[今回のどうして] 地震対策について
原子力発電所では、どのような地震対策が行われているのですか?
世界有数の地震大国として知られている日本では、原子力発電所の安全性を確保するために、設計から建設・運転の段階に至るまで、地震の影響を十分に考えた耐震設計を行うことが求められています。
原子力発電所の安全性を確保するためには、多重防護という考え方のもと、
「1.異常の発生を未然に防ぐ」、
「2.異常が起きても事故に拡大させない」、
「3.万一事故が起きても影響を少なくする」
という3段階の対策が必要とされており、これらに基づく地震対策を行うことになります。
徹底した調査
原子力発電所を建設する際には、その場所で大きな地震が起こる可能性はないか、最初に調べることが重要です。
そのため、敷地内や周辺の文献調査、ボーリング調査などの様々な地質調査のほか、地震の震源となる可能性のある活断層の有無や、過去に発生
した地震も調べる必要があります。
十分な耐震設計
地震が起こった場合でも、建物や機器に被害が生じないよう、耐震設計に十分な余裕を持たせることが必要です。
想定した最大の地震が発生した場合の建物や機器の複雑な揺れを解析し、重要な施設を設置する地盤が地震に対して十分な抵抗力があるか、周辺
斜面が崩壊して原子炉施設の安全機能に影響を与えることがないかなどを確認することになっています。
さらに、津波に対する発電所の安全性についても確認することが求められています。
強固な地盤への建設
重い建物を支えるための十分な支持性能があり、すべりや沈下等が生じない地盤に建設することになっています。
▲原子炉建屋基礎の鉄筋工事。地盤を掘り下げて、その上
に鉄筋を編目のように組んでコンクリートを流し込
み、地盤と建物との一体化を図る。
地震発生時の安全対策
一定以上の大きな揺れを感知すると、制御棒が自動的に挿入して原子炉を停止させる機能を設けるほか、事故に至っても周辺へ放射性物質が放
出されることがないよう、「止める」「冷やす」「閉じ込める」の基本的な機能を維持することになっています。
新潟県中越沖地震を踏まえた対策
平成19年7月に起きた新潟県中越沖地震で、柏崎刈羽原子力発電所では、設計の際に想定していた以上の地震動が観測されましたが、自動停止機能が働き、原子炉は無事停止しました。
しかしながら、地震で発生した変圧器の火災や、情報提供が不十分であったことなどから、周辺地域をはじめとする国民に大きな不安を与え
ることになりました。
このため、国、電力会社は、自衛消防体制や情報提供機能の強化等、防災対策の強化を図るとともに、平成18年9月に改訂された原子力発電所等の耐震設計審査指針を踏まえた耐震安全性評価については、新潟県中越沖地震で得られた知見も取り入れ、実施することとしています。
▲福島第一原子力発電所の化学消防車。事業者自らの自衛消防体制の強化が図られている。