「最近なかなうちの真美が言うこと聞かなくて・・・」
真美の母親である雅は洋子にこうもらした。
裕樹と真美が仲良くになるにつれその母親同士も互いの家を行き来するようになっていた。
今日もいつものように雅の家で色々話をしていたがそのうち話題は自分たちの子育てのことへと変わった。
「え〜そうなの?そんなことないと思うけどな〜。」
「もう全然だめよ。言うことはちっとも聞かないし。注意しても口答えするのよ。」
雅は驚いたそぶりを見せている洋子に対してこう返した。
「そんなにひどいの?うちの裕樹もたまに口答えするけどその度にお仕置きよ。」
「洋子のとこは悪いことしたらお尻叩いてるのよね〜?」
「うちはすごいわよ〜。もうこうやってビシビシ叩いてる。」
洋子はいつも裕樹を叩くそのしぐさをしながら冗談交じりに言った。
そのしぐさを見ると雅は少し考え込んだ後つぶやいた。
「私も叩かなきゃだめかな〜」
「え?」
今まで自分の子を叩かずにしつけてきた雅の思いがけない言葉に洋子は少し驚いたがすぐにこう答えた。
「そうね〜。それだけひどいとちょっと考えたほうがいいかもしれない。今のうちに手を打たないと手遅れになるかもしれないしね。」
「よし、じゃあ今度からそうしようかな。心を鬼にして。でもなぁ〜」
「やるからには厳しくやらなきゃ効果ないわよ。かわいそうだけどね。」
「そうよね。」
そしてその日から雅の真美への教育の方針は変わっていった。
真美が帰ってくると雅は早速真美の部屋へ行った。
「真美ちゃん。お部屋がまた散らかってるわよ。いつも言ってるわよね?ちゃんと片付けなさいって。」
「うん。じゃあ明日片付ける。」
「明日じゃなくて今すぐやりなさい。」
「え〜。でも今日は今から出かけるから明日にする。」
「どうしてママの言うこと聞けないの?」
「も〜、いいじゃない明日で。」
真美はまったく言われたとおりにしようとしない。予想通りの反応をした真美に対して雅は言った。
「最近真美ちゃん全然ママの言うこと聞かないわね。」
「え〜。そんなことないよ。」
雅が少し厳しい表情で言うと真美はうつむきながら答えた。
「今までは大目に見てきたけどもうこれ以上は許さないわよ。だからママ決めたの。もし今度真美ちゃんが言うこと聞かなかったりしたらお仕置きするからね。」
いつもと雰囲気の違う雅の口から出た思いも寄らない一言に真美の表情はこわばった。
「え?いやよそんなの。」
「もうそうするって決めたの。じゃあ今からお部屋を片付けなさい。いいわね?」
「・・・」
真美は半分呆然としている。
「返事は?早速叩かれたいの?」
「・・・はい。」
この日から真美はちゃんと雅の言うことを聞くようになった。そんな真美を見て雅はほっとした。やはり自分の娘のお尻を叩くということはなるべくしたくなかったからだ。しかしそれもつかの間、やはり人間簡単には変われず、その数日後
「真美ちゃん、宿題はもうやったの?」
リビングでテレビを見ている真美に雅が言った。
「まだ〜。テレビ見終わってからやる〜。」
「テレビは宿題終わってからっていう約束だったでしょ。テレビは後にしなさい。」
この一言を聞くと次の瞬間雅はリモコンでテレビの電源を消して、真美のほうへ向かっていった。
「ちょっとママ何するのよ〜」
真美は雅を怒らせてしまったことにはまったく気づいておらずただテレビを消されたことに腹を立てていた。
「うるさいですって?誰に向かって言ってるの?」
雅の厳しい表情から真美はすべてを察した。そしてついとっさに出てしまった一言を悔やんだ。
「ごめんなさい・・・」
ばつが悪そうに謝る真美を見ると雅は遂にこういう時が来てしまったことを悲しまずにはいられなかった。
「そこに座りなさい。」
雅は自分と目を合わせずうつむく真美を正座させた。
