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[26390] 【ネタ】まどか☆マギカ・ゼロ【まどか×ウルトラマンゼロ まどか魔改造】
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/17 20:33








 ――扉を開いた先は、崩壊した世界だった。





 まるでお伽話に出てくる世界の終末のように、破壊されたビルが、橋が空へと浮かんでいる。




 ――そして、光を纏った巨大な“魔女”が、舞い踊るかのように佇む。




~アキラメロ~

~オマエニウンメイハカエラレナイ~





 ――そんな言葉を振り払うように、小さな影が“魔女”へと飛び掛っていく。


 しかし、“魔女”は空に浮かぶ建物の残骸を操ると、それを小さな影へと放つ。

 小さな影は“時を止めたかのような動き”でそれを避けていくが、今度は禍々しい光が小さな影へと襲いかかる。








 ――圧倒的、まさにその言葉がふさわしい。それ程までに、“魔女”と小さな影の力の差は明白だった。



「……酷い……」

「仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた……でも、彼女も覚悟の上だろう」


 ――そんな“魔女”と小さな影の戦いを、見つめる“少女”が居た。

 “少女”が漏らした言葉に、傍らに居た白い影がそう答える。白い影の声には感情がうかがい知れず、何を考えているかが分からない。



「そんな……あんまりだよっ!!こんなのってないよっ!!」



 “魔女”の猛攻を受け止めきれず、吹き飛ばされた小さな影を眺めながら、“少女”は叫ぶ。


 その時――小さな影と、“少女”の視線が交わる。すると、小さな声は絶望に包まれた声をあげる。
















諦めるんじゃねぇっ!!

















 その時、少女の耳に声が響く。そして、闇に包まれた世界に――まばゆい光が差し込む。





 




 ――そして、光に包まれながら現れたのは……赤と青の身体に銀色のプロテクターを纏った“巨人”だった。


 “巨人”はゆっくりと“少女”に向けて右手を差しのべると、その掌に抱いていた小さな影を優しく下ろすと、“少女”と視線を交わす。






避けようのない滅びも、嘆きも、全て覆すことができる――その為の力が、俺達にはあるっ!!

「本当なの……?私なんかでも、本当に何かできるの?こんな結末を、変えられるのっ!?」

当たり前だ……だから、俺に力を貸してくれっ!!





















まどかっ!!







++++++++

























「……ふみゅ……?」













 目覚めれば、そこは自分のベッドの上だった。


 抱き枕にしていた桃色の人形を抱えたまま、“少女”はゆっくりと体を起こす。




「ふぅわぁぁ……夢オチ……?」









 

 まだ、自分にふりかかる運命を知らないまま、“少女”――鹿目まどかは、人形を抱きしめつつのんきな声をあげていた。





++++++++





それから、鹿目まどかは運命の歯車に巻き込まれることとなる。


謎の転校生、暁美ほむら。“魔女”と呼ばれる存在に、“魔法少女”である巴マミと、その友達という“キュゥべえ”。









――そして、今日。鹿目まどかは、新たな“運命”と出会う










ば、馬鹿……こんなことやってる場合じゃ……今度の魔女は、これまでとは訳が違う……っ!!

「ティロ・フィナーレッ!!」





 唐突に、本当に唐突にだが……まどかは先ほどのやりとり――憧れの存在である巴マミによって、動きを制限された暁美ほむらの言葉を思い出した。


 目の前では、マミが敵である魔女に向かって、必殺の一撃を放ったところである。巨大な砲塔から放たれた弾丸は、小さな人形のような姿をした魔女の腹部をいともたやすく貫いた。


(なんだろう……なんだか、嫌な予感がする……っ!!)

「マミさんっ!!」

「ま、まどかっ!?」


 親友の美樹さやかの制止を振り切り、まどかはマミの元へと走りだす。







 ――それと同時に、魔女に変化が起きる。

 魔女の外観が突如膨れ上がると、黒い蛇のような身体を持つファンシーな顔の怪物が現れ――マミへと一気に接近し、その口を開いた。

 マミは、あっけにとられた表情で怪物を眺めており、動こうとも――いや、一連の流れが急すぎて動けなかったというのが正しいか――ともかく、怪物の動きを見ていることしかできなかった。







「マミさんっ!!」

(お願い……誰か……)







本当に……これから、私と一緒に戦ってくれるの?傍にいて……くれるの?

はい……私なんかでよければ。

参ったな……まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのにな……やっぱり私、駄目な子だ。




 まどかの脳裏に、先程のやりとりが思い浮かぶ。そして、心の中で強い想いが生まれる。




(私に……マミさんを助ける力をっ!!)














 そして、まどかの体は……淡い金色の光に包まれた。




++++++++




「……え?」




 ――美樹さやかには、目の前で起きた事態が理解できなかった。

 
 突然まどかが走りだしたこと。

 魔女の中から怪物が現れて、マミに襲いかかったこと。

 そして……まどかが光に包まれたかと思うと、轟音と共に怪物が突然吹き飛ばされたこと。


 


「……キュウべえ……あれは、いったい……どういうことっ!!いつの間に、まどかと契約していたのよっ!?」



 さやかはマミの方を指さしながら、傍らにいたキュゥべえに質問を投げかける。






 ――そう、怪物を吹き飛ばしたのはまどかなのだ。しかも、光に包まれた後のまどかは……変わっていた。


 赤と青を基調としたドレスに、胸部を包み込む銀色のプロテクターと、中央に輝く水色のクリスタル。

 頭部には水色の宝石をあしらったティアラと、ツインテールの根本に後方へと伸びた飾りが備えられている。

 それは、さやかの認識からすれば……“魔法少女”と呼ぶにふさわしい姿だった。












「違うよさやか。僕はまだ、まどかとは契約していない……だから、まどかは魔法少女になれるはずがないんだ。」

「……え?」






 ――だが、キュゥべえから返ってきたのは、否定の言葉だった。



「それに、あれは魔法少女とは違う“力”を感じる……あれがなんなのかは、僕にも皆目検討がつかない」

「じゃあ、まどかはいったい……」




 そんなこと話している合間にも、状況は動き始めていた。


 まどかがいつの間にか両手に構えていた銀色に輝くブーメランを投げつけ怪物をひるませると、マミがマスケット銃を展開し砲火を怪物へと浴びせていく。

 だが、怪物が倒れる気配はない。それどころか、ダメージを与えるたびにまるで蛇が脱皮するかのように新たな怪物が現れる。



「……あぁもうっ!!どうなってるのよいったいっ!?」

「ダメージを与えるたびに再生されちゃあ、2人が先に力尽きるのが先だね。」

「じゃあ、どうすれば……」







 その時、爆発音が響く。さやかとキュゥべえがその方向に振り向くと、そこには魔法少女の姿になったほむらが立っていた。



「あんた、どうしてっ!?」

「……本体は倒したわ。これで、あの魔女を倒すことができる。」




 その言葉を聞いていたのか、まどかは両手に構えていたブーメランを重ねると、身の丈ほどもある三日月状の剣へと変化させる。

 そして、まどかは宙に舞い上がるとその剣を怪物へ向かって振り下ろした。








++++++++






「……あれは、いったいなに?」



 魔女との戦いが終わり、マミ達に気づかれる前にその場を去ったほむらは、自宅へと向かう中1人考え込んでいた。

 彼女の記憶では、巴マミはあの場で死ぬはずだったし、鹿目まどかが“魔法少女”以外の力を手にすることなどありえないのだから




 「……けれど、これはチャンス。あいつの思い通りには……」


















「その話、あたしも混ぜてもらっていいか?」









 ――その時、ほむらの前に1人の人物が現れる。その姿を見たほむらの顔は、普段の無表情からは想像できない程驚愕に包まれた。



「あんた、そんな顔もできるんだ……まぁとにかく……食うかい?」

「……どうして……あなたがここに……」























「佐倉……杏子……!!」













(つづくか?)


あとがき

……まどかマギカ9話を視聴し、どうしようもない気持ちになった&円谷がまさかのまどかネタを使ったので書いてみました。まだまどかが終わってないのであれですが、妄想だけは止まらないぜっ!!(いろいろツッコミどころはありますけど気にしないでください。)

願わくば、魔法少女達にハッピーエンドを……



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第2話「あなたのことはなんて呼べばいいの?」
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/08 18:21




……ここは……どこ……?





 ――無限に広がる、空色の光に包まれた空間。その中に、まどかは居た。ただ、光に包まれているだけの世界……だが、まどかは不思議と恐怖を感じていなかった。

 それは、空色の光に……あたたかさを感じていたからだろうか?





……え……?




 そんなまどかの前に、金色の光が集まりだし……やがてそれは、夢で見た巨人の姿になった。優しさを見せる山吹色の瞳に、まどかは笑みを浮かべ……言葉を紡いだ。







……ありがとう……あなたが、助けてくれたんだね……







 ――まどかの感謝の言葉に、巨人は何も答えない。巨人はただ、まどかのことを見つめているだけだった。



――          ――

……?……ごめんなさい……うまく聞き取れないの……でも、あなたが私を心配してくれているのは分かるよ……


 


 ……正確には、巨人はまどかに何かを伝えようとしていた。ただ、それがまどかには“感情”という形でしか伝わらないだけで。

 しかし……“感情”が伝わるからこそ、まどかは巨人に怯えることはなかった。











私に……マミさんを助ける力をっ!!







 目の前に居る巨人が、あの時力を貸してくれたという事実が……まどかにはなによりも嬉しかったのだから。







……っ!?待って……行かないでっ!!







 ――その時、巨人の身体が徐々に薄れ始めていく。巨人が消えるかもしれないと思ったまどかは、必死に手を伸ばそうとする。



――          ――

……え?……じゃあ、また会えるんだね……

――          ――

……っ!?もう、からかわないでよっ!!……




 ……だが、次に巨人から伝わってきた“感情”はまどかを安心させるものだった。

 その“感情”に触れたまどかは思わず泣き出しそうになってしまうが、巨人のからかうような“感情”に少しだけ照れを見せる。







――          ――

……うん、それじゃあまた……あ、ちょっと待って。これから、あなたのことはなんて呼べばいいの?……



 巨人が別れの“感情”を伝えると、まどかは巨人の名前を尋ねた。

 その問いかけに、巨人は悩むような“感情”を見せたが……巨人が右手を胸に当てると、まどかの前に小さな光の球が現れて文字のような軌跡を描く。





……これが、あなたの名前なんだね……ありがとう……






 そして、再び感謝の気持ちをまどかが伝えたところで……まどかの意識は、覚醒した。




++++++++




「あ、気がついたっ!!」

「もう、いきなり倒れるから心配したのよ?」



 まどかが目を覚ますと、視界には満面の笑みを浮かべるさやかと、呆れつつも安心した表情を見せるマミの顔だった。


「あ、あはは……ごめんなさい。心配をかけちゃって……」


 どうやら、戦闘が終わった後まどかは気絶してしまっていたらしい。頬を掻きながら、まどかは照れ笑いを浮かべる。


「……どうやら、異常はないようね。紅茶を淹れてあるから、体をあたためるといいわ。」

「あ、ありがとうございます……やっぱり、マミさんの淹れるお茶はおいしいですね。」


 マミから受け取った紅茶に口をつけ、まどかはしみじみとそんな感想を述べる。

 ……“彼”が貸してくれた力のおかげで、掴み取れた未来。それが、まどかにはとてつもなく……大切なものに感じた。


「なんにせよ、君が無事でよかったよ。ところでまどか、あの力はなんなのかな?」

「……ってキュゥべえ、まどかも目が覚めたばっかりなんだからその話は……」

「大丈夫だよさやかちゃん。あの力を貸してくれた人には、ちゃんと……って訳でもないけど、夢の中でお話できたから。」

「……夢の、中で?どういうことかしら。」


 すると、床でくつろいでいたキュゥべえがまどかに質問を投げかける。さやかがキュゥべえを諌めようとするが、まどかは笑ってそれを止めた。


「なんというか、うまく伝えられないんですけど……私の中に居るんです、力を貸してくれた人が。」

「……あなたの、中に……?」

「まどか、それ大丈夫なの?なんか、危なく聞こえるんだけど。」

「うん。なんというか、あったかい感じで……あ、名前はちゃんと聞いたよ?」















「……ウルトラマン、ゼロ。それが、私に力を貸してくれた人の名前。」





++++++++













「……それで、どうしてあなたが?今の時点であなたが私のことを知っているはずがないのだけれど

「それがさぁ、あたしもよく分かんねぇんだよな……あいつと一緒にいてやるつもりが、気がついたらこんな有様さ。タイムマシンにでも乗った気分だよ。」

「っ!!じゃあ、あなたは……」





 ……ほむらの部屋で、そんな会話が続いていく。それが何を意味しているのかは今はほむらしか分からない






「とりあえずマミに気付かれないように動いていたけどさぁ……あんたが来たんならちょうどいい。今のあたしには、もう1人頼りになる仲間が居る。だから……」




 そう言いながら、佐倉杏子はポケットからお菓子の箱を取り出し、それをほむらへと差し出した。








「もう一度、同盟を組む気はないかい?今度こそ、あたし達でワルプルギスの夜を倒し……キュゥべえの奴を倒す為に。」






++++++++










「……参ったな……まさか、まどかの口からウルトラマンの名前が出るとは思わなかったよ。」


 静寂が街を包み、月明かりが街を照らす頃、キュゥべえは作業用クレーンの上で月を見上げながらそう呟いていた。


「まぁ、僕の知る“彼”とは違うんだろうけど……ウルトラマンである以上、魔女と魔法少女の関係に気づかれたら邪魔をしてくるだろうね……」


 その言葉に、感情は秘められていない。しかし、キュゥべえが『ウルトラマン』という存在を危険視していることだけは確かだった。


「……僕達は、この宇宙のためになることをしているのにさ。」

「デラシオンのようにむやみやたらに消滅させるよりは、はるかに僕達の方が生命の魂を有効利用しているじゃないか。」

「なのに、どうして君は僕達を否定するんだい?本当に理解出来ないよ……」






 月を見上げながら、キュゥべえは言葉を紡ぐ。それは、いったい誰に向けられた言葉なのだろうか……







(つづくか?)





あとがき

士泉さんのまどか☆マッスルに触発されて続けてみた。短いのはご愛嬌。

ほむほむマジほむほむ

杏子可愛いよ杏子



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第3話「あんた、マジで何者だい?」
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/10 13:03

~数週間前~







「だあああぁぁぁぁっっっっ!!」


 裂帛の気合の共に放たれた一撃が、魔女の体を貫く。胸部に巨大な穴が空いた魔女はもがき苦しむような動きを見せた後、爆発に飲み込まれる。


「……悪いな。あたしはまだ、死ねないんだ……」


 槍を肩に担ぎ、地面に転がっていた黒い物体――グリーフシードを拾いながら、佐倉杏子は祈るようにそう呟く。



 ――それは、全てを知ってしまったがゆえの祈り。定められてしまった運命を変えるための決意。



「……そうだ、さやかを……あのまどかって奴もきっと助けて見せ……」










「妙な気配を感じて来てみれば……どうやら、厄介な状況になっているようだな。」



 ――その時、杏子しか居ないはずの場所に声が響く。驚いた杏子が声の方向へ振り向くと……そこには、漆黒の衣服を纏った女性が立っていた。



「……あんた……何者だ……?」


 だが、杏子は肩に担いでいた槍を女性へと向け、警戒を強める。今まで魔法少女として戦ってきていた勘が……目の前の女性が『強者』だと告げていた。


「……少女よ、君には聞きたいことがある……君の体はなぜ魂と肉体が分かれているのだ?普通の生命体では、そのようなことにはならないだろう?

「っ!?……どうして……」

「……似たようなやり口を見たことがあるからな……となると、がこの惑星に居る可能性は高いか……」


 そう呟きつつ、女性はゆっくりと杏子へと近づき……その肩に手を優しくおいた。すると、杏子の体が淡い光に包まれる。


「なっ、なんだよこれ……」

「驚かなくていい。君の魂を蝕んでいる“穢れ”を取り除いているだけだ。専門ではないから気休めにしかならないが……やらないよりはマシだろう。」

「……あんた、マジで何者だい?」















「……ジュリ。この姿では、ジュリと名乗っている。」








 ――それが、魔法少女と“正義の名を持つ巨人”の出会いだった。



++++++++





 ――月明かりが窓から差し込む頃。病室のベッドの上で、上條恭介は音楽を聞きながら夜空を見上げていた。


 ヘッドホンから漏れる音楽は、幼なじみであるさやかが見舞いに来てくれたときに持ってきてくれたものだ。

 しかし、素晴らしい演奏を聞いていても……恭介の心が晴れることはない。動かない左手に視線をやりながら、恭介はただ涙を流していた。











「……?……看護師さ……………………え……?」


 すると、小さな物音が聞こえ病室のドアが開く。恭介は涙を右手で拭うと、ドアの方へと顔を向けるが……そこに居たのは、看護師ではなかった。



 そこに立っていたのは…………


















「……さや……か……?」






 青のドレスに身を包み、白いマントをたなびかせ――優しい笑みを浮かべているさやかだった。





++++++++







「おっはよ~!!」

「おはようございます、さやかさん。」

「珍しいね、さやかちゃんが遅れるなんて。」

「いや~、今日はなぜか目覚ましが止まっちゃってて……」





 ――まどかが“戦う力”を手にしてから数日後。まどか達は、いつも通りの朝を迎えていた。



【おはよう、2人共。】

【あ、キュゥべえ!!】

【おはよう。】


 まどか達が雑談を交わしながら歩いていると、枝の上に居たキュゥべえがまどかの肩へと降りてくる。

 ここ数日、キュゥべえはまどか達とは別行動をとっており、通学路の途中で合流するのが日課となっていた。


「そういえばさやかちゃん、昨日も上條君のお見舞いに行ったんだよね……どうだった?」

「収穫な~しっ!!ここ最近、あたしがお見舞いに行く時に限ってリハビリや診察が入ってんだよね……タイミングが悪いというか……」

「まぁ……それは残念ですね。」

【それでまどか、あんたは大丈夫?】

【うんっ!!ゼロとも少しずつ会話できるようになってきたし、マミさんも助けてくれるし……】

【……そっか。】

【けれど、無理は禁物だよまどか。まどかの持つ力は魔法少女とは別のものなんだ……いつ、何が起こるか分からないから、気を抜かないようにね。】


 友人である仁美との会話をしながら、念話によって魔法少女としての話も続ける。これもまた、まどかとさやかにとっては日常となりつつある光景だった。



「……あら?」

「ん、どうかした仁…………え?」




 その時、仁美が何かに気づき足を止める。まどかとさやかも釣られて足を止めて、仁美の視線の先へと顔を向けるが……そこには、驚く光景が広がっていた。






「上條、大丈夫なのかよ?」

「うん、なんとかね。」






 ……そこには、松葉杖を使いながらも、友人と会話しながら歩いている恭介の姿があった。


「上條君、退院なさったのですね……」

「でも、どうしてさやかちゃんが知らな……あ、さやかちゃんっ!?」


 2人が思い思いの感想を述べる中、さやかは恭介の元へと走りだす。



「恭介ぇぇぇぇっっっっ!!」

「あ、さや……うわぁっ!?」

「っておわっ!?おい美樹、上條はまだ病み上がりだぞっ!!」


 勢い余って恭介に飛びつく形となってしまったさやかを、隣に居た友人が恭介ごと支える。その光景を見て、まどかと仁美は顔を見合わせると笑みを浮かべ、さやか達の元へと駆け寄るのだった。




