということを、みんなで徹底しなければいけない。
 その環境汚染源にEMが増えると、抗酸化状態になります。そうすると、使えなかったエネルギーが集約されて、それが物質を合成する。成長にプラスになり、生産力となり、環境浄化する。ようするに環境汚染源が環境浄化源に変わり、環境汚染源が資源を復活する材料に変わる。しかもそのエネルギーは太陽から空中から宇宙から、飛び込んでくるわけです。それを使う能力のある微生物が、EMの中の光合成細菌です。
 その不思議な現象をシントロピー現象といいます。エントロピーとは逆のシントロピー。今までの人間の技術というのはすべて消費者的発想なのです。ある資源を使って汚染を出して、滅ぶ。しかしEMはクリエイティブな、生産者的なものです。植物が太陽の力を使って糖分を作り、たんぱく質を作りますが、それと同じことを微生物の世界でもしているわけです。特に光合成細菌は、有機物がなくても生きられるタイプです。そういう菌がいっぱいいるのです。ケイ藻やラン藻など、植物に似た微生物が増え始めると、土や水中は豊かな大ジャングルに変わるのです。この生命の最少単位である微生物が、光合成細菌がベースになり、蘇生的なしくみに変える。これが基本です。そうすればどんな汚染も、豊かな材料になる。
 どんな汚染でもと言うと「じゃあ放射能はどうなんだ」と言われます。私はベラルーシ、ウクライナでその実験をずっとやってきました。放射能が多少残ってる所は生育も収量もいいし、味も良いのですよ。EMをしっかりやっておくと、放射能を吸わないんです。これは物理学者、誰も絶対信じません。でも私がやったのではなく、その国の化学アカデミーの研究機関がやっている。ようするに放射能と言えどもEMにかかったら最後、土の中の太陽に変わってしまうのです。土の中のエネルギー。ですから世界のどんなひどい状態でも対応できるのです。
 例えば北朝鮮の食糧問題。これはいろいろ情報のミスマッチはありますが、基本的には2000年から自給自足できるようになっている。それも一番少ないエネルギーで、あれだけの人を養う。これはある意味で環境や地球の将来の危機ということからすれば、大変なモデルになる可能性があるのです。それもすべての北朝鮮国土にEMが使われているのですから。病人も激減しました。もちろんいろんな問題があるのは承知の上ですが。
 同じことはミャンマーやベトナムでもあります。ブータンという王国は、国が丸ごと世界遺産になっていますから、農薬も全部やめて、学校教育のプログラムの中にEMの使い方やシステムを入れた。しかも山間ですから、みんな寮生活です。豚や鶏を養い、野菜を自給し、そういうことも同時に教育している。ですから、その国独自の問題が出てきても対応できる。
 いろんな国から問題が出てくると、私もそういうい立場で説明し、それを実行する。こういう問題は教育と教養の問題なのです。国民の認識が高まり、教育・常識・教養のレベルが上がることが、すべての問題の解決の原点なのですね。そこを考えれば、学校教育の中にEMが入るということはすごいことです。今2000校くらいの学校が、実際に環境教育の中にEMを採り入れています。そういう意味では日本が世界に先駆けた、未来型の望ましい国のあり方を示すことができると思います。経済とかなんとか、悲しい話もありますが、私はまったく悲観しておりません。未来の国民・国家のあり方を、住民側で変えることが可能だと思っています。

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池本 こういう可能性を世界中にお伝えしたいということで、実は今年の3月に開催される、政府主催の第3回水フォーラムで、このEMのさまざまな実績が紹介されることになりました。これもリクエストがあって紹介することになりました。私たちが案外知らない、世界中でEMに取り組んでいる方たち、また国内でも取り組んでいる方たちがいらっしゃいます。それらの実績についてご紹介することになりました。こういうリクエストが来るというのも、先ほどの4つの柱、それを世界中が求めているというか、世界の規範になるということなのですね。

比嘉 世界は昔に比べるとすでにひとつの村なのです。すぐに行けるし、すべてが情報公開時代ですから。そういう意味で、本物だけしか残らないという状況になっていることに気が付いて、皆さんが覚悟を決め、腹を決めてやってもらえばいいと、いうことなのです。

