地震発生から一夜明けた12日、東北地方は幅広い地域で停電や断水が続き、鉄道の運行もストップした状態が続いた。道路や通信網も寸断され、自治体の職員からは「被害が把握できない」と悲鳴があがる。首都圏では私鉄や地下鉄、JRの在来線が動き始めたが、朝になって家路に就く人がホームにあふれる駅もあり、混乱が続いた。
■電力
東北電力によると12日午前10時現在、管内411万3460戸で停電中。青森、岩手、秋田、宮城県で全域停電、山形県のほぼ全域と福島県の一部で停電が続いている。内訳は青森79万3167戸▽岩手75万4437戸▽秋田53万2233戸▽宮城138万8379戸▽山形45万2357戸▽福島19万2806戸。
また、12日午前3時59分に発生した信越地方の地震の影響で新潟県内の1313戸が停電し、午前10時現在で81戸の停電が続いている。中部電力によると、同じ地震の影響で午前9時半現在、長野県内の約100戸も停電中。
東京電力によると、12日午前10時現在で管内99万7618戸が停電している。内訳は茨城64万2657戸▽栃木21万4817戸▽千葉13万4611戸▽神奈川5533戸。東京都と埼玉、山梨、静岡、群馬各県では復旧した。電力各社は「極めて厳しい受給状況が予測される」として節電を呼びかけている。13日以降、地域ごとに順番に停電させる「輪番停電」の可能性もあるとしている。
■ガス
仙台市ガス局によると12日午前11時半現在、同市と周辺2市3町の約36万2000戸でガス供給停止が続いている。同局の工場からガス供給を受ける塩釜ガス(宮城県塩釜市)も約1万2000戸への供給を止めている。東京ガスによると、午前11時半現在で茨城県日立地区の3万8戸への供給停止が続いている。いずれも復旧の見通しは立っていない。
また、京葉ガスによると、千葉県浦安市の埋め立てエリアで液状化現象が起きているとみられ、ガス管に水が浸入した。午前11時半現在で同市内の約5100戸への供給を止めている。
■水道
岩手県災害対策本部によると、沿岸の自治体を中心に水道管の破裂や破損が相次ぎ、断水が続いている。津波で給水施設が被害を受けた自治体もあるとみられ、対策本部の職員は「被害が大きすぎてまだ断水戸数は把握できない」と語った。
宮城県では午前10時半現在、塩釜市や多賀城市など16市町で全域が断水。福島県北部3市3町に水道を供給する福島地方水道用水供給企業団によると、福島市など管内9カ所で水道管の破損が確認され、全域への給水を停止しているという。
山形県や秋田県でも午前11時半現在、地震による停電の影響で給水が止まる施設があり、局地的に断水が発生している。青森県では青森市や太平洋沿岸の一部自治体で断水が発生した。
■電話
NTT東日本によると12日午前10時現在、加入電話約48万5000回線とISDN約7万9500回線が使用できなくなっており、11日夜と比べ固定電話で通話ができない地域が広がった。フレッツ光は一部が復旧したが約20万8600回線が使用できていない。通話規制は、12日未明に解除した。携帯電話は11日よりつながりにくい。午前10時現在NTTドコモ3961▽KDDI(au)約3800▽ソフトバンクモバイル2307▽イー・モバイル625--の基地局でサービスが止まっている。
■鉄道
東北新幹線では線路上で止まった4本の新幹線の乗客ら計約2600人が車中で一夜を明かした。東北、山形、秋田の各新幹線は12日も終日運休の予定。長野県で震度6強を記録する地震があった影響もあり、上越、長野の両新幹線も運転を見合わせているが、12日午後4時ごろ運転再開の予定。東北の在来線は12日中の運転再開の見込みが立っていない。
一方、東海道新幹線は始発から通常通り運行。首都圏の在来線も大部分が全線で運行を再開したが、いずれも運行本数は通常の3~5割程度になる見通し。午前11時50分現在、宇都宮線、高崎線、山手線外回りの運転を見合わせている。
関東・首都圏の私鉄・地下鉄も東京メトロや京成電鉄など多くの線で運転を再開しているが、ゆりかもめは全線で運休。
首都圏では朝になってから帰宅する人も多く、一部の都心の駅は早朝から多くの人でごった返した。
■高速道路
東日本高速道路会社によると、午前8時半現在、全面通行止めとなっているのは八戸、青森、釜石、秋田、日本海東北、東北中央、東北、磐越、常磐の各自動車道。山形自動車道も一部を除き通行止めとなっており、東北ではほぼ全ての区間で通行できない状態になっている。関東地方では東関東自動車道、東京外環道などで通行止め。関越自動車道などは全面開通したほか、首都高速も神奈川県や西東京を中心に徐々に通行止めを解除している。
■船舶被害
海上保安庁によると12日午前4時現在、津波のため船が座礁したり転覆・漂流している被害は東北地方から太平洋側の四国に拡大。北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、和歌山、徳島、高知の9道県で少なくとも計22隻が確認された。宮城県では気仙沼港で漂流物から出火、住民が屋根に乗ったまま家屋ごと漂流中。塩釜港沖では漁船の乗組員9人のうち4人が行方不明となり、出火している船舶もあるという。
■入試中止・延期
文部科学省は12~13日に後期日程試験などを実施予定だった国公私立大学のうち32校が、試験を中止すると発表した。中止を決めたのは青森県立保健大▽弘前大▽岩手大の岩手会場▽岩手県立大▽東北大▽宮城大▽宮城教育大▽山形大▽秋田県立大の仙台会場▽福島大▽福島県立医科大▽前橋工科大▽群馬大▽高崎経済大▽茨城大▽茨城県立医療大▽筑波大▽埼玉大▽埼玉県立大▽千葉大▽千葉経済大▽電気通信大▽東京海洋大▽一橋大▽東京外国語大▽東京農工大▽東京未来大▽明星大▽目白大▽横浜国立大▽淑徳大▽神奈川県立保健福祉大。
うち東京外国語大は16日、筑波大と東京海洋大は17日、電気通信大は19日に試験を延期。群馬大も時期未定で延期。前橋工科大と高崎経済大はセンター試験の得点で合否判定し、残りは延期かセンター試験のみで判定するか検討中という。
毎日新聞 2011年3月12日 東京夕刊