++++++++



「……それで、幼なじみかつお見舞いにも来たあたしに一言もなく退院してるってどういうことかなぁっ!?」

「ごめんごめん。さやかを驚かせたかったから、病院にも頼んで内緒にしてもらっていたんだ。」

「さやかちゃん、落ち着いて……」


 ――学校へ着くと、さやかは真っ先に恭介に詰め寄っていた。

 さやかからしてみれば、恭介が退院していることは喜びこそすれ怒る理由などないのだが、まったく知らされてなかったというのが少ししゃくにさわったのだろう……笑顔を浮かべつつも、さやかの額には青筋が浮かんでいた。


「では、さやかさんがお見舞いに行った時に上條君が居なかったというのは……」

「病院側も急な回復で驚いていたからね、検査とかもいつも以上に多くなってたんだ。」

「……急な、回復?」

「うん……今までまったく動く気配のなかった左手が、ある日を境に動くようになったんだ。お医者様も、奇跡だって言うくらい。」

「……え?じゃあ、恭介……」

「まだ、リハビリは続けないといけないけどね……バイオリンも、前みたいに弾けるようになったんだ。」

「…………恭介、よかったね。」

「うん。多分……さやかのおかげだよ、ありがとう。」


 心の底からうれしさを見せる恭介に、さやかもまた嬉しそうな表情を見せる。そんなさやかに、恭介は感謝の言葉を述べた。


「へ?あ、あたし?」

「実はね、さやかが夢に出てきたんだ。きれいなドレスに身を包んださやかが、僕に微笑んでくる夢……その夢を見た次の日に、左手が動くようになってたんだ。」

「……つまり、さやかさんの愛が上條君に奇跡を与えたんですねっ!!ロマンチックですわぁ~!!」

「ちょっ、仁美ぃっ!?」

「あ、あはは……すごいね上條君、そんなこと教室で言えるなんて……」


 まどかの指摘通り、教室の視線は恭介とさやかに向いていた。その大多数が、温かい視線を向けている。


「よっ、アツアツですねお2人さんっ!!」

「え、なになに?これってもしかして告白!?」

「夢にまで出てくるなんて……もう、お似合いのカップルよねっ!!」

「このリア充が……」

「くそっ、おれのサヤカタソが……だが、上條になら託せるっ!!」

「おめでとう2人とも!!お幸せにねっ!!」


 思い思いの言葉を述べる級友達に、さやかと恭介の顔が真っ赤に染まっていく。その様子を、まどかと仁美は微笑ましく見つめていた。



「――あ、あなた達!!なにを騒いでいるんですかぁっ!?」


 その祝福は、担任である早乙女が入ってくるまで続いていた。



















 ――そして、ほむらはその光景を冷ややかに見つめていた。


 
++++++++






「……おい、本当にこの惑星でいいのかよっ!?」

『反応はしっかりと確認した……間違いなく、この惑星にゼロは居る。』

「ようやくたどり着いたか……だが、どうする?今の我々の姿では、この惑星の生命体を驚かせてしまうぞ?」

『……まずは、情報収集だな。』







(つづく?)





あとがき


……ぜんぜん話が進んでない気がする。教えてくれゼロ、俺はどうしたらいい?(違



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第4話「神様って、本当にいるんだ」
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/10 13:48
※一部9話のネタバレがあります。その点はご了承してお読みください。






































「……心配すんなよさやか……一人ぼっちは、寂しいもんな……」




 ……どうして……?

 どうしてあんたが……そんな顔をするのよ……?

 まどかも……あんたも……なんでこんなあたしを助けようとするのよ……?



 あたしは……もう……正義の味方じゃないのに……

 こんな……どうしようもないあたしなのに……



「……いいよ……一緒にいてやるよ……さやか……」



 なんでよ……魔女を倒すのが魔法少女でしょっ!?なんであんたが……諦めてるのよっ!?























 認めない……こんな結末(オワリ)、あたしは認めないっ!!












叫びは、届いていた

魔女になった少女は、己の心を取り戻した

そして、条理を不条理に変える力が、“奇跡”を導く













希望が絶望に変わるとき、大きな力を産み出すのなら――











――その逆もまた、大きな力を産み出すのだから







++++++++















「……さぁってと、やることもやったし……『あたし』としては満足かな……?」





 月明かりが差し込む病院の屋上で、『美樹さやか』はそんなことを呟く。






 ――それは、“他人を守るために魔法少女になった少女”の残照。理想に憧れ、現実に敗れ、絶望の中で小さな希望を見出した少女のオワリ。

 既に、『彼女』の中に力は残されていない――絶望を塗り替えるほどの決意が生み出した“奇跡”は、『彼女』の魂を削りきっていたのだから。



「……こっちのあたしには……後悔しないでほしいな……でも、やっぱり心配だな……なにせ、『あたし』だし……
 まどかにも、仁美にも、マミさんにも迷惑かけちゃうかもしれないし……最後の最後は、あいつにまで助けられたし……」


 体と意識が薄れ行く中、『さやか』は最後まで他人と自分のことを心配し……涙を流していた。





 ――その時、月明かりとは違う青白い光が、『さやか』を照らす。

 『さやか』が空を見上げると――そこには、光に包まれた青い巨人が『さやか』を優しく見守っていた。




「…………ははっ…………神様って、本当にいるんだ…………」









 そして、『さやか』は自らの想いを巨人に告げる。なぜ、その想いを告げようと思ったのかは『さやか』には分からない。

 ――ただ、目の前の巨人ならば、この『遺言』を聞き入れてくれるような気がしたからなのかもしれない。




「…………ねぇ…………神様…………みんなを…………守ってあげて…………くれないかな…………?」



 ――『さやか』の『遺言』に、巨人は静かに頷く。



「…………ありが………とう…………」




 それを見届けると、『さやか』は巨人に笑顔を見せ――





























 ――光となって、この世界から消えたのだった。




++++++++








「まどかさん、そっちはお願いっ!!」

「はいっ!!」



 マミの構えるマスケット銃が火を吹き、まどかの投げるブーメランが縦横無尽に駆け巡り使い魔を切り裂いていく。

 無数に現れた使い魔達は2人の攻撃によって蹴散らされていき……残すは、本体である魔女のみとなった。


【マミさん、お願いしたいことがあるんですっ!!】

【……いいわよ。可愛い後輩の頼みですものっ!!】


 魔女が繰り出す攻撃を避けつつ、2人は念話によって意思疎通を図る。

 そして、瞬時に伝えられたイメージにマミは笑みを浮かべると、マミはマスケット銃を巨大なものへと変化させ、魔女へと構えた。



「それじゃ行くわよ……ティロ・フィナーレッ!!」


 空中から放たれたエネルギー弾が、螺旋を描きつつ魔女へと迫る。さらに、右足を赤く輝かせたまどかがマミの放ったエネルギー弾をさらに纏い、金色の流星となって魔女に迫る。



「えっと、えっとぉぉ……まどかきぃぃぃぃっくっ!!」



 なぜか、慌てふためいたまどかの声と共に金色の流星が魔女を貫き、少し遅れて魔女の体が爆発に包み込まれる。









「やったじゃんまど……って、えぇぇぇっっ!?」


「わわわわわっっ!?さやかちゃん、どいてぇぇぇぇっっっっ!!」



 そしてまどかというと、魔女が倒れたため駆け寄ろうとしていたさやかに衝突したのであった。



「2人とも、大丈夫?」

「あ、あいたたたた……ちょっとぉまどかぁ?必殺技にこだわるのはいいけど、もう少し周りを見て……」

「……あぁ、まどかなら目を回して気絶しているぞ?ったく、のんきなもんだぜ……」


 衝突した2人に駆け寄ってきたマミと、文句を言おうとしたさやかはその言葉に動きを止める。

 絡み合った状態からなんとか抜けだしたまどかはというと、地面にあぐらをかいて座り込んでいた。こころなしか、目付きも若干つりあがっていたりする。

 というか、まどかの口から男口調の言葉が出てきているだけで驚きなのだ。さやかとマミの混乱は、留まることをしらない。



「みんな、おつかれさ……どうかしたの?」

「……えっと、まどか?」

「まどか……さん?」

「ん?あぁ、今は違うぞ。俺はゼロ、ウルトラマンゼロだ。」















「………………………………えええぇぇぇぇぇっっっっっっ!?!?」

「……うん、訳がわからないよ。」




++++++++







「やはり、インキュベーターの仕業だったか。」

「……あなた、キュゥべえのことを知っているの?」

「あぁ……元々インキュベーターは、我々の世界に居た存在だ。




 ――まどかの豹変ぶりにさやか達が驚いていた頃。その様子を監視している2つの影があった。

 1つは、学生服に身を包んだほむら。もう1つは……杏子が『頼りになる仲間』と称していた、ジュリだった。



「……我々の、世界?まるで、世界が無数にあるかのような言い方ね。」

「事実、その通りだ。もっとも、異なる世界を渡るにはそれなりの力が必要になるがな……
 今は安定しているとはいえ、“世界の破壊者”と呼ばれる存在のせいで一時期は世界の均衡が崩れていた。おそらく、インキュベーターもその時にこの世界に来たのだろう。」

「とすると……あなたは奴を追ってこの世界に?」

「いや……インキュベーターを追っていたのは私の友人だ。“彼”はインキュベーターを説得しようとしていたからな……」

「その友人は愚かね。インキュベーターは命をなんとも思っていない。それを説得しようだなんて……」

「……まぁ、“彼”の話は置いておこう。しかし、あの少女の中に居るのは……」


 会話を一旦打ち切ると、ジュリはまどかに視線を向ける。そして、ジュリは踵を返すと、ほむらを置いて歩き出した。



「……何処に行くのかしら?」

「君は先に戻っておくといい……少し、用事が出来た。」


 そして、ジュリは姿を消す。ほむらは髪をかき上げると、ゆっくりとその場を去っていった。






++++++++



「……おぉ、この紅茶ってもんはうまいなっ!!」

「そ、そう……それはよかったわ……」

「は、ははは……」


 ――半ばまどか達の基地になりつつあるマミの部屋で、まどか(ゼロ)は豪快にお茶を飲んでいた。

 その動作に優雅さやお淑やかさなどは微塵もあらず、マミとさやかは引きつったままぎこちない笑顔を浮かべている。


【……マミさん、あれどうします?なんというか、まどかの姿であんなことされるのは……】

【たしかにね……まどかさんのイメージとは、その……ギャップが……】


 まどか(ゼロ)に聞こえないよう念話で会話する2人の意見はもっともだ。

 まどかはどちらかというと、小動物的な可愛らしさがある。しかし、今のまどか(ゼロ)はそれとは真逆だ。違和感がぬぐいきれないにも程がある。


「……そ、それでさぁゼロさん……まどかは、元に戻るの?」

「?あぁ……気絶したのが原因だから、まどかが目覚めれば元に戻るはずだ。」

「そっか……よかったぁ……」


 まどか(ゼロ)の言葉に、さやかとマミはほっと胸を下ろす。

 さすがに、このワイルドなまどか(ゼロ)がそのままだと周囲に悪影響を及ぼすだろう……某所のマッスルなあれのように。


「……なんか今、変な感じになりませんでした?」

「……奇遇ねさやかさん、私も同じことを思ったわ。」

「まぁ、しばらく君が表に出ているというのなら都合がいい……君の状況について、話してくれないかな?どうしてまどかの中に君がいるのか、あの力はなんなのか……」


 ここで、くつろいでいたキュゥべえがまどか(ゼロ)へと話を切り出す。それに対しまどか(ゼロ)は紅茶のカップをテーブルに置きながら、口を開いた。




「……俺も、どうしてこんなことになっているのかは分からない。ただ、話せる限りのことは話していくつもりだ。」



 そしてまどか(ゼロ)は、自らのことを語りだした。





++++++++




「で、どーすんだっ!?なんも解決策が浮かばないじゃねぇかっ!!」

「落ち着けグレンファイヤー。」

『ゼロがこちらに気づいてくれればいいのだが……』




 ――月面で、そんな風に会話を続ける3つの影が居た。

 1つは、真紅の身体に燃えるような……いや、実際に頭部が燃えている巨人「グレンファイヤー」。

 1つは、銀と深緑の身体に、十字のような瞳を持つ巨人「ミラーナイト」。

 1つは、赤と白の装甲を持つ巨大な宇宙船「ジャンバード」。


「……ったくよぉ、ゼロの奴1人で突っ走りやがって……」

『それには同意だ。いくらウルトラマンノアの導きがあったとはいえ……!?2人とも気をつけろ、何かが来るっ!!』



 地球を眺めていたグレンファイヤーのぼやきにジャンバードが同意しようとしたその時、ジャンバードのセンサーが警報を鳴らす。

 そして、体勢を整えたグレンファイヤー達の前に――赤と紺の巨人が現れた。


『何者だっ!?』

「ゼロに……似ている……?」

「おぅおぅおぅ!!てめぇ、カイザーベリアルの残党か!?」


 現れた巨人に対しグレンファイヤー達は身構えるが、巨人から発せられた言葉は予想を超えたものだった。









「……私の名は、ウルトラマンジャスティス。君達は、ウルトラマンゼロを知っているのか?」





(つづく?)





あとがき
ウルトラマンゼロとのクロスのはずなのにコスモスサイドが目立ってしまう……何故だっ!?

あと、士泉さんのお話を少しばかりネタにさせて頂きました。何卒ご了承ください。




[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第5話「みんなで手に入れよう――陳腐だけど王道の、ハッピーエンドってやつをさ?」
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/17 20:35
※今回の話には、10話のネタバレをほのめかす描写があります。その点にご注意してお読みください。















「……とまぁ、こんな感じだな。あとは、気がついたらまどかの中にいたって所だな。」

「ハハハ……ぜんぜん分からないってことがよく分かったわ。」


 ――自らのことを語り終えたまどか(ゼロ)に、さやかが率直な感想を述べる。まどか(ゼロ)の話はあまりにも壮大過ぎて、さやかとマミではついていけなかったのだ。


「……多次元宇宙に、宇宙警備隊……世界には、まだまだ不思議なことがたくさんあるのね……」

「無理無理、ぜんぜん無理。理解が追いつかないって。」

「まぁ、俺にも分からない部分があるしな……あ、紅茶のおかわり頼むな。」

「……まだ飲むの?」


 これで15杯目のおかわりを頼みながら、まどか(ゼロ)は男らしい笑みを浮かべている……それ程までに、紅茶を気に入ったのだろうか?



「……って、そういえばキュゥべえは?」

「あら?いつの間に居なくなったのかしら……」

「……それじゃ、まどかもめざめた頃だし俺は引っ込むとするか。」

「え?ちょ、ちょっといきなり……」

「……うん……?……あ、さやかちゃん……マミさん……おはようございます……」


 そういいつつまどか(ゼロ)が瞳を閉じると、キリっとしていた目付きがいつもの少しおっとりとした目付きに戻る。それがあまりに急すぎたので、マミもさやかもあっけに取られていた。



「…………うぅっ!?」

「ま、まどかっ!?」

「まさか、どこか怪我でもっ!?」


 すると、突然まどかの顔が青ざめてうずくまってしまう。慌てふためくさやかとマミであったが……












「……マ、マミさん……トイレ……貸してくださいっ!!」

「「…………はぁぁ…………」」


 ……トイレへと駆け込むまどかを見て、脱力してしまったのであった。




++++++++





「……で、どうすんだい?」

「何のことかしら?」

「とぼけんなよ。あんたが言ってたワルプルギスの夜が来る日まで、あと1週間もないんだぞ……このままで、いいのかい?」


 杏子の問いかけに、ほむらは答えない。ただ、沈黙を続けていた。








 ――杏子が不安に思うのも無理はない。ほむらと杏子がやってきたことと言えば、まどか達よりも早く魔女を見つけ、倒すだけ。まどか達とは接触せず、ただ監視するのみ……

 いくらジュリという強力な仲間が居るとはいえ、仲間を増やそうともしないほむらの態度に、杏子は苛立ちを隠し切れなかった。



「あんたの気持ち、少しは分かるつもりさ。けれど、今はあいつらと手を組んでワルプルギスの夜を倒すのが……」

「…………違う。」


 ――ぽつり。消えるようなか細い声で、ほむらが呟く。それを聞き、杏子は眉をしかめる。


「なにが、違うんだい?」

「…………鹿目まどかが“ウルトラマンの力”を使うこと。ジュリという仲間が出来たこと……今までとは、違いすぎる。」

「それのどこが問題なのさ?むしろ、今までと違うからこそ希望が見えるんじゃ……」

「だからこそ、怖いのよ。」


 ――そこで、杏子はようやく気づいた。ほむらの肩が、小刻みに震えていることに。




「私は怖い……小さな希望が簡単に壊れるのを、何度も見てきたから。」

「……あんた……」


 ――いつだったか、杏子はさやかに言った。『奇跡はタダじゃない。希望を願った分だけ、絶望が撒き散らされる』と。


 杏子が持つ“未来の記憶”は1度分だが、ほむらはおそらくそれ以上の“記憶”を持っている……つまりそれは、その分だけ“やりなおしたい”と思う結末だったのだ。

 ――ほむらがどれだけの絶望を見て、どれほどの決意を持っているのか、それは杏子にもうかがい知れない。

 だが、それだけの絶望を見てきたほむらだからこそ――何度も“やりなおし”を重ねてようやく見いだせた小さな希望が、絶望に塗りつぶされることに怯えているのだ。





「……心配すんなよ。」

「っ!!」


 ――だから、杏子はゆっくりとほむらに近づき、後ろから優しく抱きしめる。

 たとえぬくもりが伝わらなかったとしても――せめて、想いだけでも伝えるために。


「……あんたがどれだけの絶望を見てきたのかはあたしにはわからない。けどさ……もう、あんたは独りじゃない。」

「…………」

「あたしも、ジュリも……あんたの傍にいる。まどかやさやか、マミだってきっと分かってくれる。
 だから、みんなで手に入れよう――陳腐だけど王道の、ハッピーエンドってやつをさ?」

