発生翌日の福島第一原発の視察(12日)、早朝、東京電力への怒鳴り込み(15日)、自民党総裁・谷垣禎一への突然の入閣打診(19日)-。いずれも、首相としての適格性を問われることだ。視察には東電との関係でやむを得ない事情もあるのだが、東電怒鳴り込み事件と、入閣打診には開いた口がふさがらない。
時の首相が民間企業に乗り込み、「(社員の)撤退などあり得ない。覚悟を決めてください。撤退した時には、東電は百パーセントつぶれます」と怒鳴ることなどかつてなかったことだ。しかも3時間も東電に滞在した。
もちろん、計画停電、原発事故への対応、情報隠しなど、東電には腹が立つ。だからといって、首相が午前5時半に乗り込んで怒声を浴びせることはあるまい。経済産業省の副大臣か政務官に命じてやらせればいいことだ。
ついでに記すなら、首相の発言は会議室のドアで“壁耳”していた時事通信と共同通信の記者が漏れてくる首相の声を聞き取ったことだ。菅はマイクを使って話していたので、会議室の外に声が漏れた。
この首相の言動について、自民党の首相経験者はこう言った。
「菅さんの発言は狂気の沙汰だ。あれでは東電の社員が萎縮してしまう。首相ならば、『最終的な責任はわたしにある。この危機を乗り切るのは皆さんにしかできない。全力を尽くしてほしい』と言うべきだ。これだったら、鳩山由紀夫前首相の方が良かった…」
「谷垣入閣」は岡田幹事長しか知らなかった
東電事件から4日後、菅は谷垣に携帯電話で入閣を打診した。このことを民主党の代表代行・仙谷も、参院議員会長・輿石東も知らなかった。知っていたのは幹事長・岡田克也だけだった。
「猫の子をもらうわけではあるまいに…」
輿石はこう言って絶句した。谷垣が断ったことによって、とりあえずこの構想はつぶれたが、世論の批判はなぜ協力しないのか、と自民党にも矛先が向いた。そのために、自民党内には「本気でもないくせに誘いをかけて断らせ、我々をはめた」(幹部)と、菅に対する恨みつらみがますます募った。
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