池本 ちょっとここでビデオをご覧いただきたいと思います。

●ビデオ (事務局注 : 以下、上映内容の抜粋
 公共事業が減っていく中、北海道では過去1年間で300社もの建設業者が倒産した。北浜建設(株)では公共事業に依存する体質から脱却する取り組みとして農業を始めた。
 建設機械を使って畑を整備し、建設作業員らが農作業に取り組んだ結果、職員のリストラを避ける事ができたばかりか、有機栽培にも成功した。出荷されたカボチャ等の作物はデパートにも置かれ、消費者の評判も高い。(同社はEMによる栽培管理を行っています)

池本 いかがでございますか、皆さんの中から笑い声が聞こえましたけれど、もうだめかとか、どうするのかという問題を、問題のままで置いておくのではなくて、どうすれば、活力自治体の「活」、活かすことができるか、ということを考えた時に、答えが出てくるのですね。

比嘉 これは法律が変わったのです。企業が農業をできるようになった。日本は全部明治時代の法律がまだあって、この法律でみんなを窒息させているんです。たまたま企業が農業していいという形になったので、ああいいうものができた。私は「法律定年制」というアイデアを随分昔に本に書きました。どんなに良い法律でも、30年で廃案にすべきだと。そうすれば国会議員も半分でいいし、役人も10分の1でいい。構造的に日本がおかしくなっている。能力がないのではないんです。能力は世界最高すごいんです。だから建設業が農業やってもすぐできる。これはやはり構造改革をきちっとやらないとだめ。これは道路公団も当然ながら、法的にみんなを硬直病にしているのです。国家が病気にしている。そこをはずしてくれれば、EMは基本のベースがありますので、みんなが誰でも参入できる。あらゆる所でハイレベルのものを作れる。こういうチャレンジができるのです。そうなれば新しい知恵や歴史が芽生えてくるだろう、という期待をしています。

池本 住民の幸福度を見る時に、今までの枠の中で見るのではなく、枠をはずして多面的に長期的に見ると、まさに生きいきと活力が沸いてくる。このあたりで、理想的なプロセスをもって成長した例をご紹介したいと思います。自治体の自主・自立と安心安全な住民の幸福度を、高い次元で高めて実現した村です。

●ビデオ(事務局にて作成)

(福井県宮崎村村長 木村橘次郎)
木村 自分が村長に就任しましたのは平成7年で、今から8年前です。財政のきわめて厳しい中で、どちらかと言いますと、財政破綻状態の中で、行政を担当したわけです。その時に悪臭関係から汚泥関係、住民からの苦情が大変多くて、それをどう解決するか、というのが大きな課題でした。その課題の中で、財政が厳しいおりでございます。昨日今日かとやりますと、やはり何億というお金がかかる。到底そのような財政状況ではないので、何かよい方法がないか、ということで、嫌気性菌であるEMを使いながら、これを改善しようとしたのがきっかけです。

質問者 EMを導入した中での、最初の効果はどのような感触がありましたか?

木村 これは夢というか、驚くべき成果が着実に上がってきて、汚泥が3分の1減り、悪臭の苦情もほとんどなくなってきました。EMがこれだけ効果があるということは、使ってみて初めて知ったわけです。

(環境衛生課 桑野順一)
桑野 EMの臭いは少ししても、汚泥の臭いは全然しませんので。

(環境衛生課 上坂重之)
上坂 投入して、1、2週間のうちに、処理場内の臭いが取れ、1ヶ月近くなりますと、汚泥からも臭いが取れた。処理場はもちろん付近の方々からも、臭いが取れたということで、非常に喜ばれております。EM活性液を入れますと、抗酸化作用があるので、機械が錆びず、長持ちするということで、オーバーホールを3年に一度、定期的に実施しなければいけないのですが、5年に延びたり、コスト軽減が図られております。

質問者 村民の方々によるEM研究会というのがあるということですが、官民一体という形に取れると思うのですが。

木村 畑作関係、蔬菜関係、軟弱野菜と申しますか、根菜類、いろんなものをEMぼかしによって栽培いたしました。当時は10数名の方が、自分で作った作物は非常においしいですよ、と皆さんに分けていた。大根で申しますと、きれいで、甘みと香りを十分に残したとてもおいしいものです。それを皆さんに食べていただいて、それが実証されて、今現在で100数十名の方々まで増えてきました。