「………………………………えぇ、そうね。一歩を踏み出さなきゃ……自分で行動しなきゃ、なにも変わらない。何も変えられないもの。」











…………なぁ、神様…………希望をくれよ…………こいつが感じた絶望の分だけ、とびっきりの希望をさ…………










 ――その日、暁美ほむらに……“2人目”の友達が出来た。









++++








 ――空は夕焼けに染まり、もうすぐ闇が訪れようとしている。ビルのガラスに光が反射し、街はオレンジ色に包まれていく。

















「ずいぶんと可愛らしい姿だな、コスモス。」

『……君も、この世界に来ていたのか。久しぶりだな、ジャスティス。』














 そんな中、ジュリはある『人物』と邂逅を果たしていた。

 ――青いドレスに、風になびく白いマント。それは……魔法少女となった『美樹さやか』、そのものだった。


「……消えかけている魂を救う為にわざわざ融合したのか?一歩間違えれば、お前も消えるかもしれないというのに……」

『それでも、この子を救いたかったのだ。
 絶望し、世界に災厄を振りまく存在になっても……友を救いたいという願いで、奇跡を起こしたこの子を。』










「へぇ、佐倉杏子の行動がおかしかったのはそれが原因なんだ。それに、君達もこの惑星に来るなんてね……」

「っ!?……お前がなぜここに居る、インキュベーター!!」


 そして、ジュリとコスモスの背後に突然キュゥべえが現れる。キュゥべえの出現に対し、ジュリは警戒をあらわにし……コスモスは、悲しそうな表情を浮かべた。


『……やはり、君達は続けていたのか。』

「当たり前さ。僕らの行為は宇宙を救う為のものなんだ。それは多次元宇宙に居ても変わらない――むしろ、多次元宇宙という概念を知ってしまったからこそ、止める訳にはいかないんだ。」

「その為に、限りある尊い命を犠牲にしてもかっ!!」

「“宇宙正義”の名の元にデラシオンの手伝いをしていた君には言われたくないよ、ウルトラマンジャスティス。それに、僕らだって最小限の犠牲になるよう努力はしているんだ。」

「っ!?」


 その言葉に、ジュリは口をつぐんでしまう。

 “宇宙正義”という大義名分の元に、デラシオンが消滅させた生命体は数多く居る。それは、インキュベーターの行いと五十歩百歩である……そう告げられたのだから。


『……犠牲を出さずに済む方法はないのか?君達の力があれば、他にも解決策が……』

「目の前にもっとも効率的で最大限のパフォーマンスを見いだせる解決策があるというのに、それを捨ててまで他の解決策を見つける必要があるのかい?僕にはそれが理解出来ないよ。」

「……そうだな、お前達インキュベーターは昔からそうだった。極端な論理的思考を持つが故に、全てを論理的にしか考えられない。だからこそ、お前達は生命の持つ“感情”を理解出来ない。」

「確かに、僕らは感情を持たないね。だからこそ、僕らは宇宙を救う為に感情を持つ知的生命体の力を借りているんじゃないか。」

「都合のいい部分のみしか話さず……本来の目的を隠して、だろう?」

「全てを教えたら、誰もその事実を受け止められないからね……むしろ、選択の余地を残しているだけ感謝してほしいんだけどなぁ……?」

「戯言をっ!!」

「やれやれ……やっぱり理解してもらえないね。僕らからしてみれば、君達“ウルトラマン”という存在がどうして知的生命体を……特に人類を守ろうとするのかが理解出来ないよ。」


 ――キュゥべえは頭を振りながら、そう呟く。そしてキュゥべえは、再びコスモスに視線を向ける。


「……仮にも命の恩人なんだ、君と争うつもりはないよ。けれど、君はそうじゃないんだろうね。」

『……この子との約束もある。君達の邪魔をすることにはなるだろうな……』

「やれやれ、暁美ほむらの秘密を知ったと思ったら今度は美樹さやかが奇跡を起こすとはね……本当に、魔法少女は条理を不条理に変える存在だよ。けれど、僕らの邪魔はさせないよ?」

「っ!?待てっ!!」

『待ってくれジャスティス。』


 そう呟きつつ、キュゥべえはその場を後にする。ジュリはそれを追おうとしたが、コスモスによってそれは止められた。


「コスモス、なぜ止めるっ!?」

『……我々がこの惑星に来たのは、はたして偶然なのだろうか?』

「なに?」

『確かに、インキュベーターの行いは止めなくてはならない。だが……』


 そう呟き、コスモスは夜空を見上げ――いや、虚空を睨みつける。






























 ――そして、世界が変化した。




「……なん……だと……?」

『落ち着くんだ、ジャスティス。』


 先程までの住宅街が突如薄暗い山岳地帯のような場所へと変化し、ジュリは戸惑いを隠せない。だが、コスモスは冷静に状況を判断するとその体を光で包みこみ――





「デュアッッ!!」




 ――本来の姿である青き巨人に変えると、さらにその体を赤く輝かせた姿――「コロナモード」へと変化させる。







【ウルトラマンを発見、排除する。】





 すると、コスモスに反応するかのように、黒と赤銅の体を持つ1つ目の巨人が闇の中から数十体も現れ、コスモスを取り囲む。


「コスモス、何者だこいつらはっ!?」

「分からない……だが、私はこの惑星に来てから彼らに絶えず襲われている。ジャスティス……君の力を貸してくれ。」

「……いいだろう」


 コスモスの言葉にジュリは頷くと、羽のような飾りがついた宝玉「ジャストランサー」をかざし、その体を光に包み込む。



「ジュアッ!!」


 本来の姿に戻ったジュリ――『ウルトラマンジャスティス』はコスモスと背中合わせに経つと、1つ目の巨人達と相対し――


「いくぞ、ジャスティス!!」

「あぁっ!!」



 ――激突した。



















 ――コスモスとジャスティスは知らない。

 2人が相対している存在が、ウルトラマンゼロを模したロボット……『ダークロプス』と呼ばれることを。

 そして――その光景を見つめている、道化師のような巨人が居ることを。






++++++++
















































「……ちぃっ、別世界のウルトラマンまで呼び寄せるとは……ノアの奴め、どこまで俺の邪魔をする気だ……」


 ――深淵の中でコスモスとジャスティスがダークロプスと戦う映像を眺めながら、“影”はそう囁く。


「だが、もはや俺の計画は止められん……『ワルプルギスの夜』が来るまであと僅か……ウルトラマンを食い止める手駒ならば、まだまだある……俺の復活は、もうすぐだっ!!」


 ――“影”は笑う。自らが復活する光景を想像して。いかにウルトラマンが食い止めようと、魔法少女が魔女を倒す限り“影”の復活は止められないのだから。

 そして、『ワルプルギスの夜』が現れると共に“影”は復活する。世界に恐怖と絶望を撒き散らすために。





















 “影”の名は――ダークザギ。邪悪なる、暗黒破壊神と呼ばれし者。







(つづく?)




あとがき
ラスボス登場。ようやくクロスオーバーらしい戦いが見せられるか……?

これはひとりごとですが、QB達は絶望を感じることってあるんですかね?果てしなく気になる。



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第6話「あなたは十分、私達と一緒に戦っているのよ」
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/15 22:00











「シェアァァァッッッ!!」

「デュアァァァッッッ!!」

【グアアアァァァッッッ!!】


 ――コスモス・コロナモードが放つ圧殺波動「ブレージングウェーブ」が、ジャスティスの放つ衝撃光線「ビクトリューム光線」が、ダークロプスを焼き尽くす。

 そして、ダークロプスが完全に消滅し世界が元に戻るのと同時に……コスモスは『美樹さやか』の姿に、ジャスティスはジュリの姿に変わった。しかし、次の瞬間コスモスは膝から崩れ落ち、荒い息を吐き出す。


『……はぁっ……はぁっ……』

「コスモス、大丈夫なのか?」

『……心配要らない、力を使い過ぎただけだ……少し休めば、元通りになる……』

「……無理をするな。」


 脂汗をかきながらも笑顔を浮かべるコスモスの肩にジュリは手を置くと、自らのエネルギーを分け与える。


「すぐに落ち着いて休める場所へと運ぶ。だから……しばらく眠っていろ。」

『……すま……ない……』


 そして、コスモスはジュリの腕の中に自らの体を預けると、力を回復させるために深い眠りへとつく。ジュリはコスモスの体を抱えると、隠れ家にしている場所――ほむらの家へと急いで向かった。












++++++++

















【……どうやら、ダークフィールドは異世界のウルトラマンにも通用するようだな……】



 ――その様子を、“影”は道化師のような姿をした闇の巨人「ダークファウスト」を介して眺めていた。想像以上の結果が得られたことに満足しながら、“影”は次なる一手を指す。



【……ならば、次はこいつを試すとするか……】



 そう呟きつつ“影”が闇を操ると――暗黒の球体に包まれた巨人が、姿を現す。



【しかし、多次元宇宙とは面白いものだな……まさか、光の巨人が闇に堕ちるとは想定していなかった。まぁ、俺の駒として存分に利用させてもらうがな……?】



 そして、“影”は笑う。“影”の笑い声と同時に――球体に包まれた巨人の瞳が、鈍く輝いた。





++++++++








「……あたし、どうしたらいいんだろ……」



 宵闇の中、さやかはマミの家を後にし、1人家路へとつきながらそう呟いていた。



 ――この街で魔法少女と魔女について知っている者の中で、“傍観者”の位置にいるのはさやかしかいない。

 マミやほむらは魔法少女であり、まどかは魔法少女ではないもののウルトラマンの力でマミの手助けをしている。

 できることなら、自分も力になりたい。魔法少女として、2人と共に戦いたい。つい先日まで、さやかはそう思っていた――









 ――上條恭介が、文字通り“奇跡”の退院をするまでは。



 教室での告白を機に、さやかと恭介の関係は少しずつ変わっていった。学校ではもはや、超弩級のバカップルと噂される(本人達は否定しているが)程だ。

 それ故に、さやかは魔法少女の道を歩むことに対して迷っていた。“奇跡”を欲する程の願いもなく、今の生活を犠牲にする程の勇気もない。


「……ほんと、あたしって最低だ……」


 涙を流しつつ、さやかは自分をただ責め続ける。その想いが“普通”の少女なら当然のことであるとしても、親友や憧れの人が人知れず戦っているという“非日常”を知るが故に。







『……なかなか面白いものだな人間というものは……少し、利用させてもらうとするか。』

「…………え?」









 ――そしてさやかは、“闇”に囚われた。






++++++++





「……はぁっ……はぁっ……さやかさん……お願いだから無事でいて……っ!!」



 闇を恐れるかのように灯りを輝かせる街の中を、マミは必死に走る。

 ――きっかけはまどかからの念話で、まどかと一緒に帰ったはずのさやかがまだ家に帰っていないというものだった。

 それにより最悪の想像をしてしまったマミは、さやかを探す為にまどかと共に夜の街へと飛び込んでいった。



「……まったく、やっぱり私はダメな先輩ねっ!!もっと早く、さやかさんと話をしていれば……」


 さやかを探しながら、マミは自分のミスに対し憤りを見せる。







 ――“願い”を他人のために使おうとしていた時点で、さやかが優しい性格だということは分かっていた。

 そんな彼女が、親友や命の恩人が人知れず誰かを守る為に戦っているのを見て……何もせずにいられるはずもない。

 幸いなことに、キュゥべえは彼女との契約を強要するような真似はしなかったが……だからこそ、彼女の内面にもっと踏み込んでおくべきだったと、マミはそう考えていた。


「……さやかさん、気付いていないのかもしれないけれど……あなたは十分、私達と一緒に戦っているのよ……?」


 本来、魔法少女とは孤独なものだ。魔女を人知れず倒すのもそうだが、ソウルジェムの輝きを保つために必要なグリーフシードには限りがある。

 キュゥべえはソウルジェムが濁りきった時魔法少女の身に何が起きるのか説明していない……故に、魔法少女達は争う。少しでも多くのグリーフシードを集めて、少しでも魔法を長く使うために。

 それに、マミには家族が居ない。両親が残してくれていた遺産と魔法によって“マミの生活に違和感を感じさせなくしている”ため生活に不便はないが――孤独に対する恐怖は、常にマミを襲っていた。






 ――だからこそ、まどかとさやかの存在にマミは救われたのだ。

 魔法少女とは別の力で、共に戦ってくれるまどか。憧れの先輩として、マミを慕ってくるさやか。マミを孤独の恐怖から開放してくれた、“守りたい日常”の証。

 まどかとさやかが居るからこそ、マミは安心して魔女との戦いに挑むことができる――もう二度と失いたくない、大切なものを守るために。





「っ!?こんな時に……」


 だが、運命の歯車とは残酷なものだ。マミは、魔女が発生させる“結界”を見つけてしまった。最悪の事態が、マミの脳裏によぎる……それは、さやかが魔女の犠牲になるということ。


「……さっさと片付けて、まどかさんと合流するしかないわね。」


 そして、マミは戦闘態勢を整えて“結界”の中へと突入する。ここで“結界”を放っておけば、見ず知らずの誰かが犠牲になるかもしれない。

 それを防ぐのが――マミが目指し、まどかとさやかが憧れる“魔法少女”なのだから。




++++++++









「ねぇまどか、見てよこれ。あたしもさぁ、手に入れたんだよ?まどかやマミさんと一緒に戦える力をさ。」

「……さやか……ちゃん……?」





 その頃、まどかはさやかを見つけ出すことに成功していた――しかし、今のさやかは様子がおかしかった。

 露出度の高い黒と赤のドレスに、右腕には鋭く伸びた爪のような武器。そして、瞳からは光が失われている。



「ねぇ、さやかちゃん……どうしちゃったの?ほら、早く帰ろうよ……」

【……まどか、俺と変われっ!!】

「え?待ってゼ……」


 戸惑いを隠しきれないまどかはさやかにゆっくりと近づくとするが、とっさにゼロが意識を表に出すと変身し、後ろに飛び退く。すると、先程までまどかが立っていた場所に炸裂弾のような闇の光弾が降り注いだ。



【そんな……っ!?】

「てめぇは……いったい何者だっ!!その子に、何をしやがったっ!?」

【……ゼロ、どういう事っ!?】

「【……さすがはウルトラマンというべきかな?こんなにも早く気づかれるとは……】」



 ゼロの問いかけにまどかが疑問に思っていると、さやかの声に禍々しい声が重なる。そして、さやかはの体から――闇の力が、溢れ出した。




「【我が名はダークメフィスト……貴様達ウルトラマンを倒すべく生まれた、闇の巨人だっ!!】」

「っ!?ちぃっ!!」


 そう叫びつつ攻撃を繰り出してくるさやかに対し、まどか(ゼロ)は左腕のブレスレットを槍状の武器――「ウルトラゼロランス」に変化させるとその攻撃を防ぐが、次第に押され始めていく。


 ――まどか(ゼロ)が防戦一方となっているのには、2つの理由があった。

 1つは、ゼロは今本来の姿ではなくまどかの体に憑依している形になっているということ。ゼロ本来の反応速度で動けば、まどかの体は耐えられない……故に、ゼロは己の力を制限しつつ戦っていた。


 もう1つは、ゼロの戦闘経験の少なさである。ゼロは能力こそ高いものの、歴戦のウルトラ戦士達に比べ経験が圧倒的に足りない。さらに、ゼロが今まで戦ってきた敵は分かりやすい『悪』――倒さなければならない存在ばかりだった。

 故に、助けるべき対象が敵に操られて自らと戦うという事態に――ゼロは焦りを感じていた。



「【どうしたウルトラマン?貴様はこの程度かっ!!】」

「てめぇ、卑怯な真似をしやがって……」

「【違うな……貴様が弱いだけだっ!!】」

「っ!?しまっ……」


 次の瞬間、ウルトラゼロランスはさやかに吹き飛ばされ、さらに胸部に蹴りが叩き込まれる。吹き飛ばされたまどか(ゼロ)はビルの壁に叩きつけられ、一瞬動きが止まってしまう。


【がはっ!?】

「きゃああぁぁっっ!!」

「【これで……終わりだっ!!】」


 さらに、衝撃によってゼロの意識に隙が出来たのか、まどかとゼロの意識が入れ替わってしまう。それを好機と見たのか、さやかは右腕に闇のエネルギーを収束させ……それをまどかに向けて放った。




























「……あなたはやはり、優しすぎる。」













 ――その時、まどかの耳に聞きなれた声が響く。


「【……何っ!?】」


 次の瞬間、まどかはほむらに支えられた状態でさやかの背後に居た。突然の事態に、さやかの顔は驚愕に包まれる。


【……ま、待て……あいつは俺が……】

「無理よ。あなたでは、美樹さやかの中に居る存在を倒すことができない。鹿目まどか、あなたもそうでしょう?」

「……ほむら……ちゃん……?」

「【ふんっ!!お前が魔法少女とやらか……何が起きたかは分からんが、お前もこの私を倒すことなどできはしまい?】」

「そうね。少なくとも、どの魔法少女にもあなたを倒すことはできない……いえ、『美樹さやか』の体を傷つけずにあなたを倒すことはできないというべきかしら?」


 嘲るような笑みを浮かべるさやかに、ほむらは髪をかきあげながらそう答える。その言葉に、まどかは悔しそうな表情を浮かべながらさやかを見つめていた。

























「ならば、それができる存在にあなたの相手を任せるのが合理的よ」

「【っ!?なにぃっ!!】」


 ――そうほむらが呟くと同時、空から舞い降りてきた青い光が、さやかの体に掌底を叩き込む。さらに、流れるような動作で次々と攻撃を加えていき、さやかを後方へとはじき飛ばした。



「…………………え……………………?」

【……なにっ!?】

「【ば、ばかな……貴様は……】」


















 青い光が収まると、そこに立っていた人物にまどかとゼロは驚きを隠せなかった。そして、再びほむらが口を開く。

























「紹介するわ。『彼』の名はコスモス、あなたの中に居る存在と同じ――ウルトラマンよ。」



 そこに立っていたのは、白いマントをなびかせ、青いドレスに身を包んだ……『美樹さやか』の姿だった。



(つづく?)





あとがき
なぜか勃発した光さやかVS闇さやか。さぁ、さやかはいったいどうなってしまうのか!?(棒

しかし、当初予定していたゼロVSキュゥべえは入れれるのだろうか……?



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第7話「みんなのこと、あんたに任せたよ?」※多重クロスルート
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/18 18:15










「マミ、合わせろっ!!」

「言われ……なくてもっ!!」


 ――魔女の“結界”内で、龍のように槍が舞い、銃声が響き渡る。その攻撃の嵐にさらされながらも……次々と、使い魔達は現れてくる。


「けれど、いったいどういう風の吹き回しかしら?」

「ん、あたしが清く正しい魔法少女をやってるのが不満なの?」

「まぁ……違和感はあるわね。」


 周囲を魔女の使い魔達に囲まれながら、マミと杏子は背中合わせになってそんな会話を繰り広げていた。


「……ちょっと、思うところがあってね……あたしも正統派魔法少女になることにしたんだよ。」

「あら、それはうれしいわね……助けてくれたのは確かだし、今の所は信用しておいてあげる。それじゃあ……さっさと終わらせましょうかっ!!」

「はっ、足手まといにはなんなよっ!!」


 互いに笑みを浮かべ、マミと杏子は襲いかかってくる使い魔達を蹴散らしていく。





(……不思議ね。少し前の私なら、突っぱねていたところなのに……)


 ――戦いのさなか、マミはふと自分の変化に気づく。孤独だった頃の自分ならば、今の杏子の言葉を信用していただろうか?


(……やっぱり、まどかさんやさやかさんがいるから、かしらね……?)


