EMフェスタ97 > 発表大会

ベラルーシにおけるEM利用の第1次評価と
チェルノブイリ災害の問題解決に
ついて

E.F.Konopiya ベラルーシ共和国
ベラルーシ科学アカデミー放射線生物学研究所所長

※事務局注 今回の『ベラルーシにおけるEMの第一次評価とチェルノブイリ災害の問題解決について』では、発表者の希望により大会報告書への写真およびデータの数値については掲載を見送らさせて頂きました。

 私が代表している研究所は1年半にわたり、比嘉教授とEMROと協力して研究を進めています。研究の全てに言及する時間はありませんので、本発表ではその中の3つの方向を焦点にして報告したいと思います。

A:農作物栽培におけるEM−1の適用の効果とEM−1のメカニズム。
B:畜産業におけるEM−1の適用と生体内のEM−1の作用
C:チェルノブイリ原発事故をはじめ、原発事故の被害処理にEM−1を利用する可能性


A:農作物栽培におけるEM−1の適用の効果とEM−1のメカニズム。

 今までに農業におけるEM−1の利用についてのデータはずいぶんとそろっています。これらのデータは、ここ1年半の間に、ベラルーシで集められたものです。今日は主なデータを発表したいと思いますが、もっとも重要な問題は、EM−1の作用のメカニズムをあきらかにすることであると思います。
 第一のテーマは植物の発芽力へのEM−1の影響です。これは生産性を向上する確定的要因です。この報告では、イネ科の代表としてえん麦と、マメ科の代表として大豆という二つの植物に注意をはらいたいと思います。
 実験のとき、3回EMを土壌に散布しました。それは、植え付け前と、植え付けの時と、植え付けの後です。えん麦の場合にも大豆の場合にも、植え付けの後にEMを入れた場合に、発芽力の増強に最大の効果が得られました。
 植物の生産性を決定する2番目の要因は根の状態です。EM-1の適用によって、レモンの接ぎ木を植えたときにその根茎が、増強しました。それと同時に若枝が多くなり、植物は大きくなります。
 生産性を決定する3番目の最も重要な要因は、植物の光合成器官の状態であり、とくにクロロフィルの合成量です。クロロフィルは太陽のエネルギーを吸収して、炭酸ガスを有機化合物に変える植物の緑色の色素ですが、EM-1の作用のもとでクロロフィルの合成は促進されています。えん麦も大豆も、EM-1使用により、クロロフィルは増加しています。
 4番目の点です。植物内では光合成プロセスの活性化と同時に形態形成のプロセスも活性化されています。これについては、タンパク質の合成の促進によるものと判断できます。EM-1の作用によるタンパク質の増加は、大豆よりもえん麦において顕著です。
 大豆の場合の結果は、この実験の場合だけのことであるかもしれません。というのは、第1に与えられた条件が最適のものでしたし、第2に普通はえん麦より大豆の方がタンパク質が大量に合成されますので、効果が小さくなることを考慮しなければなりません。
 5番目の点です。EM-1を土壌にまくために一番効果的な時期を明らかにするのは重要なことですが、もう一つの大事なことは適用の分量です。EMの最適な用量を発見するために、土壌に入れるEM-1の基本的な量を5通りの分量で研究してみました。
 結果は、少量のEM-1の適用が一番効果的でした。EM-1の用量をふやすことは、植物内のクロロフィルの増加に結びつきません。私の考えでは、異なる種類の土壌には、それぞれ異なる分量のEM-1を与えなければなりません。このような経験は、タイの会議の時にすでに報告されていました。
 もちろん植物内で酵素が活性化されなければ、こうしたプロセスは全て不可能になってしまいます。それで実験の次の段階では、私達はEM-1の影響を受けた植物の、酵素の状態に注目をはらいました。
 とりわけ、アデノシン三リン酸(ATP)は、植物内のエネルギーの主な貯蔵源であり、タンパク質の合成をはじめ、物質代謝のプロセスのために必要ですが、EM-1の適用により、このアデノシン三リン酸を分解するアデノシン三リン酸酵素が活性化されることが証明されました。そのさいにえん麦の場合も大豆の場合も、EM-1の適用は、少量が最適であると判明した。
 クロロフィラーゼという酵素は増えすぎたクロロフィルを分解しながら、中のクロロフィルの量を調整して、光合成のプロセスに参加しますが、この酵素の活性は低下の傾向を示しています。えん麦についても大豆についてもそうです。
 最後に述べるのは、植物内のペルオキシダーゼの活性に対するEM-1の作用についてです。この酵素は、第一に、植物の生体内で呼吸を行う細胞で、酸化過程を活性化します。第二には、植物内で合成される過酸化水素とその他の毒性の物質を崩壊させることによって、保護機能を確かのものにします。EM-1の適用は植物のペルオキシダーゼの活性を増強させます。
 従って、EM-1の適用は、植物の発芽力を向上させ、根を強くして成長を促進します。これは、植物の光合成プロセスの活性にも、植物の保護機能にも結びついています。
 結果として、植物の生産性が向上するだけでなく、その抵抗力も増強されます。