「こないだ言ったわよね。ちゃんと言うこと聞きなさいって。」
「はい・・・」
「じゃあ分かってるわね。お仕置きするからお尻だしなさい。」
「おねがい、もう言うこと聞くから・・・」
雅は真美を力づくで自分の膝の上に乗せた。
「ママ、おねがい、お仕置きはいや。」
膝の上に乗せられた真美を雅は見下ろした。今まで一度も叩かずにここまで育ててきた自分の子を遂に叩く時が来てしまった。自分の言うことを聞かずさらには母親に対して口答えまでする娘をしつけなおす決心はできていた。しかし自分の膝の上で必死に許しを請う真美の顔を見ると雅はその決心がにぶりそうになった。
真美は口答えをしたことをとても悔やんでいる。ついとっさに言って見れば不可抗力みたいなもので出てしまった一言ではないだろうか?だったら今回は見逃してあげようか。もうこれに懲りてこんなことは言わないだろう。こんなことを雅は考えていたが一方雅の中では次のようなことも考えていた。確かにさっきのは不可抗力のはず。しかし口答えをしたことには変わりない。ついとは言え口答えをしてしまう娘をこのままにしておいてはいけない。思いは決まった。
「あなたのためなの・・・」
そう言うと手を振り上げた。
バシーン!バチーン!
雅は愛する娘をゆっくりと叩き始めた。
「ママ痛いよ。許して。」
「ママ、ごめんなさい。」
雅はそんな真美の声を聞いてもそれに流されることなく手を緩めずゆっくりと真美のお尻を叩き続けた。
10回、20回。雅は無言で叩き続けた。このお尻たたきは今まで母親をなめきっていた子に今までの態度を改めさせるには十分な効果があった。お尻を叩く音と真美の泣き声が交互に響く。真美は雅の膝の上で泣いておりそのお尻は真っ赤だった。そんな真美を見ると雅はもう十分と思ったのか叩く手を休めることにした。
「真美、これからはもうちゃんとママの言うこと聞ける?」
「はい。」
「もう、ママに口答えなんかしない?」
「しません。」
真美は涙声で答えた。
「そう、じゃあもうお仕置きは終わり。でももしまたこんなことがあったらお尻を叩くからね。いい?」
「はい。」
雅は真美を膝の上から下ろして抱きしめた。
雅は真美に十分なフォローをしたがそれでもやはりお尻たたきが相当痛かったのかそれとも初めて雅に叩かれたのがショックだったのか真美はうつむきながら元気なく自分の部屋へと戻って行った。
雅はテレビをつけてみた。真美が見ていた番組がまだやっている。それからしばらくして洋子の家に電話をかけてみた。裕樹に今真美が見ていた番組をビデオに取っているか聞いてみようと思ったからだ。なかなか電話に出てこない。もう切ろうかと思った時にやっと電話がつながった。
「もしもし洋子?」
「あ、雅?ごめん、いまちょっと立て込んでるからまた後でかけなおすね。」
洋子はいつもより声のトーンが低かった。
「裕樹くんいる?」
「裕樹に用事なの?でもごめん。裕樹も今ちょっと・・・」
「そうなの?じゃあまた後でね。」
それから十分後洋子から電話がかかってきた。
「雅?ごめんまだ裕樹ちょっと手が離せないみたいなの。何だった?」
「そうなの?じゃあ裕樹くんに伝えてくれるかな。さっきまでテレビでやっていた番組ビデオでとってたら貸してほしいって。」
「ごめん、うちはとってないわよ。」
「そっか・・・ありがとう。」
雅は残念そうに言った。
「雅。なんかあった?大丈夫?」
雅の様子がいつもと違うことと裕樹への用件の内容から洋子は大体の事情を察した。なぜなら洋子自身も同じことを真美に頼もうとしていたからだ。
「うん、大丈夫。ありがとう。それじゃあ。」
結局その日の夜、ビデオで裕樹と真美はそれぞれ途中までしか見れなかった番組の続きを見た。
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