 使い魔に向けて銃撃を放ちながら、マミはまどかとさやかの笑顔を思い浮かべ――













――みんな……キュゥべえに騙されてる……っ!!――


(……え?)





 ――ノイズが、走る。




――間一髪、って所ね――

――もう大丈夫だよ、×××ちゃん――

――いきなり秘密がバレちゃったね……クラスのみんなには、内緒だよっ!!――



(……これは……なに……?)


 ノイズ混じりのその映像では、まどかとマミが共に戦っていた。しかし、まどかの格好は現在の3色ではなく、ピンクを基調としたもので、武器も弓矢を用いている。



――やったぁぁぁっっっっ!!――

――……お見事ね。――

――すごいっ!!すごいよ×××ちゃん!!――



「お、おいマミ!?」

「……はぁっ!!」


 ノイズと共に発生した頭痛がマミを苦しめ、マミは耐え切れずに地面に膝をつく。霞んでいく視界に黒い服を身につけた何者かが割り込んできたが、今のマミにはそれすらも気にならない。



(……知らない……こんなの、私は知らない……どうして……どうしてあなたがそんな顔を……!?)



 ――黒い髪を三つ編みにし、眼鏡をかけた少女が、気弱そうな表情を見せながらもほほえむ。それに対し、まどかとマミが笑顔で見つめていた。
















(…………暁美…………ほむら…………)





――     ――




 ――そして、温かい光を感じ取りながらマミの意識は途切れた。













 ――ある、平行世界の話をしよう。

 その世界では、全人類を幸福へと導こうとした神父がいた。彼は己の持つ“力”を進化させ、世界を『一巡』させた。


「悪い出来事の未来を知ることは『絶望』と思うだろうが、逆だッ!!明日『死ぬ』とわかっていても、『覚悟』があるから幸福なんだ!!『覚悟』は『絶望』を吹き飛ばすからだ!!」


 結果的に彼の野望は潰えたが、あながち彼の言葉も間違ってはいない。彼の行いとは真逆ではあるが、暁美ほむらもまた、『絶望』を吹き飛ばすために願いを――『覚悟』を持ったのだから。







 しかし、彼女の『覚悟』は世界に歪みを齎し、新たな『可能性』を産み出す。


 ――例えば、巴マミが欲望によって“ そ の と き ふ し ぎ な こ と が お こ っ た ”で解決してしまう黒い飛蝗の怪物を生み出していたり。

 ――例えば、鹿目まどかが筋肉の神に愛されていたり。

 ――例えば、暁美ほむらが白銀の巨人と出会っていたり。


 そして、これもまた『可能性』の一つ。

 鹿目まどかに光の巨人が宿ることで、本来見るはずだった“未来の自分が辿った結末”が変化をもたらし、“ありえるかもしれない結末”へと変わったこと。

 魔女となった美樹さやかが己の自我を取り戻し、佐倉杏子と共に過去へと渡ったこと。

 度重なった歪みは彼女達の周囲にまで及び、死の運命を乗り越えた巴マミに更なる影響を与えた。






 それが何を齎すのか――それは、誰にも分からない。




++++++++






『はぁぁぁっっ!!』

「【くっ……!?】」



 ――青き光と、漆黒の闇が激突する。お互いに『美樹さやか』の姿をしているとはいえ、それは紛れもなく光の巨人と闇の巨人の戦い。そして、優位に立っているのは――青き光、コスモスの方だった。

 ダークメフィストの猛攻を、太極拳のような舞い踊る動きで受け流しつつ、的確に掌打を叩き込んでいく。その打撃は、さやかの体にダメージが残るような威力は持たないが――光の力を送り込まれているため、その内にいるダークメフィストは苦しみの声をあげる。


(……このままでは、まずい。)


 ――しかし、優勢であるはずのコスモスもまた焦りを感じていた。

 消滅しかけていた『さやか』の魂を救うために、コスモスは自らと『さやか』の魂を一時的に自分と融合させた。それが原因で、コスモスは本来の姿を保てなくなっているのだ。

 加えて、ダークフィールドの影響とダークロプスの襲撃により、コスモスの消耗は著しいものとなっている。このままでは、『さやか』の魂ごとコスモスが消滅する可能性もある。


【……ねぇ……神様……】

(っ!!君はまだ休んでいるんだ……君の友達も、目の前に居る君自身も、必ず守って見せる。)


 その時、コスモスの内で眠りについていたはずの『さやか』がコスモスに語りかけてくる。ダークメフィストと闘いながら、コスモスは『さやか』を優しく諭し、再び眠りにつかせようとしていた。









 コスモスがなぜ『さやか』の魂を自らと融合させたのか、それにもまた理由がある。

 通常、“世界”に同一人物が複数存在することはありえない。それは、ある特殊な例を除けばいかなる方法を使っても覆すことのできない世界の“理”である。それを破れば、“世界”に異物と認識され――消滅してしまう。

 キュゥべえとの契約で過去へ戻ることのできる力を得たほむらや、『さやか』の起こした“奇跡”で未来の記憶を持つ杏子も、厳密に言うならば“過去の自分に現在の自分を上書きする”という裏技で“理”をごまかしているのだ。

 ――そして『さやか』の場合は、そうするだけの力が残っていなかった。だからこそコスモスは、『さやか』の魂と融合することで『さやか』を“理”から守っていたのだ。





 故に、『さやか』が目覚めるということは――“理”に従い、『さやか』が消滅するということである。


【……でもさ……一応自分自身のことだから、やっぱり『自分』でケリをつけたいのよ。だからお願い神様、あたしを……】

(…………それが、君の望みなのか?)

【神様には感謝しているよ。こんな『あたし』の願いを聞いてくれてさ……だから、これが最後のお願い。】

(…………分かった。だが、君1人で行かせるわけにはいかない……私も、共に行こう。)

【……さんきゅ、神様。】


 ――そしてコスモスは、残された力を振り絞って青く輝くオーラをその身に纏う。


「【っ!?貴様……何をするつもりだっ!!】」

『その子の体……返してもらうっ!!』

「【……させるかっ!!】」


 ダークメフィストはコスモスの行動に違和感を感じ、それを食い止めるために攻撃を放とうとする――














「……私達が居るということも、忘れないでほしいわね。」





 ――だが、それはほむらの時間停止能力によって遮られる。ほむらはいつの間にかコスモスの肩に手を置いており、止められた時間の中で動けるのは、ほむらとコスモスのみだった。


「……美樹さやかを救う手立てがあるのなら早くして。私の能力も、長くは持たない……」

『……ありがとう。』


 コスモスはほむらに礼を述べると、ダークメフィストに向けてゆっくりと右手をかざす。そして、放たれた光線はさやかの体を包みこみ――コスモスの体が消えるのと同時、時が動き出した。






++++++++





……あたし……どうなっちゃったんだろ……?


 ――どこまでも続く、永久の闇。さやかはその中を、波に揺られるかのように漂っていた。


……でも……このままでもいいのかな……なんだか、気持ちいいし……


 しかし、奇妙な居心地のよさを感じ取りながらさやかは眼を閉じる。そのまま、闇の中で眠るように――



















……このおバカっ!?さっさと起きなさいよっ!!

……え……?







 その時、聞きなれた声と共にさやかは青い光に包まれた。ゆっくりとさやかが眼を開けると、そこには――



「……ったく、自分のことながらほんと呆れるわこれ。」

「……え、えぇっ!?」


 そこには、珍妙な格好をした『自分』が立っていた。腕を組み、ふくれっ面をしている『自分』のその姿に……なぜかさやかは、笑みを浮かべてしまった。


「……ちょっとぉ、何がおかしいのよっ!?」

「いや、状況についていけなくて……しっかし、よくもまぁそんな格好できるもんよね?あたしなら、恥ずかしくてとてもとても……」

「と言うけども、これ『あたし』が魔法少女になった時のコスチュームよ?つ・ま・りっ!!あんたも魔法少女になってたらこんな格好になるわけ。ついでにいうと、この格好恭介には見られてるからね?」

「はぁっ!?あ、あんた何やってんのよっ!?……終わった、終わってしまった……そんな格好のあたしを恭介に見られるなんて……もう、お嫁に行けないっ!!」

「…………今更だけど、この状況でよくパニくらないわね。さすがあたし、こういう所は見習うわ。」

「いや、見習うも何も自分のことでしょうがっ!?……プッ、クク……」

「…………ク、クク…………」

「「……アハハハハハハハッッッッ!!」」



 ――そして、さやか達は顔を見合わせて笑い出す。魔女や魔法少女などといった“非日常”により、さやかの常識はことごとく塗り替えられていった……今更もう1人の『自分』が現れても驚くようなことではないと、さやかは感じていたのだ。


「……それで、『あたし』は何のよう?」

「ん~と……あんたが悪いヤツに操られてヤバいから、神様の力を借りて助けに来たって感じかな?」

「そっか……迷惑かけたね。」

「いやいや、なにせあたしのことですから……ほら、右手出して?」


 言われるがままにさやかは右手を差し出すと、『さやか』はその手をぎゅっと握り締める。すると……『さやか』の体が、徐々に体が透け始めた。


「ふぇっ!?」

「……本当は、おとなしく消えるつもりだったけど……あんたが心配だから、一緒に居させてもらうわ。」

「ちょっ、あんた何言って……」


 ここにきて、さやかは理解が追いつかずに混乱し始める。そんなさやかを見ながら、『さやか』は笑みを浮かべる。


「大丈夫大丈夫、あんたに『あたし』の経験と、神様の力が宿るだけだから。だからさ……」



















 ……みんなのこと、あんたに任せたよ?




++++++++










 ――強烈な光が、辺りを包み込んだ。



【なにぃっ!?】

「さやかちゃんっ!!」

「……心配しなくていわ。」


 ゼロとまどかは驚きを見せるが、ほむらは冷静にまどかを落ち着かせる。そして、光が収まると――


【………なん………だと………?】

「……ったく、さすがは『あたし』よね……ほんと、馬鹿なんだから……」


 体から闇の瘴気を吹き出しつつよろめく黒い巨人『ダークメフィスト』と、赤・青・金に彩られたドレスを纏ったさやかが対峙していた。











 ――それは、『さやか』が生み出した最後の奇跡。「優しさ」と「強さ」を合わせ持つ、「勇気」を司る神秘の姿。



「……まぁ、今は人の体を盛大に弄んでくれたあんたに……お返しをしなくっちゃねぇっ!!」

【ぬぅっ!?】


 さやかは地面を蹴ってダークメフィストに近づくと、その腹部に拳を突き立てる。

 続けて衝撃で前かがみになったダークメフィストの顎を蹴り飛ばし、さらに、ひねりを加えて放った回し蹴りによってダークメフィストはビルの壁に叩きつけられる。



「まどか、合わせてっ!!」

「えっ!?……う、うんっ!!」


 そして、さやかはまどかに声をかける。それにまどかが頷くと、さやかは両腕を回しながら頭上に掲げ、収束させたエネルギーを右腕に込める。まどかもまた力を貯めると、両腕をL字に組んだ。


「「いっ、けぇぇぇぇっっっっ!!」」

【ぬ、ぬあああぁぁぁぁっっっっ!?!?】



 ――声と共に解き放たれた2つの光線はダークメフィストへと突き刺さり、その体を消滅させていく。そして、激しい爆発と共にダークメフィストは砕け散った。


「やったね、まどかっ!!」

「うんっ!!すごいよさやかちゃんっ!!」

「へへ……あ、ちょっと待った転校生っ!!」


 喜びながら抱き合う2人を眺めると、ほむらは踵を返し夜の街に消えようとする。すると、さやかはほむらを呼び止める。


「……何かしら?」

「……えっと……その……ありがと、助けてくれて。」

「……礼には及ばないわ。」





 さやかにそう告げると、ほむらは颯爽とその場を後にする――その光景を眺め、まどかはなぜか……胸がぽかぽかと、あたたかくなったのだった。




++++++++





「やれやれ、魔法少女が3人も残っちゃったか……ウルトラマン達が居ることも考えれば、ノルマは達成できそうにないね。」


 ビルの屋上で、キュゥべえはそんなことを呟く。それには若干の呆れが混じっていたがキュゥべえの表情は相変わらず無表情で何を考えているか想像がつかない。


「……まどかという逸材を逃すのは残念だけど、また新しい魔法少女を育てるとするか。今度は、邪魔の入らないように……」













「ようやく見つけたよ、インキュベーター君?」

『FINAL-ATTACKRIDE-DI-DI-DI-DIEND』



 ――その時、背後から声が聞こえると共に、キュゥべえは10枚のカードが広がった薄緑色の光に動きを止められてしまう。力を振り絞って声のした方向へ視線を向けると――そこには、シアン色の装甲を纏った“戦士”が居た。


「……な、何が……?」

「僕は、君達という存在をひどく嫌悪するよ。命の輝きというのはかけがえのないお宝なんだ。それを、何万年も先に起きるかもしれない宇宙滅亡のために使い潰そうとするなんて……絶対に許す訳にはいかない。」

「……き、君は……」

「安心したまえ、痛みは一瞬だ。そして僕は――
















 ――通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておきたまえ。もっとも、君達に“次”はないけれどね?」


 その言葉と共に、“戦士”は構えていた銃のトリガーを引く。そして、緑色の奔流が、キュゥべえを飲み込んだ。














 この時、キュゥべえは“戦士”の行いが理解できなかった。

 インキュベーターは記憶を共有した分身が複数存在しており、たとえ自身を殺したとしてもすぐさま次の存在が現れる。

 だからこそ、キュゥべえは“戦士”の行いを無駄にエネルギーを消耗する悪手だと思っていた。






 ――キュゥべえは知らなかった。自らがこの“世界”にやってきた原因が“世界の破壊者”によって発生した偶然だということを。

 “世界の破壊者”はその名にふさわしく――あらゆる“世界”の“理”を破壊できることを。

 例えば、封印することしかできない不死の怪物を、“清めの音”という力で浄化しなければならない怪物を、いともたやすく撃破したことを。

 そして、目の前に居る存在が――“世界の破壊者”と対を成し、宝を手に入れるために世界を巡る怪盗だということを。


















 こうして、インキュベーターは最後まで自らの行いが正しいと信じ――全ての世界から、完全に“消滅”した。

(つづく?)





あとがき
魔法少女さやか☆コスモス(も)始まります。あと、独自解釈の嵐です。

一応、契約がなされた後で“魔法少女”と“キュゥべえ”の間に因果関係はないとしています。公式でそこら辺触れられたら……知らね。

ともかく後は、ワルプルギスの夜まで突っ走るのみ……っ!!



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第8話「もう、何も怖くない」
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/19 20:39







「……さてと、これで僕の一方的な八つ当たりは終わった訳だ。」



 インキュベーターの“消滅”を確認し、“戦士”はその鎧を解除して被っていた帽子のつばを触る。それは、まるで消えた命に対する黙祷のようであった。


 ――“戦士”と“世界の破壊者”が異なる世界を訪れるとき、彼らにはその世界がどのような世界なのかを大まかに知ることができる。

 そして、彼は“怪盗”を名乗っており、その行動原理は世界でもっとも価値のある“お宝”を収集することにある……もっとも、この世界でもっとも価値のある“お宝”は“限りあるからこそ尊い、命の輝き”であったため、早々に収集を諦めたのだが。



 それ故に、“戦士”はこの世界を初めて訪れた際に“魔女”と戦うことで“魔法少女”のシステムを知り――インキュベーターという存在を嫌悪した。

 彼にとって宇宙の滅亡などといったことは“お宝”よりも優先するものではない。命の輝きは、そこにあるだけで美しいものなのだ。それをグリーフシードなどといった残骸に変えることは……彼の信条からは外れるものだった。








「……それで、君に頼まれたものは探し出してきたよ。感謝したまえ。」

“――     ――”


 だからこそ彼は、目の前に現れた銀色の光に協力する道を選んだ。少しでも多くの“お宝”を守る為に。


「おっと、インキュベーターを始末したことに文句は言わせないよ?僕はお宝を粗末に扱う奴が大嫌いだからね……アレとは相容れないのさ。」

“――     ――”

「まぁ、君が理解出来ないのも無理はない――これは僕の信条でワガママだ。それじゃ、後は君に任せたよ。」


 そう言うと、彼は懐から取り出したものを銀色の光へと投げ込み、どこかへと立ち去っていく。























 ――ポケットに入れた左手で、目の前で魔女へと変わった少女のグリーフシードをしっかりと握り締めながら。














++++++++
















 崩壊した見滝原の街。その中央で咆哮する巨大な怪物と――それに立ち向かう巨人達の姿を、マミは空中に浮きながら眺めていた。


“……これは……夢……?”


 通常ならば、ただの夢だと思っていただろう。だが、マミは“非日常”の中に居た。だからこそ、その夢に奇妙なリアリティを感じていた。


 そして、1人の巨人がマミへと視線を向けると、ゆっくりとその手をマミへと差し出す。すると――マミの手の中に、巨人の胸部を象った装飾が施されたスティックが現れた。


“……あなたは……いったい……?”