(家庭菜園 山内千代子)
山内 ピーマンにしろナスにしろ、菜っ葉にしろ、味が甘みがあって、とてもおいしいんです。大根もおろしにしてもおいしいし、煮てもおいしい。
ぼかしをいれた畑も、だんだん土がさらさらになって、よくできます。

(専業農家 岡下和夫)
岡下 安全で安心して食べられるというのが、私は一番感心をもっている。EMを使うことによって農薬を消さなければいけないなど、そういったことがなくなった。もちろん土作りと兼ねて、十分活用していくんだということを始めに聞きましたんで、それはやはりその土地に合うようになって、7,8年になるかと思うんです。

(この村でEM推進運動をしている農家 井上幸子)
井上 私自身、若い時から環境問題、公害問題に、非常に興味をもっていましたので、自分がやるなら、環境保全型農業、有機農業でやりたいと思ったのです。もともと有機農業と言いますと、堆肥作りとか切り替えしやら、除草やら、と非常に大変ですから、これは難しいなと思っていた時に、ちょうど全国的に広がっていたんだと思いますが、生ゴミのリサイクルとして、このEMを使って発酵させていく、という運動があちこちでありました。それを使えば有機農業も簡単にできるのではないかな、と思いまして、始めたわけです。
 当時皆さんすでに生ゴミを畑で使っていましたし、環境とか、健康とか、そういうことに非常に意識が高かった。そんな中にEMぼかしが入りましたので、本当にいいものを教えていただいた、という気持ちは住民の方にあったのです。本当にこちらが驚くくらいに、皆さんが使っていかれて、すごい勢いで広がったという状態です。

質問者 有機農業と暮らしやすさの接点というのは、どの辺にあるのですか?

井上 これだけ自然が豊かで、水はこの山水から宮崎へそのまま降りてきているので、水が非常にきれいだということがひとつ大きいです。そこでこの水を利用しながら、水稲なら除草の意味で水張りをしていますが、こういうものを利用しながら食べていく。また畑なら、生ゴミリサイクルにしてもぼかしだけで畑を作っても、非常にうまく、簡単にできる。そしてそれを食べていきますね。そうすると、本当に子供さんたち、家族の方たちが喜ばれるということを皆さん実感しています。また村長さんを挙げて、役場の環境衛生課の課長さんにしても産業課にしてもそうです。それと私どものこの田んぼは「有機の会」というJAの生産部会に入ってるいのですが、そこでお世話もいただいておりまして、住民・行政・JAと言う形で一体となれた、ということは非常に大きいし、それがまた村作りと言いますか、健康な農業地の村づくりといことでは、大分基盤ができているのではないかな、という気はします。

木村 わが村は800年から千年経つ、古い窯元がございます。観光客を誘致する場合において、皆さんによろこんで食べていただくものをどう作っていくか。EM栽培と観光客の誘致のために、これからEMに働いていただいて、1つの大きなリンクを作っていきたいな、と思っております。焼き物の観光で来た方が、本村でとれた品物を食べていただいて、喜んでいただく、ひとつの第一次産業から、EMを機軸にした観光産業、第三次産業までリンクした、これからの宮崎村を作っていきたいと思っています。
 EMで栽培した方々から、作物を非常に安く提供していただいているので、子供たちの学校給食にも使わせていただいております。今までは余った品物は捨てるか何かしてたわけですが、それを学校給食に提供していただいて、子供の方も非常に喜んで、おいしいというんで、元気も出ました。いろんな面において、眼に見えない効果というものが着々と出ております。

(教諭 青木哲哉)
青木 地元の方が作った野菜ですから、安心して食べられると思います。素材の味を生かして、できるだけ加工せずに、野菜本来の甘みやおいしさを味わってもらう、ということで調理してくれているようで、子供たちも喜んでいます。

(教諭 松下典子)
松下 やはりいたるところで環境については言われてますので、窓口は小さいですが、そこで自然のこと、石油のこと、今のリサイクルのこと、川の水が汚れるとか、自分の身の回りにある環境について、ものすごく興味を持つようになりました。

質問者 いじめ問題など世の中ではありますが、お聞きすると大分そういう問題も環境教育の中で減ってきた、と村長はおっしゃっていますが、その辺の実感はされますか?

