Close-Up Enterprise
【第49回】 2011年3月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
週刊ダイヤモンド編集部

世界が震撼!原発ショック
悠長な初動が呼んだ危機的事態
国主導で進む東電解体への序章

previous page
2
nextpage

 冒頭の「全員撤退」という話が飛び込んできたのは、そのときである。政府側はあわてた。

 政府側が現地に連絡すると、吉田所長らが懸命に注水作業をしているところだった。そして、「水が入った」と言っているのに東電はいっこうに発表しない。

 「とにかく、本店と現地に温度差があった。そもそも予備電源が切れたときの想定がなくて驚愕した。最初から自衛隊でも警察でも使えと言っていたのに、本店はあまりにも悠長だった」と、政府関係者は言う。

 プラントメーカーの東芝首脳も唇をかむ。

 「最も原発を知っている技術者たち専門家集団は地震直後からスタンバイしていた。東電の本店の廊下にもいた。しかし部屋に入れてもらえなかった。東電とメーカー、官邸が仲間になれたのは地震発生の3日後だった。もっと早く手を打てたはずだ」

 それに対して、東電の武藤栄副社長は「全員撤退については言っていない。プラントや通信の状況が悪いなかで、ともかく人身の安全が重要だという判断で、プラントの保守や保安に必要な人間だけを現場に残し、それ以外の人を一時的に避難させた」と言う。初動についても「状況を見ながら適切に判断してきた。最大限の努力はした」と話す。

福島第1原発3号機では3月18日に自衛隊が放水を行った。使用済み核燃料プールの水位が下がり、放射性物質の拡散が心配されたからだが、現場判断が奏功したようだ
Photo:REUTERS/AFLO

 いずれにせよ、当初は東電内で事をすませようとしたことは間違いないようだ。政府は15日朝、東電と一体となって危機対応に当たるべく統合対策本部を設置した。

 事態を好転させたのも本店ではなく現地の英断だった。18日にはプラントの電源を復旧させるため、送電線から回路を引き下ろす作業が行われた。そのさなか、自衛隊によって3号機の原子炉内を冷やすための放水作業も続いた。

previous page
2
nextpage
上枠
下枠
ダイヤモンド・オンライン 関連記事

負けるな日本

  • 第一章 動き出した経済復興に向けた足取り
  • 第二章 企業、産業抜本再生の絵姿
  • 第三章 産業界の「イバラの道」

週刊ダイヤモンド
2011年4月2日号
定価690円(税込)

underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング
プレー曜日
プレー料金
円~
エリア

ゴルフ情報サイトOPEN
【ゴルフ情報サイトOPEN】
名門ゴルフ場でプレー 半蔵門ゴルフ倶楽部 名門の条件 東京ゴルフ倶楽部 他
「買い時!」ならば物件探しを
【「買い時!」ならば物件探しを】
新築・土地・中古の物件情報や、住まい探しのノウハウを公開中!
これが気になる!
【これが気になる!】
GWもお盆も正月も。年間いつでも新幹線が割引になるサービスがあった!

週刊ダイヤモンド1冊購読

話題の記事

週刊ダイヤモンド

特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約14冊分お得です。さらに3年購読なら最大45%OFF。

ハーバード・ビジネス・レビュー

詳しくはこちら

1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。

ZAi

詳しくはこちら

年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。

Keyword
Information

週刊ダイヤモンド編集部


Close-Up Enterprise

日々刻々、変化を続ける企業の経営環境。変化の中で各企業が模索する経営戦略とは何か?『週刊ダイヤモンド』編集部が徹底取材します。

「Close-Up Enterprise」

⇒バックナンバー一覧