 ――そこで、マミの意識は途切れた。







++++++++








「……ん……ここは……?」

「お、気がついたか?」


 ――マミが目を覚ますと、そこはマミの部屋だった。声が聞こえてきた方向に顔を動かすと、そこにはお菓子を食べながら座っている杏子と、腕を組んで壁にもたれかかっている黒服の女性がいた。


「……あなた達、どうして……」

「ま、ちょっとした魔法の応用だよ。それより、もう少し眠ってた方がいいんじゃない?あいつらも学校が終わったら来るだろうし……」

「……そう……それじゃあ……もう少し寝かせてもらうわ……」




 安心感を抱いたマミは、杏子に笑顔を見せると再び眠りにつく。いつの間にか、杏子やほむらに対する不信感や敵対心は消えていた。

 なぜか今なら……同じ魔法少女の宿命を背負った仲間として、共に戦えると信じて。






++++++++




【さやかちゃん……マミさん、大丈夫かなぁ?】

【まぁ、あいつ悪いヤツじゃないからさ……大丈夫だよきっと。】


 ――授業を受けながら、まどかとさやかは念話でマミの心配をしていた。

 今朝、マミの知り合いを名乗る魔法少女から念話が入り、マミが倒れたため学校を休むということを伝えられたのだ。


【……なんだ、まるで会ったことがあるみたいな言い方だな?】

【まだあたしも半分しか理解できてないんだけどね……それについては、後で話すよ。】


 すると、ゼロが念話に参加してさやかに疑問をぶつける。その魔法少女は念話のみしかまどか達に伝えず、顔は一切見せていない。それなのに、さやかからはその相手を信頼するかのような意志が感じられたからだ。


【そういえば、キュゥべえはどうしちゃったんだろ……やっぱり、マミさんの所にいるのかな?】

【…………さぁね。】

【……さやか……ちゃん?】


 ふと、まどかは最近姿を見せていないキュゥべえに想いを馳せる。それを感じ取るとさやかは突然不機嫌になってしまい、まどかは困惑するはめになった。











【――あなた達、ちょっといいかしら?】

【【っ!!】】


 すると、ほむらが突然念話に割り込んでくる。はじめての事態に、まどかとさやかは思わず身構えてしまった。


【……放課後、巴マミの家に来て。説明したいことがあるから。】

【え、えぇっ!?】

【そりゃあ、マミさんは心配だけどさ……あんた、何するつもり?】

【……この街にもうすぐ、ワルプルギスの夜という魔女が来る。それを倒すには……あなた達の力が……正確には、あなた達の中にいるウルトラマンの力が必要。】

【そりゃ詳しい話を聞きたいもんだな……いいぜ、その話に乗ってやる。】

【ゼ、ゼロ!?】

【それじゃあ、また放課後に。】

「鹿目、ちゃんと話を聞いてるかぁ?前に出て、この問題解いてみろっ!!」

「ふぇっ!?」


 とんとん拍子に話が決まってしまい、まどかは慌てふためく。すると、その様子をたまたま教師に見られてしまい……まどかは前に出て問題を解くことになってしまった。

 ちなみに、前に書かれている問題はつい先ほど教師が説明した方法で解く応用問題だった。無論、その方法を聞き逃していたまどかに解けるはずもない……まどかの顔は、みるみるうちに青ざめていった。


【……鹿目まどか、その問題の解き方を教えてあげるから私の言う通りに答えを書きなさい。】

【ほ、ほむらちゃん……ありがとっ!!】

「……うむ、正解だな。だが、内職するならもう少しバレないようにしないとな?」


 思わぬ所から助け舟が出されたことによりなんとか問題を解くことができたが、少しいじわるな表情をした教師の言葉とそれによって笑いに包まれた教室に、まどかは苦笑いを浮かべるしかなかった。



++++++++




「マミさん、大丈夫ですか?」

「えぇ……なんとか、調子も戻ってきたわね。」



 ――そして、放課後。マミの家を訪れたまどかは、シーツにくるまりながらソファーに座るマミに声をかけた。マミの顔にも赤みが戻っており、どうやら大丈夫のようだ。

 
「……それで、あれはどういうことなのかしら?」

「さ、さぁ……?」


 そんなやりとりの後、マミはまどかの後ろを眺めてため息をつく。まどかもまた、頬を掻きながら引きつった笑いを浮かべていた。そこでは――



















「……………………杏子、離れて。」

「いいだろ別に……あんたとあたしの仲だろ?ほら、これ食うかい?」

「お菓子はもらうけどもさ……」









 ――満面の笑みを浮かべて、お菓子を持ちながらさやかに抱きついている杏子の姿があった。


「……さやかさん、いったい何をしたの?」

「それが……入り口で出迎えてくれたあの子と少し話をしたぐらいなんです。そしたら、いきなり泣き出しちゃった上にあぁなって……」


 事情がまったく分からないマミとまどかは、首をひねってさやか達を見ていた。

 ……実際何があったのかというと、さやかは「ごめん……そして、ありがとう」と杏子に告げただけである。その言葉で全てを察した杏子は、さやかに対し一気にデレたのであった。




「……お茶の用意が出来たわ。」

「ありが……?この味……」

「すごいよほむらちゃんっ!!マミさんの味とそっくりっ!!」


 さやかと杏子のやりとりは見ないふりをして、まどかとマミ、そしてほむらは紅茶を飲みはじめた。すると、ほむらが淹れたお茶に口をつけるとマミとまどかは驚きの声をあげる。



 ――それは、マミが淹れた紅茶と同じ味だったのだ。無論、使用している茶葉が一緒なのだから同じというのは当たり前なのかもしれない。

 しかし、いい先輩であろうと普段から紅茶の淹れ方を研究していたマミは、紅茶の温度などさまざまな要因が……マミの会心の出来だった時の紅茶と同一だということに気づいたのだった。


「……杏子、そろそろ話をしてもいいかしら?」

「あ、悪い悪い……」

「ふへぇ、助かったぁ……」

「さやかちゃん……お疲れ……」

「それじゃあ、話してもらおうかしら暁美さん……あなたが何をしようとしているのかをね?」

「えぇ、もちろんよ……まずは、何から話そうかしら……」


 ――そしてほむらは、すべてを語りだした。






++++++++




「ちぃっ!?どうなってんだこりゃあっ!!」

「やはり……カイザーベリアルの残党がこの世界にもっ!?」


 ――その頃、月面ではグレンファイヤー達がダークロプスやダークファウスト達との戦闘を行っていた。グレンファイヤーがファイヤースティックをふりまわし、ミラーナイトがシルバークロスを放つ。

 ジャンバードはナオと共に戦ったデータを利用し単独で『ジャンボット』へと変形し、ジャスティスの背中を守りながらバトルアックスを振るう。


『……ウルトラマンジャスティス、君は地球へ戻るんだっ!!』

「なにっ!?」

『恐らくだが、これは陽動だっ!!君を少しでも長くこの場所へ留め……力を消耗させるためのっ!!』


 ――そんな中、ジャンボットはジャスティスにそう警告していた。

 なぜならば、ダークロプスやダークファウストが現れたのは、ジャスティスがグレンファイヤー達の元へ現れた直後――そして、ダークロプス達は、ジャスティスを優先して狙っていた。


「んだとぉっ!?じゃあなにか、俺達は眼中に無いってかっ!!」

「いや……どちらにせよこの数では、我々が援軍に向かうことも難しい……何者かが、よからぬことを企んでいるのは確かだ。」

『だからこそ、君は地球へ戻るべきだっ!!道は、我々が切り拓くっ!!』

「…………済まないっ!!」


 ジャスティスはジャンボットの言葉に頷くと、地球へ向けて飛び立つ。ダークロプス達はジャスティスを追おうとするが、それはグレンファイヤー達によって遮られた。


「おぉっとぉっ!!ここから先は通行止めだぁっ!!」

「ウルティメイトフォース・ゼロを……舐めるなっ!!」

『みんな、行くぞっ!!』


++++++++



「……そんな……そんなのってないよ……こんなの、ひどすぎるよっ!!」

「……まどかさん……」


 魔法少女と魔女の真実、ほむらの願い、キュゥべえの目的――ほむらの話を全て聞き終えた後、まどかは拳を握り締めながら泣き叫んだ。そんなまどかの背を、マミが優しく撫でて慰める。


「……あなたは、驚かないのね。」

「そうね……少し前の私なら、取り乱したかもしれないわ。でも、夢で見ちゃったのよ……今のあなたじゃないあなたが、私達と共に戦っていた頃のことをね?」

「……なら、本題に入るわ。この世界は今まで私が繰り返してきたものとはまったく違う道を辿っている……だからこそ私は、このチャンスを逃したくない。」

「魔法少女がワルプルギスの夜を倒すとキュゥべえの思い通りになるのなら、ウルトラマンの力で倒せばいいって訳ね。こりゃ分かりやすくていいわ。」

【そういうことなら、俺は力を貸すぜっ!!インキュベーターの企みなんざ……全部ぶっ潰してやるっ!!】

【……私も、力を貸そう。私とジャスティスが力を合わせれば、君達を元の体に戻すこともできるはずだ。】

「本当かっ!?」


 ――次々と溢れてくる希望。それを眺めながら、ほむらは胸があつくなるのを感じていた。


「――ほむらちゃん、やろうっ!!みんなでワルプルギスの夜を倒そうっ!!そして……みんなで一緒に幸せになろうっ!!」

「えぇ、もちろんよまどか。」


(……やっと、やっと私の願いが叶う。それも、まどかだけじゃなくて、みんなを救うという最高の形で……もう、何も怖くない。)


 そしてほむらは、まどかに向けて心の底から沸き上がってきた笑みを見せた。


























 ――その時、世界が震えた。



「「「「「っ!?」」」」」


 なんとも言い寄れぬ感覚に、マミの部屋に居た全員が戦慄を覚える。


「……お、おい……あれを見ろっ!?」


 そして、いち早く異変に気づいた杏子が窓を開け、空を指差す。








 ――そこに浮かんでいたのは、逆さになりながらも浮かんでいる巨大な影。その周囲には、ビルや建造物が――地面から引きぬかれ、浮かび始めていた。




「……そんな……いくらなんでも、早過ぎるっ!?」

「……じゃあ、あれが……」

























「……ワルプルギスの夜っ!!」










(つづく?)





あとがき
最終決戦、開始。



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第7話~IFルート~
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/18 09:31











「マミ、合わせろっ!!」

「言われ……なくてもっ!!」


 ――魔女の“結界”内で、龍のように槍が舞い、銃声が響き渡る。その攻撃の嵐にさらされながらも……次々と、使い魔達は現れてくる。


「けれど、いったいどういう風の吹き回しかしら?」

「ん、あたしが清く正しい魔法少女をやってるのが不満なの?」

「まぁ……違和感はあるわね。」


 周囲を魔女の使い魔達に囲まれながら、マミと杏子は背中合わせになってそんな会話を繰り広げていた。


「……ちょっと、思うところがあってね……あたしも正統派魔法少女になることにしたんだよ。」

「あら、それはうれしいわね……助けてくれたのは確かだし、今の所は信用しておいてあげる。それじゃあ……さっさと終わらせましょうかっ!!」

「はっ、足手まといにはなんなよっ!!」


 互いに笑みを浮かべ、マミと杏子は襲いかかってくる使い魔達を蹴散らしていく。





(……不思議ね。少し前の私なら、突っぱねていたところなのに……)


 ――戦いのさなか、マミはふと自分の変化に気づく。孤独だった頃の自分ならば、今の杏子の言葉を信用していただろうか?


(……やっぱり、まどかさんやさやかさんがいるから、かしらね……?)


 使い魔に向けて銃撃を放ちながら、マミはまどかとさやかの笑顔を思い浮かべ――













――みんな……キュゥべえに騙されてる……っ!!――


(……え?)





 ――ノイズが、走る。




――間一髪、って所ね――

――もう大丈夫だよ、×××ちゃん――

――いきなり秘密がバレちゃったね……クラスのみんなには、内緒だよっ!!――



(……これは……なに……?)


 ノイズ混じりのその映像では、まどかとマミが共に戦っていた。しかし、まどかの格好は現在の3色ではなく、ピンクを基調としたもので、武器も弓矢を用いている。



――やったぁぁぁっっっっ!!――

――……お見事ね。――

――すごいっ!!すごいよ×××ちゃん!!――



「お、おいマミ!?」

「……はぁっ!!」


 ノイズと共に発生した頭痛がマミを苦しめ、マミは耐え切れずに地面に膝をつく。霞んでいく視界に黒い服を身につけた何者かが割り込んできたが、今のマミにはそれすらも気にならない。



(……知らない……こんなの、私は知らない……どうして……どうしてあなたがそんな顔を……!?)



 ――黒い髪を三つ編みにし、眼鏡をかけた少女が、気弱そうな表情を見せながらもほほえむ。それに対し、まどかとマミが笑顔で見つめていた。
















(…………暁美…………ほむら…………)





――     ――




 ――そして、温かい光を感じ取りながらマミの意識は途切れた。













 ――ある、平行世界の話をしよう。

 その世界では、全人類を幸福へと導こうとした神父がいた。彼は己の持つ“力”を進化させ、世界を『一巡』させた。


「悪い出来事の未来を知ることは『絶望』と思うだろうが、逆だッ!!明日『死ぬ』とわかっていても、『覚悟』があるから幸福なんだ!!『覚悟』は『絶望』を吹き飛ばすからだ!!」


 結果的に彼の野望は潰えたが、あながち彼の言葉も間違ってはいない。彼の行いとは真逆ではあるが、暁美ほむらもまた、『絶望』を吹き飛ばすために願いを――『覚悟』を持ったのだから。







 しかし、彼女の『覚悟』は世界に歪みを齎し、新たな『可能性』を産み出す。


 ――例えば、巴マミの元にかつて『正義の味方』を理想とした、赤き弓兵が居たり。

 ――例えば、巴マミが欲望によって“ そ の と き ふ し ぎ な こ と が お こ っ た ”で解決してしまう黒い飛蝗の怪物を生み出していたり。

 ――例えば、鹿目まどかが筋肉の神に愛されていたり。

 ――例えば、暁美ほむらが白銀の巨人と出会っていたり。

 ――例えば、鹿目まどかと出会ったのが別世界の“魔法”を操るフェレットだったり。

 ――例えば、マッドサイエンティストによって別世界へ飛ばされる煩悩にまみれた青年がいたり。

 ――例えば、暁美ほむらが男となってハーレムを築いていたり。


 そして、これもまた『可能性』の一つ。

 鹿目まどかに光の巨人が宿ることで、本来見るはずだった“未来の自分が辿った結末”が変化をもたらし、“ありえるかもしれない結末”へと変わったこと。

 魔女となった美樹さやかが己の自我を取り戻し、佐倉杏子と共に過去へと渡ったこと。

 度重なった歪みは彼女達の周囲にまで及び、死の運命を乗り越えた巴マミに更なる影響を与えた。






 それが何を齎すのか――それは、誰にも分からない。




++++++++






『はぁぁぁっっ!!』

「【くっ……!?】」



 ――青き光と、漆黒の闇が激突する。お互いに『美樹さやか』の姿をしているとはいえ、それは紛れもなく光の巨人と闇の巨人の戦い。そして、優位に立っているのは――青き光、コスモスの方だった。

 ダークメフィストの猛攻を、太極拳のような舞い踊る動きで受け流しつつ、的確に掌打を叩き込んでいく。その打撃は、さやかの体にダメージが残るような威力は持たないが――光の力を送り込まれているため、その内にいるダークメフィストは苦しみの声をあげる。


(……このままでは、まずい。)


 ――しかし、優勢であるはずのコスモスもまた焦りを感じていた。

 消滅しかけていた『さやか』の魂を救うために、コスモスは自らと『さやか』の魂を一時的に自分と融合させた。それが原因で、コスモスは本来の姿を保てなくなっているのだ。

 加えて、ダークフィールドの影響とダークロプスの襲撃により、コスモスの消耗は著しいものとなっている。このままでは、『さやか』の魂ごとコスモスが消滅する可能性もある。


【……ねぇ……神様……】

(っ!!君はまだ休んでいるんだ……君の友達も、目の前に居る君自身も、必ず守って見せる。)


 その時、コスモスの内で眠りについていたはずの『さやか』がコスモスに語りかけてくる。ダークメフィストと闘いながら、コスモスは『さやか』を優しく諭し、再び眠りにつかせようとしていた。









 コスモスがなぜ『さやか』の魂を自らと融合させたのか、それにもまた理由がある。

 通常、“世界”に同一人物が複数存在することはありえない。それは、ある特殊な例を除けばいかなる方法を使っても覆すことのできない世界の“理”である。それを破れば、“世界”に異物と認識され――消滅してしまう。

 キュゥべえとの契約で過去へ戻ることのできる力を得たほむらや、『さやか』の起こした“奇跡”で未来の記憶を持つ杏子も、厳密に言うならば“過去の自分に現在の自分を上書きする”という裏技で“理”をごまかしているのだ。

 ――そして『さやか』の場合は、そうするだけの力が残っていなかった。だからこそコスモスは、『さやか』の魂と融合することで『さやか』を“理”から守っていたのだ。





 故に、『さやか』が目覚めるということは――“理”に従い、『さやか』が消滅するということである。


【……でもさ……一応自分自身のことだから、やっぱり『自分』でケリをつけたいのよ。だからお願い神様、あたしを……】

(…………それが、君の望みなのか?)

【神様には感謝しているよ。こんな『あたし』の願いを聞いてくれてさ……だから、これが最後のお願い。】

(…………分かった。だが、君1人で行かせるわけにはいかない……私も、共に行こう。)

【……さんきゅ、神様。】


 ――そしてコスモスは、残された力を振り絞って青く輝くオーラをその身に纏う。


「【っ!?貴様……何をするつもりだっ!!】」

『その子の体……返してもらうっ!!』

「【……させるかっ!!】」


 ダークメフィストはコスモスの行動に違和感を感じ、それを食い止めるために攻撃を放とうとする――














「……私達が居るということも、忘れないでほしいわね。」





 ――だが、それはほむらの時間停止能力によって遮られる。ほむらはいつの間にかコスモスの肩に手を置いており、止められた時間の中で動けるのは、ほむらとコスモスのみだった。


「……美樹さやかを救う手立てがあるのなら早くして。私の能力も、長くは持たない……」

『……ありがとう。』


 コスモスはほむらに礼を述べると、ダークメフィストに向けてゆっくりと右手をかざす。そして、放たれた光線はさやかの体を包みこみ――コスモスの体が消えるのと同時、時が動き出した。






++++++++





……あたし……どうなっちゃったんだろ……?


 ――どこまでも続く、永久の闇。さやかはその中を、波に揺られるかのように漂っていた。


……でも……このままでもいいのかな……なんだか、気持ちいいし……


 しかし、奇妙な居心地のよさを感じ取りながらさやかは眼を閉じる。そのまま、闇の中で眠るように――



















……このおバカっ!?さっさと起きなさいよっ!!

……え……?







 その時、聞きなれた声と共にさやかは青い光に包まれた。ゆっくりとさやかが眼を開けると、そこには――



「……ったく、自分のことながらほんと呆れるわこれ。」

「……え、えぇっ!?」


 そこには、珍妙な格好をした『自分』が立っていた。腕を組み、ふくれっ面をしている『自分』のその姿に……なぜかさやかは、笑みを浮かべてしまった。


「……ちょっとぉ、何がおかしいのよっ!?」

「いや、状況についていけなくて……しっかし、よくもまぁそんな格好できるもんよね?あたしなら、恥ずかしくてとてもとても……」

「と言うけども、これ『あたし』が魔法少女になった時のコスチュームよ?つ・ま・りっ!!あんたも魔法少女になってたらこんな格好になるわけ。ついでにいうと、この格好恭介には見られてるからね?」

「はぁっ!?あ、あんた何やってんのよっ!?……終わった、終わってしまった……そんな格好のあたしを恭介に見られるなんて……もう、お嫁に行けないっ!!」

「…………今更だけど、この状況でよくパニくらないわね。さすがあたし、こういう所は見習うわ。」

「いや、見習うも何も自分のことでしょうがっ!?……プッ、クク……」

「…………ク、クク…………」

「「……アハハハハハハハッッッッ!!」」



 ――そして、さやか達は顔を見合わせて笑い出す。魔女や魔法少女などといった“非日常”により、さやかの常識はことごとく塗り替えられていった……今更もう1人の『自分』が現れても驚くようなことではないと、さやかは感じていたのだ。


「……それで、『あたし』は何のよう?」

「ん~と……あんたが悪いヤツに操られてヤバいから、神様の力を借りて助けに来たって感じかな?」

「そっか……迷惑かけたね。」

「いやいや、なにせあたしのことですから……ほら、右手出して?」


 言われるがままにさやかは右手を差し出すと、『さやか』はその手をぎゅっと握り締める。すると……『さやか』の体が、徐々に体が透け始めた。


「ふぇっ!?」

「……本当は、おとなしく消えるつもりだったけど……あんたが心配だから、一緒に居させてもらうわ。」

「ちょっ、あんた何言って……」


 ここにきて、さやかは理解が追いつかずに混乱し始める。そんなさやかを見ながら、『さやか』は笑みを浮かべる。


「大丈夫大丈夫、あんたに『あたし』の経験と、神様の力が宿るだけだから。だからさ……」



















 ……みんなのこと、あんたに任せたよ?




