'11/3/28
「シャレオ」10周年 中高年も足向ける場に
広島市中区の紙屋町地下街シャレオが、4月11日に開業10周年を迎える。市内では初めて、中四国地方でも有数の地下街誕生に中枢都市の「顔」として熱い期待を抱いた市民も多かろう。
その歩みを振り返れば、予想以上に苦戦を強いられたと言えるのではないか。
現在78区画分ある店舗エリアのうち、5区画はシャッターが閉まったままだ。売り上げ不振に伴う店の入れ替わりも激しい。
1日当たり13万人前後の人が行き交うのに、買い物をする人は1割にも満たないとされる。
シャレオを運営する第三セクターの広島地下街開発は当初、テナントの年間売り上げ目標を120億円と設定していた。
だがこの10年、一度も達成されることはなかった。最高だった初年度が約78億6千万円。以来、下降線をたどり昨年度の売り上げは約52億6千万円にとどまった。
三セクの運営に赤信号がともった時期がある。筆頭株主の市や金融機関などの支援を受け、経営破綻だけは何とか回避できた。
不振の理由は、いくつか挙げられよう。
一つは、シャレオがオープンした後に続いた郊外型大型店の開業ラッシュである。中心部に繰り出す週末の買い物客減少につながったとされる。
もう一つが、客層を若い女性に絞った店舗構成や品ぞろえが裏目に出たとの指摘である。
地上の百貨店や本通り商店街との競合を避ける戦略は分からぬでもない。ただ同じように若い女性をターゲットにした大型店が近隣にできたこともあり「あてが外れた」印象はぬぐえない。
地下街は紙屋町交差点の横断歩道廃止に併せ、アジア大会開催に向けたアストラムラインの拠点駅整備や周辺開発の役割を担った。670億円の巨費が投じられた。
開業10年の節目を迎え、じり貧状態に歯止めをかける手だてはあるのだろうか。
シャレオの南北街路は地下であっても国道という位置付けで、さまざまな規制がある。それが4月から緩和され、柱などに広告を掲示できるようになる。厳しい運営が続く三セクにとっては新たな収入源になりそうだ。
もちろん三セクも手をこまねいていたわけではない。さまざまな世代が利用できるテナント誘致にも取り組んできた。おととしの夏に開店した大手コンビニ店は西日本有数の売り上げがあるという。
より幅広くアピールするには、中高年層も気軽に立ち寄れる地場の産品をそろえるテナントなどをもっと増やすべきではないか。
JR岡山駅前の地下街は衣料や雑貨、飲食、土産など約100店が年間110億円を売り上げるという。立地などの違いがあるとはいえ、参考になるはずだ。
シャレオ開発の旗振り役である国の姿勢も問われよう。広告解禁にとどまらず、路上販売やオープンカフェができるよう一層の規制緩和を進めてもらいたい。
【写真説明】再生の道筋が問われる地下街シャレオ