
北に堂島川、南に土佐堀川。水都・大阪を象徴する、水辺に恵まれた街、中之島。ビジネスだけでなく、数多くの人が訪れる魅力あふれる地だ。さわやかな川風が吹き抜ける街は今、建設が進む新ダイビルや中之島フェスティバルタワーをはじめ、大規模な再開発で注目を集める地でもある。2008年に京阪中之島線が開通し、アクセスがより多様になるなど、利便性も高まりつつある。

建設が進む「中之島フェスティバルタワー」。フェスティバルホールがあったビルの跡地、と聞けば、思い当たる人も多いはず

林立する高層ビル。中之島の表情を変えつつある
一方で、中之島といえば古くからの文化の中心地。歴史を刻んだ建築物が点在、高層ビルに埋もれることなく、中之島の風景に欠かせない存在感を示している。
新旧のコントラストの妙、それが中之島。文化の薫る街を歩いてみよう。

まずは大阪の大動脈、島のほぼ真ん中あたりを南北に横断する御堂筋を挟んで、石造りの重厚な建物がニラメッコ。東側に位置するのは、この島のみならず、大阪市の顔である市庁舎。1985年に完成した建物は、鉄筋コンクリート造りながら、石材を多用した風貌(ふうぼう)は、島内にある歴史的建築物に負けない重厚感を醸している。
すぐ東隣に、大阪府立中之島図書館の威厳あるたたずまいが控えているので、対比させてみると面白い。ギリシャ神殿をイメージさせるエントランスの列柱が印象的な建物は、04(明治37)年築。国の重要文化財に指定されている。
大阪市庁舎
大阪府立中之島図書館
大阪市中央公会堂
さらにその東隣にあるのが、大阪人なら知らぬ者はいない、島のシンボル、大阪市中央公会堂。赤煉瓦(れんが)も鮮やかな威風堂々たるデザインは、見ていて飽きない。カメラや絵が趣味の人たちの人気“モデル”だ。18(大正7)年築の重要文化財は、今も公会堂として現役。様々な文化発信の拠点となっている。館内にある、ノスタルジックなムードが漂うレストラン「中之島倶楽部」も人気スポットだ。

御堂筋を挟んで市庁舎(左)の正面には、これも重厚な日本銀行大阪支店旧館が

さて、この日銀大阪支店から西側はオフィス街。表情をガラリと変えるところが面白い。今、工事が進む朝日新聞大阪本社の新社屋となる「中之島フェスティバルタワー」をはじめ、超高層ビルの建設ラッシュ。再開発が進むにつれ、都心ならではの現代的な景観美が新たに生まれつつある。このごろはマンションも増え、“島民”も増加中。新たなにぎわいがプラスされて、活気づいている。

大阪市立科学館
国立国際美術館エントランス
文化の薫りも、こちらはモダン。たとえば、中之島で満天の“星空”を見上げることができる。宇宙とエネルギーがテーマの大阪市立科学館のプラネタリウムは世界最大級のドームに臨場感あふれる映像を映し出せる優れモノだ。
訪れたなら、科学館の隣に、金属製の竹細工のような巨大なモニュメントが目に入るはず。実はこれ、完全地下型の国立国際美術館のエントランス。国内外の現代美術を中心に収集・展示しており、中之島の文化発信拠点の一翼を担う。斬新なテーマの様々な展覧会も人気。こちらもぜひ、オススメだ。


大阪市立東洋陶磁美術館
美術館といえば、大阪市中央公会堂の東側にある大阪市立東洋陶磁美術館も見逃せない。韓国陶磁、中国陶磁を中心に、国宝2点、重要文化財13点を含む膨大なコレクションを擁する。堂島川沿いにたたずむ、落ち着いた建物は、喧噪(けんそう)を離れて静かに美を鑑賞できる隠れスポットだ。
二つの川に挟まれた中之島は、都心部にあって、水辺のある広々とした空間が楽しめる希有(けう)な場所ともいえる。島の東端にあるバラ園は、その最たるもの。約13,000m²の敷地に、300種以上のバラが折々に楽しませてくれる都心のオアシスだ。
時の流れが育み、今も成長を続ける文化の発信地であり、変化に富む景観が目を楽しませてくれる中之島。川沿いの遊歩道を散策するだけで、そのことに気がつくはず。一度、ゆっくりと歩いてみては――。
バラ園