++++++++










 ――強烈な光が、辺りを包み込んだ。



【なにぃっ!?】

「さやかちゃんっ!!」

「……心配しなくていわ。」


 ゼロとまどかは驚きを見せるが、ほむらは冷静にまどかを落ち着かせる。そして、光が収まると――


【………なん………だと………?】

「……ったく、さすがは『あたし』よね……ほんと、馬鹿なんだから……」


 体から闇の瘴気を吹き出しつつよろめく黒い巨人『ダークメフィスト』と、青と銀に彩られたドレスを纏ったさやかが対峙していた。











 ――それは、『さやか』が生み出した最後の奇跡。さやかに力を貸す神秘の巨人の力を体現した姿。



「……まぁ、今は人の体を盛大に弄んでくれたあんたに……お返しをしなくっちゃねぇっ!!」

【ぬぅっ!?】


 ――その言葉と共に、さやかの纏っていたドレスが輝き、真紅を基調とし青と銀のラインが入ったドレスへと変わる。
 

 そして、両手に太陽のごとき焔を纏ったさやかは地面を蹴ってダークメフィストに近づくと、その腹部に拳を突き立てる。

 続けて衝撃で前かがみになったダークメフィストの顎を蹴り飛ばし、さらに、ひねりを加えて放った回し蹴りによってダークメフィストはビルの壁に叩きつけられる。



「まどか、合わせてっ!!」

「えっ!?……う、うんっ!!」


 さやかの掛け声にまどかが頷くと、さやかはエネルギーを右腕に収束させる。まどかもまた力を貯めると、両腕をL字に組んだ。


「「いっ、けぇぇぇぇっっっっ!!」」

【ぬ、ぬあああぁぁぁぁっっっっ!?!?】



 ――声と共に解き放たれた2つの光線はダークメフィストへと突き刺さり、その体を消滅させていく。そして、激しい爆発と共にダークメフィストは砕け散った。


「やったね、まどかっ!!」

「うんっ!!すごいよさやかちゃんっ!!」

「へへ……あ、ちょっと待った転校生っ!!」


 喜びながら抱き合う2人を眺めると、ほむらは踵を返し夜の街に消えようとする。すると、さやかはほむらを呼び止める。


「……何かしら?」

「……えっと……その……ありがと、助けてくれて。」

「……礼には及ばないわ。」





 さやかにそう告げると、ほむらは颯爽とその場を後にする――その光景を眺め、まどかはなぜか……胸がぽかぽかと、あたたかくなったのだった。




++++++++





「やれやれ、魔法少女が3人も残っちゃったか……ウルトラマン達が居ることも考えれば、ノルマは達成できそうにないね。」


 ビルの屋上で、キュゥべえはそんなことを呟く。それには若干の呆れが混じっていたがキュゥべえの表情は相変わらず無表情で何を考えているか想像がつかない。


「……まどかという逸材を逃すのは残念だけど、また新しい魔法少女を育てるとするか。今度は、邪魔の入らないように……」



 ――そして、キュゥべえは闇の中へ消える。自らも想像し得ないことが迫っていることも知らずに。





++++++++










「……あなたは、いったい……?」

――     ――




 ――まどか達の“世界”とは別の宇宙。そして、まどか達がダークメフィストとまだ戦っていない頃。

 とある惑星で、銀色の光と光の巨人が対話を行っていた。




――     ――

「……分かりました。同じウルトラマンとして、力を貸しましょうっ!!」



 そう銀色の光に宣言すると、光の巨人は天空に光り輝く文字――「ウルトラサイン」を示し、空へと舞い上がる。



「行きましょう、ウルトラマンノアッ!!」

――     ――




 そして、光の巨人――ウルトラマンメビウスは、銀色の光と共に多次元宇宙へと旅だった。










(つづく?)





あとがき
神は言っている――“迷っているならば、両方書けばいいじゃない”と――

という訳でIFルート(DC版とも言ったり言わなかったり)。こちらは多重クロス要素を減らしウルトラシリーズのみでなんとか解決させたいと思います。

ウルトラ魔法少女集結フラグが正規ルートよりも先に達成されちゃってるけどねっ!?

あと、IFルートはArcadia限定公開とさせていただきます。



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第8話~IFルート~
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/20 22:52


















 崩壊した見滝原の街。その中央で咆哮する巨大な怪物と――それに立ち向かう巨人達の姿を、マミは空中に浮きながら眺めていた。


“……これは……夢……?”


 通常ならば、ただの夢だと思っていただろう。だが、マミは“非日常”の中に居た。だからこそ、その夢に奇妙なリアリティを感じていた。


 そして、1人の巨人がマミへと視線を向けると、ゆっくりとその手をマミへと差し出す。すると――マミの左腕に、炎を象ったかのような意匠のブレスレットが現れた。



“……もう少しだけ待っててください。今、そちらに向かっています。”

“……あなたは……いったい……?”

“僕の名前は……ウルトラマンメビウス”



 その言葉と共に、巨人は人のよさそうな青年の姿へと変わり……マミに笑顔を向けた。






 ――そこで、マミの意識は途切れた。







++++++++








「……ん……ここは……?」

「お、気がついたか?」


 ――マミが目を覚ますと、そこはマミの部屋だった。声が聞こえてきた方向に顔を動かすと、そこにはお菓子を食べながら座っている杏子と、腕を組んで壁にもたれかかっている黒服の女性がいた。


「……あなた達、どうして……」

「ま、ちょっとした魔法の応用だよ。それより、もう少し眠ってた方がいいんじゃない?あいつらも学校が終わったら来るだろうし……」

「……そう……それじゃあ……もう少し寝かせてもらうわ……」




 安心感を抱いたマミは、杏子に笑顔を見せると再び眠りにつく。いつの間にか、杏子やほむらに対する不信感や敵対心は消えていた。

 なぜか今なら……同じ魔法少女の宿命を背負った仲間として、共に戦えると信じて。






++++++++




【さやかちゃん……マミさん、大丈夫かなぁ?】

【まぁ、あいつ悪いヤツじゃないからさ……大丈夫だよきっと。】


 ――授業を受けながら、まどかとさやかは念話でマミの心配をしていた。

 今朝、マミの知り合いを名乗る魔法少女から念話が入り、マミが倒れたため学校を休むということを伝えられたのだ。


【……なんだ、まるで会ったことがあるみたいな言い方だな?】

【まだあたしも半分しか理解できてないんだけどね……それについては、後で話すよ。】


 すると、ゼロが念話に参加してさやかに疑問をぶつける。その魔法少女は念話のみしかまどか達に伝えず、顔は一切見せていない。それなのに、さやかからはその相手を信頼するかのような意志が感じられたからだ。


【そういえば、キュゥべえはどうしちゃったんだろ……やっぱり、マミさんの所にいるのかな?】

【…………さぁね。】

【……さやか……ちゃん?】


 ふと、まどかは最近姿を見せていないキュゥべえに想いを馳せる。それを感じ取るとさやかは突然不機嫌になってしまい、まどかは困惑するはめになった。











【――あなた達、ちょっといいかしら?】

【【っ!!】】


 すると、ほむらが突然念話に割り込んでくる。はじめての事態に、まどかとさやかは思わず身構えてしまった。


【……放課後、巴マミの家に来て。説明したいことがあるから。】

【え、えぇっ!?】

【そりゃあ、マミさんは心配だけどさ……あんた、何するつもり?】

【……この街にもうすぐ、ワルプルギスの夜という魔女が来る。それを倒すには……あなた達の力が……正確には、あなた達の中にいるウルトラマンの力が必要。】

【そりゃ詳しい話を聞きたいもんだな……いいぜ、その話に乗ってやる。】

【ゼ、ゼロ!?】

【それじゃあ、また放課後に。】

「鹿目、ちゃんと話を聞いてるかぁ?前に出て、この問題解いてみろっ!!」

「ふぇっ!?」


 とんとん拍子に話が決まってしまい、まどかは慌てふためく。すると、その様子をたまたま教師に見られてしまい……まどかは前に出て問題を解くことになってしまった。

 ちなみに、前に書かれている問題はつい先ほど教師が説明した方法で解く応用問題だった。無論、その方法を聞き逃していたまどかに解けるはずもない……まどかの顔は、みるみるうちに青ざめていった。


【……鹿目まどか、その問題の解き方を教えてあげるから私の言う通りに答えを書きなさい。】

【ほ、ほむらちゃん……ありがとっ!!】

「……うむ、正解だな。だが、内職するならもう少しバレないようにしないとな?」


 思わぬ所から助け舟が出されたことによりなんとか問題を解くことができたが、少しいじわるな表情をした教師の言葉とそれによって笑いに包まれた教室に、まどかは苦笑いを浮かべるしかなかった。



++++++++




「マミさん、大丈夫ですか?」

「えぇ……なんとか、調子も戻ってきたわね。」



 ――そして、放課後。マミの家を訪れたまどかは、シーツにくるまりながらソファーに座るマミに声をかけた。マミの顔にも赤みが戻っており、どうやら大丈夫のようだ。

 
「……それで、あれはどういうことなのかしら?」

「さ、さぁ……?」


 そんなやりとりの後、マミはまどかの後ろを眺めてため息をつく。まどかもまた、頬を掻きながら引きつった笑いを浮かべていた。そこでは――



















「……………………杏子、離れて。」

「いいだろ別に……あんたとあたしの仲だろ?ほら、これ食うかい?」

「お菓子はもらうけどもさ……」









 ――満面の笑みを浮かべて、お菓子を持ちながらさやかに抱きついている杏子の姿があった。


「……さやかさん、いったい何をしたの?」

「それが……入り口で出迎えてくれたあの子と少し話をしたぐらいなんです。そしたら、いきなり泣き出しちゃった上にあぁなって……」


 事情がまったく分からないマミとまどかは、首をひねってさやか達を見ていた。

 ……実際何があったのかというと、さやかは「ごめん……そして、ありがとう」と杏子に告げただけである。その言葉で全てを察した杏子は、さやかに対し一気にデレたのであった。




「……お茶の用意が出来たわ。」

「ありが……?この味……」

「すごいよほむらちゃんっ!!マミさんの味とそっくりっ!!」


 さやかと杏子のやりとりは見ないふりをして、まどかとマミ、そしてほむらは紅茶を飲みはじめた。すると、ほむらが淹れたお茶に口をつけるとマミとまどかは驚きの声をあげる。



 ――それは、マミが淹れた紅茶と同じ味だったのだ。無論、使用している茶葉が一緒なのだから同じというのは当たり前なのかもしれない。

 しかし、いい先輩であろうと普段から紅茶の淹れ方を研究していたマミは、紅茶の温度などさまざまな要因が……マミの会心の出来だった時の紅茶と同一だということに気づいたのだった。


「……杏子、そろそろ話をしてもいいかしら?」

「あ、悪い悪い……」

「ふへぇ、助かったぁ……」

「さやかちゃん……お疲れ……」

「それじゃあ、話してもらおうかしら暁美さん……あなたが何をしようとしているのかをね?」

「えぇ、もちろんよ……まずは、何から話そうかしら……」


 ――そしてほむらは、すべてを語りだした。






++++++++




「ちぃっ!?どうなってんだこりゃあっ!!」

「やはり……カイザーベリアルの残党がこの世界にもっ!?」


 ――その頃、月面ではグレンファイヤー達がダークロプスやダークファウスト達との戦闘を行っていた。グレンファイヤーがファイヤースティックをふりまわし、ミラーナイトがシルバークロスを放つ。

 ジャンバードはナオと共に戦ったデータを利用し単独で『ジャンボット』へと変形し、ジャスティスの背中を守りながらバトルアックスを振るう。


『……ウルトラマンジャスティス、君は地球へ戻るんだっ!!』

「なにっ!?」

『恐らくだが、これは陽動だっ!!君を少しでも長くこの場所へ留め……力を消耗させるためのっ!!』


 ――そんな中、ジャンボットはジャスティスにそう警告していた。なぜジャスティスがこの場に居るのかというと、妙な感覚を感じたために杏子達の元を離れ、再びグレンファイヤー達の元へと訪れていたからだ。

 そして、ダークロプスやダークファウストが現れたのはジャスティスがグレンファイヤー達の元へ現れた直後――さらに、ダークロプス達はジャスティスを優先して狙っていた。これで関係がないと思える方がおかしい。


「んだとぉっ!?じゃあなにか、俺達は眼中に無いってかっ!!」

「いや……どちらにせよこの数では、我々が援軍に向かうことも難しい……何者かが、よからぬことを企んでいるのは確かだ。」

『だからこそ、君は地球へ戻るべきだっ!!道は、我々が切り拓くっ!!』

「…………済まないっ!!」


 ジャスティスはジャンボットの言葉に頷くと、地球へ向けて飛び立つ。ダークロプス達はジャスティスを追おうとするが、それはグレンファイヤー達によって遮られた。


「おぉっとぉっ!!ここから先は通行止めだぁっ!!」

「ウルティメイトフォース・ゼロを……舐めるなっ!!」

『みんな、行くぞっ!!』



++++++++



「……そんな……そんなのってないよ……こんなの、ひどすぎるよっ!!」

「……まどかさん……」


 魔法少女と魔女の真実、ほむらの願い、キュゥべえの目的――ほむらの話を全て聞き終えた後、まどかは拳を握り締めながら泣き叫んだ。そんなまどかの背を、マミが優しく撫でて慰める。


「……あなたは、驚かないのね。」

「そうね……少し前の私なら、取り乱したかもしれないわ。でも、夢で見ちゃったのよ……今のあなたじゃないあなたが、私達と共に戦っていた頃のことをね?」

「……なら、本題に入るわ。この世界は今まで私が繰り返してきたものとはまったく違う道を辿っている……だからこそ私は、このチャンスを逃したくない。」

「魔法少女がワルプルギスの夜を倒すとキュゥべえの思い通りになるのなら、ウルトラマンの力で倒せばいいって訳ね。こりゃ分かりやすくていいわ。」

【そういうことなら、俺は力を貸すぜっ!!インキュベーターの企みなんざ……全部ぶっ潰してやるっ!!】

【……私も、力を貸そう。私とジャスティスが力を合わせれば、君達を元の体に戻すこともできるはずだ。】

「本当かっ!?」


 ――次々と溢れてくる希望。それを眺めながら、ほむらは胸があつくなるのを感じていた。


「――ほむらちゃん、やろうっ!!みんなでワルプルギスの夜を倒そうっ!!そして……みんなで一緒に幸せになろうっ!!」

「えぇ、もちろんよまどか。」


(……やっと、やっと私の願いが叶う。それも、まどかだけじゃなくて、みんなを救うという最高の形で……もう、何も怖くない。)


 そしてほむらは、まどかに向けて心の底から沸き上がってきた笑みを見せた。


























 ――その時、世界が震えた。



「「「「「っ!?」」」」」


 なんとも言い寄れぬ感覚に、マミの部屋に居た全員が戦慄を覚える。


「……お、おい……あれを見ろっ!?」


 そして、いち早く異変に気づいた杏子が窓を開け、空を指差す。








 ――そこに浮かんでいたのは、逆さになりながらも浮かんでいる巨大な影。その周囲には、ビルや建造物が――地面から引きぬかれ、浮かび始めていた。




「……そんな……いくらなんでも、早過ぎるっ!?」

「……じゃあ、あれが……」

























「……ワルプルギスの夜っ!!」







++++++++





「……はぁっ……はぁっ……なんなんだ……なんなんだあれは……っ!!」




 ――その頃キュゥべえは、必死にある存在から逃げていた。


【おやおや、残念だったなインキュベーター。もう鬼ごっこの時間は終わりとなってしまったようだ。】

「ひぃっ!?」



 だが、健闘もむなしくキュゥべえを追いかけていた“影”は念動力でキュゥべえの体を固定すると、そのまま宙へと持ち上げる。

 その姿を見たキュゥべえは……本来インキュベーターという種が持ち得ない“感情”――恐怖によって、その身を硬直させていた。



【おや、君達は感情を持たないのではなかったかね?それなのに、君は今恐怖を抱いている……これはいい。君達という種がさらに進化したという証じゃないかっ!!】

「……やめ……やめろ……」

【そんな君達に、ささやかながら祝福の言葉を述べたいという者達が居るのだよ。さぁ……“彼女達”の祝福を、心置きなく受け取るといい。】


 そして、“影”の背後から禍々しき“闇”が溢れ出し――









――オオオオオオオオオオォォォォォォォォ――






 ――怨念に包まれた声が、響き渡る。そして、“闇”は少しずつキュゥべえに近づいていく。


「どうしてだっ!?僕達は、宇宙のために行動してきたんだっ!!感謝こそされても、恨まれる筋合いなんか……」




























【――あぁ、あの無駄な行為のことか?馬鹿な奴らだ……お前達インキュベーターの行いは、この宇宙にはなんら影響がないぞ?だからこそ、有効利用させてもらったんだがな……】

「…………え…………?」

【元々お前達とは違う世界のことだから知らないのも無理はないがな……『光の国』と呼ばれる惑星には、プラズマスパークという人工太陽が存在する。
 その輝きは、本来人類と同じ姿をしていたM78星人を超人へと変化させる程だ……貴様達の行いよりもはるかに膨大なエネルギーを、プラズマスパークはノーリスクで生み出しているのだよ。】

「……そ、そんな……そんなばかなっ!?」

【まぁ、“彼女達”がお前達を恨むのも仕方のないこと……そのまま永遠の絶望を味わうがいいさ。】






 そして、キュゥべえは“闇”に……インキュベーターの犠牲となった“魔女”達の怨念へと取り込まれた。



 ――こうして、インキュベーターという存在は“闇”の中で死に続けることとなる。

 “魔女”の怨念によるものなのか、“影”の力によるものなのかは定かではないが……インキュベーターの個体が死んだとしても、次の個体が“闇”の中に現れる。

 その中で、インキュベーターという種の精神は……“絶望”と“恐怖”という感情によって、塗りつぶされていったのだった。









(つづく?)