B:畜産業におけるEM-1の適用と生体内のEM-1の作用

 これから畜産分野でのEM-1の適用について話したいと思います。みなさんに養豚と養鶏でのEM-1の適用の効果を紹介したいと思います。
 子豚にボカシのかたちでEM-1を飼料に加えはじめました。EM-1適用後に、顕著な子豚の体重増加量という効果があげられました。しばらくすると、この指数が幾分か低下しましたが、平均よりは高いまま推移しました。
 養鶏ですが、EM-1を加えたボカシを与えたブロイラーの10日ごとの体重増加を計りました。生後数日のひよこにEM-1をエサに加えて与えはじめました。
 実験の始めでは、比較対照グループのひよこの方が体重が多かったのですが、約1ヶ月後、EM-1のひよこは対照グループと比べて体重の増加量は多くなり、与えはじめて2ヶ月ちかくにこの差は更に大きくなってきました。
強調したいのは、EM-1適用から1ヶ月以内にひよこの最大の体重増加量がみられることです。
 このようなEM-1の作用は生体に対してどんな影響をおよぼすでしょうか? 
 ここでは二つの結果をあげたいと思いますが、第一に、筋肉のタンパク質の量に対するEM-1の影響について、第二には、にわとりの成長が速くなった事を考慮して、生体内のCa/リンのバランスについて、触れたいと思います。
 Ca/リンのバランスは、骨組織の発達と成長をはじめいろいろな機能につながっています。ひよこの場合、EM-1の適用の結果として、筋肉の中のタンパク質の量が増加し、体重の増加をもたらします。
 肝臓内のタンパクは変わりません。脾臓のタンパク質は、幾分増加します。これは脾臓がEM-1に対して反応しやすい内臓であることを証明するものかもしれません。

 2番目の点ですが、ひよこの良好な成長を考慮すると、Ca/リンのバランスの状態を明らかにするのが、きわめて重要なことであると思います。EM-1の適用の結果、血せい内のCaの量に変化はなく、リンの量が増えてきました。

 にわとりの骨を分析すると、Caの減少と、リンの増加とが検出されました。これが骨組織内のCa/リンのアンバランスの原因となります。EM-1の作用で、骨の形成はとても早く進んでいますが、急速に成長しているひよこには、1日分の飼料を通じて供給されるCaでは足りません。ですから、えさにCa塩を加えると、すぐれた効果をあげることができると思います。
 これはブロイラーだけでなくて、卵用種のニワトリに関しても、重要と思われます。将来には、この問題にとりくむ計画があります。 このように、畜産業と養鶏業ににおけるEM-1の適用は生産性を向上させ、一連の物質代謝のプロセスに肯定的な影響を及ぼしています。個々の場合について飼料を最適化することによって、EM-1の適用が及ぼす肯定的な効果を強めることができると思います。

C:チェルノブイリ原発事故をはじめ、原発事故の被害処理にEM-1を利用する可能性

 チェルノブイリ原発事故が起こした被害を抑えるために、EMが役にたつかどうか、このことを解明するために研究を進めています。
 まず土壌から農作物への放射性核種の移行を防ぐ、つまり人間の内部被ばくをおさえるために、EM-1を土壌にまくこと。
 EM-1を土壌にまくことは、Cs(セシウム)137の植物への移行を促進します。
 そのさいに、小分量のEM−1を土壌に入れたときに、最大の効果があげられました。イネ科とマメ科植物の双方で、この法則性が見られます。
 強調したいのは、Cs(セシウム)137とSr(ストロンチウム)90は半減期の長い放射性核種であって、放射能の状況を規定するものだということです。
 Sr90に対するEM-1の作用については、逆の依存関係があきらかになりました。EM-1の適用は、原則として、Sr90の土壌から植物への移行を低下させます。このプロセスには様々な要素が影響を与えますので、EM-1の効果はハッキリしていませんし、さらにこのメカニズムの解明が必要です。

 EM-1の何がこうした効果につながっているのでしょうか?
 Csの大半が、今なお土壌の有機物質や無機物質と結合されているという事実は、よく知られています。EM-1を加えると、植物へ移行しやすい自由な形態のCsが増加し、結合形態にあるCsは減ってきます。
 このように、EM-1が放射能汚染された土壌にある核種におよぼす影響はさまざまです。核種は土壌から植物へ移行して、食物連鎖を通じて、人間の体に蓄積されて、内部被ばく線量を規定しますが、EM-1によってそのプロセスをコントロールできる可能性があります。
 
 揃ったデータにもとづいて、EM-1の作用と効果をまとめておきたいと思います。
 植物の成長のためには、多くの要素が必要です。大量のエネルギーが、空気から入る炭酸ガスと根を通じて入る有機物質や無機物質と共に、細胞の光合成器官の働きによって植物のために必要な物質に変わります。これらの物質とは、形成プロセス、エネルギー供給、抗酸化機能などを守るクロロフィル・アデノシン三リン酸、タンパク質、抗酸化システムなどであります。これらをクロロフィラーゼ、アデノシン三リン酸酵素、ベルオキシダーゼなどの酵素が管理します。
 核燃料工場や原発は、事故の時だけでなくて、正常な状態においても大気に放射性物質を放出して、植物内に住んでいる生化学的プロセスを妨げます。EM-1は逆にクロロフィルとタンパク質、酵素の合成を活性化して、植物の抗酸化保護を強化しますし、それによって障害要素に対する抵抗力を増強します。EM-1の効果は量と使用法によって違います。
 そのほか、EM-1は土壌のレベルに作用して、核種をふくめて、有機物質と無機物質の状態に影響を与えますが、このプロセスは、まだ究明されていません。
 これから研究しなければならないことが、たくさんあります。たとえば、動物と人間に対するEMの作用などは将来の研究課題になると思います。    【エフゲニー・コノプルヤ】
−1997.11.9
E.F.Konopiya
1962年国立ミンクス医科大学治療学部卒。1965年国立放射線医学研究所付属アカデミー大学院卒。1979年国立放射線医学研究所で教鞭を取る。現在、ベラルーシ科学アカデミー放射線生物学研究所所長として、チェルノブイリ原発事故後、放射線が環境と人間の遺伝子に与えた影響と、人々の健康の改善について研究している。