松下 人間は一番えらいのは自分だ、と思っているのですが、自然とかそういうものを学ぶ中で、人間以外にも、一緒になって地球上に存在していることを知るので、そういうものから、自分よりも弱いものに対する思いやりなども育ってきているように私は思います。

木村 EMの働きというものは、健康関係から、いろんな面において、育っていくな、と思っております。例を見ますと、今までの医療費関係が非常に安くなった。今までは県下でも最高の医療費がかかったのが、最低まで減った。ということはやはり皆さんが、おそらく宮崎村の半分以上の方々がEMを使っていると思います。栽培した作物を食べて、健康というものでつながっているのではないかと思っています。我われの命を守ってくれているのは、やはりEMの働きが大きい、というようなことを認識しています。

池本 暮らしやすさ、健康、豊かさを手に入れた、本当にすばらしい明るい農村の典型ですね。

比嘉 宮崎村は、このEMを始めるまでは、財政内容は全国ビリだったのですが、今は全国トップです。医療費も福井県で一番多くかかっていたのですが、今は一番低い。過疎でしたが、この8年間の間に村民が370人増えました。先ほど広島県の話の時に、広島県に宮崎村現象が起こりますと言ったのは、こういうことなのです。

池本 なるほど。新聞にも、各自治体が抱える問題の中で、医療費の負担が大きくなっているというのがありましたが、こんなふうに、医療費を減らすという目的ではなかったのに、EMで変えていくことによって、その問題も解決したという、まさに近未来型の行政というのがここが大きなポイントかもしれませんね。

比嘉 近未来型行政力、これのポイントは、基本的には住民の協力をどう上手に活用していくか、ということなのです。住んでいる人はそえぞれの地域をよくしたいとみんな思っていますから、この良心を引き出して、自発的な力を引き出す。ここが大きなポイントになる。私たちの生活基盤もそうですが、まずは自己責任原則です。私たちがまず何かをやるとすれば、必ず自分が行動を起こすわけですから、この問題は自分で解決する。
 例えば身の回りの環境問題、あるいは自分の健康管理、みんなとの協調関係など、すべて自己責任的な原則、これをまず育てなければならない。その次はみんなで協力して住んでいるのですから、みんなの存在が社会にとってプラスになる、少なくともマイナスにはならないという、社会貢献認識です。これはEMを使っていれば、ゴミを処理したり、米のとぎ汁で川へ流せば毎日川をきれいにする運動に参加しているわけですから、自分がやっていることは、社会に何らかの形でプラスになっているという意識を育てられる。
 最後はボランティアなのです。今私たちは自己鍛錬をするという場を失っています。ですからポランティアをして、弱い人の立場に立ち、あるいは困った大変な問題を、解決、発展させるということ。これは知恵も勇気も、いろんな協力が必要です。このボランティアが根付けば、住民自ら、自分たちの生活をハッピーな方向に決めて、実行することができる。
 近未来型の行政力というのはこういうことで、金を生もうとか、どこかから予算を取ってこようとか、宝くじが当たったではないですが、そういう時代はとっくの昔に終わっているということです。みんなが持っている自らの天才的な資質、みんな地域を良くしたいと思っている。この良心を強化して、それを生活の中で楽しく、安心で、安全で、と言う形に集約する。EMはそういうための大きな縁の下の力持ちになる、ということを認識いただければと思います。(会場拍手)

池本 どうもありがとうございました。ちょうど4時になったところですが、もしお許しいただけるならば、世界中でいろんな取り組みが行われているのですが、その事例を紹介させていただいてよろしいでしょうか。(会場拍手)

比嘉 いくつか紹介したいと思います。過去ごらんになっている方は復習のつもりで、お願いします。

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 これはニュージーランドのクライストチャーチです。田園都市ですから、あちこちの公園の管理残渣や庭の管理残渣がいっぱい出てきます。これを集めてチョッパーにかけます。


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 ここでEMを撒いて、トラックに載せます。


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 このように堆肥を作りますが、EMを200倍液くらいにしてスタビライザーで攪拌します。去年の1月18日の話ですが、私たちの自然農法の国際会議に、ニュージーランドの副首相がわざわざ来られた。うちは国の方針でEMをやっている。ニュージーランドは農業国だから、この国の生き延びるすべは、化学肥料農薬を使わないで、世界の人々の健康に責任を持てる農業にしたいと。これを実現できるのはEMなので、副首相で自分は忙しいとは言っても、国の重大事だから、わざわざ出てきたんだ、と言って挨拶し、またいろんな話し合いをしました。そして次の日の見学もした。