あとがき
力不足ですいません。しかし、プラズマスパークがあればインキュベーターの言う問題は解決できそうで怖い。



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第9話「私は、みんなを守る為に戦う」
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/25 21:29




「ファイ、ヤァァァァァッッッッ!!!!」






























 ――グレンファイヤーの一撃が、ダークロプスの腹部を貫き、その体を燃え上がらせる。そのままグレンファイヤーがダークロプスを蹴り上げると、ダークロプスは爆発に包まれて消滅した。


「……ようやく、終わりか?」

『いや……まだのようだ。』


 ミラーナイトが周囲を見渡しながらそう呟くが、ジャンボットはただならぬ反応を感じ取り……バトルアックスを構える。

 彼らの目の前には巨大な闇が渦を巻いており……その中から、禍々しい波動を感じる。そして――咆哮と共に、闇の中から巨大な影が現れる。




















 漆黒の体に、禍々しく鋭い紅き爪と背ビレ。肩には怪しく輝く紫色の結晶。そして、爛々と輝くその瞳は……まっすぐ、グレンファイヤー達を睨みつけている。








 それはかつて、ウルティメイトフォース・ゼロが倒したはずの――カイザーベリアルが変化した姿、アークベリアルであった。



「やぁっぱ、てめぇも現れるかよ……」

『さて、どうする?』

「決まっている……我々だけで、奴を倒すぞっ!!」


 ミラーナイトの声にジャンボットとグレンファイヤーは頷くと、アークベリアルへと向き直り飛びかかっていった。






++++++++








(……おかしい。)




 ――ほむらは、疑念を抱いていた。


 彼女は、この時間軸とは別のキュゥべえとの契約により、時間操作の力を手に入れた。そして、その力を使って過去へと遡り――その全てにおいて、ワルプルギスの夜と邂逅していた。

 もっとも、その全てが同じ結末だった訳ではない。だが、それでもその経験により――ほむらはこの世界に居る魔法少女の中では、ワルプルギスの夜について一番の知識を持っていた。




















 ――だからこそ、彼女は疑問に思っている。

(今までとは、まったく違う状況というのは分かっている。まどかと美樹さんはウルトラマンの力を宿していて、杏子とマミさんがワルプルギスの夜との戦いに参加するのも初めて。でも……)









ワルプルギスの夜は、あそこまで弱い魔女だったか?






 目の前では、ワルプルギスの夜を圧倒……そう、圧倒するまどか達の姿があった。

 無論、ほむらが繰り返した中にはワルプルギスの夜を一撃で倒したまどかも居た……それでも、ワルプルギスの夜は最強の魔女と呼ぶにふさわしい力を持っていた。

 だが、目の前の魔女は違う。姿こそ同じであっても、その攻撃も威圧感も何もかもが――今までほむらが見てきたワルプルギスの夜とは比べ物にならない程、弱く感じた。








オオオオオオオオオオォォォォォォォォッッッッッッッッ!!!!


「きゃあっ!?」

「なんだ、この声はっ!?」




 その時、ワルプルギスの夜が悲鳴にも似た声を響かせる。その声の大きさにまどか達は耳をふさぎ、ワルプルギスの夜の方へと注目する。


 ――変化が起きたのは、その時だった。




「……え?」



 ワルプルギスの夜から、禍々しい“闇”が溢れ出す。それは空へと続く巨大な柱となり……やがて、空を埋め尽くしていった。


「これは……?」

「……なんなのよ……なんなのよこれはっ!?」


……ミシッ……


 まるで雛が卵から孵化するように……ワルプルギスの夜の“内側”から、音が聞こえてくる。















「……ク……クク……ハハハハハハハハッッッッッ!!ようやくだ……ようやく、この体を取り戻したぞっ!!」




 そして、ワルプルギスの夜が粉々に砕け散り……漆黒と紅に彩られた禍々しい巨人が、姿を現した。




++++++++







 ダークザギは、歓喜に震えていた。

 インキュベーターの行為に便乗し、魔女となった魔法少女の絶望や怨念を自らの力へと換えていった結果……全盛期以上の力を手に入れることができたからだ。



 ――もっとも、それには理由がある。

 かつて、ダークザギはこの世界とは違う地球において“ウルトラマン”と戦闘を繰り広げた。

 結果としては、“絆”の力によってパワーアップしていた“ウルトラマン”に敗れたものの……皮肉なことに、ダークザギに組み込まれていた自己進化プログラムが“想いの強さ”を学習したのだ。


 そんなダークザギの残留思念が、無垢な少女達の感情を希望から絶望へと相転移させることでエネルギーを取り出していたインキュベーターが居るこの世界にたどり着いたのはもはや運命と呼ぶべきなのかもしれない。


 絶望と恐怖に彩られているとはいえ、“想いの強さ”を手に入れ復活したダークザギは……文字通り、“闇のウルトラマン”へと成った。



「……あぁ、そうだな。そういえば君達が居たな……?」


 ふと、ダークザギは眼下にあるビルの屋上に佇む少女達――まどか達を見つめる。

 魔女の持つ絶望や怨念といった“想い”をもっとも効率的に回収できるのは、魔法少女が魔女を倒した瞬間なのだ。

 5人の内2人はダークザギにとって忌々しいウルトラマンの力を宿す少女であるものの、彼女達がダークザギの復活に大きな影響を与えていたのは確かだ。











「君達には、私の復活に協力してもらった借りがある……せめてものプレゼントだ。君達を、普通の少女へと戻してあげよう。」


 そして、ダークザギはまどか達にゆっくりと掌をかざし――























 ――“魔法少女”としての力を、まどか達から奪った。



++++++++













「…………え…………?」


 ――それは、唐突だった。

 漆黒の巨人がまどか達に掌を向けると――突然、まどか達の服装が元に戻る。そして、マミ、杏子、ほむらのソウルジェムが宙に浮かぶと……ソウルジェムは、灰のようになって消え去った。


「みんなっ!?」


 その光景を見たまどかは、慌ててほむら達に駆け寄ろうとする。ソウルジェムは、魔法少女の魂を物質化したものだったはずだ。それが消えるということは……ほむら達の魂が消えるということを示す。








「…………え?」

「おい、どういうことだ……ソウルジェムってのは、あたし達の魂だったんじゃねぇのかよっ!?」

「……そんな……そんなバカな……」

「どういう……こと……?」


 だが、彼女達に変化は見られない。そのことに、まどか達は困惑を隠し切れない。










「まさか……私達、魔法少女じゃなくなった……?」


 そして、マミが必死に考えを絞り込み――正解を導き出す。だがそれは、この状況をなんら好転させるものではなかった。

 まどかとさやかは知る由もないが、彼女達は自らの内に眠る魔法少女としての才能――それは、キュゥべえと接触することで発現するものだが――を通してウルトラマンの力を行使していた。

 故に、魔法少女の力を無くした今……彼女達は、普通の少女でしかない。


「……おい……冗談だろ……?だったら……誰が、あれを止めるんだよっ!?」

「そん……な……」


 杏子のかすれた声が響き、ほむらは放心状態となって地面に座り込む。さやかとまどかは、ただ上空に浮かぶ巨人を眺めていることしかできなかった。




 






「……デュアッ!!」


 そんな彼女達の前に、かすかな希望の光が現れる。漆黒の巨人――ダークザギへと光弾が襲いかかり、彼女達を守るようにして……赤と紺に彩られた巨人が降り立つ。


「……ジュリ、なのか?」


 その雄々しき姿を見た杏子は、ふと言葉をもらす。杏子の声に、赤き巨人――ウルトラマンジャスティスは反応すると杏子達を一瞥し、再びダークザギへと向かっていこうとする。



「ッ!?ドゥアアアッッッッ!!」



 だが、空へ飛び立とうとしたジャスティスはどこからともなく放たれた無数のトゲミサイルによって、地面へと墜落する。


「キシャアアァァァァッッッッ!!」


 そして、なんとか体勢を立てなおして着地したジャスティスの前には異形の怪獣――Uキラーザウルスが立ちふさがり、その背中から生えた4本の触手から光線が放たれ……ジャスティスは地面へと崩れ落ちた。

 

「っ!?ジュリィィィッッッ!!」

「っ!!杏子、危ないって!?」


 屋上から乗り出してジャスティスへと声をかけようとする杏子を、慌ててさやかが抑えこむ。杏子の声に答えるかのように、ジャスティスは立ち上がろうとするが……その胸に輝く結晶は、赤く点滅をはじめていた。

 それでも、ジャスティスは力を振り絞ってUキラーザウルスと戦おうとする。だが、上空から降りてきたダークザギとUキラーザウルスのコンビネーションにより、ジャスティスはボロボロになっていく。


 ――その様子を、まどかは拳を握りしめて眺めていた。





































「……ゼロ、お願い。力を貸して。」


 そのまどかの声に答えるように――まどかの手に光が集まり、銀色のメガネのような物体「ウルトラゼロアイ」に変わる。


「……まど、か?」

「お、おい……」

「まどか……さん?」

「マミさん、さやかちゃん、佐倉さん……ほむらちゃん。私、行きます。」

「っ!?駄目……駄目よまどかっ!!戦っちゃ駄目っ!!」


 まどかの決意に満ちた表情に、さやか達は戸惑い……いち早くその真意を察したほむらが、立ち上がってまどかの肩をつかむ。


「……ありがと、心配してくれて。でも、ジュリさんだっけ?あの人を……助けたいの。ゼロも、力を貸してくれるって。」

「どうして……どうしてあなたはいつもそうなのっ!?あなたを大切に思っている人はたくさんいるのに、どうして……」

「うん、知ってるよ。でも、私だってそう。大切に思ってる人がいるから……その人達を守る力があるのなら。私は、みんなを守る為に戦う。」

「……まど……かぁ……」

「……暁美さん……」


 ほむらは泣き崩れてしまい、それをマミが優しく抱きしめる。その様子を見て、まどかは……困ったように、笑うのだった。

 すると、さやかがまどかの肩に手を載せてくる。


「……まどか、一緒に行くよっ!!」

「……さやか、ちゃん?」

「1人でなんて戦わせない。あんたの背中は、あたしが守るっ!!」


 さやかの手には黄金の飾りがついたスティック「コスモプラック」が握られる。まどかはそれに頷くと、戦いが繰り広げられている方向へ向き直り――己の心に浮かんだ、変身ポーズをとった。



「ゼロォォォォォッッッッ!!」

「コスモォォォォスッッ!!」



 そして、2人は――光に包まれた。




++++++++





「ぬぅっ!?」



 まばゆい光が、ダークザギとUキラーザウルスを怯ませる。そして、光が収まると……ジャスティスの前に、2人の巨人が佇んでいた。


「……コス……モス……」

「ジャスティス、君はしばらく休んでいるんだ。ここは、私と彼に任せてくれ。」

「……すまない……」


 その穏やかな言葉にジャスティスは頷くと、その姿を光に変えてその場を後にする。そして、2人の巨人は――ダークザギとUキラーザウルスへと向き直った。


「……やはり、立ちふさがるか……っ!!」

「当たり前だ。俺はウルトラマンゼロ……ウルトラセブンの息子だっ!!俺の中にある“光”に、ウルトラ警備隊の誇りにかけて――貴様の野望は、この俺が撃ち砕くっ!!」

「闇の巨人よ、お前はこの惑星の人々の――いや、全ての宇宙に対する脅威だっ!!今ここで……私達が倒すっ!!」

「おもしろいっ!!それでこそ“ウルトラマン”だっ!!改めて名乗ろう――俺の名はダークザギ、ウルトラマンを越える存在だっ!!」





 ――ダークザギの言葉に、ゼロはウルトラゼロランスを構え、コスモスはエクリプスモードへと変身を遂げる。そして――光と闇が、激突した。









(つづく?)





あとがき
頑張れ、ウルトラマン。この惑星の未来は、君達の手にかかっている!!

P.S.変える要素がないので今回IFルートはお休みです。



[26390] まどか☆マギカ・ゼロ第10話「終わらせるぞ、この戦いを」
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/27 11:54




「せやあああぁぁぁぁっっっっ!!」

「その程度か、ウルトラマンッ!!」

「ぐあっ!?」


 ――ウルトラゼロランスを巧みに操り、時に打撃や蹴りを織り交ぜながら、ゼロはダークザギに攻撃を放つ。だが、ダークザギはそれを片手でいなしつつ、ゼロの腹部にカウンターで蹴りを叩き込んだ。


「……へっ、まだまだ……これからだぜっ!!」

「……ちぃっ!!」


 ゼロの猛攻をいなしながら、ダークザギはふとUキラーザウルスへと視線を向ける。


「デュアアアッッッッ!!」


 コスモスから放たれた三日月状の光刃がUキラーザウルスの触手を切り裂き、放たれた打撃がUキラーザウルスを退けさせる。それを見ながら、ダークザギは疑問を感じていた。


(……こいつらは、あの“ウルトラマン”とは違うのは分かっている……だが、なぜだ?なぜこいつらは……“光”を失わない?)


 そう、現在見滝原市――いや、地球全土はダークフィールドに覆われている。その状況化では、“光”を力とするウルトラマン達は急激にエネルギーを消耗するはずなのだ。

 それゆえに、ジャスティスはさほど戦闘を行っていないにも関わらずボロボロになったのだ。効果は実証されている。それなのに――ゼロとコスモスは、弱る素振りを見せない。


「どうしたっ!!ウルトラマンを越えるとか言ってたが、防戦一方じゃねぇかっ!!」

(……っ!?そうか……そういうことかっ!!)


 その時、ゼロの攻撃を受け止めたダークザギは――ゼロのカラータイマーが一瞬赤く輝き、すぐさま元に戻るのを確認する。そして、なぜゼロとコスモスがエネルギーを消耗しないのかを理解したのだった。



【……負けないで、ゼロッ!!】

【コスモス、踏ん張ってよ……この街は、絶対に守って見せるっ!!】



 ――そう、ウルトラマンと一体化している少女達……まどかとさやかの想いが、ゼロとコスモスの“光”となっていたのだ。

 確かに、彼女達は魔法少女としての力を失った――それでもなお、彼女達は条理を不条理へと変えていたのだ。



(……奴め、あらかじめこうなることを予測してたな?だが……)

「……少し、やかましいぞ小僧っ!!」

「ぬあっ!?」

「くっ!?」



 ダークザギは両手から光弾をゼロとコスモスに向けて放ち、2人を吹き飛ばす。そして、全身から闇のオーラを滾らせるとそれを解き放つ。



「いいだろう……ならば、更なる絶望を産み出すまでだっ!!」



 ――そして、更なる脅威がゼロとコスモスの前に現れる。

 闇のオーラに触れたUキラーザウルスが巨大化し、その下半身が昆虫のような形となり、数倍もの触手を備えた「Uキラーザウルス・ネオ」へと変化する。

 さらに、いくつもの怪獣が合体したかのような姿を持つ怪獣「ギガキマイラ」と、巨大な翼を持った悪魔のような怪獣「ザ・ワン」が新たに闇の中から現れる。



 これが、ダークザギの手に入れたもう1つの力。“世界の破壊者”によって世界の均衡が崩れた時、ダークザギは残留思念の一部を多次元宇宙へと放った。

 そのことにより――ダークザギは自らの同じく“ウルトラマンという存在”と敵対した存在の怨念を取り込んだのだ。もっとも、ダークザギの力を削る上に多少はオリジナルよりも劣化してしまうが……今の状況では、それは問題にならない。



「――やれ。」


 そして、ダークザギの放った一言により……3体の怪獣は、ゼロとコスモスに向けて光線を放った。




++++++++




「さやかぁぁぁぁっっっっ!!」

「まどかさん、さやかさんっ!!」


 ――杏子と、マミの悲鳴が響く。彼女達の視線の先では、ゼロとコスモスがバリヤーを張って光線に耐えていた……だが、それも長くは持たず、ゼロとコスモスは光線の雨にさらされ、地面へと沈み込んだ。


「……どうして……どうして私は……見ていることしかできないの……?まどかを守るために力を手に入れたはずだったのに……どうしてぇっ!!」


 ほむらもまた、大粒の涙を零しながら悲痛な声をあげる。全ては、まどかを守るためだった。

 魔法少女となり、時を越える力を手に入れたのも……もう二度と、守られる自分にはならないという決意の証だったはずだった。

 だが、結果はどうなのだろう?彼女は再び力を失い、まどかに守られる存在となってしまった。

 因果とでもいうのか?ほむらには、まどかを助けることなどできはしないのか?そんな絶望が、ほむらの胸中を埋め尽くす。





























「……それで、君達はどうしたいんだい?」

「……え?」


 ――その時、そんな声が響いてくる。ほむら達が振り向くと、そこには……シアン色の装甲を纏った、“戦士”が居た。


「お前……何者だ?」

「僕は、通りすがりの仮面ライダーさ。」

「仮面、ライダー?」

「……まぁ、覚えてくれなくてもいいよ。そんなことより……ほら、君達にプレゼントだ。感謝して受取りたまえ。」


 そんなことを言いながら、“戦士”は杏子とマミに何かを投げ渡す。

 杏子が受け取ったのは、羽のような飾りがついている青いクリスタル。マミが受け取ったのは、乳白色で先端に飾りがついたスティック。


「これは……ジュリが持ってた……?」

「どうやら、擬態した姿を保てない程消耗しているらしいね……さて、と。これは、君へだ。」

「…………え?」


 “戦士”はほむらの前にかがむと、鞘に収められた刀のような白いスティックを差し出す。


「自分の大切なお宝を守る為に、君は戦うと決めたんだろう?なら、いつまでも泣いてないで立ち上がるんだ。」

「……それを使えば、私は戦えるの?まどかを……守れる力が手に入るのっ!?」

「それは、君次第だ。けれど、これを僕に預けた存在は君を選んだ……過去に戻ってまで、大切なお宝を守ろうとした君の行動が……絆を紡いだんだ。」

「…………絆…………」


 “戦士”の言葉にほむらは涙を拭くと、“戦士”の手からスティックを受け取る。そして、怪獣達を睨みつけるように立ち上がりながら……スティックを鞘から抜き放った。




「私は……まどかを、守りたい……だから……力を、貸してっ!!」



 その想いに答えるように、ほむらを――光が、包み込んだ。



++++++++



「……おい……まだ……動けるか……?」

「……なんとか……だがな……」


 ボロボロになりながらも、胸部のカラータイマーが赤く輝きながらも、ゼロとコスモスは立ち上がろうとする。

 そして、ゼロは怪獣達を引き連れたダークザギを睨みつけた。


「負けて……たまるかよ……」

【そうだよ……絶対に……諦めないっ!!】

「ふん、まだ立ち上がれるとはな……だが、それもこれまでだっ!!」


 そんなゼロの態度に苛立ったのか、ダークザギは右腕をゼロへと向け光線を放った。その光線は、まっすぐにゼロとコスモスへと襲いかかり――























 ――突如として現れた、光に遮られた。


「……なん……だ……?」

「これは……そうか……ようやく姿を現したか、ウルトラマンノア!!」

「ウルトラマン……ノア……だと……?」


 光が収まると、ゼロとコスモスの前には1人の巨人が立っていた。銀と灰色を基調とした、光の巨人「ウルトラマンネクサス・アンファンス」。

 それは、ゼロがかつて見たウルトラマンノアとは違う姿だった。だが、ゼロは……その瞳と胸に輝く赤いクリスタルに、ノアの面影を感じていた。


「…………フ…………フハハハハハハハハッッッッ!!!!笑わせてくれるなぁウルトラマンノアッ!!俺の邪魔をしてきたようだが、その結果がそれか?本来の姿を保てない程に消耗しているとは……そんな姿で、俺に勝つつもりか?」







【いいえ、違うわ。勝つのは私じゃない……『私達』よ。】


 その声と共に、ゼロとコスモスの傍に2つの光が現れ……巨人の姿となる。1人は、銀に加え紫と赤を基調とした巨人「ウルトラマンティガ」。もう1人は、ウルトラマンジャスティス。


【まどかさん、さやかさん、もう大丈夫よ……私達も、一緒に戦うから。】

【……ほむらちゃん?それに、マミさんもっ!?】

「ジャスティス……もう、大丈夫なのか?」

「あぁ、杏子のおかげだ。彼女の“光”が……私に、力を与えてくれる。」

【……って訳だ。】

【杏子……あんたまで……】


 そして、ティガとジャスティスはゼロとコスモスに手をかざし……光を分け与える。すると、ゼロとコスモスのカラータイマーが青い輝きを取り戻した。


「……だからどうした?数が揃ったところで俺とこいつらを相手に勝てるとでも?」

【そうね、普通なら勝てないわ。ウルトラマンノアから教えてもらったわ……今のあなたは、魔女と成った魔法少女の絶望と怨念を吸収してさらに強くなっている。】

「その通りだ。だが、今のノアは絆の力――繋がることで強くなる人の“想い”の力を持っていない。ようやく……俺が、お前を超える時が来たんだっ!!」

【それと、あなたは大事なことを忘れているわ……人間の“想い”は、絶望や怨念だけじゃない。そして……“絆”は、この世界だけじゃない。】


 そう言いながら、ネクサスと一体化したほむらは左腕を頭上に掲げる……すると、ダークフィールドを斬り裂いて“光”がゼロ達に差し込んだ。




++++++++




「……なるほど、これが彼の切り札という訳か。」


 天をも貫く光の柱を眺めながら、“戦士”はそう呟く。その左手に乗せられていたグリーフシードはソウルジェムへと姿を変え、そして……砂のようになって、消えていく。


「……君は、これで満足なのかい?」


 そう問いかける“戦士”の視線の先には、淡い光に包まれた少女が笑みを浮かべていた。その少女はゆっくりと“戦士”に語りかけると――そのまま、光となって消えてしまう。


「……さてと、それじゃあもう1つだけやっておくか。」


 そう言いながら、“戦士”は左腰のホルダーから1枚のカードを取り出す。その表面には、左上にグレンファイヤーとミラーナイト、そしてジャンボットの姿が、右下には――雄々しき戦士の姿が描かれていた。


『――FINAL-FORMRIDE ULTIMATE-FORCE-Z-Z-Z-ZERO――』

「さぁ……痛みは、一瞬だっ!!」


 カードを右手に持つ銃へと装填し、電子音声を響かせながら……“戦士”は、天へと向けて引き金を引いた。




++++++++



「おいおいおいおい、なんだよありゃあっ!?すっげぇ光が、あの惑星に突き刺さってんぞっ!?」

「グレンファイヤー、そんなことを言ってる場合では……くっ!?」


 アークベリアルとの戦闘を繰り広げながら、グレンファイヤー達は惑星へと突き刺さる光にそれぞれの感想を述べる。

 そんな時……惑星から、螺旋状に回転する光が、グレンファイヤー達へと迫っていた。


『なんだこの反応……はっ!?』

「はっ!?」

「ぬおっ!?」


 そして、3つに分離した光はグレンファイヤー達へと突き刺さり……驚くべきことが起きる。





 ジャンボットがジャンパードへと変形すると、バラバラになり……ミラーナイトに装甲となって合体する。

 さらに、グレンファイヤーが見てて痛々しくなるトンデモ変形を行い、巨大な右手となってミラーナイトと合体した。



「………………………なんじゃこりゃああっっっ!?!?」

『………理解不能。私にこんな機能はないぞっ!?』

「だが……力が湧いてくるっ!!行くぞ、みんなっ!!」


 そして、ミラーナイトが右手を引いて構えると、右手が炎に包まれていく。


「おい、ちょっと待て。お前なにする気だっ!?」

「大丈夫だグレンファイヤー。私達の必殺技だ……安心して逝ってこいっ!!」

「全然安心できねぇぞこらぁっ!?」

『目標補足っ!!いつでもいけるぞっ!!』

「だから、人の話を……」

「『ウルティメイト、ジャンナックルッ!!』」

「聞けぇぇぇぇっっっっ!?!?」



 轟音と共に、右手へと変化したグレンファイヤーは……アークベリアルへと、打ち出された。


「あぁもう、こうなったらヤケだぁっ!?ヒィィィィィトォォォォォ…………エンドォォォォォッッッッッ!!」


 そして、炎の拳は回転を加え弾丸となり……アークベリアルの腹部を貫き、大爆発を巻き起こした。



「……あぁ、死ぬかと思った。」

『君は以前も特攻しているはずだが?』

「まぁ、無事で何よりだ。」

「よし、てめぇらそこに直れ。俺のことなんだと思ってやがるんだっ!?」


 そんなやりとりを繰り広げていた彼らだったが、事態は刻一刻と動いていた。


++++++++





~光の国~


「ゼロと異世界のウルトラマン達に、我らの光をっ!!」


 ウルトラの父の声と共に、光の国に住むウルトラ戦士達が天空に現れた光のゲートにエネルギーを送り込む。



「……ゼロ、諦めるな。お前は……独りじゃない……っ!!」


 そう呟きながら、ゼロの父であるウルトラセブンはエネルギーを込める。自らの想いを、一緒にのせて。










 ――そして、同様の現象が光の国以外でも発生していた。




++++++++


~惑星エスメラルダ~


「エメラナ!!」

「ナオ、ラン……一緒に祈ってください。ゼロ達の、勝利をっ!!」



++++++++



~パラレルワールドの地球~


「……コスモス、ジャスティス。負けないでくれっ!!」






++++++++




「……親父……エメラナ……ナオ、ラン……」

「……ムサシ……」


 ――光と共に、想いが伝わってくる。同時に、ゼロ達の周りには……光に包まれた少女達が、笑顔を浮かべていた。


……お願い、頑張って……

……私達の分まで……




【……これって、まさか……】

【……魔女と成った、魔法少女の魂。ウルトラマンノアは、彼女達の魂を救うためにその力を行使した……そんなノアの力になろうと、彼女達は願った。】


 光に包まれながら、ネクサスはその姿を変える。陣羽織を羽織ったかのような、紫と銀の姿。その左手には、ほむらが魔法少女の時に使っていた盾を思わせる武装。

 かつて、ネクサスに変身した者達同様に例えるならば――さしずめ、「ジュネッスパープル」と呼称すべきか。


【……なんだろう、力が溢れてくる……!!】

「……そうだな、さやか……」

【……行くぜ、ジュリ!!】

「あぁっ!!」

 
 さらに、コスモスとジャスティスもその姿を変える。コスモスは、エクリプスモードとは違った配色の――未来を掴みとる為の姿、「フューチャーモード」に。

 ジャスティスは、より力強くなった赤き姿――「クラッシャーモード」に。


【……それじゃあ、私も……っ!!】


 マミの言葉と共に、ティガもまたその体を金色の光に包んだ「グリッターティガ」へと変わる。


【……ゼロッ!!】

「あぁ……行くぜ、まどかっ!!」


 そして、ゼロは左手を掲げると――上半身に眩く輝く鎧が、右腕に鋭い剣が装着される。その姿は、ノアの力を受け継いだ神秘の姿……「ウルティメイトゼロ」。



「……終わらせるぞ、この戦いをっ!!」


 ウルティメイトゼロの声と共に――5人のウルトラ戦士は、怪獣へと、ダークザギへと突撃した。





++++++++





「……バ、バカな……?」


 ダークザギは、驚いていた。圧倒的なまでに、優位だったのは自分のはずだった。絶望と怨念を吸収してパワーアップした自分。自分に有利なダークフィールド。そして、配下の怪獣達。

 ――だが、今は違う。



【でやあああぁぁぁぁぁっっっっ!!】

【はあああぁぁぁぁっっっっ!!】


 コスモスとジャスティスが、Uキラーザウルス・ネオを圧倒し。


【たああぁぁぁぁっっっっ!!】


 ティガが、ギガキマイラを圧倒し。


【……消えなさいっ!!】


 ネクサスが、ザ・ワンを圧倒する。





 ――そして。









「ダァァァァァクザァァギィィィィッッッッ!!」


 右腕の刃を煌めかせたウルティメイトゼロが、ダークザギへと迫り来る。



「っ!?くっ!!」

「逃がすかぁぁぁっっっ!!」



 ダークザギは空中へ逃げると、ウルティメイトゼロもまたそれを追って舞い上がる。そして、光と闇が入り混じる空で激しい戦いが繰り広げられた。



「見たかダークザギッ!!これが、本当の人の想い……“光”の力だっ!!」

「確かに、凄まじい力ということは認めよう……だが、貴様はその力で何を成すっ!?俺もまた、“人の想い”を手に入れた……俺を倒すことなど、できはしないっ!!」

【…………違うっ!!】

「何っ!?」


 激突のさなか、ウルティメイトゼロの体が淡い桃色の光に包まれる。そして、ダークザギに……まどかの想いが、伝わってきた。


【どうして、そんな風に振舞うのっ!?あなたが……あなたが本当にやりたかったのは、こんなことじゃないはずっ!!】

「黙れ小娘っ!!貴様に何が分かるっ!?」

【だって……あなたは優しいものっ!!】

「「はぁっ!?」」


 強い意志でそう宣言するまどかに、図らずもダークザギとウルティメイトゼロの声が重なってしまう。


【なら答えてっ!!どうしてあなたは、ほむらちゃん達から魔法少女の力を奪ったのっ!?】

「馬鹿馬鹿しいっ!!貴様らはあれで絶望を感じたっ!!それこそが、俺の力になるからだっ!!」

【違う……あなたはさっき、“ウルトラマン”を超えたいと言ったっ!!でも、本当は違う……】

「……止めろ。」

【あなたは本当は……“ウルトラマン”になりたかったんでしょっ!?“ウルトラマン”のように……誰かを救いたい、そう思ったんだよっ!!】












「……黙れ、黙れぇぇぇぇっっっっ!!」


 憤怒。そう呼ぶにふさわしい闇のオーラが、ダークザギから吹き荒れた。


「貴様、よりにもよってこの俺の行動を“善”とするかっ!?創造主を滅ぼし、幾多の命を奪ってきたこの俺を……“闇”そのものである俺を、許すというのかっ!?」

【そう、私はあなたを救いたいっ!!だから、私は……】

「ほざけっ!!俺は自らこの道を選んだっ!!それを、たかだか15年も生きていない小娘が許す?ふざけるな……ここまで俺を侮辱したのは、貴様がはじめてだっ!!」

【どうして……どうしてっ!?】

「許さん……許さんぞっ!!」



 そして、ダークザギはさらに闇のオーラを放ちウルティメイトゼロを吹き飛ばすと……Uキラーザウルス・ネオを、ギガキマイラを、ザ・ワンを取り込んでいく。











「……滅ぼす。貴様だけは、この俺の手で滅ぼすっ!!貴様が守りたいと思うその街も、惑星も……全て、貴様もろともなぁっ!!」







 禍々しい雷光を纏い、ダークザギは――自らの全エネルギーを、解き放とうとしていた。








++++++++




【……そ、そんな……どうして……】

【言ったはずよまどか、あなたは優しすぎる……その優しさが、時には人を傷つけてしまうこともあるの。】


 呆然とするまどかの元に、ネクサスがほむらの声で優しく語りかける。


【……なんか、やばくないあれっ!?】

【あぁ……どう考えても、まずいな。】

【となると……私達全員の力で、あれを倒すしかないわね。】

【そ、そんな……】


 まどかは迷う。優先しなければならないことは分かっているはずだ。それなのに――ダークザギを倒すことに、迷いが生じていた。


「……時間がない、ダークザギを倒すぞっ!!」

【ゼロ!?】


 そんなまどかを振り切り、ゼロはウルティメイトイージスを弓状に変形させ、ダークザギに向けて構える。同時に、他のウルトラマン達も必殺技を放つ体勢を取る。


「……まどか、心配するな。お前の苦しみは、俺が一緒に背負ってやる。だから、今は……迷うなっ!!」

【…………うん。】





「消えろぉぉぉぉぉっっっっっっ!!」


 まどかが覚悟を決めると同時に、ダークザギが“闇”を球状にしてゼロ達へと放つ。

 それに遅れて、ゼロがウルティメイトイージスを、ネクサスが紫炎に包まれた鳥のような光を、コスモスが、ジャスティスが、ティガが光線を放つ。

 そして、“光”と“闇”は激しくぶつかり合い――















【…………ごめんね。助けてあげられなくて、ごめんね。】







 ――まどかの涙と共に、“光”が“闇”を切り裂いた。






[26390] エピローグ~まどかサイド~
Name: 闇月夜の宴◆5546face ID:fcd0de35
Date: 2011/03/27 11:54
























「……フ……?」


 目が覚めると、そこは自分の部屋だった。窓の外からは、小鳥のさえずりが聞こえてくる。


「ふわぁぁぁぁ……夢かぁ……」


 人形を抱きしめながら、寝ぼけ眼でまどかはそう呟く。


「……でも、懐かしい夢だったなぁ……」






++++++++




「おはよう、パパ!!」

「おはよう、まどか。」

「ママは?」

「タツヤが行ってる。手伝ってやって?」

「は~いっ!!」


 1階に降りると、父の知久が家庭菜園のプチトマトを収穫していた。いつものやりとりを繰り返し、母である詢子の部屋へと向かう。


「起きて~、マ~マ~!!」


 詢子の扉を勢い良く開けると、弟のタツヤが布団の中に潜り込んでいる詢子の上に乗り、ぽふぽふと詢子を叩いている。まどかはまっすぐに窓へと近づくと――勢い良く、カーテンを開いた。


「……おぉぉっきろぉぉぉっっっっ!!」


 そして、詢子のベッドに近づくと、タツヤを下ろして……その布団を、一気に剥ぎ取った。


「だぁああぁぁぁあぁぁぁっっっっ……あれ?」

「ママ、起きたね!!」


 これもまた、鹿目家の日常である。








++++++++







「……最近、どんなよ?」

「仁美ちゃんに、またラブレターが届いたよ。今月になってもう4回目。」

「……ふっ、直にコクるだけの根性もねぇ男は駄目だな。」

「前にも、そんなこと言ってたね。」


 ――制服に着替えたまどかは、洗面台で歯磨きをしながら母とそんな会話を交わす。


「和子はどう?」

「あはははは……相変わらず。」

「だろうねぇ……しっかし、あんたも変わったねぇ?」

「?そう……かな?」

「あぁ、そうさ……半年前に比べると、ずいぶん成長した。恋でもしたかい?」

「そんなんじゃないよ……」

「あのマミって先輩と、ほむらって子の影響かい?いいことだ……大切にしなよ?」

「……うんっ!!」


 身だしなみを整えると、2人は朝食の席へと向かう。










 ――ちなみに余談だが、詢子は以前まどかが口にした冗談をきっかけにし現在社長の座についていたりする。

 母は強し、というべきか……友人達の間では、まどかもいずれその強さを身につけるのかと恐れられていたりする。





++++++++





――あれから、半年が経ちました。

あの時の出来事は……なぜか、私達しか覚えていません。だから、あれは5人だけの秘密。街に住んでいる人達は、いつも通りの生活を送っています。

これもみんな……ゼロやその仲間、その他のウルトラマン達のおかげです。



「おっはよ~!!」

「おはようございます。」

「遅いぞ、まどか!!」



さやかちゃんは、上條君と相変わらずのラブラブです。仁美ちゃんは、今月もラブレターを貰っていますがけんもほろろといった所です。

そんな2人が、ちょっとだけ羨ましいのは……内緒です。



「……マミさん、志望校に受かるといいよね。」

「大丈夫だよ、マミさんはけっこう頑張り屋さんだし。」

「巴先輩、ですか……あの方の紅茶、おいしいですよね……」


マミさんは、高校受験に向けて勉強の真っ最中です。小学校からの親友である春美さんが泣き言を言ってくるとよくぼやいていますが、なんだか楽しそうだったりします。

そして、杏子ちゃんは……








++++++++


~2ヶ月程前~






「……おい、なんで着いてくるんだよ?」

「いえ、目を離したらあなたがどこかへ消えてしまいそうですから。」

「だからどうした?あたしがどうなろうとあんたに関係ないだろ?」

「ところが大いに関係あります。なぜならば、俺が杏子さんに一目惚れしたからです。」

「な…………な、ななななな何言ってんだテメェ!?そ、そういう恥ずかしい事を、真顔で言ってんじゃねぇよ!?つか、なんであたしの名前を知ってんだっ!?」

「何でって……そんなの、金を払って調べさせたに決まってるじゃないですか。」

「ストーカーだっ!?ここにストーカーがいるぞっ!?」

「嫌だなぁ、ストーカーなんかじゃありませんよ。俺は愛という名の狩りに勤しむただの狩人です。」

「同じことだよっ!!むしろ悪くなってるよっ!?」

「それはともかく、あなたは一応中学生なんですから学校にはきちんと通った方がいいですよ?義務教育さえ終われば、あとは俺が面倒みますから。」

「……お前、流石にそれはなんだ、告白のつもりか?」

「いえ、プロポーズだったりします。絶対幸せにしますから。」

「…………はぁ、まぁいいや。とりあえず……………これ、食うかい?」



















……とまぁ、なんだか楽しくやっているようです。時々は私達のところに遊びに来て、近況を報告してくれたりしています。



++++++++




「それでさぁ?」

「え、ほんとっ!?」

「フフフ……あら?」


 通学路を歩いていると、仁美が何かに気づく。まどかとさやかが声に釣られて前を向くと、そこには―― 











「…………お、おはよう3人共。」







 風に髪をなびかせながら、顔を赤らめるほむらの姿があった。

 もう半年になるというのに、以前のようなクールビューティーさが欠片も見られないほむらに対しまどか達は顔を見合わせて微笑むと……




「おはよう、ほむらちゃんっ!!」


 ……まどかが、いの一番に声をかけた。







++++++++









「……終わったん、だね。」



 ――戦いが終わり、まどか達はビルの屋上に佇んでいた。空は夕暮れに包まれており、月の光が輝きだそうとしている。

 そして、まどか達の見上げる先には……5人のウルトラマンが、上空からまどか達を見つめていた。


 5人のウルトラマンが頷きあい、両手を重ねると……重ねられた手から放たれた光が、見滝原市を包んでいく。すると、戦闘によって破壊された街が――元に、戻っていく。


「……すごい」

「街が……元通りになったっ!?」


 そして、ウルトラマン達は空の彼方へと去っていく。別れの言葉はいらない。それほどの信頼が、まどか達には紡がれていた。




「……ありがとう、ゼロ。」


 まどかはそれを眺めながら……ぽつりと、感謝の言葉を述べた。







++++++++








ゼロ、あなたは今どこに居るの?きっと、私達を助けてくれたように見知らぬ誰かを助けてるんだよね。

いつか……きっと、あなたに会いに行くから。その時を、楽しみにしててね。




(おわり)





あとがき
これにて、この話はお終いです。まぁ、いろいろ変な箇所もあると思われますが……ノリだけで突っ走ってきたような感じなので、気にしないでください。

それと、ネイチャー様とsaitou様の作品を勝手にリスペクトさせて頂きました。この場を借りてお詫び申し上げます。

それでは、また次の作品でお会いしましょう。


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