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 これですが、多いときは1日千トン作るそうです。少ないときでも500トンの堆肥を作っている。


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 こういうふうにすばらしい無農薬の有機農産物を作っている。このインゲンは半年くらいずっと採れ続けている。たまねぎも土がやわらかくて非常にスムーズにいくので、土寄せもしない。
 ここは収穫始まったところですが、ここは植え始めたところ。販売に合わせて、ローテーションを組んで無駄がないようにしている。


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 これは10アールあたり、10トン採ったというじゃがいも畑です。私が指導に入る前は3トンしか採れなかった。今は10トンも採って、種芋は自家採取です。EMでやっていますから、病気になりません。じゃがいもというのは、種芋がコストの50パーセントを占めますが、これはゼロです。小さくて売れ残ったものを、EM処理し、EMセラミックスでコーティングし保存して使うのです。これも10年以上の実績がある。


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 こういうすばらしい有機農業の産物を生産している。これを消費者からファックスで注文受けて、ダンボールに入れて、荷物を受け取る棚に置いておく。そうしたら消費者の皆さんはそれを引き取って、銀行にお金を振り込む。だからこの農家の人たちは自分で売りに行ったことはないのです。EMをやる前は生産も大変だし、販売も行ってやらなければならない、もうくたくただった。今はとても楽しくて、こんなにすごい農業をやったということは自分はこの上ないラッキーだ、と言っていました。


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 これはミャンマーのヤンゴンの郊外の有機肥料システムです。まず生ゴミを持ってきまして、EMを1週間に一回撒き、ひと月くらい放置します。


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 ひと月で分解しますから、機械で粉砕します。


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 こうして分けます。粗いのは畑に、細かいのは水田に使って、利用できない粗いものは埋め立て、また焼却、というふうになるのですが、この段階でもう一度EMを撒きます。


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 こういうふうに積み、一週間くらい置いて、


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 有機肥料にするわけです。これは化学肥料農薬を使わなくてもできますし、安いし、農家の人たちは喜んで全部引き取って、とうとうゴミが足りなくなった。今は昔のゴミ捨て場にEMを撒いて掘り起こして、振るいにかけてやっています。今ではベトナムなどもみんなこの方式に変わりました。


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 これはエジプトのゴミ処理場です。ここは環境省と農業省が合同でEMの工場を作って、月額300トン作っているそうですが、1日8千トンあまりのゴミが市から出てきて、そのうち6千トンを都市ゴミコンポストにする。まず持ってきたゴミにEMを撒きます。臭いが消えて、その中でリサイクルできるものとそうでないものを分別します。


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 そしてEMを撒いてやる。今まではハエもひどいし、臭いもひどいし、出来た有機肥料は悪い、農家の人は拒否して引き取ってくれませんでしたが、今はとてもうまくいくので、どんどんはけて、ヤンゴンみたいに足りないということはないですが、スムーズに動き始めた。


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 最後に振るいにかけて有機肥料とプラスチックを分けます。このプラスチックを小さく切って、もう一度堆肥の山に戻します。これが3回くらいまわるとプラスチックもみんなぼろぼろに分解して肥料になる。これでエジプト政府は、主要な都市はすべて、膨大なゴミを毎日6千トンくらいの堆肥にして、砂漠の緑化とかいろんな面に使い始めた。これは本当に困りはてていたし、それから日本のように法律でギツギツになっていない。だからいざとなったらできるわけです。


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 そしてこんなりっぱな有機肥料を作って、農家の人も喜び、都市の住民も大喜び、そして堆肥を作っている所も大変な状況から脱却して、今エジプトのカイロ市は観光推進都市として、宣伝し始めております。
 これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

池本 どうもありがとうございました。琉球大学農学部の比嘉照夫教授でございました。すばらしいご提案を頂戴しました。皆さまいかがでございましたでしょうか。この花ではありませんが、黄色のカラーメッセージ、幸せを希求すること、そしてピンク、幸せに至る至福、そして真中の赤、行動、行動が起これば手に入る幸せなのかな、と思います。
 どうぞ皆さんいろいろな問題もあるかもしれませんが、この花のように、それぞれの美しい花を幸せの花をさかされますことと心からお祈りいたします。どうもありがとうございました。



EM-EXPO 2003